モース硬度「9」! 世界で2番目に硬いサファイアでできた“サファイアガラス”の実力
腕時計などの商品説明に「サファイアガラス」と書かれていることがありますよね。私は実は宝石の前は腕時計を集めていたので、時計販売店でよく目にしていました。
最近はスマートフォンにも使用されているこのサファイアガラスですが、一体どんなものなのでしょうか。
目次
サファイアガラスは時計のどこに使われている?
サファイアガラスが使用されるのは、「風防」と呼ばれる、時計の文字盤を保護するためのガラス部分です。サファイアガラス以外にも、プラスチックやガラスなど、風防にはいろいろな素材が使われています。
私が腕時計を集めていた頃は、1万円以上の時計でサファイアガラスをよく見かける印象があったので、それほど安い時計には使用されないものだという認識があります。
サファイアガラスはサファイアなの?
サファイアガラスの正体は、その名の通りサファイアです。
でも、サファイアという宝石には青いイメージが強いですが、時計の文字盤が青いものなんてあまり見かけませんよね。腕時計のサファイアガラスは無色透明なので、サファイアに似ているというイメージもありません。
でも、実はサファイアのあの青色は微量の鉄分やチタンによる発色で、それらの物質を含まない無色透明のサファイアも存在するのです。サファイアガラスとして使用されるのは、そういったある意味純度の高いサファイアです。
ただ、サファイアガラスがサファイアでできているとはいっても、もちろん天然サファイアではありません。サファイアガラスには合成サファイアが使われています。
あれだけ透明度が高く、大きな天然サファイアをガラス状に薄くスライスしていたとしたら、かなり高額になりそうですよね。
なぜ、風防にガラスでなくサファイアが使われている?
風防にサファイアが使われているのは、ガラスよりも硬度が高くて丈夫だからです。窓ガラスのモース硬度は5.5くらいですが、サファイアは9です。強化ガラスでさえ硬度が6.5しかないことを考えると、サファイアはかなり硬いことが分かりますよね。硬いことのメリットとしては、傷がつきにくいということが挙げられます。
風防に傷が多くなると、文字盤が見えにくくなるので、傷がつきにくいということは腕時計にとっては重要なメリットなのです。
ダイヤモンドガラスが採用されたなかった理由
硬さでいったら、ダイヤモンドはモース硬度10です。その上、無色透明なのに、なぜサファイアが採用されたのでしょうか。その理由は、ダイヤモンドの輝きにあります。ダイヤモンドを風防に使ってしまうと、キラキラと光りすぎて、肝心な文字盤が見えにくくなってしまうからなのです。
もちろん、サファイアもプラスチックの風防などと比べると、光りやすいという一面はあるので、なかには光らないようにコーティングされたサファイアガラスも存在しています。サファイアガラスの角度を変えたときに青く光ってみえた場合は、コーティングされている可能性が高いです。
また、輝き以外にも「ダイヤモンドが高額である」という理由もあります。人工ダイヤモンドであってもそれほど安くはならないため、風防には採用しにくかったという一面もあるようです。
他にも時計に使われるこんな宝石
機械式時計の裏側に「17jewels」といった表記を見たことはないでしょうか。これは、機械のなかに組み込まれたルビーの数です。もちろん、こちらも合成ルビー。サファイアだけでなく、内部にはルビーも使われているんですね。
ここでも、もっとも硬度の高いダイヤモンドでなく、サファイアと同じコランダムである硬度9のルビーが使われています。その理由は、ダイヤモンドよりもルビーの方が摩耗に強いから。
サファイアやルビーなどのコランダムは、美しいだけでなく、丈夫さという点でも優れているということですね。
ちなみに私は「〇jewels」と裏面に書かれた時計を見ると、歯車のなかに美しいルビーが光っている様子を妄想して、少しワクワクしてしまいます(笑)。
風防にも、内部の機械にも使われなかったダイヤモンド。もちろん、宝石としては王様といってもいいような存在ではあります。ただ、硬さがあって傷はつきにくいものの、割れやすいという性質もあるんですよね。
そう考えると、全てにおいて“完璧”といえるようなパーフェクトな宝石は存在しない気がします。そんなはかなさも、宝石の魅力のひとつといえるかもしれませんね。
カラッツ編集部 監修