豊富なカラーバリエーションがあり、コレクターに人気のフローライト。
縞模様に複数色が入った見た目のユニークなものや変色効果(カラーチェンジ効果)をもつものなどもあり、コレクター心をくすぐる宝石なのかもしれません。
初心者から上級者まで幅広い人気があるようですね。
「直観力を高めて気持ちを平穏にしてくれる、目覚めの宝石」などという言い伝えもあります。
そんな宝石フローライトについて、基本情報、特徴、名前の意味、価値基準やお手入れ方法など色々な角度からのお話をご紹介していきたいと思います!
目次
フローライトとは
多彩な種類をもつフローライト。見た目も性質もなかなかユニークで、知れば知るほど集めたくなる、そんな宝石なのかもしれません。
原石の形も正六面体や正八面体でコロンとした特徴的なサイコロ型をしているものも多く、原石コレクターも多い印象ですね。
では、具体的な紹介に移っていきましょう!
鉱物としての基本情報
英名 | Fluorite(フローライト) |
和名 | 蛍石(ほたるいし) |
分類 | ハロゲン化鉱物 |
結晶系 | 等軸晶系 |
化学組成 | CaF2 |
モース硬度 | 4 |
比重 | 3.0 – 3.3 |
屈折率 | 1.43 |
光沢 | ガラス状 |
特徴
フローライトは、衝撃が加わると正八面体にスパッと割れてしまう、完全な劈開(へきかい)の性質をもちます。
そんなもろい性質に加えて、モース硬度が4と低いため、ジュエリーに加工されることは多くない印象です。
ブラックライトを当てると蛍光する性質をもち、中にはカラーチェンジ効果を見せる変種もあります。
先述のとおり、カラーバリエーションが豊富で、中には一石の中に複数色を呈するものもあります。
フローライトの面白いところは、結晶の輪郭に平行して色が入るため縞模様になるものが多いこと。
個体によって入り方が変わるため個性が分かりやすいですよね。
それ故好みの色合いをもつものは色々集めたくなってしまうのかもしれませんね!
産地
フローライトは多くの国で産出されるといわれています。
主な産地としては、アメリカ、イギリス、ドイツ、チェコ、カナダ、メキシコ、スペインなどです。
日本で産出されたこともあるそうですよ!
フローライトを始めとした、日本で採れる宝石についてはこちらの記事を参考に!
名前の意味
フローライトには金属を溶かす性質があるといい、金属の精錬に利用されていた時代もあったといわれています。
このことから、ラテン語で「(溶けて)流れる」という意味の「fluere」に由来し名付けられたと伝えられています。
和名は「蛍石(ほたるいし、けいせき)」です。
和名の由来は諸説あるようですが、一つに、フローライトは火の中に入れるとパチパチと弾け飛んで発光する性質があるのですが、その姿が暗闇を飛ぶ蛍に似ていることから名付けられたというものがあります。
鉱物の名前はシンプルなものからフローライトのように意味深いものまであり、知るほどに興味が広がる気がします♪
ちなみに、イギリスのダービーシャー州で産する、パープル地にブルー、イエロー、ホワイトの縞模様を見せる種類はブルージョンと呼ばれます。
ブルージョンについては、後ほど詳しくご紹介しますね!
フローライトに施される処理について
フローライトは、現在のところ人工処理を施されたものはあまり見かけない印象です。
ただし、海外では暗い色のものに加熱処理を施して色を明るくしたり、カラーレスや淡いグリーンのものに放射線処理を施し、ブルーやグリーン、パープルに変化させたものもあるそうですよ。
フローライトの原石の形
フローライトの結晶は等軸晶系で、ころんとしたサイコロのようなキュービック型をしているものが多いといわれています。
ほとんどが正六面体ですが、稀に正八面体を成すものもあり、双晶を見せることも多いそうですよ。
立方体で産するほか、塊状や粒状、集合体などで見つかることもあります。
フローライトはカルシウムのフッ化物(ハロゲン化鉱物)です。
原石は熱水鉱脈や温泉地帯に生成し、トルマリンを伴なうクォーツの上などに生成することも多いといわれています。
成分であるカルシウムの2割ほどがイットリウムやセリウムに置換された結晶は、紫外線を当てると蛍光色を放つといわれています。
衝撃が加わると正八面体の方向に割れる劈開の性質をもつため、これを利用して、敢えて割って正八面体の形で販売されているものもあるそうです。
正八面体の原石といえば、ダイヤモンドやスピネルが有名で、原石コレクターの間でも人気が高い形の一つですね!
