皆様は、中南米にある<カリブ海>と聞いてまずどんな色を思い浮かべますか?
カリブ海といえば、キラキラ光る青色の海と澄み切った青空が魅力的な憧れのリゾート地。
私の頭に浮かんだのは「爽やかな明るいブルー」でした。
今回はそんなカリブ海にあるドミニカ共和国で発見された「ラリマー」のお話です。
ラリマーは1974年の発見以来人気が上昇している宝石ですが、産出量が少なく希少性が高いこともあってか、市場には偽物が多く出回っています。
買う前に知っておいてもらいたいことを調べて5つにまとめましたので、ラリマーの歴史から取り扱い方、偽物についてなど一緒に勉強していきましょう!
私の大好きな色でもある<海のブルー>をしたラリマーの魅力が少しでも伝われば嬉しいです。
目次
その1 ラリマーの特徴

ラリマーは<ケイ酸塩鉱物>の一種である、「ペクトライト(ソーダ珪灰石)」に属する宝石です。
ペクトライトはマンガンを含むとピンク色に、銅を含むと青色に変化すると考えられています。
そして銅が含まれる、白の色ムラを呈したブルーやグリーン系のペクトライトが「ラリマー」です。
ペクトライトに銅が混入することは珍しく、産出地も限られることから希少石として扱われることが多いラリマー。
その爽やかなブルーはまさにカリブの海から生まれたと思わされる、不思議な魅力をもった宝石ではないかと思います。
色
前述したとおり、銅をわずかに含有し、白色の色ムラがあるブルーやグリーン系のペクトライトがラリマーです。
ラリマーの青色は薄い青から水色、緑青、深い青色とさまざまです。
さらに表面はガラス光沢なので、研磨された石はキラキラと輝いてとても綺麗です。
硬度
ペクトライトのモース硬度は4.5~5と比較的柔らかく、二方向に完全に割れるへき開の性質を持ちます。
柔らかく彫刻が施しやすいため、装飾品やジュエリーとして加工されることも多いですが、原石やルースとして保管する場合も含め、取り扱いには十分注意しましょう。
その2 ラリマーの原石の形

ラリマーが属するペクトライトの原石は、三斜晶系をしています。
灰色の火山岩の中に水色の層をなしているのが特徴的です。
劈開(へきかい)の性質を持つので、スパッと割れた表面がとてもスムーズ。
鮮やかなガラス光沢を見せるので、原石のままでも綺麗な輝きを見せます。
青色の部分は青い斑点のような模様になっており、まるで海面に浮かんだ水泡のような雰囲気です。たまに緑や赤、茶色などが混ざることもあります。
稀にですが、キャッツアイ効果を見せるものも発見されているようです。
その3 ラリマーの歴史

次にラリマーの歴史についてお話しします。
1916年、ドミニカ共和国のバラホナ州教区の神父が青い鉱物を発見します。
この石を採掘するために、同区域での採掘許可を申請しますが、まだペクトライトという鉱物があまり知られていなかったためか申請は却下されます。
そして1974年。
ミゲル・マンデスと北米のボランティア団体が、バラホナ州の沿海からつながる海岸でラリマーを再発見。
この石に魅了された原住民たちは、石が海からの贈り物だと信じ、「ブルーストーン(青い石)」と呼び称えたそうです。
ラリマーの名前の意味と鉱山の始まり
発見者のミゲル・マンデスは、この石を娘の名前「ラリッサ(Larissa)」と、スペイン語で海という意味の「マール(mar)」を組み合わせた「ラリマー(Larimar)」と名付けました。
ちなみに海外ではラリマーのほかに「ブルー・ペクトライト」「ステフィラ(Stefilla)の石」「ドルフィン(イルカ)の石」「アトランティスの石」などと呼ばれることもあるそうです。
現地の調査によると、ラリマーが見つかった場所は冲積層で、バオルコ川を渡って海に流れ着いたということが分かったそうです。
その後上流にある山地の地層調査が進み、ロス・ツパデリョス鉱山での採掘がスタートしました。
その後カリブ海のような青色をしたラリマーは、ドミニカ共和国の国石に選定されました。
その4 ラリマーのジュエリーはあるの?取り扱い上の注意点は?

