恐らく一番良く知られている宝石であろう「ダイヤモンド」。
「ダイヤモンドは炭素でできている」という事をご存じの方も多いでしょう。
しかし、実は炭素以外の不純物が混ざっていることがほとんどなのです。
その不純物の有無・種類などによってダイヤモンドは4つのタイプに分類されます。
ダイヤモンドのタイプとその違い、そして見分け方などについて、わかりやすくご紹介していきたいと思います!
ダイヤモンドには4つのタイプがある
ダイヤモンドは、タイプⅠa、 タイプⅠb、 タイプⅡa、タイプⅡbという4つのタイプに分類されます。
ダイヤモンドを構成する主な元素は「炭素(C)」です。
言い換えれば、ダイヤモンドは炭素の結晶体です。
基本的には単一の元素の炭素が並んだ結晶構造をもちますが、ほとんどのダイヤモンドに窒素(N)、そしてごく稀ですがホウ素(B)といった他の元素(不純物)が含まれています。
この不純物の種類や量、どういった形態でダイヤモンドの中にあるのか、などによって4つのタイプに分けられているのです。
そしてダイヤモンドの色もこのタイプによって決まると考えられています。
では、4つの分類についてもっと詳しく追っていきましょう。
Ⅰ型:窒素を含むダイヤモンド
タイプⅠ(Ⅰa、Ⅰb)のダイヤモンドは窒素(N)を含みます。
窒素の含まれ方によって、Ⅰa, Ⅰbに分類されます。
Ⅰa型
実はほとんどのダイヤモンドはタイプⅠaです。
具体的な割合としては、採掘されるダイヤモンドの95~98%がタイプⅠaに属しているといわれています。
不純物である窒素は、2コ1組、またはそれ以上の集合体の形態でダイヤモンドに含まれていると考えられています。
そしてタイプⅠaは現状のところ、人工的に作り出す事ができないといわれています。
そのため、タイプⅠa=天然ダイヤモンドと確定されるのです。
タイプⅠaダイヤモンドの色はほとんどが無色から黄色ですが、アーガイル産のピンクダイヤモンド、グリーンダイヤモンドもこのタイプに属します。
Ⅰb型
天然のタイプⅠbはレアです。
タイプⅠaと異なり、不純物である窒素は単独で含まれています。
また、タイプIbのダイヤモンドは濃いイエロー、茶がかったイエロー、オレンジがかったイエローなどがあります。
鮮やかで濃いイエロー系がこのタイプの特徴だといわれています。
ジュエリーブランド「ティファニー」が誇る、鮮やかで美しい「カナリーイエローダイヤモンド」をご存知ですか?
歌声の美しい鳥「カナリヤ」の鮮やかなイエローをイメージして名付けられたそうですが、イエローダイヤモンドの最高ランクとされているものです。
その「カナリーイエローダイヤモンド」もタイプⅠbに属しているといわれていますね。
天然ではレアだといわれるタイプⅠbのダイヤモンドですが、実は人工的に作ることはできるそうで、ほとんどのHPHT合成ダイヤモンドがタイプⅠbに属するといわれています。
II型:窒素を含まないダイヤモンド
タイプⅡに分類されるダイヤモンド(Ⅱa、Ⅱb)はまったく、もしくはほとんど窒素を含みません。
天然ダイヤモンドでタイプⅡはわずか1%足らずといわれている程、とても稀少な存在です。
ではⅡaとⅡbについて詳しく追っていきましょう。
Ⅱa型
天然ダイヤモンドにはほとんど無いタイプです。
しかし、CVD(化学蒸着)とHPHT(高温高圧)という技術で人工的に合成Ⅱaダイヤモンドが作られています。
ダイヤモンドのブランドとして世界的に有名なあの「デビアス」の合成ダイヤモンドはこのタイプです。
不純物である窒素が含まれていないダイヤモンドがタイプⅡaです。
つまりほとんど炭素の純粋な結晶体でできたダイヤモンドです。
色は無色やグレー、ブラウンなどである事が多いといわれています、ピンクダイヤモンド(アーガイル産以外)もこのタイプに分類されています。
世界最大といわれている天然ダイヤモンド「カリナンダイヤモンド」をご存じでしょうか?
南アフリカで採掘された、3106ct(カラット)※というとてつもない大きさのダイヤモンドですが、これもタイプⅡaに属しているそうです。
※現在、カリナンダイヤモンドは切断され、9つのダイヤモンドに分けられています。
Ⅱb型
天然ダイヤモンドにはほとんど見られないタイプだといわれます。
タイプⅡaよりも更に非常にレアな存在なのだそうです。
HPHT合成、CVD合成でタイプⅡbダイヤモンドを人工的に作る事も可能だそうですが、これも稀少です。
窒素はほとんど、あるいは全く存在せず、ホウ素(B)が含まれています。
ダイヤモンドの色はブルーになります。
天然ファンシーブルーダイヤモンドがこのタイプⅡbに属しています。
他の3つのタイプは絶縁体ですが、タイプⅡbダイヤモンドは半導体です。
どうやって見分けるの?
宝石鑑定機関では、FTIR(フーリエ変換赤外)という機械を使って、ダイヤモンドのタイプがⅠなのかⅡなのかを分類することが可能です。
赤外線をダイヤモンドに当て、どんな構造なのかを分析する非常に高価な機械です。
この機械を使えば容易にタイプⅠかⅡかを分類する事は可能ですが、訓練された宝石鑑定士によって、顕微鏡やスペクトロスコープ、UV(紫外線)ランプなどでさらに細かく分類する事も可能です。
宝石鑑別は、さまざまな機器や知識を駆使して多方向から行います。
余談ですが・・筆者は国内の宝石鑑定機関で勤めていた際、ダイヤモンドを主に担当しておりました。
所長にFTIRの価格を聞いていたので、初めてFTIRを使ってダイヤモンドのタイプを分類する仕事を任された時、本当に「冷や汗」をかいてしまいました・・
鑑定書には記載される?
ダイヤモンドの4タイプについて、ほとんどの宝石鑑定機関では鑑定書(ダイヤモンドグレーディングレポート)やソーティングメモには記載しません。
また、合成ダイヤモンドには通常鑑定書はつきません。
※GIAは合成ダイヤモンドの鑑定書を、天然ダイヤモンドの鑑定書とは別に発行していますので、出せるところもあるとは思います。
最後に・・
のぞけばのぞくほど興味深い宝石:ダイヤモンド。
4つのタイプについて、如何でしたでしょうか?
「なぜこのダイヤモンドは黄色いのか?」 「なぜブルーなのか?」
ダイヤモンドのタイプを知ることは、そういった疑問を解決する手がかりにもなります。
そして、もしタイプⅡの天然ダイヤモンドに出逢う機会がありましたら・・
「とっても稀少な存在との出逢い」をかみしめて頂ければ・・と思います!
カラッツ編集部 監修