ルビーが欲しいですか?
それならまずはルビーの「産地」を知るべきです。
なぜならルビーは魔性の宝石。
一口に「ルビー」といっても、産地によって、その色、特性、品質は全く違うのです。
今回は、宝石屋もあまり知らない、ルビーの「秘密」をご紹介します。
モゴック産ルビー
代表的な産地の一つであるミャンマーのモゴック地方の鉱山から採れるルビーは高品質で有名です。
「これはモゴック産のルビーです。」
と言われたら、粒は小さくても色が美しければ極上のルビーだと期待して良いでしょう。
モゴック産のルビーの特徴は何と言っても「透明度の高さ」とまぎれもない「赤い色」。まさに「ピジョン・ブラッド」が多いのもこのモゴック産。
ある宝石業者は、
「最高品質のルビーには2つの条件がある。1つはミャンマー・モゴック産で無処理であること。そしてもう1つは2ctを超える大きさで色が濃くて美しい石だ。」
と語っていました。私も全く同意見。
しかし2ctを超える美しい(ピジョン・ブラッド)ルビーは、おそらく0が7つは付く値段でしょうね。。。
モゴック産ルビーは紫外線を当てると蛍光の強い赤色を発する特性があります。さらに無処理の石なら顕微鏡でみると、60度に交わったシルクの束のようなインクルージョン(内包物)が見えるでしょう。
石のあちこちにスタビイ(ずんぐりした形状)のインクルージョンがあることもあります。
このようなインクルージョンは産地や処理の有無を見分ける大切な印なのです。
タイ産ルビー
モゴック産のルビーがミャンマーの政変により産出が激減したかわりに、飛躍的に市場に広く出回ったのがタイ産ルビー。
1970年から80年代にジュエリーに使われたルビーはほぼこのタイ産ルビーだったという話も聞きます。
タイ産ルビーの品質のポイントは独特の黒っぽい赤い色でしょう。
最高品質のルビーが「ピジョン・ブラッド(鳩の血)」と呼ばれるのに対し、高品質のタイ産ルビーは「ビーフ・ブラッド(牛の血)」と呼ばれることも。
紫外線(長波)にほとんど反応しないという特徴もあります。
タイのバンコクでは1960年代にはルビーの研磨が本格化し、さらに黒みを取り除く技術が向上したためにピンクから赤まで、様々な色の加熱処理されたルビーが生まれました。
しかし1980年代後半には他の産地のルビーが多く出回るようになったために市場が縮小。現在市場で目にするタイ産ルビーは、かつて採掘された還流品がほとんどだと言われています。
ベトナム産ルビー
1990年前後に登場したのがベトナム産ルビー。
しかしこの頃ルビーの合成石が出回ったこと、そしてベトナムが国としてルビーの規制を強化したこと、また産出量の限界といった悪条件が重なり、市場での地位を確立することはできませんでした。
残念ながら「ベトナム産ルビー」というと、未だに「粗悪なルビー」というイメージがつきまといます。
合成石が多く混入したことが市場を困惑させ、ベトナム産ルビー全体の信用に影響を及ぼしてしまった例です。
モンスー産ルビー
1993年を境に、ミャンマー中央部の都市、マンガレーの東に位置するモンスー地方のルビーがタイ産ルビーに代わって市場に出回るようになります。
マンガレーの北は高品質のルビーの宝庫、モゴック地方。モンスーのルビーはタイのチャンタブリで研磨、加熱され、モゴック産ルビーにも劣らない品質のルビーとして評判になりました。
しかしモンスー産ルビーはタイ産に比べると傷が多く、その亀裂の中に加熱処理する時に触媒として使われたボラックス(化学薬品)が異物として残っていることがあります。
そのためモンスー産ルビーは値段はタイ産ルビーより安いことが多く、また大半が小粒のルビーです。
大粒のルビーの産出は稀です。
モザンビーク産ルビー
アフリカ大陸南東部に位置する共和制国家、モザンビーク。
この国のモンテプエス新鉱山からルビーが大量に採掘されるようになったのは2008年あたりから。
このモザンビーク産ルビーはミャンマー産と比べるとややオレンジっぽい赤い色が特徴。無処理でも美しい原石が産出されています。
数百年の伝統を持つモゴック産ルビーに変わり、このモザンビーク産ルビーが新しいルビーの女王として地位を確立するかどうかはまだまだ未知数。
ちなみに2019年現在、
- ハイクオリティのモザンビーク産ルビーの相場は据え置き
- コマーシャルクオリティ(一般向けのライン)のモザンビーク産ルビーの相場は、新しい鉱山の発見により採掘量が増えたため、やや下がり気味
という傾向にあります。
最後に
いかがですか。ルビーは産地で選びたい、と言えば、あなたはかなりの宝石通。
宝石屋さんでも白熱したお買い物ができるでしょう。
高品質で大粒のルビーはダイヤモンドと同じくらい資産価値があります。
あなただけの素晴らしいルビーを見つけてください。ただし、含浸ルビーにだけはお気をつけください。
カラッツ編集部 監修