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ラリマーは硬度が4.5~5と柔らかめですが、産地のドミニカ共和国をはじめとするカリブの国々で現地のお土産品として販売されていたり、ジュエリー加工されることも多いようです。
シルバーが一般的ですが、クオリティの高いラリマーは、ゴールド製のジュエリーに加工されることもあるそうです。
取り扱い上の注意点
前述もしたとおり、ラリマーは硬度が低く劈開の性質を持つので、衝撃を与えるとヒビが入ったり割れたりする恐れがあります。
ジュエリーとしてつけるときは、ぶつけたり落としたりしないように気を付けてくださいね。
また、他の宝石と触れることで傷が付く心配もあるので個別に保管することをおススメします。
汚れてきたら、柔らかい布で優しく拭き取ってあげるだけで十分です。洗浄機はもちろん洗剤や水で洗うのもNGです。
その5 ラリマーにも偽物はあるの?本物との見分け方とは

現在ラリマーの偽物は驚くほど多く出回っているようです。
模造品の種類を簡単に並べてみると
- ガラス
- プラスチック
- 別の鉱物を染色したもの
- 全く違う宝石
など、うっかり騙されそうな品がホントにいっぱい生産されているそうです。
特に模造品は見た目がそっくりに作られているので、プロの業者でさえもあっさりと騙されて、ラリマーと信じて仕入れてしまうことも多いとか。
本日フリマサイトで購入したというラリマーを鑑定。お客様2人からのご依頼で、2点とも偽物。各々染色クォーツとプラスチックでした。
誰でも販売可能になったことで、宝石の偽物が大量に流入してます。売る側も悪意なく偽物と知らず仕入れて販売。勉強しないと騙されるって絶対間違ってる。 pic.twitter.com/A9alaQkuH0
— リカラット代表|小山慶一郎(RECARAT) (@keiichiro_oyama) December 25, 2018
そこで、現在市場に多く流通している代表的なラリマーの偽物をいくつかご紹介します。
プラスチックを変色したもの

プラスチックを青色に染めた模造品です。本物の色や模様に似せて染めてありますが、プラスチックは指で触れていると温かく感じます。
本物の鉱物は指で触れると冷たく感じるので、手に取ってみたら何となく違いが分かるかもしれません。
ヘモミルファイト

ヘモミルファイトとは、ケイ酸塩鉱物に属する宝石です。
色は無色から青、緑、黄色などと多彩ですが、青色を呈するものはラリマーとそっくりです。
ヘモミルファイトの性質は以下の通りです。
- 硬度が5
- ガラス光沢
- 二方向に割れる「劈開」の性質
- 表面にラリマーと同じような模様を見せる
性質もラリマーに似てますね。
ですが実はヘモミルファイトの市場価格はラリマーよりも高いという、矛盾した事実があります。
ラリマーより高い鉱物をわざわざ偽物として売る、というのも不思議な話ですが、実際にヘモミルファイトは上質なラリマーの偽物として市場に出回っているといいます。
しかしヘモミルファイトは鉱物がほとんどでルースが市場に出回ることは珍しいそうです。
https://twitter.com/keiichiro_oyama/status/1104895829020598272?s=20
その他のラリマーの模造品

上記のほかにも、ガラスやセラミック製、アラゴナイトやクオーツを染色したものなど、ラリマーの偽物が大量に出回っています。
先日、米国のGIAサイトでこんなレポートを発見しました。
インドでラリマーの偽物として購入した、中国製セラミックの鑑別結果を発表したものです。鑑別結果では、白いガス泡と小さな青い斑点が見られ、本物と比べると屈折率がかなり低かったということです。
ラリマーは産地も限られており、そうそう安価で大量に出回る宝石ではありません。
購入前には「価格や色、鑑別書などが怪しくないかどうか」を、しっかり確認してから決めるようにして下さいね。
本物と偽物の見分け方
では、ラリマーが本物か偽物であるかを見分けるにはどうすれば良いのでしょうか?
まずは、宝石の見た目です。
本物のラリマーは不透明な宝石です。石を太陽などの光りにかざすと、光線が石を通過しません。
また色は水色やターコイズ色で白い縞模様が見られるのも特徴の一つですよね。
次に、触った感じです。
本物のラリマーは触れると冷たく感じます。それに比べ、ガラスやプラスチックは触れると温かく感じます。
しかし染色したクオーツやヘモミルファイトは本物の鉱物です。触ってもラリマーと同じように冷たく感じるので、触感で見分けるのは正直困難といえます。
このように、巧妙に作られた模造品が沢山出回っているのも現実で、プロの業者でも見分けることが難しく、販売業者が「ラリマー」だと騙されて仕入れてしまうこともあると聞きます。
もしギモンに感じたら、まずは信頼のおける鑑別機関に相談してみるのが賢明かと思います。
最後に

ラリマーはカリブ海の様な美しい色合いで人気が上昇している宝石です。
その優しいブルーの色合いは見る者の心を癒してくれる力があるようにも感じます。
私の大好きな色をしたラリマー。少しは魅力が伝わりましたでしょうか。
カラッツ編集部 監修