かつて賢者の石と呼ばれた辰砂(シンシャ)とは?毒性があるって本当?

辰砂 シンシャ 原石 結晶

辰砂(シンシャ)というと、まず「宝石の国」に登場するキャラクターとしてご存知の方も多いのではないでしょうか。

しかし辰砂は、古来から絵の具として使用されてきたり、賢者の石として珍重されたりと歴史のある鉱物でもあります。強い毒性をもつことも有名ですよね。

かつては日本でも採掘された辰砂とは、どんな宝石なのでしょうか。

こちらでは、色々奥が深い鉱物辰砂について、お話していきたいと思います。

辰砂(シンシャ)とは?

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辰砂は硫化鉱物で、水銀の主要な鉱石としても知られています。

採掘されてきた歴史は大変古く水銀の原料や赤色顔料として古来から用いられてきました。

不老長寿の霊薬として、中国漢方では鎮静や不眠症に効く「丹砂」として、現在も使用されています。

鉱物としての基本情報

英名Cinnabar
和名辰砂(シンシャ)
分類硫化鉱物
結晶系三方晶系/六方晶系
化学組成HgS
硬度2.0-2.5
比重8.0-8.9
屈折率2.90-3.26
光沢金剛光沢

特徴

辰砂は鮮やかな赤色をした鉱物です。

古来から朱の顔料として使用されており、空気に触れても変色しませんが、光に当たると黒っぽく変色するという特徴をもちます。

英語名はCinnabar(シンナバー)といい、「竜の血」という意味をもつペルシャ語の「zinjirfrah」アラビア語の「zinjafr」を由来といます。

辰砂は合金アマルガムを形成するためにも使用されました。

主な色は赤色ですが、色相は鮮赤色、朱赤色、褐赤色とさまざまです。

ほかにも、褐色黒色灰色のものが見つかっています。

産地

辰砂は、紀元前2000年頃にはスペインのアルマーデンで採掘されていたといわれている歴史の古い鉱物です。

この地域では、現在も辰砂の産出が続いているといわれています。

なお、世界最大の産地は、中国の辰州(現在の湖南省)や貴州省にある鉱床だそうです。

日本でもかつて、伊勢国(三重県)と大和(奈良)、水井町(徳島県)で主に産出されていたといわれています(現在は閉山しています)。

ほかにも、ペルー、スロベニア、ウズベキスタン、イタリア、米国カリフォルニア州などで産出されるそうです。

辰砂(シンシャ)原石の形

辰砂 シンシャ 原石
前述したとおり、辰砂(シンシャ)は硫化鉱物です。

原石は粒状が集まったものや塊状で産出されるといわれています。

結晶は三方晶系や六方晶系で、板状柱状をしているそうです。

黄鉄鉱、白鉄鉱、輝安鉱などを伴って産出されることも多く、火成岩や変成マンガン鉱床中に生成されるといわれています。

温泉沈殿物として産出されることもあるそうです。

辰砂(シンシャ)の歴史

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前述したとおり、辰砂の歴史は大変古く、紀元前2000年頃にはスペインのアルマーデン鉱山で採掘されていたと伝わります。

赤色をした辰砂は、朱(赤い絵の具)として使用されてきており、古代メキシコのオルメック人や、古代ペルーの銀細工師たちに大切に扱われてきたそうです。

中国でも古くから産出されており、辰州(現在の湖南省近辺)で大量に産出されたことから「辰砂」と呼ばれるようになったといわれています。

かつての中国では、不老長寿の霊薬を作る錬丹術で、辰砂を原料にする丹薬を作っていたといいます。

自然水銀を有する辰砂ですが、中国インドヨーロッパでは、不老長寿の霊薬として飲んだり皮膚にこすりつけていたそうです。

日本では、弥生時代から産出されていたといい、三重県の伊勢国や奈良の大和水銀鉱山で盛んでした。

「賢者の石」と呼ばれる理由

錬金術師の手紙

「賢者の石」と聞いて私がまず思い出したのはハリー・ポッターですが、皆さんはいかがですか。

賢者の石はアニメなどの中にも数多く登場していますよね。

賢者の石とは何なのでしょうか?

中世ヨーロッパでは、銅や鉛などの卑金属を、金や銀などの貴金属に変えることのできる石を、「賢者の石(Philosophers’ Stone)」と呼んでいたそうです。

当時の錬金術師は、水銀を触媒とすることで、賢者の石が出来ると信じていたのだとか。

そして、辰砂は水銀と硫黄を化合した鉱物であることから、賢者の石と呼ばれるようになったといわれています。

賢者の石といわれた辰砂は、飲んだ人を不老不死にする霊薬ともされ、永遠の命を与えると信じられていたそうです。

辰砂(シンシャ)がもつ毒性について

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辰砂は硫化水銀から生成した鉱物で、強い毒性をもつ鉱物です。

19世紀~20世紀にかけては、辰砂から得られる水銀を鉱山業に利用したため、大きな水銀汚染が起こったと考えられています。

その方法とは、以下の様な物でした。

  1. 辰砂を加熱して生じた水銀蒸気を冷却して、水銀を得ます。
  2. 水銀に多くの金属を溶かしこませて、「アマルガム」という合金を作り上げます。
  3. アマルガムを加熱して水銀を蒸発させ、溶かし込んだ金属のみを得て精錬します。

そう、辰砂を加熱することで、水銀蒸気を生じさせる方法です。

しかし水銀蒸気を吸い込むと、感覚障害などを引き起こし、死に至るほどの恐ろしい症状が現れます。

水銀は大量摂取すると水銀中毒を引き起こします。

かつてインドや中国では、辰砂を不老不死になる「賢者の石」として服用していたため、大量摂取した中国皇帝が長生きできなかったという皮肉な実話も伝わっているほどなのです。

宝石としての価値

辰砂 シンシャ 彫刻品

辰砂は、古来から顔料や水銀の材料などに使用されてきました。

ジュエリーや観賞用のルースとしてカット・研磨されることは殆どなく、石印材や彫刻といった装飾品などに使われています

最後に

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辰砂は硫化鉱物の中で最も歴史が長いといわれ、古来から人々に絵の具や顔料として利用されてきた宝石です。

硫化水銀を成分とするため、地球上で最も毒性の強い鉱物としても知られています。

英語の「Mine(鉱山)」「 Mineral(鉱物)」の語源は、水銀鉱山という意味のラテン語「Miniaria」を由来とするそうです。水銀がいかに古くから採掘されていたか、ということを証明するかのようですよね。

カラッツ編集部 監修