砂岩(サンドストーン)は、紀元前の時代から建築や彫刻の材料として使われてきた歴史の長い鉱物です。
最も一般的な堆積岩として世界中で採取されており、圧倒的な自然の景観を見せることでも知られます。
現代では世界遺産となった建造物などにも多く使用されてきた、砂岩についてご紹介していきます。
目次
砂岩(サンドストーン)とは?
砂岩は堆積岩として最も一般的です。
地殻中にある堆積岩の約1~2割を占めており、世界各地で採取されています。
原石は、風化により粒子化した鉱物、岩石、有機物などが長い年月を経て固まったもので構成されています。
主成分は粒状になった石英、長石、岩片などですが、これら以外の鉱物も含みます。
あらゆる色が存在するといわれ、主に見られるのはブラウン、ピンク、グレー、ホワイト、イエロー、レッドなどです。
堆積のプロセスや環境、歴史などを読み取れるような堆積構造や砂岩層が見られることから、地質を研究する上でも重要な鉱物の一つとされます。
また、その美しい色合いと耐久性から、紀元前の時代から彫刻や建築石材としても多く使用されてきました。
インドやエジプト、ヨルダンには、古代の頃に建てられた歴史的な建築物が世界遺産として残されています。
砂岩(サンドストーン)の種類
砂岩は、岩石組織と構成物質によって幾つかの種類に分けられます。
主なものの中から、3種類について、簡単にご説明しましょう。
オーソコーツァイト(正珪岩/Orthoquartzite)
円磨(コロンと丸くなった)された粒状の石英が、シリカによって固まったもので、約90%~95%が石英の粒子でできているそうです。
色はグレーからホワイト、ブルー、レッドなど様々です。
主に先カンブリア時代のものが多く、安定した大陸で石になった原石が川に流されてきたものと考えられています。
日本では近畿地方とその周辺で発見されています。
地層内には見られませんが、まれに礫として地層に含まれることはあるようです。
アルコーズ(花崗砂岩/Arkose)
砂岩の中でも特に長石に富み、細粒物質はわずかしか含まないものです。
長石を少なくとも25%含んでおり、石英も優位的に含んでいます。
加えて、雲母や酸化鉄、細粒岩片なども含んでいます。
アルコーズは、細かいものから粗いものまで様々な大きさの角ばった粒や亜角の粒で構成されており、見た目はざらざらして粗く、ピンクやレッド味を帯びています。
原石は通常、花崗岩や花崗岩質岩の急速な崩壊に由来し、見た目も花崗岩に似ています。
グレイワッケ(硬砂岩/Graywacke)
長石と石英に富み、細粒物質も多い砂岩の種類です。
粗い角粒になった石英と長石や岩石などが、粘土質を多く含む石基に密集してできたもので、暗い灰色をしています。
通常、海底雪崩によって堆積した土砂や強い濁流が混同土砂の泥状物を生成することで形成されると考えられています。
建築素材としての砂岩
自然の砂岩層は素晴らしい景観を見せるうえ、浸食に強いという性質をもちます。
砂岩とその下の軟らかい地層部分が共に地表に出ている場所では急壁や高原地形、尾根、渓谷などが見られます。
砂岩は堆積岩の中でも特に耐久性が高く、美しい色のものも多いことから、紀元前の時代から建築石材としても長く使われてきました。
その証拠に、紀元前に砂岩を用いて建築した建物が、現在もいくつか残されています。
砂岩(サンドストーン)で出来た遺跡
砂岩で作られた建造物の中には、歴史上重要な位置付けをされているものも多くあります。
例えば、インドのオールドデリーには、17世紀中期に赤い砂岩による「レッドフォート(赤い砦)」(写真)が建設されました。
レッドフォートは、タージマハルを建設したムガル帝国皇帝シャー・ジャハーンの居城で、現在は世界遺産に登録されています。
その他の歴史的に有名な建造物として、2つご紹介しましょう。
エジプト アブシンベル宮殿
エジプト南部、スーダンとの国境近くにあるヌビア遺跡の中に建つ宮殿で、ヌビア遺跡群とともに1979年に世界遺産に登録されました。
紀元前1300年ごろ、古代エジプトの第19王朝ファラオ、ラムセス2世によって建設された神殿で、大神殿と小神殿の2つの神殿から成ります。
大神殿の入り口には、砂岩で作られた高さ20メートルという巨大な4体のラムセス像が鎮座しています。
周囲には王妃や王子のレリーフが建てられ、象形文字なども彫刻されています。
小神殿は、王妃ネフェルタリとの結婚記念25周年を祝い王妃に贈られたもの。
外側にはラムセス2世と王妃の像が6体並んでいます。
アブシンベル宮殿は、1960年代にアスワンハイダムを建設したことにより水没危機にさらされたことがありました。
この時、ユネスコの呼びかけにより世界各国から支援が集まり、大規模な移設工事が行われたといいます。
その後4年もの年月をかけ、神殿は水面より60メートル高い場所へと移動されました。
このアブシンベル宮殿の移設工事をきっかけに世界遺産が創設されたといわれています。
ヨルダン ペトラ
現在のヨルダンの死海とアカバ湾の間の渓谷に存在する、古代都市ペトラの遺跡です。
この遺跡は、映画「インディ・ジョーンズ」の舞台としても知られています。
アラブの一族ナバテア人が砂岩の岩壁を切り開いて建設した古代都市ペトラは、紀元前4世紀から香辛料の貿易が栄えた場所で、エジプトやインド、中国などと交易を行っていました。
106年にローマ人に征服され、7世紀には大部分が放棄されてしまいます。
入り口は絶壁に囲まれ、1Km以上続く通路シクを抜けると、エル・ハズネ(宝物殿)が現れます。
遺跡内には、ローマ式円形劇場、住居として使われていた洞窟、デイル(修道院)などが残されています。
暗いピンク色のサンドストーンで建設されたペトラの遺跡はバラ色の都市とも呼ばれ、1985年にユネスコの世界遺産に登録されました。
最後に
石英などの鉱物が小さな粒子になり、それらが固まって出来たのが砂岩(サンドストーン)です。
長い年月を経て出来た砂岩層は、まさに自然界が作り上げた圧巻的な魅力がありますよね。
アメリカ・アリゾナ州のペインテッド・デザート、ユタ州のキャニオンランズ国立公園では、砂岩の地層による、自然の素晴らしい景観を見ることができますよ。
いつか訪れてこの目で自然に包まれた歴史を感じてみたいです!
カラッツ編集部 監修
<この記事の主な参考書籍・参考サイト>
◆『宝石と鉱物の大図鑑 地球が生んだ自然の宝物』
監修:スミソニアン協会/日本語版監修:諏訪恭一、宮脇律郎/発行:日東書院
◆『ネイチャーガイド・シリーズ 岩石と鉱物』
著者:ロナルド・ルイス・ボネウィッツ 訳:伊藤伸子/発行:科学同人
◆『岩石と宝石の大図鑑』
監修:ジェフリー・E・ポスト博士/著者:ロナルド・ルイス・ボネウィッツ 訳:青木正博/発行:誠文堂新光社 ほか