宝石の王様といわれるダイヤモンド。
ダイヤモンドのカットの種類には、どんなものがあるでしょうか?
どのようにしてダイヤモンドの輝きを最大限に引き出すカットが生み出されたのか?どんな歴史があるのか、早速探ってまいりましょう!
目次
ダイヤモンドにおけるカットの重要性とは?

ダイヤモンドの輝きを決める最大の要素は「カット」にあります。
一般的にダイヤモンドの価値を決めるのは「4C」と呼ばれるカット・カラット・クラリティ・カラーですが、唯一人間の手を加えるのがこの「カット」です。
良いカットはダイヤモンドがもつ美しさを最大限に引き立ててくれます。
より美しく見えるプロポーションであることと、フィニッシュ(仕上げ)の度合いが重要で、それは全てカットの技術にかかっているのです。
そう、つまりダイヤモンドの美しさの決め手にもなるほど、カットは重要なのです。
ダイヤモンドのカットの歴史
ダイヤモンドは紀元前から採取されており、その「類を見ない硬さ」と「特有の輝き」から、神秘的な宝石であると信じられていました。
現在のカットが完成するまでには、長い長い年月がかけられています。その歴史をたどってみましょう♪
紀元前4世紀から
ダイヤモンドが最初に発見されたのは、紀元前4世紀のインドでのこと。
偶然河原で拾われたものだといわれています。
古代インドの人々は、紀元前から研磨技術をもっていたそうです。
面を平らに研磨する技術もありましたが、当時の人々はカボションカットのように、丸みのあるカットを好んでいたといわれています。
14世紀
中世ヨーロッパ時代、インドから伝わってきたダイヤモンドは、硬さだけではなく輝きにも注目されるようになりました。
14世紀の終わりには、パリに研磨職人がいたとの記録も残っており、いろいろなカットが発明されるようになります。
15世紀から16世紀
ヨーロッパ各地にダイヤモンドが広まり、様々なカットが生まれたといわれる時代です。
ダイヤモンドの結晶同士を擦り合わせて研磨する、という方法が発見されたのもこのころだといわれています。
15世紀半ばには「テーブルカット」「ローゼンツカット」、16世紀には面の多い「ローズカット」が登場しました。
17世紀

17世紀に入ると、輸入量が増えたこともあり、更にダイヤモンドが注目されるようになります。
夜会のとき、「ファセット」と呼ばれる研磨面にろうそくの明かりが反射することが追求されるようになり、まず面の多いローズ・カットに人気が集まります。
ルイ14世の宮廷時代のことだといわれています。
初期のローズカットは原石の形に合わせて研磨されていたそうですが、煌めきが増して見える、研磨面の多いカットが好まれるようになり、ローズカットの形も少しずつ変わっていったといいます。
そしてさらに、ダイヤモンドをより輝かせるためにどうすれば良いのか、研磨職人たちが切磋琢磨し試行錯誤を重ねていきます。
その結果、「最初のブリリアントカット」ともいわれる「マゼランカット」が発明されたといわれています。
17世紀末

ベネチアの研磨職人ペルッツィが現在のブリリアントカットの原型ともなる58の研磨面をもつ「オールド・マインカット」を発明しました。
オールドマインカットは、正方形に近い形をしていましたが、後に、このカットを基に円形に発展させた「オールド・ヨーロピアンカット」が完成します。
現在の「ラウンドブリリアントカット」にとても近い形状のカットが誕生したのです。
このオールドヨーロピアンカットの登場で、ダイヤモンドの輝きを決定づける「ブライトネス(白色の反射光)」「ディスパレーション(虹色の反射光)」「シンチレーション(光のきらめき)」を引き出すことができるようになったといいます。
18世紀から19世紀

パビリオンとクラウンをもつ「ブリリアントカット」が登場したのは、18世紀初めのこと。
ダイヤモンドがもつ輝きを存分に発揮するブリリアントカットの誕生はとても画期的なものでした。
18世紀から19世紀にかけて、「オールドクッションシェイプブリリアントカット」が発明され、モダンブリリアントに進化していきます。
20世紀以降

