スファレライトとスフェーン、名前は似ていますが宝石としても似ているのでしょうか?
良く知られる共通点は、どちらもとてもデリケートな宝石であることや、ダイヤモンドに匹敵する輝きを放つことなどですが、スファレライトもスフェーンも、どちらも稀少石と言われ、市場に出回る数が少ない宝石なので、馴染みのない方もいらっしゃるかもしれません。
今回は、そんなスファレライトとスフェーンの、それぞれの魅力と共通点や違いについて、お話ししたいと思います!
目次
スファレライトの特徴
スファレライトは、鉱物名もスファレライト(和名:閃亜鉛鉱(せんあえんこう)といいます。
名前の由来はギリシャ語で、嘘つきや裏切り者といった意味のスファロス(sphaleros)から来ています。
この名前がつけられた理由は、一緒に産出することが多いガレナ(方鉛鉱[ほうえんこう])と見た目が似ていて、見分けがつきにくいことから。なんだか少しかわいそうな気がしますね。
スファレライトの色
色合いはブラウン、レッド、ブラック、グリーン、イエロー、クリアが存在します。
鉄分含有率の高いのが特徴なので、深いレッドからブラックの不透明なものが多く見られますが、硫化亜鉛の含まれる量が多いものほど、ホワイトやイエローを発色し透明度が上がります。
鉄分が少なく、透明で飴色のような発色をするスファレライトは、「べっ甲亜鉛」と呼ばれます。
スファレライトの産地
鉛・亜鉛鉱山で採掘される鉱物のため、世界各国に産出地がありますが、透明度の高い宝石質が採れる産地は多くありません。
宝石質のスファレライトの産出地は下記の通りです。
- スペイン:ピコス・デ・エウロパ
- 日本:青森、秋田、岐阜
- アメリカ:ペンシルベニア
- カナダ:モントリオール
- メキシコ
- 中国
- コソボ共和国
- スロバキア
- ブルガリア
- ドイツ
スフェーンの特徴
スフェーンとは、グリーンの宝石の中でレッド、ホワイト、グリーンの光が煌めく、不思議な魅力を放つ宝石です。
鉱物名をチタナイト(和名:楔石(くさびいし)、チタン石)と言い、チタナイトの中でも宝石品質と呼ばれるような品質の高い、美しいものだけがスフェーンと呼ばれています。
スフェーンの結晶の三角形が、V字形や三角形にとがった隙間に打ち込む「楔(くさび)」に似ていることで、ギリシャ語でくさびを意味する、スフェノス(Sphenos)から名付けられたといわれています。
透明度の高いスフェーンはダイヤモンドよりも強い輝きを見せたり、見る角度で色んな色が楽しめる多色性のあるものも存在します。
スフェーンの色
スフェーンというとまず思い浮かべられる色はイエローがかった明るいグリーンです。
そしてイエローからオレンジ、ブラウンといった暖色系の色合いも存在します。
特にマスカットグリーンやライムグリーンと言われる色は、透明度が高いと非常に強い光の煌めき(ファイア)を確認することが出来るので、人気が高いです。
また、まるでグリーンガーネットのような深みのあるグリーンのものは「クロムスフェーン」と呼ばれ、見る角度によって違った色が楽しめる多色性が見られます。
流通量も少なく稀少性が高いことから、こちらも人気の色といわれています。
スフェーンの産地
- マダガスカル:ダレーナ
- パキスタン:シガール
- アメリカ:ニューヨーク、カリフォルニア
- ロシア:ウラル
- ブラジル:ミナス ジェライス
- スリランカ
- オーストリア
- スイス
- ノルウェー
- イタリア
- ミャンマー
- 中国
- カナダ
- 日本:岐阜
スファレライトとスフェーンの共通点
スファレライトとスフェーンには、いくつか共通点があります。
順番にご紹介していきます!
ダイヤモンドに匹敵する「屈折率」とダイヤモンドに勝る「分散度」
スファレライトとスフェーンの一番の共通点は「屈折率がダイヤモンドに匹敵し、分散度はダイヤモンドを勝る」ところです。
とりあえず、ダイヤモンドとスファレライト、スフェーンの屈折率と分散度を表にまとめてみましたので、ご覧ください。
宝石名 | 屈折率 | 分散度 |
ダイヤモンド | 2.41 | 0.04 |
スファレライト | 2.370 – 2.400 | 0.156 |
スフェーン | 1.9 – 2.0 | 0.055 |
屈折率はスファレライト、スフェーン共に近いことがわかりますね。
そして分散度!特にスファレライトの高さが目を見張ります。
スファレライトの分散度はダイヤモンドの約4倍と言われ、この特徴から「幻惑の石」とも言われています。
屈折率が高くなると、石の内側で光が反射することで光の量が増え輝きを増し、眩い光を放ちます。
分散度が高いと、七色の光(ファイア)が確認でき、幻想的で魅力的な光を楽しめます。
屈折率と分散度が高いということは、それだけ美しく強い光を放ち、また七色の光のプリズムが確認出来る宝石としても、美しい証と言えるのです。
硬度の低さとへき開性の強さ
次の共通点は脆さです。
スファレライトの硬度は3.5-4、スフェーンの硬度は5- 5.5です。
スファレライトもスフェーンも硬度が低く、柔らかい宝石です。
そして、へき開と言われる「一定方向に向けて割れやすい性質」が、スファレライトには6方向、スフェーンには2方向あるので、研磨する際にも「カッター泣かせの宝石」といわれることもあり、ジュエリーにするには強度が足りないといわれています。
余談ですが、ダイヤモンドにもこのへき開が4方向に完全であります。
硬度が10なのに欠けやすいといわれている所以は、このへき開が理由なのですね。
スファレライトとスフェーンの違い
共通点の多いスファレライトとスフェーンですが、違ったところもあるんです!
屈折率と輝きの強さ
スファレライトとスフェーンの大きな違いは屈折率です。
スファレライトとスフェーンを並べてみると、スファレライトはさまざまな色のファイアと、ぎらぎらとした強い光を放ちます。それはまるで、宝石内に光を閉じ込めているように。
似た色のスファレライトとスフェーンがあったら、ファイアの色と輝きを見比べてみてください。
強い光と七色のファイアが確認出来る宝石が、スファレライトです。
最後に
どちらも稀少石と言われるスファレライトとスフェーンですが、共通するところも多いことから混同されることもしばしば。
鉱物としての特徴や魅力に加え、共通点と違いを知ることで、さらに二つの宝石の魅力が伝わったのではないでしょうか?
スフェーンは最近市場でもちょくちょく目にするようになってきましたが、スファレライトはコレクター人気は高い宝石ですが、まだ一般的に知られた宝石とはいえないと思います。
知られずにいるにはもったいないほどの美しい輝きを見せてくれる宝石ですから、これからもっと多くの方の目に触れることを期待しています!
カラッツ編集部 監修