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ゲーサイトとは?ゲーサイトインクオーツや文豪ゲーテとの関係は?

ゲーサイトインアメジスト ルース

画像:ゲーサイトインアメジスト

ゲーサイトって聞いたことありますか?

ゲーサイトインクオーツゲーサイトインアメジストなどをご存知の方もいらっしゃることでしょう。

ゲーサイトはとてもありふれた鉱物なのですが、様々な形で現れてくる不思議な性質をもっています。

それからゲーサイトは、あの有名な文豪ゲーテとも何やら関係があるらしいのです。

私たちのすぐ近くにありながらその実態は謎だらけのゲーサイト。

何だかとても気になってしまうゲーサイトについてお話しましょう。

ゲーサイトとは?

ゲーサイト 原石

ゲーサイト鉄の酸化物・水酸化物です。

いわゆる自然にできた鉄サビのようなものだそうです。

一般的にはブラックですが、微量元素の混入によって様々な色を呈すると考えられています。

鉱物としての基本情報

英名 Goethite  (ゲーサイト)
和名 針鉄鉱(しんてっこう)
分類 水酸化鉱物
結晶系 斜方晶系
化学組成 FeO(OH)
モース硬度 5 – 5.5
比重 3.3 – 4.3
屈折率 2.26 – 2.40
光沢 金剛光沢~金属光沢

特徴

ゲーサイトは、先ほども触れたように自然にできる鉄サビのこと。

地球上のどこでも見られるそうです。

私自身、鉄サビについて深く意識したことは無かったのですが、立派な鉱物だったのですねぇ。

だいたい95%以上が鉄で、最大5%までマンガンに置き換わることがあるそうです。

元々ゲーサイトのような水酸化鉄の塊には統一された名前がなく、様々な名称で呼ばれていたそうです。

19世紀になって全てLimonite(褐鉄鉱)と呼ぶことに統一されたそうですが、20世紀後半になって、それらに構造の違う2種類のタイプがあることが判明。

最も多いものをゲーサイト(針鉄鉱)、次に多いものをレピドクロサイト(鱗鉄鉱:りんてっこう)と呼ぶことになったといわれています。

ゲーサイトレピドクロサイトもクォーツなど他の鉱物のインクルージョンとしてよく見られますね。

水酸化鉄の特徴なのでしょうか。

ゲーサイト単体でカットされて流通することは少なく、宝石として出回る場合は別の鉱物のインクルージョンとして入っているものが多い印象です。

ゲーサイトは、先ほども触れた通り、一般的にはブラックを呈します。

含まれている微量元素の違いで、イエロー、黄褐色、赤褐色、濃褐色などに変化すると考えられています。

ゲーサイトの条痕色黄褐色、オレンジ色、黄赤色などだそうです。

産地

ゲーサイトは世界中で産出されています。

主な産地は、アメリカドイツイギリスフランスロシアオーストラリア南アフリカ共和国北朝鮮などです。

特にイギリスのコーンウォール、フランスのチラック、ロシアのウラル山地などは、良質な結晶標本が採れる場所として有名です。

日本でも埼玉県秩父鉱山群馬県群馬鉄山などで産出されていたそうですよ。

ゲーサイトの原石の形

ゲーサイト

地球上に広く分布しているとてもありふれた鉱物ゲーサイト

その原石の形は、実に様々です。

結晶体の形状は、柱状薄板状鱗片状束状ブドウ状繊維状塊状など。

針状結晶体の放射状集合体縦に条線の走った不透明な黒い柱状や、ベルベットのような表面の集合体などもあるそうです。

塊状の結晶は肝臓状腎臓状鍾乳状などとも言い表されています。

石英の基質に放射状の結晶体がブドウ状に集合し、ベルベットのような光沢を見せる標本や、平行に成長した鍾乳石状の標本もあって、とてもバラエティに富んでいることがわかります。

鉄分の多い砂泥質の堆積岩中で、ゲーサイトが団状となって固まっているものもあります。

それから微細な結晶が鉱物の表面を覆っていたり、水晶などに包合されるものもあって、その多様さは驚くばかりです。

異なる名前をもつゲーサイト

ゲーサイトは、黄鉄鉱磁鉄鉱菱鉄鉱などの酸化帯風化作用によって生成しますが、産出される形状などによって異なる呼び名があります。その一部をご紹介しましょう。

鉱床の上を覆う酸化殻として現れるゲーサイトは「ゴッサン」または「アイアンハット」と呼ばれます。

沼沢地で微生物活動によって沈殿しているゲーサイトの呼び名は「沼鉄鉱」です。

水晶の生成過程にゲーサイトが取り込まれた結果、美しいオレンジ色に発色することがありますが、そのうち美しいものを「タンジェリン・クオーツ」や「マンダリン・クオーツ」と呼びます。

