宝石の美しさは色と輝きにある・・・そう言っても過言ではありませんよね。
それなのに、宝石の中には退色してしまうものもあるそうですよ!
退色とは、色が褪せたりさめたりすること。
色が褪せてしまう宝石があるなんて、一体どういうことなのでしょうか。
退色を防ぐための方法はあるのでしょうか。
宝石の退色性と、お手入れの方法などをご紹介します。
目次
宝石がもつ退色性とは?
宝石の中には、太陽の光に長時間曝されると、色が褪せやすいものもあります。
え!それじゃ、日中はジュエリーをつけて外に出られないということ!?
一瞬焦りましたが、一般的には数時間日光の当たる場所に置いていたり、日差しの強い日にジュエリーを身に着けて、数時間外で過ごしたくらいで極端に色が褪せることは少ないそうです。
つまり、そう簡単に色が褪せる訳ではなく、年単位で直射日光の当たる場所に置いていたら退色する宝石もある、ということなのです。
とは言え、宝石は自然の産物。個体差や例外などもあり、絶対大丈夫と言い切ることは難しいのが現実です。
必要以上に神経質になることはないですが、退色性のある宝石について知って、意識しながら使えた方が長く美しさを保ちやすいのでより安心だと思います。
但し、クンツァイトについては、退色性が強いものもあるそうですので、少し注意が必要なようです。
何故宝石は退色するの?
なぜ退色する宝石があるのでしょうか。
宝石が退色する原因は、日光の中にある紫外線(UltraViolet)の作用です。
紫外線の作用といえば、お肌にできるシミの原因だ!ということがすぐに思い浮かびました。
紫外線の刺激で人間の肌に黒色メラニンを生成、シミの原因になっていることは皆さんもご存知の通りでしょう。
私の若い頃は、肌を焼くのが健康的といわれていた時代・・・夏は黒い肌になるのが自慢でしたが、今ではシミになってしまっています(泣)
これと同じようなことが宝石にも起こっているということでしょうか?
紫外線は鉱物である宝石にも作用して退色の原因となっています。
宝石の結晶構造によっては、紫外線のエネルギーによって結晶の色を作っている部分が壊れてしまうものがあるのだそうですよ。
それで色が薄くなってしまうのだそうです。
特に明るい石に退色性が多く見られるとのこと。
これは紫外線によって布の色が褪せることに似ているのだそうです。
有機質である布が退色するのは理解しやすいのですが、無機質の鉱物である宝石までも退色させてしまうなんて、紫外線のパワー恐るべし、ですね!
退色性をもつ宝石とは?
ではどのような宝石に退色性があるのでしょうか。
ここでは、クンツァイト、アメジスト、トパーズ(Fタイプ),有機質の宝石など、退色性があることで知られている代表的な宝石について解説しましょう。
クンツァイト
澄んだライラックピンクの輝きが人気のクンツァイト。
いかにも女子力アップできそうな輝きが魅力的ですよね!
そんなクンツァイトは退色性があることでも知られています。
昔スリランカの宝石店でクンツァイトを購入したいと言ったら、店員さんから退色性があるなどの理由から買わない方が良い、と止められたことがありますよ。
先程もお伝えしましたが、クンツァイトは他の宝石に比べ退色性が強いものもあり、数時間日光に曝しただけで退色してしまったという話も聞きますので、注意が必要です。
とは言え、クンツァイトもとても魅力的な宝石です。
デリケートな部分を理解して長く付き合えるよう注意して身につけられれば良いかもしれませんね!
