十字模様を見せるスタウロライト(十字石)とはどんな鉱物?

スタウロライト 原石

スタウロライトという鉱物をご存じでしょうか。

実は私は一目見て、虜になってしまいました。

結晶がクロスして十字模様を見せる石で、十字模様が形として浮かび上がっているのです。

これって、どのようにして生成するのでしょうか・・・?

とても興味深い!

というわけで早速、スタウロライトの特徴名前の意味伝説など、ぜひ知ってほしい情報をまとめてみました!

スタウロライト(十字石)とは?

スタウロライト 原石2

十字模様が浮かび上がって見える、見た目がユニークで可愛いスタウロライト(十字石)。

「妖精の十字架」という愛称をもち、キリスト教国で珍重されてきた歴史もあります。実はとても素敵な伝説をもつ鉱物なのです。

では順番に詳しく見ていきましょう。

鉱物としての基本情報

英名Staurolite(スタウロライト)
和名十字石(じゅうじせき)
分類珪酸塩鉱物
結晶系単斜晶系
化学組成(Fe,Mg,Zn)2Al9(Si,Al)4O22(OH2)
モース硬度7.0-7.5
比重3.65-3.83
屈折率1.74-1.77
光沢ガラス光沢~樹脂光沢

 特徴

スタウロライトの結晶は透明から不透明で、樹脂光沢に近いガラス光沢をしています。

一方向に明瞭に割れる劈開の性質をもち、断口は不平坦状から貝殻状

断面は六角形ひし形で、ほとんどが粗い表面をしているといいます。

本来不透明の鉱物でありながら、多色性が強いという性質をもつことから、角度によって反射光の色が変化して見えることがあるのだそうです。ちょっと面白そうですね!

角度によって、カラーレス、イエロー~レッド、ゴールデンなどの三色が見えるものもあるようです。

 色

褐色、赤褐色、黄褐色、褐黒色など。

産地

主な産地は、アメリカカナダブラジルフランススイスロシアなど。

日本でも富山県愛知県で産出されることがあるそうです。

但し、十字形の結晶がはっきりと浮かび上がっているものは日本では採れないのだそうです、、残念。

この他、イギリス、スコットランド、アイルランド、チェコ、オーストラリア、グリーンランド、マダガスカル、ザンビア、コートジボワールなどでも産出されています。

 名前の意味

スタウロライト(Staurolite)は、特徴的な十字架の形をした双晶をつくることから、ギリシャ語の「Stauros(十字)」と「lithos(石)」を組み合わせた言葉を由来とします。

このほか、十文字や十字架という意味の「Cross」に由来する「クロスストーン(Cross Stone)」や、先にもお伝えした、「妖精の十字架(Fairy Crosses)」といった愛称でも呼ばれています。

スタウロライトの原石の形

スタウロライト 原石3

スタウロライトの原石は、泥質の推積岩が広域変成作用によって生じた結晶片岩片麻岩アルミニウムに豊富な変成岩中に生成されます。

原石はマスコバイト(白雲母)、アルマンディンガーネット(鉄礬柘榴石)、カイヤナイト(藍晶石)などを伴なっていることが多いそうです。

スタウロライトの結晶は、細長い断面(単斜晶系)をした6角による柱状結晶として成長します。

原石は十字状のほか、結晶がX字状に交差したものも見つかっています。

風化しにくいため、母岩が風化した後、十字型だけになって残された結晶が見つかることもあるそうですよ。

さて、注目すべきはここからです!

