3つのレアアースを主成分とする珍しい宝石、バストネサイト。
かなりのレアストーンとして知られていて、コレクター垂涎の宝石です。
中にはカラーチェンジするものもあるそうです!
バストネサイトという名前の意味も、ちょっと気になります。
という訳で、バストネサイトの特徴、名前の意味、原石の形、価値基準、お手入れ方法など色々調べてみました。
それでは、バストネサイトの世界を覗いてみましょう。
目次
バストネサイトとは?
バストネサイトはとても珍しくレアな宝石です。
主成分は、セリウムやランタン、イットリウムなど3種類のレアアース。
レアアースは希土類元素とも呼ばれていて、レアメタルの一種なのです。
レアメタルは現在の産業に無くてはならない貴重なもの。
そんな希少金属が成分のバストネサイトについて知るために、もう少し掘り下げて見てみましょう。
鉱物としての基本情報
バストネサイトの鉱物としての基本情報は次の通りです。
英名 | Bastnäsite、Bastnasite(バストネサイト) |
和名 | バストネス石 |
鉱物名 | バストネサイト |
分類 | 炭酸塩-フッ化鉱物 |
結晶系 | 六方晶系 |
化学組成 | CeC03F、LaC03F、YC03F |
モース硬度 | 4.0 – 5 |
比重 | 5.12 |
屈折率 | 1.72 – 1.82 |
光沢 | ガラス性~油膜性光沢 |
セリウムなどのレアアースを主成分として含むと前述しましたが、3種類が全て一つに含まれる訳ではなく、それぞれを主成分とした3種類に分かれます。
上記表で化学組成が3つあるのもそのためで、
●CeCo3F➾セリウムを主成分とするセリウム・バストネサイト
●LaCo3F➾ランタンを主成分とするランタン・バストネサイト
●YCo3F➾イットリウムを主成分とするイットリウム・バストネサイト
となります。
硬度が低めなので、ジュエリーにセットするのは技術がいるかもしれないですね。
バストネサイトの特徴
バストネサイトは、前述の通り主成分の違いから、セリウム・バストネサイト、ランタン・バストネサイト、イットリウム・バストネサイトの3つのグループに分かれます。
最も多いのは、セリウムを主体とするものだそうです。
セリウム自体、レアアースの中では最も多く存在しており、研磨剤など様々な用途で私たちの生活を支えてくれています。
ランタンやイットリウムも、貴重なレアアースとして様々な形で活用されているのですよ。
もうひとつ、バストネサイトの宝石学的特徴として、複屈折率が高いためダブリングが見られるという点があります。
ダブリングとは、図形や文字などが書いてある紙の上に宝石を置くと、それらが2重に見えるという現象です。
カルサイト(上の画像)が特にダブリングが強いことで有名ですね!
ダブリングがあると、宝石のインクルージョンなども二重に見えたりします。
ダブリングの強い宝石は、その性質が故に写真を撮った時にファセット稜線がぶれてピンボケしているように見えることが多いです。
色々試してみると面白いかもしれません。
バストネサイトの色
バストネサイトの色はグリーンを帯びたイエロー、オレンジ、暗褐色などです。
蝋やハチミツのような黄色や赤褐色などと言い表されることもあります。
確かに蝋のような滑らかさと、ハチミツのようなとろみを感じさせる色調ですよね。
べっこう飴にも似た感じで、口に入れたら甘みを感じそうで食べたくなってしまいます!
