希少石シリマナイト。
一般的にはあまり知られていない宝石ですが、透明なもの、ほんのり色が付いたもの、キャッツアイ効果のあるものなど、個性も様々で多くの魅力があります。
それにシリマナイトには同じ化学組成なのに見た目が異なる宝石が2つありますよ。どんな宝石なのか、こちらも気になりますね。
今回はシリマナイトについて、特徴や名前の意味、価値、石言葉など、色々交えながらお話ししたいと思います。
目次
シリマナイトとは
珪酸塩鉱物の一種であるシリマナイト。
ある種の変成岩中に生成し、鉱物としてはそれ程珍しくないといいます。
鉱物としての基本情報
英名 | Sillimanite(シリマナイト) |
和名 | 珪線石(けいせんせき) |
鉱物名 | シリマナイト |
分類 | 珪酸塩鉱物 |
結晶系 | 斜方晶系 |
化学組成 | Al2SiO5 |
モース硬度 | 6.5 – 7.5 |
比重 | 3.20 – 3.30 |
屈折率 | 1.66 – 1.68 |
光沢 | 絹光沢またはガラス光沢 |
特徴
鉱物としてはそれ程珍しくないシリマナイトですが、宝石品質のものは採れにくく、カットが施され市場に出回るものは少ないです。
採掘される多くは工業用に使われるそうですよ。
シリマナイトには高温に強いという性質があるため、不燃材や断熱材、車のスパークプラグなどの原料になっているといいます。
またシリマナイトは、柱状で生成するものと繊維状の塊で生成するものがあり、繊維状の塊で生成するものは、「ファイブロライト(フィブロライト)」と呼ばれることもあります。
繊維状=ファイバーからそう呼ばれるようになったといわれています。
色
シリマナイトの色は、元々はカラーレス~ホワイトだと言いますが、微量元素の含有により、様々な色合いを呈します。
今までに、ブルー、ブラウン、グリーン、グレー、イエロー、褐色、バイオレットなどが見つかっています。
全般的に淡い色合いで、どことなく上品かつ優しい雰囲気を感じるものが多い印象があります。
特に人気が高いといわれているのが、透明度の高いバイオレットのものです。
また、シリマナイトは強い多色性をもつといいます。
見る角度によって、イエローグリーンやディープグリーン、ブルーなどが現れ、華やかな印象になります。
産地
シリマナイトの産地は、世界各地に点在しています。
アジア大陸ではインド、スリランカ、ミャンマー、韓国など。ヨーロッパではイギリス、フランス、チェコ共和国、ドイツ、イタリア、ロシア。
アメリカ大陸では、カナダとアメリカ。アフリカ大陸ではケニア、南アフリカ共和国、マダガスカルなど。
宝石品質のシリマナイトは、スリランカやミャンマーの砂鉱床や、ブラジルなどから採掘されることが多いそうです。
原石の形
シリマナイトは、通常、柱状や細い針状結晶が平行に集合した繊維状の塊で産出されることが多いといわれています。
片麻岩の中で形成されることが多いそうですが、スカルン、接触変成岩、花崗岩、ペグマタイトの中でも見つけることができます。
また、ルビーやサファイアなどのコランダムを伴ったり、アルマンディンガーネットやカイヤナイト、アイオライトなどと一緒に産出されることもあるそうです。
繊維状のシリマナイトは、束になった形で母岩の中で発達することが多いようです。
名前の意味
シリマナイトという名前は、1850年、化学者であったベンジャミン・シリマン教授に因んで命名されたといわれています。
シリマン教授は有名な学術雑誌「アメリカン・ジャーナル・オブ・サイエンス」の創刊者でもあるそうですよ。
和名は珪線石。こちらは、繊維状の結晶が多いことに由来しているようです。
石言葉
花に花言葉があるように、多くの宝石にも石言葉があります。
シリマナイトにも石言葉はあるのでしょうか。答えは・・・ノーです。
もしかしたら、あるのかもしれませんが、手元の書籍では探せませんでした。
いつかシリマナイトにも素敵な石言葉が生まれると良いですね~。
シリマナイトキャッツアイ
シリマナイトには、カボッションカットを施すとキャッツアイ効果が出るものもあり、それらはシリマナイトキャッツアイと呼ばれています。
キャッツアイ効果はシャトヤンシー(Chatoyancy)とも言いますね。
これは、フランス語から来ているそうなのですが、フランス語でchatは猫を意味し、chatoyancyは猫の目のように輝くという意味だそうです。元の言語が異なるだけで同じ意味だったのですね。
繊維状の塊で生成するものが多いことから、シリマナイトにはキャッツアイ効果を示すものが多いのだそうですよ。
色は、クリソベリル・キャッツアイに似たイエロー系の色合いや、パープルを帯びた黒っぽいものが多いといいます。
中には4条や6条の光が浮かぶものもあり、それらはスターシリマナイトと呼ばれています。
シリマナイトと関係の深い宝石
画像:カイヤナイト
冒頭で触れたように、シリマナイトには同じ化学組成なのに見た目が異なる宝石が2つあります。
その宝石とは、カイヤナイトとアンダリュサイト。
このような関係を同質異像と呼びます。
これらは、珪酸アルミニウムが結晶化する時の温度や圧力の違いによって結晶構造が変わり、外観が変化すると考えられています。
一般的に、シリマナイトは800℃以上の高温と中高圧の環境で、カイヤナイトは低温で高圧、アンダリュサイトは中高温で低圧の時に生成される、といわれています。
それぞれが別々の鉱物であると認められたのは、1824年のこと。
組成が同じでも生成する環境の違いで、見た目や特徴が大きく変わるなんて、これぞ地球が織りなす神秘ですね!
