ライラックピンクが魅力的なクンツァイトは、私も大好きな宝石のひとつです。
透き通るような透明感と艶めいた輝きが、とてもエレガントですよね。
ただ、クンツァイトは取り扱いに注意しないと退色したりひび割れしたりする恐れがあるのをご存知でしょうか。
こちらでは、美しいクンツァイトの色や特徴、お手入れ方法、さらに気になる価格相場などをお伝えしていきます。
目次
クンツァイトとは?
クンツァイトは、スッキリとした美しいライラックピンクをした宝石です。
1902年に発見され、当時ティファニーの宝石学者だったジョージ・フレデリック・クンツによって新しい鉱物であることが解明された比較的新しい宝石です。
鉱物としての基本情報
英名 | Kunzite(クンツァイト) |
鉱物名 | スポジュメン |
分類 | 珪酸塩鉱物 |
結晶系 | 単斜晶系 |
化学組成 | LiAlSi2O6 |
モース硬度 | 6.5 – 7 |
比重 | 3.0 – 3.2 |
屈折率 | 1.65 – 1.68 |
光沢 | ガラス状 |
特徴
クンツァイトは2方向に割れる完全な劈開(へきかい)の性質を持つので、ヒビや割れが生じやすい心配があります。
そのためカットが比較的困難な宝石として知られています。
神戸国際宝飾展にて、シミズ貴石さん(@shimizu_kiseki )に甲州貴石切子クンツァイトを見せて頂きました。二方向で劈開があるカッター泣かせの石。裏側の切子カットは特に振動が伝わりやすく、3個中1個割れたそうです。卓越した技術は勿論、難題に取り組むチャレンジ精神に心から敬意を表します。#IJK pic.twitter.com/amnism7nif
— KARATZ(カラッツ)代表|小山慶一郎 (@keiichiro_oyama) May 17, 2019
インクルージョンを含むことが少ないとされ、内部はスッキリとした透明感があるものが多いように感じます。
また、太陽の光に当てた後暗い場所に移動すると光を放つ燐光性と呼ばれる性質をもちます。
クンツァイトの色
スポジュメンが少量のマンガンを含有することでピンク色の『クンツァイト』となります。
色相は淡いピンク色から鮮やかな紫色までさまざまですが、薄めのピンク色をしているものが多く、色が濃く鮮やかなものほど価値が上がります。
そのため、色を濃くするために照射処理を施して、色のエンハンスを行うことがあります。
また、クンツァイトの属するスポジュメンは、角度を変えると色が異なって見える多色性という性質をもちます。
カットする際にはテーブル面から鮮やかな色が見えるような方向でカットされることが多いそうです。
産地
クンツァイトが最初に発見されたのは1902年、アメリカ・カリフォルニア州のサンデイエゴでした。
現在もクンツァイトはサンデイエゴで産出されており、最も重要な産地として知られています。
ほかにも、マダガスカル、アフガニスタン、ブラジル、ミャンマーなどで産出されています。
名前の意味
最初に新しい鉱物であることを解明した、ジョージ・フレデリック・クンツ氏に敬意を表してクンツァイトと名付けられたといわれています。
クンツァイトを買う前に知っておきたい3つのこと
1.退色について
クンツァイトは紫外線などの強い光に長時間当てると時間の経過とともに退色することがあるといわれています。
前述したとおり、クンツァイトは色を濃くするために照射処理を施して、色のエンハンスを行うことがありますが、天然のものでも人工処理を施されたものでもいずれも退色する可能性はあるそうです。
しかし、最近は以下の様な例外も発見されているようです。
米国サンディエゴのオーシャンビュー鉱山で近年に産出したクンツァイトは、本来の紫又は緑紫色から光によってピンク色に変化した後は、色がそのまま安定しているという結果が報告されています。
また、オーシャンビュー鉱山にあるビッグカフナポケット地域で2010年に産出したクンツァイトは、採掘後2日ほど太陽光の下にさらし続けましたが、採掘当時のピンク色のまま、全く退色しなかったそうです。