フローライトの色と種類
フローライトの大きな魅力の一つは何といっても色が豊富なこと。
世界で最もカラフルな宝石と呼ばれることもあるといいます。
トルマリンやサファイアなど、カラーバリエーションが豊富な宝石は他にも沢山ありますが、前述したように、フローライトは一石の中に幾つもの色が縞状に入るユニークな見た目のものも多いです。
フローライトの色が変わる要因は、微量元素の混入、自然の放射線の影響、結晶中の格子欠陥などが考えられています。
数多くあるカラーバリエーションの中から、代表的なものを幾つかご紹介しましょう。
ピンクフローライト
優しいピンク色を呈するフローライトです。
フローライトの中では、カラーレスやブラックとともに希少な色といわれているそうです。
薄いピンク色からローズピンク、濃いピンク色まで、濃淡の色合いは石によって様々です。
グリーンフローライト
グリーンを発色するフローライトです。
淡いグリーンから爽やかなミントグリーン、濃いグリーンなど、色幅があります。
イエローフローライト
イエローを呈するフローライトで、淡いものから濃いものまで、様々な色合いがあります。
その中でも特に濃くて明るいイエローを放つフローライトは、大変レアなのだそうです。
これらはゴールデンフローライトとも呼ばれています。
カラーチェンジフローライト
光源によって色が変わるフローライトです。
自然光の下ではビビッドなブルーかブルーグリーンに見えますが、ろうそくの火や白熱灯の下ではレッドやピンクまたはパープルなどに輝きます。
強くて美しい変色効果を見せるものが多いのも特徴です。
パーティカラードフローライト
結晶に2種類以上の色が縞模様になって現れるタイプです。
様々な色のコンビネーションによって現れるグラデーションが大変魅力的です。
線の太さや色の組み合わせは結晶によって様々です。
ロジャリーフローライト
イギリスのロジャリー鉱山産のフローライトは蛍光するものが多いといわれ、コレクターを中心に人気があります。
グリーンの地色でブルーに蛍光するものが多いようですが、ピンクやブラウンなど他の地色のものもあります。
ただし、フローライトは産地特定ができない宝石です。
その他の人気の種類
結晶の内部にフェザー(羽根)状の内包物を含有しているフローライトもあります。
この種類はパワーストーンとしても人気があり、「エンジェルフェザーフローライト」と呼ばれ販売されることもあるようです。
ひとつの結晶内にフェザー状の内包物がいくつも見られるものや縞模様の上にフェザーが見られるものなどこちらも個性豊かです。
ブルージョン(ダービーシャー・スパー)
イギリスのダービーシャー州にあるキャッスルトン村で産出される、「ブルージョン」と呼ばれるフローライトがあります。
濃淡のパープル系の帯の中にホワイト、ブルー、イエローなどの縞模様を見せる独特の見た目をもちます。
この縞状は細かい微結晶が集まって出来たものと考えられています。
古代ローマ時代より食器や装飾品として加工されてきましたが、耐久性を高くするために樹脂で固めて使用することが多いといわれています。
古代ローマ人たちはブルージョンでできたコップでワインを飲むと良い香りがすると親しんでいたそうですが、この香りは加工時に使用した樹脂によるものだったといわれているそうですよ。
18世紀から19世紀には、ダービーシャー州で産したフローライトが「ダービーシャー・スパー」と呼ばれてヨーロッパで人気を博します。
ダービーシャーでは磨いたような輝きを見せる表面をもつものや、ブルージョンの縞模様の層上に大粒のサイコロ型結晶があるものを産することもあります。
現在はキャッスルトンでの産出量は減少していますが、ブルージョン洞窟やトリーククリフ洞窟では現在も採掘が行われており、ガイド付きで一般公開されています。
ブルージョンの名前の意味
ブルージョンの名前は最初にフランス人が「bluejaune(青黄色)」と呼んだものが、いつの間にか「ブルージョン」と短縮されたものといわれています。
前述した「ダービーシャー・スパー」は、ダービーシャー州で産するフローライトの中に磨いた様な輝きを放つものもあり、「輝いた面」を意味する「スパー」を付けたところからきているようです。
ちなみに、この「ダービーシャー・スパー」は「フロースパー(fluorspar)」と呼ばれることもあるのですが、この名前、実は「フローライト」という名が誕生する前から使われているそうです。不思議な偶然ですね!
