硬度が低く、ほとんど採掘され尽くされてしまったことなどから、レアストーンの中でも特に稀少だといわれているフォスフォフィライト。
「宝石の国」(市川春子著:アフタヌーンKC)の主人公として登場したことをきっかけに、名前を知られるようになったものの、まだ鉱物としてのフォスフォフィライトはあまり知られていない気がします。
そこで、今回はフォスフォフィライトがどんな鉱物で、どのような特徴をもつのか。
コレクターならいつか入手したい幻のような宝石「フォスフォフィライト」についてのお話をお伝えしていきます!
目次
フォスフォフィライトとは
フォスフォフィライトはペグマタイトや金属鉱床における二次鉱床として生成される、リン塩酸鉱物です。
非常に稀な存在であることから、コレクターに高い評価を得ている宝石のひとつです。
鉱物としての基本情報
英名 | phosphophyllite(フォスフォフィライト) |
和名 | 燐葉石(りんようせき) |
鉱物名 | フォスフォフィライト |
分類 | リン酸塩鉱物 |
結晶系 | 単斜晶系 |
化学組成 | Zn2Fe(PO4)2 · 4H2O |
硬度 | 3 – 3.5 |
比重 | 3.07 – 3.13 |
屈折率 | 1.59-1.62 |
複屈折量 | 0.021 |
光沢 | ガラス状 |
フォスフォフィライトの特徴
フォスフォフィライトの結晶は柱状や厚みのある卓状をしています。
色は無色のものから濃い青緑色までさまざまです。
結晶は双晶を見せることが多く、フィッシュテール(魚の尻尾)型を見せるのが特徴的です。
硬度が3.5と低いことから、非常にもろく欠けやすい宝石です。
そのため、カットされることは少ないといわれています。
コレクター用にカットする場合は高い技術が必要とされ、ファセットカットやステップカットが施されます。
フォスフォフィライトの色
フォスフォフィライトの色はカラーレス~淡いブルー、ブルーグリーンなどが存在します。
中でも大変繊細で淡いブルーグリーンをしたものは評価が高く、フォスフォフィライトの最高品質であるとされています。
フォスフォフィライトの原石
こちらがフォスフォフィライトの原石。神々しいですね!
本当に若葉のように見えるから鉱物は不思議です。
フォスフォフィライトは、硫化物鉱床や花崗岩ペグマタイトの中に二次鉱物として生成するといわれています。
フォスフォフィライトの産地
フォスフォフィライトが世界で最初に発見されたのは、ボリビアの鉱山だといわれています。
この土地で採れるフォスフォフィライトは強く美しい色をしており、唯一のジェムクオリティであるとして有名です。
良質なうえにカットにも向いているフォスフォフィライトが産出されていましたが、現在は採掘し尽くされてしまったといわれています。
さらにドイツでもフォスフォフィライトの原石が発見されていますが、ボリビア産と比較すると結晶が小さくて薄い色のものが多いようです。
ほかにも、アメリカニューハンプシャー州、オーストラリア、ザンビアなどでも産出されています。
フォスフォフィライトの名前の意味
フォスフォフィライトは英語でPhosphophylliteと綴ります。
フォスフォフィライトはギリシャ語でリンという意味の「phosphorus」と葉という意味の「phyllon」を足した言葉を由来とします。
リンを含有することと、葉のように剥がれる完全な劈開性をもつことからそう名付けられたといわれています。
和名では燐葉石(りんようせき)と呼ばれています。
フォスフォフィライトの価値基準と市場価格、買える場所
価値基準
他の色石同様に、まずは色味が大切です。
色が濃く、透明度が高いものが価値高く扱われます。
色味としては、前述したように、淡いブルーグリーンのものが最も価値が高いとされます。
柔らかいためカットされることは稀ですが、ファセットが施されたブルーグリーンのものは大変高い価値が付けられるそうです。
カットが難しい宝石ですので、カットの美しさや大きさ、キズや欠け、インクルージョンの有無など総合的な判断のもと価格が決められます。
市場価格
産出量が少ない上に脆い性質上カットが難しい宝石ですので、カットされたルースが市場に出回ること自体とても少ないです。
そのため、出回る場合は全体的に高額なものが多い印象です。
1ct以下でも数十万円以上するものが多く、1ct以上のキズや欠けの少ないファセットカットされたトップクォリティのものは数百万円以上するものもあるといいます。
希少性の高さや性質、人気などを考えると納得せざるを得ない金額かもしれませんね。
どこで買える?
色が美しくて質の良いボリビア産は採掘され尽くされ、現在新しい石はあまり市場に出回っていないといわれています。
また過去に発見されたボリビア産のほとんどはコレクターが所有しているようだとも聞きます。
こういった事情から、現在市場に出回っているフォスフォフィライトは、大抵がボリビア以外の土地で産出されたもので、小さな結晶か、または結晶片をファセットにした1カラット以下のサイズのものが多いようです。
宝石の国で注目を集めたことがきっかけか、最近ではオンラインショップを中心に時々見かけるようになってきた気がします。
オンラインショップの場合、実物を見て購入できないこと、高額なものが多いことから信頼のおける鑑別機関の鑑別書付きのものやオプションで付けられるものを購入した方が安心だと思います。
鑑別書が付いていない場合はお店に確認してみると良いでしょう。
フォスフォフィライトのお手入れ方法
これまで何度もお伝えしてきたように、フォスフォフィライトはとにかく脆い宝石です。
ルースケースから取り出す場合は慎重に取り扱いましょう。
酸に弱いといわれていますので、汗などが付いた場合は柔らかい布で念のため早めに拭き取ってあげて下さいね。
個人的心情としては少し怖い気がしますが、一般的には、中性洗剤などを溶かしたぬるま湯の中で柔らかいブラシで洗っても良いとされています。
なるべく汚さないように扱ってあげた方が安心かもしれませんね。
最後に
出典元:TVアニメ『宝石の国』公式サイト |
アニメ「宝石の国」の主人公『フォス』の人気もあり、フォスフォフィライトの名前は一気に知られるようになりました。
しかし残念なことに、産出量が極めて少ない稀少石なうえ、脆くカットが難しいこともありカットされたルースを市場で見かけることは多くはありません。
ただ最近では、宝石展示会やレアストーンの取り扱いが多いお店などで、少しずつ目にする機会も増えてきたような気がします。
いつかこの手で触れられたら嬉しいと思うレアストーンの一つです。
カラッツ編集部 監修