YAG(イットリウムアルミニウムガーネット:通称ヤグ)とGGG(ガドリウムガリウムガーネット:通称スリーG)と呼ばれる人工ガーネットをご存じでしょうか。
いずれも1970年前後にダイヤモンドの代用品として製造され流通していた人造宝石です。
現在では宝石として流通することは殆どなくなったそうですが、「幻」の人造宝石といわれ逆に価値が高まっているといいます。
今回は、そんな人工ガーネット、YAGとGGGについてのお話をお伝えしていきます。人工宝石の種類もご紹介しますので、よろしければ参考にしてくださいね。
目次
人工宝石とは?
まずは簡単に人工宝石について説明してみたいと思います。
人工宝石とは、天然石に似せて人が人工的に作った宝石のことです。
合成石や人造石のことを指します。
大まかに分類できますので、それぞれの特徴について少しご紹介しましょう。
化学的合成石
天然石と同じ物質を使用して、化学的に合成した人工宝石です。
光学的、化学的、物質的な特徴などが天然石と同じため、一目見ただけでは見分けが困難です。
ベルヌーイ法(火炎溶融法)やフラックス法などによる合成コランダム(ルビー・サファイア)と合成スピネル、合成エメラルド、合成アレキサンドライトなどが主に製造されてきました。
合成ダイヤモンドは別の方法によって作られます。
またギルソン社や京セラが製造する合成オパールも有名ですね。
人造石
あらゆる宝石のイミテーションとして、人工的に製造したものです。
物理的特徴は基本天然石と異なります。
チタン酸ストロウム(火炎溶融法)、キュービックジルコニア(スカルメルティング)、そして今回ご紹介する、YAG(イットリウムアルミニウムガーネット:通称ヤグ)、GGG(ガドリウムガリウムガーネット:通称スリーG)などが製造されてきました。
このほか、ガラス、プラスチック、練りターコイズやラピスラズリ、セラミックビーズなどもイミテーションとして使用されています。
ダブレット・トリプレット
複数の素材を張り合わせて、本物に似せたものです。
天然石とガラスの組み合わせや、天然石同士、ガラス同士など組み合わせは様々です。
2素材の組み合わせをダブレット、3素材もしくは、2素材+有色接着剤の組み合わせをトリプレットと呼びます。
ちなみに、上部にガーネットの薄板、下にガラスを置いたものは「ガーネット・トップ・ダブレット(GTD)」と呼ぶそうです。
本当に色々ありますね。。。
人工ガーネットとは
では次に、今回のテーマである人工ガーネットのお話に入っていきましょう!
人工ガーネットとは、ガーネットの結晶構造をもつ人造宝石です。
天然ガーネットのように珪酸(ケイ酸)を含んでいない酸化物ガーネットで、化学組成は天然と異なります。
流通当初は主にダイヤモンドの代用品として出回っていたそうですが、いずれも長く製造されなかったようです。
しかし現在はそれが逆に希少性があるとされ、過去に流通したYAGとGGGが高い価値で取引されているといわれています。
YAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)とは
結晶系 | 等軸晶系 |
化学組成 | Y3Al5O12 |
モース硬度 | 8.5 |
比重 | 4.5 |
屈折率 | 1.833 |
製造法 | チョルクラスキー法 |
1960年代に光学結晶として人工的に製造されました。
YAGはイットリウムとアルミニウムを複合した酸化物で、結晶構造は天然ガーネットと同じ等軸晶系です。
硬度が8.5と硬く輝きも強いことから、当初はダイヤモンドの模造品として使用されてきました。
現在宝石としては新たに製造されていないといわれていますが、古いYAGをリカットしたものは流通しているといいます。
レーザーなどにも使用されています。
色
ダイヤモンドの他にも様々な宝石の模造品として使用されていたYAG。
着色することによって豊富な色に変化するそうで、エメラルドの模造品となるグリーンや、黄、ピンク、青など多彩です。
特にパライバトルマリンに似たネオンブルーや、アウインに似たコバルトブルーなどは人気があるようですよ。
GGG(ガドリウムガリウムガーネット)とは
結晶系 | 等軸晶系 |
化学組成 | Gd3Ga7O12 |
モース硬度 | 6.5 |
比重 | 7.07 |
屈折率 | 2.03 |
製造法 | チョルクラスキー法 |
GGGはガドリウムとガリウムを主成分とする人造石で、コンピューターやメモリーの部品として開発されました。
化学的・物理的・機械的な特性を利用して、光通信のレーザー用素子や光アイソレーター基板などに使用されています。
GGGは屈折率が高く、ダイヤモンドに近い煌きを放つことから1970年代にダイヤモンドのイミテーションとして流通しました。
しかし、硬度が低いことと太陽光の影響で色が褐色になるなどの理由から流通量が減っていったといわれています。
色
GGGはカラーレス、青、緑などが製造されています。
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YAGとGGGの違い
画像:左2つ-YAG 右2つ-GGG
YAGとGGG、2つの違いを比較しやすいように表にまとめてみました。
YAG | GGG | |
モース硬度 | 8.5 | 6.5 |
比重 | 4.5 | 7.07 |
屈折率 | 1.833 | 2.03 |
主な用途 | 産業用や医療用のレーザー | 光学磁気薄膜用基板 |
モース硬度はYAGの方が8.5と高いですが、比重や屈折率は逆にGGGの方が高いですね。
屈折率が高いということは光にかざしたときの煌きが多くなります。
つまりGGGの方がギラギラ輝くイメージです。
現在の用途としては、YAGが産業用や医療用のレーザー、GGGは光学磁気薄膜用基板として主に使用されているそうです。
人工ガーネットの魅力
画像:左-YAG 右-GGG
かつてダイヤモンドの代用品とされたYAGとGGGですが、前述したように、現在宝石としては新たに製造されていないといわれています。
現在流通しているものの多くは、過去にロシアで生産された緑色や青色のものといわれ、パライバトルマリンやアウインの代用品として出回ることが多いようです。
これらの流通量は限られているものの、今では希少な存在となった人工宝石ということで、逆にコレクターの注目を集め、高い価値で取引されているといわれています。
天然石にはない輝きや色、インクルージョンの少ない透明感など、人造石には人造石の魅力があるような気がします。
天然石とは別の観点や用途のために人造石をもつことも宝石の楽しみ方の一つなのかもしれませんね。
最後に
人工ガーネットはもはや模造品としてではなく、独自の魅力を放つ希少な宝石として高く注目されていることが分かりました。
YAGもGGGも色が鮮やかで、美しい輝きを放ちます。
天然石とは異なる魅力をもつ「人造宝石」。一つコレクションに加えてみても面白いかもしれません。
カラッツ編集部 監修