ルビーの産地別特徴③モザンビーク産ルビー

モザンビーク産ルビー ルース

モザンビークという国をご存知でしょうか。

モザンビークは南半球にあるアフリカの国で、2,000kmも続く美しい海岸線などが有名です。

かつて不幸な内戦が長く続いていたこともあり、そのニュースなどで耳にしたことがある方もいるかもしれません。

タンザニアの南側に隣接し、モザンビーク海峡を隔ててマダガスカル面しています。

モザンビークで採れるルビーが話題になったのは、実はつい最近のこと。

ルビーが生成される一次鉱床の大きさは現在のところモザンビークが世界最大といわれ、「21世紀に発見された世界最大級ルビー原産地」として世界から注目を浴びています。

かつてモザンビーク産ルビーは品質が低いものしか採れないと思われていたそうですが、現在では美しい結晶が採れることも分かっています。

そんなモザンビーク産ルビーについて色々ご紹介していきましょう。

ルビーの産地

モザンビーク産ルビーのお話に入る前に、まずは世界のルビー産出国について簡単にご紹介しましょう。

ルビーの産地として有名なのは、ミャンマーベトナムカンボジアタイなど東南アジアの国々でしょう。

中でもミャンマーのルビーは世界最高峰といわれています。

それから、スリランカマダガスカルモザンビークタンザニアなどでもルビーが産出されています。

実はこれらの国々は太古の昔ゴンドワナという、一つの大陸にありました。

ゴンドワナ大陸では、地殻とマントルの間で大規模な構造変化が起こり、大陸間の衝突などによって大きなエネルギーが発生モザンビークベルトという高温高圧広域変成帯が生じたと考えられています。

そこがやがて宝石鉱床となりました。

そしてモザンビークベルトが形成された場所が分離し、スリランカを始めとした国々が作られました。

元々は一つの大陸だったことから同じような宝石が発見されるのも不思議ではないということですね。

スリランカとタンザニア

私は、かつてゴンドワナ大陸だったスリランカタンザニアに住んでいたことがありますが、何だか似ていると感じたことが多々あります。

インド洋を隔てて遠く離れているにも関わらず、植生が殆ど同じでしたし、空気や土の感じがとても似ていると感じました。

特に沿岸部はよく似ていて、時々「どちらの国にいるんだっけ!?」と思う事もありましたよ。

私の周りの両国を知る人たちの共通認識でもありましたね。

当時の私はゴンドワナ大陸のことを知らなかったのですが、知った今思えば、似ているのも当然なのかもしれませんね!

私自身はマダガスカルモザンビークには行ったことはないのですが、両国をよく知るスリランカの宝石業者から「特に違和感なく生活している」と聞いたことがありますので、やはり似ているのかもしれません。