頁岩が直角に交わってできる節理の部分にゲーサイトが四角い立方体に生成され、それが二つに割れたものが「香合石」という愛称で呼ばれ、愛好家に喜ばれています。

マーカサイトの放射状の球昌が、形を変えずにそのままゲーサイトに変化したものもあります。

そして中には虹色に輝くものもあるのをご存知でしょうか。

◆レインボーアイアン

レインボーアイアン

虹色に輝く不思議な魅力をもったゲーサイト、レインボーアイアン(虹の鉄)について少しご紹介しましょう。

レインボーアイアンは、水晶の表面をゲーサイトが覆っているものです。

その上に鱗片状のレピドクロサイトの層が被さって、薄膜干渉を起こすことで虹色に光るのだと考えられています。

薄膜干渉とはゲーサイトと鱗のようなレピドクロサイトとの構造の違いによって生じる現象なのだそうです。

とても不思議で美しいですよね。

ゲーサイトの名前の意味

ゲーサイトという名前の由来は、世界的な偉人文豪ゲーテからなのだそうです!

これには本当にビックリしました。

文豪ゲーテの正式な名前は、ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ(Johann Wolfgang von Goethe)です。

ゲーサイトの綴りはGoethiteなので、両者を比べるとよく分かりますね。

詩人、劇作家、小説家など、ドイツの文豪として有名なゲーテですが、実はもっと多方面で天才的な才能を発揮しており、自然科学者や政治家、法律家としても名を馳せていたのだとか。

地質学にも造詣が深く、鉱物の研究にもとても熱心だったそうですよ。

ゲーサイト正式な学名として名付けられたのは1806年のことといわれています。

ゲーテは1749年に生まれて1832年に生涯を閉じたので、1806年頃はバリバリの現役だったと思われます。

自分の名前が鉱物の学名になるなんて、とても嬉しく誇らしかったでしょうねぇ。

ゲーサイトの歴史・言いつたえ

ゲーサイトが作られる鉄の鉱物は、今でも世界各地で生成され続けているといいます。

現在見られる鉄鉱層は、なんと地球が創生された、遠い遠いはるか昔に形成されたものなのだそうです。

例えばゲーサイトの一種で鉄虎眼石と呼ばれる鉱物の場合は、30億年以上前に海底で形成されたもの。

ゲーサイトは、地球の神秘さが凝縮されている鉱物だったのですね!

地球誕生とともに生成されたゲーサイトですが、前述したとおり、かつては様々な名前で呼ばれており、Limonite(ライモナイト、和名:褐鉄鉱)という名前で統一されることになったのは19世紀になってからのこと。

Limoniteギリシャ語で草地という意味のleimonが由来なのだそうです。

ゲーサイトを主成分とするライモナイトは、土状や団塊状になる事が多いようです。

またゲーサイトは、昔は「まじない能力を高める石」と信じられ崇められていた時代もあったそうですよ。

インクルージョンとしてのゲーサイト

ゲーサイトイントパーズ ルース2

画像:ゲーサイトイントパーズ

ゲーサイトは、トパーズサンストーンロッククリスタル(水晶)やアメジストなどにインクルージョンとして現れることでも知られています。

ゲーサイトインクオーツや、ゲーサイトインアメジストなど、とても有名ですよね。

ゲーサイトインアメジスト ルース

画像:ゲーサイトインアメジスト

ゲーサイトインクオーツはクォーツのインクルージョンとして、ゲーサイトインアメジストはアメジストのインクルージョンとして、針状のゲーサイトが内包されているのです。

インクルージョンとしてのゲーサイトは、細い線がヒョロヒョロと伸びているものが多いそうですよ。

銀杏の葉やカニの足のようなギザギザしたインクルージョンのものは、ゲーサイトではなくレピドクロサイト(鱗鉄鉱)の場合が多いそうです。

同じ水酸化鉄であるゲーサイトとレピドクロサイトですので、見た目だけで区別するのはプロでも難しく、通常、機械を使って成分分析し見分けるのだそうです。

最後に

身近な鉱物なのに謎だらけだったゲーサイトについてご紹介しましたが、いかがでしたか?

ゲーサイト単体で宝石としてカットされて出回ることは少ないようですが、ゲーサイトインクオーツゲーサイトインアメジストなどは流通しており、オンラインショップなどで手に入れることも可能です。

私は今回、はじめてゲーサイトについて知りました。

今後、鉱物などについた自然の鉄サビを見かけたら「文豪ゲーテの名前が由来のゲーサイトだ!」「様々な色や形があるゲーサイトだ!」などと思い出すことになりそうです(笑)

カラッツ編集部 監修

<この記事の主な参考書籍・参考サイト>
『宝石と鉱物の大図鑑 地球が生んだ自然の宝物』
 監修:スミソニアン協会/日本語版監修:諏訪恭一、宮脇律郎/発行:日東書院
『ネイチャーガイド・シリーズ 岩石と鉱物』
 著者:ロナルド・ルイス・ボネウィッツ 訳:伊藤伸子/発行:科学同人
『パワーストーン百科全書』
 著者:八川シズエ/発行:中央アート出版社
◆『岩石と宝石の大図鑑』
 監修:ジェフリー・E・ポスト博士/著者:ロナルド・ルイス・ボネウィッツ 訳:青木正博/発行:誠文堂新光社

▽参考書籍・参考サイト一覧▽