宝石の王様といわれるダイヤモンド。
しかし原石のままでは強く輝かず、ダイヤモンド特有の、あのまばゆい輝きは人間がカットを施してこそ生まれるものです。
現在ダイヤモンドに施されるカットは幾多とあると聞きますが、カットの違いによって何が変わるのでしょうか。
そして主なカットの種類とそれぞれの特徴とはどのようなものなのか。
詳しくご紹介していきましょう!
目次
ダイヤモンドにおけるカットの重要性とは?
ダイヤモンドの輝きを決める最大の要素は「カット」にあります。
一般的にダイヤモンドの価値を決めるのは「4C」と呼ばれるカット・カラット・クラリティ・カラーですが、唯一人間の手が加わわるのが「カット」です。
良いカットはダイヤモンドがもつ美しさを最大限に引き立ててくれます。
より美しく見えるプロポーションであることとフィニッシュ(仕上げ)の度合いが重要で、それは全てカットの技術にかかっているのです。
ダイヤモンドの美しさの決め手にもなるほど、カットは重要なのです。
ダイヤモンドのカットの歴史
ダイヤモンドは紀元前から採取されており、その「類を見ない硬さ」と「特有の輝き」から、神秘的な宝石であると信じられていました。
ダイヤモンドが発見された地として知られる古代インドでは、紀元前から研磨の技術が発達していたといいます。
当時は主にカボションカットのような丸みのあるカットが好まれていたそうですよ。
その後、ダイヤモンドがヨーロッパなど各地に広がり、文明の発展と時代の移り変わりの中で人々の趣味趣向も変化していきます。
ダイヤモンドをより強く輝かせるための研究が日夜行われ、試行錯誤の末、数多くの新しいカットが生まれました。
▼ダイヤモンドのカットの歴史についてはこちらの記事をご参考ください。
ダイヤモンドのカットの分類
ダイヤモンドのカットの種類は大きく「ブリリアントカット」「ステップカット」「ミックスドカット」とその他のカットの4つに分けられます。
それぞれの大きな特徴を少しご紹介しましょう。
ブリリアントカット
一般的なブリリアントカットは、テーブル、キューレット、三角とひし形を組み合わせたファセット面で構成されています。
代表的なものは、ラウンドブリリアントカットやプリンセスカットですが、上記構成であれば、どんな形であってもブリリアントカットは存在します。
例えば、クッションシェイプブリリアントカットやハートシェイプブリリアントカットなどもありますね。
ステップカット
ステップカットは、外周に平行な面が階段状につけられたカットです。
「ステップカット」に分類されるのは、エメラルドカット、バゲットカット、スクエアカット、テーパーカットなどです。
ミックスドカット
ミックスドカットは、ブリリアントカットとステップカットを組み合わせたカットです。
上の図をご覧ください。
ダイヤモンドを横から見て、外周に当たる部分をガードル、ガードルより上の部分をクラウン、下の部分をパビリオンと呼びます。
ミックスドカットは、クラウン側がブリリアントカット、パビリオン側がステップカットなど、二つを組み合わせた形をしているカットを指します。
逆パターンで、クラウン側がステップカット、パビリオン側がブリリアントカットになっているものもあります。
その他のカット
その他のカットとして主なものは、ローズカット、ブリオレットカットなどです。
これらはパビリオンとクラウンをもたないものが多く、古くから使われ、愛されてきたカットです。
ダイヤモンドのカット、それぞれの特徴
歴史とともに移り変わり、開発されてきたダイヤモンドのカット。
次に、代表的なカットをいくつか、それぞれの特徴も交えてご紹介してまいりましょう。
ラウンドブリリアントカット
ラウンドブリリアントカットは、ダイヤモンドの輝きを最大限に発揮できるよう計算されつくし設計されたカットです。
上から侵入した光のすべてが内部で全反射して上部から放たれ、ダイヤモンドの輝きを最大限に際立たせるよう設計されているといいます。
クラウンに32面、パビリオンに24面、そしてテーブル、キューレットと全部で58面をもっています。
(キューレットがない57面のものもあります。)
ダイヤモンドといえば「ラウンドブリリアントカット」ともいえる程、最も人気があり数も多いカットです。
日本では婚約指輪の定番カットとしても知られていますね。
▼ラウンドブリリアントカットダイヤモンドについて詳しくは、こちらの記事を参考に。
ペアシェイプカット
一方が丸く、一方が尖った形をしたカットです。
一般的に「ペアシェイプ」と呼びますが、縦に長い涙型のものは「ドロップシェイプ」と呼ばれることもあります。
優美なゴージャスさがあり、指輪のほか、イヤリングやネックレスにも適したカットといわれています。
▼ペアシェイプカットダイヤモンドについて詳しくは、こちらの記事を参考に。
マーキスカット(マーキースカット)
マーキスカットは、ラグビーボールの形や舟形にも見えるカットです。
控えめで優しい光を放ち、独創的な魅力があります。
独特な形から、花びらや植物・動物モチーフのジュエリーを作る際に採用されることも多いカットですね。
▼マーキースカットダイヤモンドについて詳しくは、こちらの記事を参考に。
オーバルカット
楕円形をしたカットです。
