一見ロイヤルブルーサファイアと間違いそうな美しい青色をもつ宝石カイヤナイト。
カイヤナイトはサファイアと同様にチタンと鉄により青色を発色すると考えられています。
その見た目から、古来よりサファイアと勘違いされることも多かったのだとか。
しかしサファイアだと信じてカットした途端、ある事実が判明し、職人さん達をビックリさせたのだそうです。
その事実とは一体?カイヤナイトがもつヒミツとは?その謎をこちらで解き明かしてみたいと思います。
目次
カイヤナイトとは

カイヤナイトは、美しい青色が特徴的な宝石です。
モース硬度が4~7.5と比較的低く、特定方向からの衝撃に弱い劈開(へきかい)という性質ももつためカットが困難だといわれています。
冒頭でもお話したとおり、サファイアと見た目が似ていることからサファイアと見間違われることも多かった宝石です。
性質
結晶系 | 三斜晶系 |
化学組成 | アルミニウム珪酸塩 |
硬度 | 4~7.5 |
比重 | 3.68 |
屈折率 | 1.71-1.73 |
複屈折 | 0.017 |
光沢 | ガラス状~真珠状 |
産地
アメリカ合衆国、ブラジル、ネパール、オーストラリア、インド、ケニア、スイス、カナダ、イタリア、フランス、ノルウエー、ロシアなどで産出されてきました。
名前のもつ意味

カイヤナイトは英語で「Kyanite」と綴ります。
名付け親は、ドイツの地質学者ヴィルナーでした。1789年に「Cyanite」と名付けますが、翌年綴りを「K」に訂正しています。
名前の由来となったのは、この石が持つ美しい青色だそうです。
色の一種で、緑味の青色を「Cyan(シアン)」と呼びます。現在も色の種類として使用されている「Cyan(シアン)」は、ギリシャ語でダークな青色という意味を持つ「Kyanos」という言葉から生まれたものでした。
一般的に暗い青色をしたカイヤナイトは、シアン色と同様に「Kyanos」という言葉から由来とするといわれています。
和名でも、その美しい青色を象徴するような「藍晶石」という名前が付けられています。
色

カイヤナイトは、淡い~濃い青色、灰色、白色、緑色のほかに、青緑色、黄色、無色、ピンク、灰黒色、オレンジ色などが見つかっています。
カイヤナイトの原石の形

カイヤナイトの結晶は三斜晶系をしています。
結晶は四角い柱状で、断面は平らです。
結晶の中心にいくほど色が濃くなり、端にいくほど薄くなるという特徴をもっています。
また結晶の中には、刀剣のようにシュッと細長く成長したものもあるそうです。
カイヤナイトのヒミツ

カイヤナイトのヒミツとは、それは結晶の方向によって硬度が異なる「二硬石」と呼ばれる特質をもっていることです。
なぜこのような特質をもつのでしょうか?
それはカイヤナイトは前述したとおり、特定方向に割れやすい劈開(へきかい)と呼ばれる性質をもちますが、その入り方が他の多くの鉱物とは違い少し複雑だからです。
まず、上の写真を見て下さい。結晶が四角い柱状の形をしているのが分かると思います。
この四角い表面の中で、より平らで広い面があるのは分かりますか?
その方向では、柱面に平行して、完全に劈開する性質をもちます。
そしてこの「平行方面」となる面が、硬度4です。
次に広い面と交差した面ですが、こちらは2方向に割れる不完全な劈開があります。
これが「垂直方向」となる面で、硬度が7.5です。
平行方面よりもかなり硬いですね。
このように、それぞれの面によって劈開の方向が異なり、「ふたつの硬度(4と7.5)」をもつことから「二硬石」と呼ばれるのです。
アンダリュサイトとシリマナイトとの関係

画像:左 アンダリュサイト 右 シリマナイト
カイヤナイトの化学組成は、アルミニウム珪酸塩です。
実は、アンダリュサイトとシリマナイトも全く同じ化学組成で生成しており、多形(同質異像)の関係をもつのです。
簡単にいうと、炭素からできている「鉛筆の芯とダイヤモンド」と同じような関係ですね。
3種類の産状は以下の様になります。
アンダリュサイト・・・ペグマタイト
シリマナイト・・・変成岩又はペグマタイト
カイヤナイト・・・変成岩中や変成岩中のペグマタイト
カイヤナイトは、他の2種類と比較すると低温高圧で生成することが特徴的です。
カイヤナイトの種類

カイヤナイト・キャッツアイ
カイヤナイトはへき開の特質を持つことから、繊維状の内包物が平行に並ぶことがあります。
この内包物が綿密に並ぶことで、キャッツアイ効果を見せるものがあります。
繊維状内包物が多いため、輝きには影響が出ますが、その分美しいキャッツアイを楽しむことができます。
バイカラー
緑色のカイヤナイトのほとんどは、青味を帯びているといわれています。
そのため、結晶上で緑と青の2色の違いが見られる「バイカラー」を呈するものもあります。
青味を帯びていない濃い緑色のものがあったらそれは大変珍しいものかもしれません。
マトリクス・カイヤナイト
黒いスタウロライトや赤いガーネットを含んだものです。
別の鉱物を伴うことにより、黒味や赤味を帯びた深い色合いをしています。
カイヤナイトの価値基準
カイヤナイトは、名前の通り青色が特徴的な宝石です。
中でも、鮮やかで深い青色をしたものが上質とされます。
繊維状の白い内包物が多すぎず、透明感に優れたものほど価値も高くなります。
さらにカットが困難なことから、バランス良くカットされたルースも価値があります。
最後に

カイヤナイトは、方向によって硬度が異なることから「二硬石」と呼ばれることが分かりました。
完全なへき開を持ち、柔らかい面があるので、カットが困難な宝石だったのですね。
名前の由来の通り、深いブルーをしたものが代表的です。縁ある素敵なカイヤナイトに出会えますように。
カラッツ編集部 監修