赤みがかったオレンジ色のバストネサイトは秋の紅葉のような趣のある華やかさがあり、グリーンがかったイエローも落ち着いた色味で明るく柔らかい印象を与えます。
バストネサイトの色はセリウムが関係しているのではないかといわれていますが、まだ正確に分かっていないのだそうですよ。
バストネサイトの産地
バストネサイトの主な産地は、カナダ、パキスタン、ギリシャ、トルコなどです。
多くのバストネサイトが半透明から不透明なのだそうですよ。
宝石品質で透明度の高いバストネサイトが産出されることで有名なのは、パキスタンのようです。
他にはスウェーデン、中国、アメリカなどでも産出されます。
世界各地で産出される印象がありますが、希少石として扱われるのは宝石品質のものが少ないから、なのだそうです。
バストネサイトの原石の形
バストネサイトの結晶は六方晶系です。
六角柱のような形で、結晶の形として一般的に多いとされる形ではないでしょうか。
卓状や粒状、塊状での産出もあるそうです。
ペグマタイトに隣接したアルカリ花崗岩や閃長石、貫入炭酸塩岩、接触変成岩鉱床などから産出されるとのこと。
バストネサイトは主に熱水性なのですが、火成作用の初期段階で生成されることもあるといわれています。
レントゲン石、シンチサイト、パリサイト、棍棒石などと群生することもあるそうですよ。
名前の意味
バストネサイトというの名前には、どのような意味があるのでしょうか。
それは、バストネサイトが最初に発見された地名からきているそうです。
バストネサイトはスウェーデンの科学者Wilhelm Hisinger氏によって、1838年にスウェーデンのバストネス鉱山で発見されたといわれています。
バストネス鉱山で発見されたためバストネサイトになったということですね。
鉱物や宝石の名前は発見者や地名から名付けられることも多いですが、名付けの優先権は誰がもっているのでしょうか。素朴な疑問です。。
もしも私が発見し、名付けの優先権をもっていたら迷わず自分の名前を付けてしまいそうです・・
バストネサイトのカラーチェンジ効果について
バストネサイトの中にはカラーチェンジ効果をもつものもあるといいます。
アレキサンドライトを代表とするカラーチェンジ効果をもつ宝石は、蛍光灯(もしくは自然光)と白熱灯との間で色が変わることが多いとされますが、バストネサイトはちょっと違うそう。
バストネサイトは、蛍光灯とその他の光(太陽光や白熱灯)との間で色が変わることが多いそうなのですよ。
蛍光灯(特に昼光色)の下ではグリーンが強く現れるバストネサイトは、太陽光や白熱灯の下では鮮やかなオレンジ色に変化するのです。
イエローやイエローグリーンから、レッドやオレンジに変化するなんて、けっこう劇的なカラーチェンジではないでしょうか。
カラーチェンジ効果をもつバストネサイトのうち、濃い褐色のものは暗さが目立ってしまい色の変化があまり感じられないそうです。
淡い色のバストネサイトの方が、カラーチェンジ効果が大きいのだそうですよ。
バストネサイトの価値基準と市場価格
とても稀少なバストネサイトは、そもそも流通しているのでしょうか。
もし市場に出ているとしたら、どれくらいの値段がついているのか、どこで購入できるのか、気になってしまいますよね。
バネストサイトの価値基準、市場価格、購入できる場所などをまとめてみました。
価値基準
バストネサイトの価値には、どのような基準があるのでしょうか。
まず、色が濃くて鮮やかなこと。
カラーチェンジ効果のあるバストネサイトであれば、カラーチェンジが分かりやすい方が価値が上がります。
次に、透明度が高いこと。
あまりにインクルージョンが多いと輝きが鈍ってしまいます。
インクルージョンもチャームポイントとして捉えることもありますが、価値という点では透明度が高い方が高い価値が付けられます。
そして、カラットが大きくてカットが美しいもの程評価が上がります。
市場価格
バストネサイトはめったに出会うことができないレアストーンです。
産出量がとても少ない上に、宝石品質のものはかなり稀少です。
美しい色で透明度の高い良質のバストネサイトでしたら、1ctあたり数万円位することもあるそうですよ。
稀少価値の高いものは、やはり価格も高くなりますね。
とにかくバストネサイトはコレクターの心をくすぐる宝石であることは間違いありませんね。
どこで買える?
バストネサイトは、どこで買えるのでしょうか。
とてもレアな宝石なので、あまり多く市場に出回っている印象はありません。
ミネラルショーでは見かけることもあるようですよ。
各地でミネラルショーが開催されているので、私も行ってみたいな~と思っています。
それからレアストーンの取り扱いが多いオンラインショップを見てみると、バストネサイトのルースを販売をしていることもありました。
バストネサイトは出会うのがちょっと難しいという印象なので、見つけることができたらラッキーかもしれません!
最後に
バストネサイトは、現代社会の産業に欠かせないレアアースが成分の宝石だということがわかりました。
とても希少な鉱物であり、宝石品質となるとさらにレア度がアップします。
モース硬度が低いので、取り扱いに注意しましょうね。
私は今回バストネサイトについて調べるうちに、カラーチェンジ効果のあるバストネサイトが欲しいなぁ、と思ってしまいました。
イエローグリーンからオレンジ色に変化する様子をぜひ見てみたいです。
いつか素敵なバストネサイトに出会えるといいなぁ~と願っています。
カラッツ編集部 監修
<この記事の主な参考書籍・参考サイト>
◆『美しい鉱物と宝石の事典』
著者:キンバリー・テイト 訳:松田和也/発行:創元社 ほか