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劈開(へきかい)ってどういう意味?

劈開性をもつ宝石

宝石について調べていると、よく目にする劈開(へきかい)という言葉。

鉱物がもつ特定方向に割れやすいという性質を示すもので、耐久性やカットのしやすさなどに影響するもの、と何となくお分かりの方は多いかもしれません。

しかしこの劈開、鉱物によって、その有無だけでなく方向の数強さ割れ方の違いなど、様々です。

少し専門的で難しい内容にはなりますが、鉱物に劈開が現れる理由やその種類、さらに劈開に似た裂開断口についてまとめてみましたので、良かったら一緒に勉強してみて下さいね。

劈開(へきかい)とは

ロードクロサイト 原石

劈開は英語で「Cleavage(クリベージ)」といいます。

結晶は何らかの衝撃が加わることでひび割れて破壊してしまうことがあります。

その時、結晶構造に従って割れることを「劈開(へきかい)」といいます。

劈開は結晶の特定方向に向かって平行にスパッと割れたり薄く剥離したりするものもあるそうです。断面は光沢感のある平面である場合が多いようです。

劈開によって割れた面や劈開の起こりやすい面のことを「劈開面」と呼びます。

劈開面は結晶面に対して平行柱面に平行側面に平行など様々です。

劈開の程度もさまざまで、完全、良好、明瞭、不完全(不明瞭)などに分かれます。

ペタライト 原石

それではなぜ、劈開は起こり形や入り方が異なるのでしょうか?

それは結晶構造と関係するからだそうです。

劈開は、結晶を構成している原子同士の結合力が弱い面に沿って起こると考えられているのです。

結晶構造による特質であるため、劈開面を見ることで石を特定することに役立つということなのですね。

また、鉱物によって、劈開面が2方向、3方向、4方向、6方向など複数あるものもあります。

劈開は、表面に傷がつきやすいかどうかをはかる尺度である、モース硬度とは関係ありません

例えばダイヤモンドは、硬度10と地球上最も硬い宝石といわれますが、完全な劈開を4方向にもつため、特定方向からの衝撃に弱く壊れやすいといわれています。

劈開の区分

タルク 原石
劈開面は、割れ方の容易度によって分類されています。劈開面がスパッと割れてスムーズであるものが「完全」で、最も弱いものが「不明瞭(不完全)」となります。

劈開の区分は表現やその差が定義付けされている訳ではないため、鑑別機関や書籍によって表現が異なる場合もあります。

英語では、「Eminent, Perfect, Distinct, Good, Fair, Imperfect, Poor」などで区分されています。

劈開面の主な区分は、以下の通りです。

極めて完全

劈開を避けるのが困難なほど、容易に起こるものです。劈開面は完璧です。

主な宝石:カルサイトガレナ(方鉛鉱)、ターク(滑石)、マイカ(雲母)など。

完全

劈開に沿って簡単に割れ、その面では均一した滑らかな光沢を反射します。劈開面以外の方向には割れません。

主な宝石:ダイヤモンドトパーズフローライトスファレライトなど。

良好

劈開に沿って割れた面が明らかです。劈開が直角に交わった方向にも割れます。

主な宝石:トリプライトフェルスパーなど。

明瞭

劈開面がありますが、断口や不規則な面を伴なっています。

主な宝石:スフェーンスキャポライトオージャイト(普通輝石)、シェーライト(灰重石)など。

不明瞭

劈開に沿って割れますが、劈開面が規則的やスムーズでなく断口のように見えるものです。

主な宝石:ベニトアイトベリルクォーツルチルなど。

裂開(れっかい)とは

コランダム 原石

次に劈開に似ているとされる性質、裂開についても説明しましょう。

裂開は英語で「Parting(パーティング)」と言います。

劈開の性質をもたない鉱物でも、一定方向に割れる面を見せることがあります。この性質を「裂開(れっかい)」または擬劈開と呼びます。

裂開によって割れた面は「裂開面」といい、劈開面によく似ています。裂開とは文字通り、「結晶が裂けて開く」状態なのです。

裂開は、劈開のように結晶構造によるものではありません

内包物の並び方や双晶が繰り返されてできたものなど、成長過程でできた内部応力などの何らかの影響が加わってできるものと考えられています。

コランダムは結晶によって3つの方向に平行に割れる裂開が見られます。

断口について

オブシディアン

断口は英語で「Fracture(フラクチャー)」といいます。

断口とは、劈開の方向以外に割れた面や内部亀裂のことをいいます。

劈開は一定方向に平面的に割れますが、断口に割れた面は不規則でギザギザしています。

クォーツやオブシディアン、ガラスの割れた表面では、貝殻のような断口を見せるのが特徴的です。

断口には種類があり、平坦・不平坦、針状など見た目や状態を表した言葉で表現されています。

 断口の区分

平坦状(Even)