19世紀末に電灯が発明されてからは、ダイヤモンドのカットの開発もますます進み、より理想的なプロポーションの追求が深まりました。
1919年に、数学博士のマルセル・トルコフスキーが、「ダイヤモンドの光学的特性に基づいたブリリアントカットのプロポーション」を発表。現在の一般的なブリリアントカットの基礎となっています。
「ファンシーシェイプ」と呼ばれる円形以外のカットも、20世紀に次々と登場しました。
ダイヤモンドのカットの分類
ダイヤモンドのカットの種類は大きく「ブリリアントカット」「ステップカット」「ミックスドカット」とその他のカットの四つに分けられると思います。
それぞれの大きな特徴を少しご紹介しましょう。
ブリリアントカット

一般的なブリリアントカットは、テーブル、キューレットと、三角とひし形を組み合わせたファセット面で構成されています。
代表的なものは、ラウンドブリリアントカットやプリンセスカットですが、上記構成であれば、どんな形であってもブリリアントカットは存在します。
なので、例えば、クッションシェイプブリリアントカットやハートシェイプブリリアントカットなどもありますね。
ステップカット

ステップカットは、外周に平行な面が階段状につけられたカットです。
「ステップカット」に分類されるのは、エメラルドカット、バゲットカット、スクエアカット、テーパーカットなどです。
ミックスドカット
ミックスドカットは、ブリリアントカットとステップカットを組み合わせたカットです。
上の図をご覧ください。ダイヤモンドを横から見て、外周に当たる部分をガードル、ガードルより上の部分をクラウン、下の部分をパビリオンと呼びます。
ミックスドカットは、クラウン側がブリリアントカット、パビリオン側がステップカットなど、二つを組み合わせた形をしているカットを指します。
逆パターンで、クラウン側がステップカット、パビリオン側がブリリアントカットになっているものもあります。
その他のカット

その他のカットとして主なものは、ローズカット、ブリオレットカットなどです。
これらはパビリオンとクラウンをもたないものが多く、古くから使われ、愛されてきたカットです。
ダイヤモンドのカット、それぞれの特徴

歴史とともに移り変わり、開発されてきたダイヤモンドのカット、少しはお分かり頂けたでしょうか。
では、代表的なカットをいくつか、それぞれの特徴を交えてご紹介してまいりましょう♪
ラウンドブリリアントカット

ラウンドブリリアントカットは、ダイヤモンドの輝きを最大限に発揮できるよう計算されつくし設計されたカットです。
上から侵入した光のすべてが内部で全反射して上部から放たれ、ダイヤモンドの輝きを最大限に際立たせるよう設計されているといいます。
クラウンに32面、パビリオンに24面、そしてテーブル、キューレットと全部で58面をもっています。
(キューレットがない57面のものもあります。)
ダイヤモンドといえば「ラウンドブリリアントカット」ともいえる程、最も人気があり数も多いカットです。
日本で、婚約指輪の定番といえば、ラウンドブリリアントカットではないでしょうか?
ペアシェイプカット

一言でいうと、一方が丸く、一方が尖ったカットです。
一般的に「ペアシェイプ」と呼びますが、縦に長い涙型のものは「ドロップシェイプ」と呼ばれることもあります。
優美なゴージャスさがあり、指輪のほか、イヤリングやネックレスにも適したカットといわれています。
マーキスカット(マーキースカット)

マーキスカットは、ラグビーボールの形や舟形にも見えるカットです。
控えめで優しい光を放ち、独創的な魅力があります。
独特な形から、花びらや植物・動物モチーフのジュエリーを作る際に採用されることも多いカットですね。
オーバルカット
楕円形をしたカットです。
指輪に加工すると、縦の長さを強調して、指を長く見せてくれる効果があります。色石でもポピュラーなカットです。
クッションシェイプ

丸みを帯びた四角形のカットで、ブリリアントカットの先駆けとなったのが、クッションシェイプカットだといわれています。
初期の頃は、なるべく原石の形を残したまま研磨することに重きをおかれていたらしく、少し外形に歪みがあるものも少なくなかったようです。
ハートシェイプ