それでは、カイヤナイトとアンダリュサイトについても簡単にご紹介しましょう。
カイヤナイト
カイヤナイトはブルーが印象的な宝石です。
和名は藍晶石(らんしょうせき)。藍色の結晶という意味なのだそう。
鉄とチタンによって青く発色するといわれ、これはサファイアの発色元素と同じ。
サファイアによく似た深いブルーの結晶も多く見られ、古くからサファイアに間違われることも多かったといわれています。
しかしカイヤナイトには、グリーン、ピンク、オレンジなど、ブルー以外の色やバイカラーのものもありますよ。
また、カイヤナイトは結晶の方向により硬度が異なるという変わった性質をもち、「二硬石」と呼ばれることもあります。
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カイヤナイトについてもっと詳しく知りたい方は下記記事をご参考に。
アンダリュサイト
アンダリュサイトは、スペインのアンダルシア地方で発見されたことから名付けられたといわれる宝石です。
和名を紅柱石 (こうちゅうせき)といいます。
ブラウンや赤褐色のものが多い印象ですが、グリーン、ピンク、イエロー、レッド、ホワイト、グレーなどが見つかったこともあります。
アンダリュサイトの最も大きな特徴は、強い多色性があること。多色性とは、見る角度によって異なる色に見えるという性質で、その代表格ともいえるのがアンダリュサイトです。
例えば、地色がブラウンのものが角度によってイエローに近いブラウンに見えたり、グリーンに見えたりするそうです。
また、四角い柱状結晶の内部に炭素質でX字状の構造が入ることがあり、それらはキャストライト(キアストライト)と呼ばれます。
鉱物としてはアンダリュサイトになるため、鑑別書にもアンダリュサイトと書かれます。しかし見た目が大きく異なり、面白いですよ。
これは空晶石構造というもので、断面が十字架のような模様になっていることからクロスストーンなどと呼ばれることもあるようです。
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シリマナイトの価値基準と市場価格
シリマナイトを買う時に、価値基準や市場価格について心得があれば、予算の範囲内でより良いものを選ぶことができるでしょう。
どのようなシリマナイトに高い価値が認められるのでしょうか。
価値基準
シリマナイトの価値基準は、まず色が濃くて鮮やかなこと。シリマナイトは淡い色が多いため、鮮やかで濃い色は注目されます。
それから透明度が高いこと。繊維状のインクルージョンが多いので、透明なものは珍しいのです。
カットが美しいことも重要です。
そして、シリマナイトは小さな結晶が多いため、カラット数が大きければ大きいほど、高い価値が認められます。
多色性が分かりやすく現れるものも、高く評価されるでしょう。
市場価格
シリマナイトには様々なクォリティがあり、それによって市場価格に幅が出ます。
ルースの場合、小さいサイズでクォリティが低いものであれば、五千円前後でも探すことが可能でしょう。
クォリティが高くサイズの大きいルースは数万円くらいで流通しています。
トップクォリティでサイズが大きいものになると、数十万円以上するものもあるとか。
それが更に、希少性も人気も高い、鮮やかなバイオレットを呈し、多色性も顕著なものになると、より高額になる可能性が高いでしょう。
どこで買える?
シリマナイトはどこで買えるのでしょうか。
レアストーンの取り扱いが多いお店などで見つけることができるかも知れません。
ミネラルショーでも、原石やルースが展示されている可能性があるでしょう。
オンラインショップでも見かけますね。
カラッツSTOREでも取り扱うことがありますので、ご興味のある方はチェックしてみて下さいね。
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シリマナイトのお手入れ方法
シリマナイトのお手入れ方法について見てみましょう。
シリマナイトは、特定方向からの衝撃に弱い性質である劈開が完全にあるため、取り扱いには注意が必要です。
普段のお手入れは、使用後に柔らかい布で拭くだけで充分でしょう。
汚れが目立つ場合は、中性洗剤や石鹸を溶かしたぬるま湯の中で優しく洗ってください。超音波洗浄機は使用しないで下さいね。
保管の際は、他の宝石やジュエリーなどと一緒にしておくと、何かの拍子にぶつかって傷つけ合う可能性があります。
仕切りのある箱や小袋に入れるなど、個別にしておくとより安心です。
最後に
希少石シリマナイトをご紹介しました。
シリマナイトは、色によってそれぞれ似ている宝石があるため個性の少ない宝石だという声を耳にしたことがあります。
しかし、今回色々調べてみて、私はそうは感じませんでした。
シリマナイトには、カラーレスのもの、ほのかにイエローやブルーの色合いをもつもの、濃く鮮やかなバイオレットを呈するもの、不透明でキャッツアイ効果を示すものなど様々な色や種類があります。
とても表情豊かな宝石だと思いますし、そこがシリマナイトの魅力であり、個性ではないかと私は思いましたよ。
希少で可憐な宝石、シリマナイトのことがもっと広く知れ渡ったら嬉しく思います。
カラッツ編集部 監修