エピドートは落ち着いた緑色が特徴的な鉱物です。
一つの鉱物の名前でもあり、エピドートグループという鉱物グループの総称でもあります。
今回は、エピドートという鉱物、そして鉱物グループについて、その原石の形や色や産地、名前の意味などイロイロ探ってみました!
早速ご紹介してきましょう!
エピドートとは?
エピドート(緑簾石)は1801年に発見された鉱物です。
黄色~緑、または濃褐色などをしており、強い多色性を表します。
冒頭でも少しお話していますが、エピドートとは、「単斜晶系で珪酸塩鉱物」である一つの鉱物のことを指すとともに、似たような性質をもつグループの総称でもあります。
エピドートグループには代表となるエピドートのほか、ゾイサイト(灰簾石)やピーモンタイト(紅簾石)、クリノゾイサイト(斜灰簾石)など10種類以上の鉱物が属しています。
鉱物としての特徴・性質
ではもう少し詳しく鉱物としての「エピドート」についてご説明していきましょう。
まずはその性質からです。
性質
結晶系 | 単斜晶系 |
化学組成 | カルシウム・アルミニウム鉄・水酸・珪酸塩 |
硬度 | 6~7 |
比重 | 3.40 |
屈折率 | 1.73-1.77 |
複屈折 | 0.019-0.045 |
光沢 | ガラス状 |
色
次に色です。
前述したとおり、鉱物エピドートは、主に黄色~緑、または濃褐色を呈する鉱物です。ほかにも、灰色や茶色、黒色に近い発色をするものも見つかっています。
不純物の鉄を多く含むほど、濃い緑色になり、アルミニウムの不純物を多く含めば灰色や褐色になると考えられています。
強い多色性をもつ
エピドートの中で、緑色をしたものは強い多色性をもつといわれています。そのため見る方向によって、黄や緑や茶色など、異なった色を見せます。
またエピドートグループの鉱物の一つ、タウマワイト(トーモアイト)には、アレキサンドライトに似たカラーチェンジ効果を見せるものもあるといいます。
産地
エピドートは、オーストリア、フランス、チェコ、ノルウエー、ロシア、モザンビーク、マダガスカル、タンザニア、ネパール、ミャンマー、中国、日本、アメリカ、メキシコなどで産出されてきました。
エピドートの原石の形
エピドートの原石は結晶の形をしています。
そしてその結晶の形は柱状で、表面には結晶が伸びる方向に平行した条線が見られるといいます。
柱状のそのひとつの結晶の側面が他よりも広いという特徴をもちます。
そのため結晶が横幅に広がることもあり、まるで多くの結晶か固まったかのように、いわば簾(すだれ)のような形に見えるそうです。
塊状や針状、粒状柱状で生成することもあるといわれています。
また、エピドートは、特定方向からの衝撃に弱い性質劈開(へきかい)が完全なため脆く、カットすることが困難だとされる宝石の一つです。
名前の意味
エピドート(Epidote)という名前は、発見された1801年にフランスの鉱物学者ルネ=ジュスト・アユイによって名付けられたといわれています。
横に幅広く成長した結晶が増加したように見えることから、ギリシア語で「増加する」という意味の「epidiosis」に由来しているそうです。
和名は「緑簾石(りょくれんせき)」といい、こちらも広がった結晶の姿が簾(すだれ)のようであることからそう名付けられたといわれています。
エピドートグループの鉱物について
次にエピドートも属するエピドートグループについてお話しましょう。
エピドートグループには、10種類以上もの鉱物が属しています。代表的な鉱物を、色別にご紹介していきますね。
- ピーモンタイト(紅簾石)・・・マンガンを含有し、ピンク色をしています。
- バンデッド・ピーモンタイト・・・ピーモンタイトに赤いしまが現れたものです。
- クリノゾイサイト(斜灰簾石)・・・鉄よりもアルミニウムを多く含み、褐色や灰色をしています。
- ピスタサイト・・・鉄を多く含み、ピスタチオの実に似た緑色をしています。
- アレンダライト・・・ノルウエーのアレンダールで産出されるという、くすんだ緑色をしたものです。
- デルフィナイト・・・フランスで産出されるという、黄緑色のものです。
- タウマワイト(トーモアイト)・・・ミャンマー産で、強い黒味を帯びた緑色をしています。
- ユナカイト・・・火成岩中にある長石を熱水変質させたもので、エピドートを含んだ部分は黄緑色になるそうです。
エピドートインクォーツとは
エピドートインクォーツとは、クォーツ(水晶)の結晶の表面や内部でエピドートの結晶が成長したものです。
サゲニティッククォーツ
水晶の内部にエピドートだけではなく、針状や繊維状となったトルマリンやパイロキシン(輝石)、アンフィボール(角閃石)の結晶を含んでいるものはサゲニティッククォーツと呼ばれます。
緑色や茶色をした繊維状のインクルージョンが水晶の内部に浮かぶため、草が入ったように見えることからこう呼ばれているそうです。
最後に
エピドートの結晶は、横に広がる様に幅広く成長することから、「増える」という意味の名前が付けられたのですね。
一つの鉱物の名前でもあり、エピドートグループという鉱物グループの総称でもあるエピドート。
カットが困難なこともあって、宝石として市場に出回るものは少ないといわれています。
しかし和風な緑色をしたエピドートは、見つめているだけで心が落ち着くような、優しさをもった宝石のような気がします。
いつかこの目で見られる日がきたら嬉しく思います。
カラッツ編集部 監修