モザンビーク産ルビーの特徴

モザンビーク産ルビー ルース2

モザンビークは、先ほど述べたゴンドワナ大陸で形成されたモザンビークベルトが走っている国の一つです。

モザンビークを走るモザンビークベルトでは、片麻岩片岩の中に多くのコランダムが形成されているそうです。

モザンビーク産ルビーは大きく2種類のタイプに分けられるといわれています。

一つはManinge Niceマニンゲ ナイス)、もう一つはMuglotoムグロト)と呼ばれます。

いずれもそれらが主に採れる鉱山名より名付けられたといわれますが、その鉱山のものだけ当てはまる訳ではなく、中には両方の特徴をもっているものもあるそうです。

マニンゲ ナイスは、ピンク~レッド強い蛍光性をもち、六角形結晶形状のまま見つかることも多いという特徴があります。

しかし、マニンゲナイスの結晶は平坦で、インクルージョンフラクチャー(割れ目)も多いため、カッティングすると小さくなってしまうのが残念なところです。

一方、ムグロトはマニンゲ ナイスよりは分厚い結晶のルビーなのですが、色が暗く青いオーバートーンもみられます。

そのようなムグロトのルビーは、通常より低い温度で加熱処理を施すことで、色が明るくなって青みも消え美しい色のルビーに生まれ変わるのだそうです。

ただ、市場で出回っているものの中にこれらの名前を見かけたことは今のところないため、市場で使い分けられることはないのかもしれません。

モザンビーク産ルビーの色

モザンビーク産ルビー ルース4

モザンビーク産ルビーは、ミャンマー産よりも少しオレンジを帯びたり、パープルが入ったようなレッドであることが多いといわれています。

蛍光性ミャンマー産ルビーよりも少し弱いもの~同等のものが多いそうです。

Montepuez(モンテプエス)から採れるルビーは、鉄の含有量低いものから高いものまであり、様々なレッドになるのだそうです。

鉄分が少ないものは明るいレッドで、ミャンマー産ルビーに劣らない品質のものもあるといわれています。

鉄の含有量の多いものは、タイ産やカンボジア産と似た、少し暗めのレッドになるそうです。

モザンビーク産ルビー加熱処理の必要がない品質のものも産出されていますが、多くは加熱処理によって綺麗な色が引き出されているそうです。

モザンビーク産ルビーの歴史

モザンビークがポルトガルの植民地だった1500年代から、コランダムが産出されることは知られていたそうです。

ルビーもありましたが、その頃はカボッションカットにするくらいの品質のものしか見つかっていなかったとのこと。

モザンビーク産ルビーの記述で一番古いものは1991年に発行されたGems & Gemologyという本なのだそうですが、「モザンビーク産ルビーは低品質である」ということが触れられている程度だったようです。

それが2008年野生動物の保護区内で美しいルビーが見つかり話題になります。

大勢の人が押し寄せ、不法採掘が行われましたが、乾季になって水が無くなったことと、当局によって閉鎖されたこともあり、1年余りで違法採掘者がいなくなったそうです。

2009年4月には、カポ・デルガート州にある Montepuezモンテプエズ)でルビーの鉱脈が発見されました。

モンテプエズからは宝石品質のルビーも数多く採掘され、更に世界の注目を浴びることとなります。

2010年になる頃には、アジアのルビー市場でモザンビーク産ルビーが広く見られるようになったそうですよ。

大きなルビー鉱床が眠っているモザンビークは、今後も世界最大級のルビー供給国であり続けるだろう、といわれていますので期待大ですね!

モザンビーク産ルビーの価値基準と市場価格

モザンビーク産ルビー ルース5

モザンビーク産ルビーの価値や値段も気になりますよね。調べてみましょう。

価値基準

ルビーは全体的に大きな結晶は採れにくい傾向にあるといいます。

2ct以上にもなると、価格が大きく跳ね上がるのだそうです。

モザンビーク産ルビーも大きな結晶とても珍しいため、価格が上がります。

鮮やかなレッドのもの程価値があり、最高品質はピジョンブラッドと呼ばれる色合いです。

ピジョンブラッドはかつてはミャンマーモゴック産ルビーの代名詞のように使われていましたが、現在はその色範囲に入るものであれば、産地に関わらずピジョンブラッドと呼ばれます。

そして透明度が高くカットが美しいものほど、価値が高くなる傾向にあります。

鮮やかな発色で、カラットの大きなものがあれば最高ですね!

市場価格

モザンビーク産ルビーは、大きくて高品質なものであれば、数万円するという印象です。

めったに取れない2ct以上のもので、品質が高いのものは数百万円に上るものもあるそうです。

同じような品質や色合いでも、ミャンマー産ルビーより価格が低くなる傾向にあります。

逆に言えば、産地にこだわりがなければ、お買得なものが見つかる可能性があるということではないでしょうか。

低品質のルビーは産地鑑別がされずにただのルビーとして流通されることもあります。

もしかしたら、身近にモザンビーク産ルビーがあるかも知れませんね!

どこで買える?

ルビーはファンが多い宝石なので、取り扱っているお店も多いでしょう。

実店舗でもオンラインショップでも、よく見かける宝石のひとつです。

モザンビーク産ルビーとして販売されているものもありますので、幾つかのお店比較検討することも可能ではないでしょうか。

ティファニーカルティエなどのハイブランドでもモザンビーク産ルビーを使ったジュエリーを見かけることがありますね。

モザンビーク産高品質なルビーを購入する際は、信頼のおける鑑別機関の鑑別書がついたものかオプションで取ってもらえるお店で買われることをオススメします。

後悔しない、気持ちの良いお買い物ができますように!

最後に

モザンビーク産ルビー ルース6

モザンビーク産ルビーについて色々紹介しましたがいかがでしたでしょうか。

高品質のものが採れるようになったのはつい最近といわれ、今後益々多くのモザンビーク産ルビーが私たちの目を楽しませてくれることと思います。

それにしても、モザンビークベルトって本当にロマンあふれる場所だな~と再確認しました。

まだまだ発見されていない鉱床が眠っているのではないか、と夢をもってしまいますよね。

モザンビーク産ルビーを太陽にかざし、何億年という時間と地球のエネルギーを感じてみたいなぁ、と思いました。

カラッツ編集部 監修

<この記事の主な参考書籍・参考サイト>

『アヒマディ博士の宝石学』
 著者:阿衣アヒマディ/発行:アーク出版発行
『ネイチャーガイド・シリーズ 宝石』
 著者:ロナルド・ルイス・ボネウィッツ 訳:伊藤伸子/発行:科学同人 ほか
———–
https://www.gia.edu/

https://www.cgl.co.jp/

▽参考書籍・参考サイト一覧▽