参考サイト:http://www.atggems.com/Photos_Kunzite.htm
2.お手入れで注意すべきこと
劈開の性質をもつクンツァイトは、ヒビや割れが生じやすいので取り扱いには注意が必要です。
落としたりぶつけたりするのを避けるため、指輪にセッティングしてある場合には、家事をする時や重い物を持つ際には必ず外すようにした方が良いでしょう。
お手入れの方法は、普段は柔らかい布でサッと拭き取るだけで十分です。
汚れが目立ってきた場合には、中性洗剤を入れたぬるま湯に入れ、柔らかいブラシで優しく汚れを落とします。
汚れが落ちたら水を入れ替え、泡をキレイに洗い流します。このとき、流水で洗い流すのは念のため避けた方が良いでしょう。
最後に、柔らかい布で水分を完璧に拭き取るようにしましょう。
超音波洗浄機などに入れると石にダメージを与えることになるので、絶対に使わないでくださいね。
3. 保管方法
クンツァイトは紫外線などの光や熱に長時間当てると、色褪せてしまう恐れがありますので、使わない時には箱などに入れて暗い場所で保管することをオススメします。
また、ひび割れが生じやすい性質をもつので、他の宝石と一緒に保管するのも避けた方が良いといえます。
個別の箱やパーテーションの付いたジュエリーボックスに入れるなどして、他の宝石とぶつからないようにしてくださいね。
クンツァイトの価値基準と市場価格
それでは、ここで気になるクンツァイトの価格相場です。クンツァイトの価格は、石の大きさと透明感、カットバランス、色の濃さによって異なります。まずは価値基準からご説明しますね。
価値基準
色
前述したとおり、クンツァイトは一般的に薄いピンクからラベンダー色をしたものが多く、ピンク色が濃いほど価値も上昇するといわれており、ビビッドな紫色が最も価値が高いとされています。
透明感
透明感は高いほど良いのですが、元々透明感が高い石が多いため、価値への影響はそれほど大きくないといえます。
カラット
サイズが大きいほど価値も上がります。
カット
カットバランスが良く、色や輝きが美しく見える優秀なカットが施されているほど、高く評価されます。
クンツァイトは大きなサイズで産出されることも多く、10カラットの原石が見つかることも少なくないといわれています。
ルビーやサファイアと比べると安価なので、比較的大きいものを入手しやすい宝石といえるかもしれません。
市場価格
クンツァイトは大きさやクォリティによっては、1万円以下でも十分探せます。
前述したように、比較的大きいサイズのものが採れやすいことから、カラットが大きいものを探すことも可能です。
色が濃く美しくカラットが大きいものでも数万円~10万円程度のものが多い印象ですが、トップクォリティのものの中には数百万円以上するものもあります。
どこで買える?
クンツァイトはルースであれば、比較的目にすることが多い宝石です。
オンラインショップなどでも取り扱っているお店は多い印象です。
カットが難しいことからジュエリーとなるとグッと数は減りますが、全然ない訳ではありませんので、根気強く探してみると良いと思います。
最後に
魅力的なライラックピンクをしたクンツァイトは、見つめているだけでも気持ちが癒されるような気がします。
ひび割れが生じやすく、強い紫外線や熱などで色褪せる恐れがあるので、日常のお手入れや保管には必ず注意しましょう。
カラッツ編集部 監修
<この記事の主な参考書籍・参考サイト>
◆『宝石と鉱物の大図鑑 地球が生んだ自然の宝物』
監修:スミソニアン協会/日本語版監修:諏訪恭一、宮脇律郎/発行:日東書院
◆『楽しい鉱物図鑑』
著者:堀秀道/発行:草思社
◆『ネイチャーガイド・シリーズ 宝石』
著者:ロナルド・ルイス・ボネウィッツ 訳:伊藤伸子/発行:科学同人
◆『パワーストーン百科全書』
著者:八川シズエ/発行:中央アート出版社
◆『アヒマディ博士の宝石学』
著者:阿衣アヒマディ/発行:アーク出版発行