緑、青、茶、白・・・クリソコラ(クリソコーラ)には多くの色が混じり合っています。じっと見つめていると、まるで壮大なギャラクシーを眺めているような気分になるのは、私だけでしょうか?
紀元前から人々に愛されていたクリソコラ。生成の仕方によって硬さや色も異なるというユニークな鉱物です。
今回は、クリソコラに伝わる歴史や鉱物の特質から、マラカイトとの関係、さらに偽物についてなどをご紹介していきたいと思います。
目次
クリソコラとは?
クリソコラ(クリソコーラ)は美しい青緑色に縞模様を見せる鉱物で、ターコイズに似ているといわれることも多い石です。
ターコイズ同様に歴史が古く、古代ローマやギリシャではインタリオやカメオなどを施したジュエリーに加工されていたといわれています。
硬度が低くもろいという特質を持つため、カットなどの加工はとても困難とされている宝石です。
鉱物としての基本情報
結晶系 | 単斜晶系 |
化学組成 | 含水銅珪酸塩 |
硬度 | 2-4 |
比重 | 2.8-3.2 |
屈折率 | 1.46-1.57(珪酸の量により変動) |
光沢 | 脂肪~ガラス光沢 |
名前の意味
クリソコラという名前は、紀元前315年にギリシャの哲学者テオフラトスによって名付けられたといわれています。
古代ギリシャ語で金という意味の「chrysos」とつなぐという意味の「kolla」を繋げたものです。
クリソコラの鉱石からは銅が取れますが、溶かした金に加えることで濃い色の合金が出来るといいます。
それを「金が濃厚になった」と思い込んだことから、古代ギリシャではクリソコラ鉱石の銅は「金を増やす」と信じられていたといわれています。
色
クリソコラは一般的に明るめの緑色や青みがかった緑色をしています。
前述したように、表面にはマラカイトに似た縞模様や斑点など、独特の模様を見せるものもあります。
さまざまな色合いや模様をもち種類は豊富ですが、「澄んだ青色」であるほど上質と評価されるそうです。
産地
チリ、ロシア、メキシコ、チェコ、ペルー、イスラエル、イギリス、米国、ザンビア、インドネシアなどから産出されています。
日本でも産出されることがあるそうです。
クリソコラの原石の形
クリソコラの原石は、皮殻状やブドウ状の集合体や鍾乳状で生成するといわれています。
低温で生成するため結晶は非常に小さく、結晶自体が見られることも少ないといいます。
原石は銅鉱床の酸化帯で産出されますが、褐鉄鋼(天然の錆)、赤銅鉱、マラカイトやアズライトなどと共に塊状で産するといわれています。
原石は大まかに分けると、①小さな結晶が集合したもの ②超微粒子が分散しているコロイド(膠質)の2タイプに分類されます。両者を比較すると、②の方が多く産出されているそうです。
クリソコラとマラカイトはどんな関係?
クリソコラは、和名では「珪孔雀石」と呼ばれています。
鉱物に精通している方ならピンとくるかもしれませんが、「孔雀石」とは、マラカイトの和名です。
「珪」が付くか付かないかだけのクリソコラとマラカイトにはどのような関係があるのでしょうか?
それは、クリソコラとマラカイトが共に銅の鉱物であるということからきているようです。
マラカイトは「炭酸塩鉱物」、そしてクリソコラは「珪酸塩鉱物」と、鉱物の組成が「炭酸」と「珪酸」で違うのですが、マラカイトに似た色と模様のあるクリソコラも採れることから、「珪酸塩の孔雀石」ということで「珪孔雀石」と名付けられたのではないかといわれています。
また、この二つの鉱物は共生することも多く、中には混ざりあってできたものもあるそうです。
それは特別な名前で呼ばれるのですが、その話はこの後詳しくお話しますね。
クリソコラの種類
エイラットストーン
紅海に面するイスラエルのリゾート地エイラットで産出されるクリソコラは、土地の名前を由来とする「エイラット・ストーン」と呼ばれています。
この地で採れるクリソコラには、トルコ石やマラカイトが混入していることが特徴的です。
澄んだ美しい青色をしていることから、”エイラットの海の色”という意味も込めて、こう呼ばれるようになったといいます。
エイラットという場所は歴史上、ソロモン王の時代からクリソコラを産出していたといわれています。
そのため、現地の人々には「ソロモン・ストーン」と呼ばれて親しまれているそうです。
イスラエルの国石に選定され、しかも産出量が少ないことから、希少価値が上昇しているといわれている種類です。
ジェムシリカ
岩石が形成された後、岩石にある細かい割れ目に沿って、鉱化ガスや熱水溶液が入り込むことがあります。
その時に、クオーツやカルセドニー、オパールなどの鉱物が入り込む「鉱染」という作用により、透明度が高くなったクリソコラのことを「シリシファイド・クリソコラ」(珪化されたクリソコラ)と呼んでいます。
さらにその中で宝石としての価値が高いと評価されたものを特別に「ジェムシリカ」と呼ぶそうです。
珪酸溶液が自然に浸透したジェムシリカは、もはや普通の弱~いクリソコラではありません。硬度がグンと高まり、メノウのような硬さをもってパワーアップするのです!
透明度や硬度が高く、色も美しいものは宝石としての価値が上がることから、希少価値も高い種類です。
しかしジェムシリカは通称名であって宝石名ではありません。
宝石名としては、状態によって変わり、クリソコラクォーツ、クリソコラカルセドニー、クリソコラアゲートと呼び分けられたりするそうです。
人工処理について
クリソコラは硬度が低くもろいため、そのままカットすると形が崩れてしまいます。これでは、カボションにもできないし、ビーズやジュエリーとしても楽しめませんよね。
美しいクリソコラを身に付けたい!そんな夢を叶えるためには、石を強化する必要があります。
そのため、一般的に合成樹脂などの液体を入れて固めるなどの人工処理を施し、耐久性を高めているといわれています。
クリソコラの偽物について
クリソコラは、判別の難しい偽物が作られているようです。
例えば、クリソコラの小片に合成樹脂を圧着したものや、結晶の粉末を練って固めたものが流通していると聞いたことがあります。
本物か偽物かを区別するのは簡単ではありませんが、色や模様が均一過ぎたり、不自然なものには注意が必要です。
最後に
クリソコラ(クリソコーラ)はもろいため、強化するために樹脂を浸透させるなどの人工処理を施すのが一般的です。
本来もろい宝石だからこそ、クオーツなどが浸透して、天然でも美しい色と硬さを持つ「ジェムシリカ」の希少価値が高くなるのですね。
紀元前から人々に愛されて来た、長い歴史を持つクリソコラ。
小さな宇宙を閉じ込めたような独特の青色は、お守りとしていつも大切に持っていたくなる、そんな宝石です。
カラッツ編集部 監修