全体的に平坦ですが、所々にデコボコした部分があります。

不平坦状(Uneven)

断面が完全に不規則で、デコボコした部分が多く見られます。

貝殻状(Conchoidal)

割れた部分が2枚貝の貝殻の内側のような、丸い線を描いたものです。

針状(Hackly)

割れる際に部分的に繊維状になったため、断口面に針のような尖った部分が見られます。

多片状(Sprintery)

板を割った時に現れるような、不規則でさまざまな大きさの突起が見られます。

土状(Earthy)

土の塊が割れたような断口面をしています。

劈開をもつ主な宝石

ガレナ

それでは、劈開の状態別に、代表的な宝石をご紹介したいと思います!

極めて完全:カルサイト

オレンジカルサイト ルース

カルサイトは、3方向に極めて完全な劈開をもつといわれています。

そのため、どんなに小さくても、叩くとマッチ箱をつぶしたような菱形に割れるそうです。

断口は亜貝殻状をしており、脆いです。

またカルサイトは複屈折率が高いため、文字の上に置くと下の文字が二重に見える「ダブリング(二重像現象)」が強く見られることでも有名です。

小学校の理科の実験などで見たことがあるという方もいらっしゃるでしょうか。

完全:ダイヤモンド

ピンクダイヤモンド ルース

ダイヤモンドは、炭素原子の結合が弱い面に衝撃を与えるとスパッと割れる性質をもちます。

結晶は八面体ですが、4方向に向かって完全に割れるといいます。

炭素原子が密集して並ぶ方向には割れないため、カットする場合には劈開面を利用するそうです。

断口は貝殻状や階段状で、不規則な断口面をしています。

 良好:トリプライト

トリプライト ルース

トリプライトは、3つの方向に劈開するという性質をもつことから、ギリシャ語で3を意味する「triplos」に由来して名付けられたといわれる宝石です。

劈開面がはっきりしており、モース硬度が5‐5.5と軟らかく脆いため、宝石としてカットされることは少ないといわれます。

断口は不規則から貝殻状に似た断口面をしています。

ほとんどが不透明で茶色をしているため、透明で鮮やかなオレンジ色の宝石品質は希少です。

明瞭:スフェーン

スフェーン ルース

スフェーンは鉱物チタン石(チタナイト)の宝石名です。

2方向に明瞭に劈開する性質をもちます。

砂鉱床で発見されることはなく、断口は貝殻状に似た断口面をしています。

スフェーンは光の分散率が0.051とダイヤモンドの0.044よりも高いです。そのため、激しい虹色のファイアが大変華やかです。

色は黄色~緑色で、ダイヤモンド光沢を放ちます。

輝きと色の美しい宝石ですが、もろいためジュエリーとして着用する場合には注意が必要です。

 不明瞭:ベニトアイト

ベニトアイト ルース

ベニトアイトの結晶はピラミッド型の劈開を見せますが、劈開面は不明瞭です。

断口に割れる面もあり、貝殻状の断口面をしています。

レッドベリル、ロードクロサイトと共にアメリカの三大希少石と呼ばれており、ダイヤモンドのような強い輝きサファイアに似た濃いブルーが大変魅力的で人気もあります。

最後に

劈開性をもつ宝石たち

劈開の性質はモース硬度とは関係がありませんが、鉱物の靭性に影響します。

硬度が高くない上に劈開の性質をもつ鉱物は脆く、カットや研磨が困難です。

また劈開性の有無や度合いは、鑑別などにおいて鉱物を特定することにも役立っているといいます。

劈開がある宝石をジュエリーとして使用する際には強い衝撃を与えないよう注意が必要ですが、脆さも美しさや儚さのあらわれと思うと、その宝石への愛着が強くなる気がしませんか。

宝石ごとに性質や特徴、ケアすべき点が異なります。だからこそ、正しい知識をもって末永く美しい宝石たちと付き合っていけたら良いですね♪

カラッツ編集部 監修