スミソニアン協会監修の、『宝石と鉱物の大図鑑』の中で、アジャ・ラデン氏は
「西洋ではルビーが宝石の中では最高の石だ。」
と述べています。
私も欲しいです。ルビーの指輪。
日本では昔「俺に返すつもりなら捨ててくれ」なんて歌が流行りましたがとんでもない!捨てるくらいなら私に下さい。
そもそもルビーは宝石の中でもお値段が高い石。ピジョン・ブラッドのルビーなんて、1ctでも相当な金額になるはず。
しかし、最近御徒町で安いルビーが出回っているとか。
今回はそんな安いルビーについて調べてみました。
御徒町で安いルビーが出回っている!?
2015年5月、競売大手サザビーズが開催したカルティエの宝飾品のオークションでは、「ピジョン・ブラッド(ハトの血)」と呼ばれる最高品質の25.59カラットのルビーの指輪が、日本円にして約36億5200万円で落札されました。
36億円。この金額が、今のところルビーの市場最高額です。
どうですか、この値段。
実は私も、10カラットのルビーを御徒町で購入したことがあります。その値段はなんと、たったの1万円。
「インドルビーだろ!」
「めちゃくちゃ品質が悪い石じゃないの?」
「もしかして、原石?」
「その値段なら偽物に決まってるじゃん。」
そんな声が聞こえてきますが、どれもハズレ。いや、若干「偽物」というワードがちょっと引っかかるかもしれません。
私が購入したルビーは、
- 品名:天然ルビー
- 石目:10.732ct
- カラー:モゴック産に近いピンク
- コメント:透明材を認む
という商品。素人なら、品名:天然ルビー、石目:10.732ct、という時点でこの宝石は本物だと思ってしまうでしょう。
しかしこれは、本物のルビーの石に見栄えを良くするために透明材を含ませた石。半分は偽物の合成石です。
(詳細は『宝石の鑑別書に書かれた『透明材を認む』『含浸処理』ってどういうこと?』をご覧ください。)
残念ながら、私が買ったルビーは本物なら推定2500万円ですが、合成石ですから原価はワンコインにも満たないとか。でもそんなルビーが御徒町ではあまり説明されずに販売されています。
宝石の合成はルビーからはじまった
1904年、フランスの化学者、ベルヌーイがルビーの合成を公表しました。
しかし合成と表示せずに販売したため、世界中の業者が本物のルビーとして扱い、天然ルビーの信頼性が大きく損なわれる結果となってしまいました。
日本でも京セラが独自の技術で生み出した「クレサンベール」と呼ばれる合成石や、アメリカのチャザム社が合成エメラルドや合成ルビーを販売しています。
合成ルビーを作る方法
合成ルビーを作る方法をいくつかご紹介しましょう。
・フラックス法
金属化合物である融材の中に酸化アルミニウムと発色剤のクロムを混ぜて、るつぼの中で2000度以上の高温で溶かす。加熱してルビーの結晶を成長させて時間をかけて冷却する方法。
・鉛ガラス充填方法
コンンポジットルビーと呼ばれる。私が購入したのもこのルビー。コランダムに鉛ガラスを充填して整形する方法。
・ダブレット方法
ダブレットとは張り合わせるという意味。上の部分に無色透明なルビーを使用し、下の部分には色ガラスなどの模造品を貼り付ける方法。オパールやエメラルドなどによく用いられます。
※こちらの記事も参考に。
価値は100分の1?偽宝石の代表例「ダブレット」をまとめてみたよ
巧妙にすり替えられたルビーにも注意
ある宝石業者が、ニューヨークのアンティークジュエリーショーで、18金の台に1ctのルビーが入ったリングを購入しました。
もちろん信用できる宝石業者から購入したこと、そしてこの指輪にはティファニー社の刻印も入っていたため、安心して購入を決めたそうですが、日本に帰って鑑別書を取ったところ、合成ルビーとわかったとか。
ティファニーが合成ルビーと知らずに商品に仕上げたとは考えにくい(それでも可能性は0とは言えません。)ので、誰かが中石のルビーをすり替えてアンティーク市場に流通させたと思われます。
このように、プロの業者でも合成ルビーに騙されることがあるのです。
最後に
ルビーは合成石が特に多い宝石です。信用できるお店で買っても安心できないかも知れません。
御徒町で売られている格安のルビーも、内容を知った上で購入するならまだしも、よく分からずに買うのはとても危険です。
誰もが憧れるルビー。
しかしだからこそ合成石が多く出回っています。
ルビーは必ず鑑別書と一緒に購入してくださいね。
※合成石自体が悪い訳ではありません。悪いのは業者が事実を隠して高額に売ることです。合成ルビーとして販売されているものを消費者が納得して購入するのは問題ありません。
カラッツ編集部 監修