アメジスト
アメジストも日光によって退色するものがあることで有名です。
高貴な印象のパープルが魅力的なアメジストですが、その素敵な色が退色してしまっては切ないですよね。
濃いパープルのアメジストより明るくて薄いパープルのものの方が退色の傾向が強いようです。
私はアメジストとシトリンが一石の中に入ったアメトリンのルースを持っています。
西の窓に向かって置いている、鏡張りのコレクションケースの中に飾っていたのですが・・・
数年後気づいたらパープルがとても薄くなってしまい、イエローとパープルの境目が見えなくなっていたという経験があります。
褪めてしまった色は、もう元にはもどりませんよ(涙)。
トパーズ(Fタイプ)
トパーズはOHタイプとFタイプの大きく2つに分かれています。
OHタイプとは水酸基が含まれるものでインペリアルトパーズと呼ばれるものがこれにあたります。
それ以外の一般的なトパーズは、フッ素が含まれる、Fタイプのものが多いです。
そして、Fタイプのトパーズには退色性があるものが多いといわれています。
私はスリランカの宝石店で黒い布に大事にくるまれた天然のイエロートパーズを見せてもらったことがあります。
山吹色のような濃いイエローでしたが、普通にお店に置いていたらだいぶ色が褪めてしまったようで、あわてて、黒い布に包んで店の奥に保管するようにしたといわれていました。
この時、トパーズは取り扱いに注意した方が良いんだな、ということを学びました。
ただ、OHタイプ、つまりインペリアルトパーズには退色性はないと一般的にいわれています。
退色性が心配な方はインペリアルトパーズを選ばれた方がより安心かもしれませんね。
有機質の宝石
サンゴ、真珠、象牙、琥珀、ジェットなどの有機質の宝石は、光や熱の強い場所に長期間放置すると退色したり損傷したりしてしまいます。
有機質の宝石はモース硬度が低いものが多く、傷が付きやすいという性質もあります。
カラーパールが退色したという話や、サンゴが白っぽくなったという話、よく聞くのではないでしょうか。
有機質の宝石は、熱や紫外線の影響だけでなく、汗で変色することもあるので注意しましょう。
優しく適切に取り扱う必要がありますね。
その他の退色性をもつ宝石たち
退色性があることで知られているクンツァイト、アメシスト、Fタイプのトパーズ、有機質の宝石についてご紹介しましたが、実はまだ他にも退色性をもつ宝石はあります。
例えば、ローズクォーツ、スモーキークォーツ、シトリン、アクアマリン、トルマリン、イエローサファイア、ジルコンなどにも退色するものがあるといいます。
他にも、スキャポライト、ダンビュライト、アパタイト、フローライト、ヘミモルファイト、ユークレースなども同様です。
退色性のある宝石って結構多いんだなぁ・・・という印象ですよね。
また、直射日光に長時間曝すことは退色だけではなく、宝石を黒くしてしまうこともあるといいます。
例えばスギライト、ロードナイト、シンシャ、ロードクロサイトの一部などは、直射日光に曝され続けることによって、色が黒くなってしまうこともあるそうです。
注意しましょう。
施される処理によって退色するものもある?
宝石には様々な人工処理が施されます。
一般的には処理の有無によって退色性が強くなることはないといわれています。
つまり、処理が施されたことにより性質が変わって退色するようにはならないということです。
照射処理が施された宝石が退色するといわれることもありますが、処理が原因というより、元々の宝石がもつ性質の場合が多いようです。
人工的に着色されたアゲートやカルセドニーの中には時間の経過とともに色が薄くなるものもあります。
ただ、これは経年劣化による色落ちの場合が多いため、退色とは少し異なります。
コーティング処理やフラクチャー充填などの処理がされた宝石も経年劣化により色が剥げたり薄くなることもあるそうですが、これも退色とは異なります。
退色性のある宝石のお手入れで気を付けたいこと
退色性がある宝石は、保管やお手入れに気を付けることで色が褪めるのをある程度防ぐことができるそうです。
良かった~、防ぐ方法があるのですね!どうしたら良いのでしょう!?
何と言っても、まずは保管場所に気をつけましょう。
直射日光の当たる窓辺やテーブル、鏡台の上などに置くのは避け、箱や引き出しの中など、暗い場所に入れておくと安心です。
ただ、この保管方法は退色性のある宝石だけに限りませんよ。
宝石の中には退色性以外にも、熱や乾燥、極端な湿気や温度差などに弱いものもあるため、全般的に直射日光が当たる場所には放置せず、箱や引き出しなどに入れて保管する方が良いでしょう。
宝石専用のボックスなどは宝石同士がぶつからないよう工夫がされており、キズも付きにくいのでオススメですよ。
それから身に着けた後、柔らかい布で優しく拭いてから保管することも大切です。
汗による変色というのも防ぐことができますし、キズの有無なども観察することができるからです。
お手入れすればするほど、宝石への愛着も高まりますよ!
最後に
調べてみれば意外に多い、退色性のある宝石についてご紹介しました。
一般的にはそう簡単に色褪せることはないことが分かりましたが、宝石の中には日光で退色する性質をもつものもあるということを知っておけば、取り扱いに注意することができますよね。
大切に扱うことで、宝石の色と輝きを永遠に楽しむことができるのです。
日々のちょっとしたケアを忘れずに、宝石の美しさを長く保ち続けてあげて下さいね。
※但しクンツァイトの中には退色性が強いものもあるそうですので、注意が必要です。
カラッツ編集部 監修
<この記事の主な参考書籍・参考サイト>
◆https://www.gia.edu/
◆https://gentosha-go.com/ ほか