指輪に加工すると、縦の長さを強調して、指を長く見せてくれる効果があります。色石でもポピュラーなカットです。
クッションシェイプ
丸みを帯びた四角形のカットで、ブリリアントカットの先駆けとなったのが、クッションシェイプカットだといわれています。
初期の頃は、なるべく原石の形を残したまま研磨することに重きをおかれていたらしく、少し外形に歪みがあるものも少なくなかったようです。
ハートシェイプ
ハートシェイプは、輪郭がハート型をした比較的新しいカットです。
原石の形によって、ハートが縦長や横長になることもありますが、「縦横の比率が1:1」のものが最も良いとされているそうです。
愛らしいデザインを好む女性に支持され、婚約指輪などに利用されることもあるカットですね。
▼ハートシェイプカットダイヤモンドについて詳しくは、こちらの記事を参考に。
トリリアントカット/トライアングル
ダイヤモンド原石の形には様々あり、「マクル」と呼ばれる三角形をした原石もあります。
マクルの形を活かしてカットを施す場合、選ばれることが多いのが「ブリリアントカット」の「トリリアントカット」と「ステップカット」の「トライアングル」です。
スクエアカット
スクエアカットは、縦横が同じ長さの正方形で、ステップカットが採用されています。
輝きはさほど強くなく、シンプルでクラシカルな印象のあるカットです。
プリンセスカット
輝きが少ない「スクエア」をより輝かせるために開発されたのがプリンセスカットです。
四角形の外形に、一部特殊な配列が施されたブリリアントカットで構成されています。
原石を有効活用しやすいカットとしても知られ、市場で見かけることも多いですね。
美しさとネーミングの良さでも人気があるカットです。
▼プリンセスカットダイヤモンドについて詳しくは、こちらの記事を参考に。
エメラルドカット
ステップカットの代表でもある「エメラルドカット」は、四角の角を落とした長方形、または正方形のフォルムをしています。
元々エメラルドに施されていたカットで、六角柱で生成し、内部にキズなどが多いことから欠けやすいとされるコロンビア産のエメラルドの負担を最小限にするカットとして考案されたのが始まりといわれています。
素材の欠点を隠すことが難しいカットであることから、昔は大粒で透明度の高いダイヤモンドこそ、その美しさを際立たせるべく、エメラルドカットに施されることも多かったといわれます。
▼エメラルドカットダイヤモンドについて詳しくは、こちらの記事を参考に。
バゲットカット
シャープですっきりとした印象のバゲットカットは長方形のステップカットで、小粒の石に施されることが多いカットです。
理由は大粒の石をバゲットカットに研磨すると角が欠けてしまうことが多いためで、大粒の石はエメラルドカットに研磨されることが多いのだそうです。
▼バゲットカットダイヤモンドについて詳しくは、こちらの記事を参考に。
テーパーカット
「傾く」と言う意味をもつテーパーカットは、細長い台形のフォルムにステップカットを採用したカットです。
並べることで思いがけない美しいラインが生まれます。
ローズカット
平らな底面をもち、中央に向かってバラのつぼみを思わせるドーム型をしているローズカット。
ドーム型になった面は、24の三角形の面を組み合わせて研磨されています。
ローズカットは16世紀から19世紀にかけて流行したといわれ、アンティークジュエリーの中にも多く見られます。
発明当時、ろうそくの明かりで幻想的に輝くことが求められたため、ローズカットは社交界や貴族の間で大人気だったといわれています。
▼ローズカットダイヤモンドについて詳しくは、こちらの記事を参考に。
ブリオレットカット
ドロップ型で周囲を三角形、または長方形の面で囲んでいるカットで、先端に穴をあけて連結させ、ネックレスやイヤリングとして使われることも多いです。
長さと膨らみがあり、透明度の高いダイヤモンドが適しているといわれますが、実際ブリオレットカットにするためのダイヤモンドを見つけることは大変困難だそうです。
番外編:アンカットダイヤモンドについて
ダイヤモンドは、発掘されたときの姿かたちのままでも美しいものもあります。
そのため敢えてカットを施さず、美しい原石のままジュエリーにして楽しむ「アンカットダイヤモンド」というものもあります。
奇跡的に美しく生まれたダイヤモンドの魅力を人々に伝えるために登場したスタイルでもあるそうです。
アンカットダイヤモンドのジュエリーは、研磨をほどこしたダイヤモンドとはまた違ったぬくもりや、ナチュラルな力強さを感じることができます。
透明度があり、光沢のある原石が向いているといわれています。
▼アンカットダイヤモンド(ダイヤモンド原石)について詳しくは、こちらの記事を参考に。
最後に
長い長い年月をかけて進化してきた、ダイヤモンドのカットの種類をご紹介しました。
人類の誕生のはるか昔から地球に息づいていたダイヤモンド。
人の暮らしとともに形を変えてきましたが、ダイヤモンドの美しさやダイヤモンドへの憧れは、太古の昔も現在も変わらないものなのですね。
人々のダイヤモンドへの飽くなき探求が、より美しいカットを生み出したのでしょう。ぜひ、ダイヤモンドのカットにも注目してみてくださいね♪
カラッツ編集部 監修