光を受けるとまばゆい輝きを見せるハートシェイプは、輪郭がハート型をした比較的新しい人気のあるカットです。
原石の形によって、ハートが縦長や横長になることもありますが、「縦横の比率が1:1」のものが最も良いとされているそうです。
愛らしいデザインを好む女性に支持され、結婚指輪に利用されることもあるカットですね。
トリリアントカット/トライアングル

実はダイヤモンド原石の形には様々あり、その中に「マクル」と呼ばれる三角形をした原石があります。
そしてそのマクルの形を活かしてカットを施す場合、その方法は主に2種類だといわれています。
一つは「ブリリアントカット」の「トリリアントカット」。
もうひとつは、「ステップカット」の「トライアングル」です。
スクエアカット
スクエアカットは、縦横が同じ長さの正方形で、ステップカットが採用されています。
輝きはさほど強くなく、シンプルでクラシカルな印象のあるカットです。
プリンセスカット

輝きが少ない「スクエア」をより輝かせるために開発されたのがプリンセスカットです。
四角形でありながらブリリアントカットを採用したプリンセスカットは、原石を有効に使える研磨の効率性にも優れています。
繊細なカットの美しさとネーミングの良さでも、とても人気があるカットです。
エメラルドカット
ステップカットの代表でもある「エメラルドカット」は、エメラルドに多く施されるカットで、四角の角を落とした長方形、または正方形のフォルムをしています。
欠けやすい宝石に負担を掛けないよう生まれたのがエメラルドカットです。
素材の欠点を隠すことが難しいカットといわれるため、逆に昔は大粒で透明度の高いダイヤモンドはその美しさを際立たせるべく、エメラルドカットに施されることも多かったそうです。
バゲットカット

シャープですっきりとした印象のバゲットカットは長方形のステップカットで、小粒の石に施されることが多いカットです。
理由は大粒の石をバゲットカットに研磨すると角が欠けてしまうことが多いためで、大粒の石はエメラルドカットに研磨されることが多いのだそうです。
テーパーカット

「傾く」と言う意味をもつテーパーカットは、細長い台形のフォルムにステップカットを採用したカットです。
並べることで思いがけない美しいラインが生まれます。
ローズカット
平らな底面をもち、中央に向かってバラのつぼみを思わせるドーム型をしているローズカット。
ドーム型になった面は、24の三角形の面を組み合わせて研磨されています。
ローズカットは16世紀から19世紀にかけて流行し、アンティークジュエリーに広く使われています。
発明当時、ろうそくの明かりで幻想的に輝くことが求められたため、ローズカットは社交界や貴族の間で大人気だったといわれています。
ブリオレットカット
ドロップ型で周囲を三角形、または長方形の面で囲んでいるカットで、先端に穴をあけて連結させ、ネックレスやイヤリングとして使われることも多いですね。
長さと膨らみがあり、透明度の高いダイヤモンドが適しているといわれますが、実際ブリオレットカットにするためのダイヤモンドを見つけることは大変困難だそうです。
番外編:アンカットダイヤモンドについて
ダイヤモンドは、発掘されたときの姿かたちのままでも美しいものもあります。
そのため敢えてカットを施さず、美しい原石のままジュエリーにして楽しむ「アンカットダイヤモンド」というものもあります。
奇跡的に美しく生まれたダイヤモンドの魅力を人々に伝えるために登場したスタイルでもあるそうです。
アンカットダイヤモンドのジュエリーは、研磨をほどこしたダイヤモンドとはまた違ったぬくもりや、ナチュラルな力強さを感じることができます。
透明度があり、光沢のある原石が向いているといわれています。
最後に

長い長い年月をかけて進化してきた、ダイヤモンドのカットの種類をご紹介しました。
人類の誕生のはるか昔から地球に息づいていたダイヤモンド。
人の暮らしとともに形を変えてきましたが、ダイヤモンドの美しさやダイヤモンドへの憧れは、太古の昔も現在も変わらないものなのですね。
人々のダイヤモンドへの飽くなき探求が、より美しいカットを生み出したのでしょう。ぜひ、ダイヤモンドのカットにも注目してみてくださいね♪
カラッツ編集部 監修