十字模様が出来る理由

十字模様が出来るヒミツは生成過程にあるといいます。

まず、2本の柱状結晶が変成岩中で成長しています。

その時、2本の結晶が90度や60度の角度でお互いに交差し、ググーンと成長します。

この結果、特徴的なスタウロライトの結晶が出来るという訳です。

このような状態を貫入双晶といい、2つの結晶がお互いに入り交じる(貫入する)ことで双晶を見せるものを指します。

ちなみに、スタウロライトが生成する温度と圧力は限られているのだそうです。

そのため、十字石が見つかることでこの石を含む変成岩の生成条件が推測でき、そういった研究にも役立っているそうですよ。

スタウロライトとキアストライトの違い

キアストライト

画像:キアストライト

スタウロライトの他にも「十字石」や「クロスストーン」と呼ばれる石があることはご存知でしょうか。

キアストライトと呼ばれる宝石です。

スタウロライトとキアストライトとの違い「クロスストーン」と呼ばれる理由などについて少しご紹介しましょう。

キアストライトとは

スタウロライトとキアストライトは全く別の鉱物で、見た目も大きく異なります

キアストライトはアンダリュサイトの一種で、アンダリュサイトの中で十字架模様を見せるものをキアストライトと呼ぶそうです。

特徴的な十字模様(Cross)を見せることから、スタウロライト同様に「クロスストーン」と呼ばれるようになったといわれています。

キアストライトの十字模様は、スタウロライトのように貫入結晶が要因ではなく、アンダリュサイトが内包する炭素によるものと考えられています。

結晶が変成している岩石の中で成長する際、内包する炭素が押し出された結果、十字を描くと考えられています。

内包物による模様であるため、ビーズやカボションカットにすることで現れます。

キアストライト(Chiastolite)という名前は、ギリシャ語の「Chiastos(十字架)」に由来とするといわれています。

但し、こちらはコマーシャルネーム、つまり流通名ですので、鑑別書上の宝石名はアンダリュサイトになります。

 スタウロライトと共生する鉱物

スタウロライトは他の鉱物を伴なって産出されることも多いといいます。

代表的な3つの共生鉱物の特徴についても簡単にご説明しますね。

 アルマンディンガーネット

アルマンディンガーネット 原石

アルマンディンガーネットは、濃いレッドの色合いをもつガーネットです。

ガーネットの中で最も産出量が多く、一般的に知られている種類です。

和名は鉄礬柘榴石

世界中で幅広く産出しており、古くから護符や宝飾品として使用されてきました。

アルマンディンガーネットについて詳しくはコチラの記事で

カイヤナイト

カイヤナイト 原石

カイヤナイトは濃いブルーの色合いが特徴的な宝石で、サファイアと良く似た見た目をしています。

ギリシャ語の「Kyanos(ダークな青色)」から由来し、名付けられたといわれています。

しかし実際はブルーの他、ホワイト、グリーン、グレー、イエロー、ブルーグリーン、ピンク、オレンジなど多彩な色が見つかっています。

結晶は三斜晶系の四角い柱状をしており、断面は平坦。結晶の端からセンターに向けて色が濃くなるという特徴があります。

カイヤナイトは結晶の方向によって硬度が異なる「二硬石」という特徴をもちます。

カイヤナイトについて詳しくはコチラの記事で

マスコバイト

マスコバイト

マスコバイト(白雲母)は、カリウムを主成分とする雲母のひとつです。

雲母グループ中では、2八面体雲母に属しています。

結晶は単斜晶系の板状や偽六角状をしています。

透明で断熱性や電気を通しにくい性質をもつことから、窓材などに用いられることも多いそうですよ。

マスコバイトは和名で「白雲母」と呼ぶように、通常は白色をしています。

この他、クロムを含有して緑色を呈する「クロム白雲母」や、マンガンを含むことでピンク色を発色する「マンガン白雲母」などが見つかっています。

マスコバイトの名前の由来は諸説あり、一つはその昔、「Muscovy glass(モスクワのガラス)」という名前で呼ばれていたものが後にマスコバイト(Muscovite)に変化したというもの。

他には、主要産地であったロシアのウラル地方にあるマスコビー(モスクワ大公国)を由来とするという説もあるようです。

スタウロライトの歴史・言い伝え

スタウロライト 原石4

不思議な十字模様を見せるスタウロライトは、十字架をお守りとするキリスト教国で、護符や宗教的な意味を持つ装飾品として扱われてきました。

中世ヨーロッパではキリスト教の洗礼に用いたほか、十字軍兵士が出征する際にお守りとして身に着けていたそうです。

16世紀のスペインでは、魔よけのお守りになると信じられていたと伝わります。

産地の一つであるアメリカ・バージニア州パトリックの伝説では、妖精たちがキリストの死を悲しんで流した涙が固まり結晶となったものだと伝わっています。

この伝説から「妖精の十字架」の愛称がついたのかもしれませんね。

また、古来には呼吸器の病気マラリアの治療に用いられたこともあったといわれています。

最後に

スタウロライト 原石5

十字形の模様を見せるスタウロライトは、原石のままで美しい姿を楽しめる鉱物です。

通常結晶は不透明ですが、稀に宝石品質の結晶が見つかることがあるといいます。

こういった結晶は、コレクター向けにファセットカットされているそうです。いつか見てみたいですね!

カラッツ編集部 監修

<この記事の主な参考書籍・参考サイト>

『ネイチャーガイド・シリーズ 宝石』
 著者:ロナルド・ルイス・ボネウィッツ 訳:伊藤伸子/発行:科学同人
『ネイチャーガイド・シリーズ 岩石と鉱物』
 著者:ロナルド・ルイス・ボネウィッツ 訳:伊藤伸子/発行:科学同人
『楽しい鉱物図鑑』
 著者:堀秀道/発行:草思社
『パワーストーン百科全書』
◆『鉱物の不思議がわかる本』
 監修:松原聰/発行:成美堂出版 ほか

▽参考書籍・参考サイト一覧▽