フローライトの歴史・言い伝え
フローライトは古くから産しており、彫刻などの装飾品の材料としても広く使用されてきました。
古代エジプトではフローライトの結晶に彫刻を施したり、彫像やスカラベをかたどった印章などを作っていたそうです。
中国でも古来から彫刻の素材として使用されていたといいます。
前述したブルージョンも古代ローマ人から愛されてきた歴史があります。
名前の意味のところでもお話したように金属の精錬にも広く利用され、鉱石から金属を溶かし出す性質をもつことから「flux(フラックス/溶融剤)」として古来より使用されてきたと伝えられています。
また、新陳代謝を活発にすると信じられ、腎臓病を治療するための薬として用いられていたこともあったといわれています。
18世紀頃、粉末状にしたフローライトを水に溶かして服用していたという記録も残っているそうですよ。
宝石のもつ蛍光性の発見
フローライトの中にはブラックライトを照射すると強く蛍光するものがあります。
実は、紫外線によって鉱物が蛍光反応を起こすという現象は、フローライトで最初に発見されたといわれています。
そのため英語で蛍光性を意味する「Fluorescence(フローレッセンス)」という言葉はフローライトを語源とし作られました。
鉱物が蛍光色を発するのは、内包される微量元素や原子組成上での何らかの不都合が原因だと考えられています。
蛍光性が見られるフローライトは産地によることも多いのですが、同じ産地のものでも蛍光色に強弱の差があります。
フローライトの蛍光性は、自然光の下ではグリーンに見える石がブルーに蛍光するなど、紫外線照射により違う色を見せるものが多い印象です。
なお、名前の意味のところでお話した火中で発光してパチパチと弾け飛ぶ様からもフローライトの蛍光現象は見られるそうですよ。
フローライトの偽物
市場に出回っている多くの宝石には別の素材や宝石による偽物がいくつか存在しています。
フローライトにもそのようなものが流通しているのでしょうか?
フローライトの偽物は現在のところ流通している様子があまりないという印象です。
海外ではフローライトの合成石を生成し、光学業界での高品質レンズの製作に使用してされることがあるようです。
フローライトの合成石は生産コストが高く、脆い性質をもつため、ジュエリー用として使用することはないようです。
ただ、フローライトがエメラルドやアメシスト、カラーチェンジガーネットなど別の宝石として売られている場合はあるそうですのでそちらの注意は必要かもしれません。
フローライトの価値基準と市場価格
宝石は全般的に、クォリティや大きさによって価値が異なるため価格に差が出ます。
購入する前に予め買おうと思っている宝石の価値基準や市場価格について調べておくと良いと思います。
ではフローライトの価値基準と市場価格、買える場所についてを簡単にご紹介しましょう。
価値基準
色
フローライトの色や濃淡は結晶によって様々ですが、一般的に色の濃いものほど評価が高くなります。
さらに、ピンク、ブラック、カラーレス、ゴールデンなど珍しい色やカラーチェンジフローライトといった特殊効果をもつものは、別の価値が付けられます。
透明度
内包物やキズ・欠けなどが少ない、透明度の高いものほど高評価となります。
カラット
フローライトは比較的大きい結晶が見つかっていますが、やはりカラット数は大きいほど価値も高くなります。
カット
モース硬度が低く、完璧なへき開の性質を持つため、もろくカットが困難な宝石です。
美しい発色をするプロポーションの整ったカットであるほど、高評価になります。
市場価格
フローライトは、ルースであれば数千円ほどで入手できるなど、市場価格は比較的お手頃であるという印象があります。
ただし、クォリティやカラット、種類によって価格も変化します。
つまり、クォリティが高くカラット数が大きいもの程価格は上昇します。
さらに、人気の高い種類や希少な種類のものは付加価値により、場合によっては数万円以上になることもあります。
どこで買える?
フローライトはジュエリーに加工されることが少ないため、ジュエリー店で見かけることはあまりありませんが、原石やルースは一般的に販売されているのをよく見かけます。
多いのは、ルースを多く取り扱うお店やパワーストーン系のお店などでしょうか。
ミネラルショーでも比較的簡単に見つかりますので、ルースや原石をお探しの方は、一度足を運んでみても良いかも知れませんね。
フローライトのルースや原石はオンラインショップでもよく見かけますが、実物を手に取って見ることができないので、お店選びは慎重に行いましょう。
実際の購入者からの評価やお店の情報などを事前に確認することはとても大切です。
また、写真や説明だけで分からないことがあれば、メールなどで問い合わせるなどして、きちんと納得してから購入すると後悔も少ないかもしれませんよ。
フローライトのお手入れ方法
フローライトは脆くキズが付きやすい宝石ですので、取り扱いには十分に注意が必要です。
モース硬度も低いことから、他の宝石と一緒に保管しぶつかり合ったりすると、表面が傷つく恐れが高いため、個別に保管することをオススメします。
ブルージョンは細かい結晶が集まってできているという結晶構造上、薬品などが染み込む恐れが考えられますので、アルコールの使用などは避けた方が無難かもしれません。
その他の種類は多少のアルコールは問題ないと思いますが、念のため過度につかないようにしてあげて下さい。
汚れが目立つ際は、柔らかい布で拭いたり石鹸や中性洗剤を溶かしたぬるま湯の中で優しく洗って上げて下さい。
超音波洗浄機の使用はNGです。
最後に
サイコロ型をして様々な色の種類があるフローライトの結晶は、まるでキャンディのような愛らしさがあるように思います。
ジュエリーとして着用しなくても、紫外線を当てて蛍光性を確認したりなど、原石のままで色々楽しめる宝石ではないでしょうか。
ただし、衝撃に弱いのでぶつけたり落としたりしないように、取り扱いには十分注意してくださいね。
カラッツ編集部 監修