ブラックオパールは、ダークな地色に虹色の遊色効果を現す宝石です。
オパールの中でも異彩を放つ存在感があり、多くの人々を魅了し続けてきました。
独特の遊色パターンを見せるものもあり、知るほどに好きになる、そんな宝石ではないでしょうか。
今回はブラックオパールの魅力、偽物の存在と見分け方、価値などについて詳しくご紹介していきたいと思います。
目次
ブラックオパールとは?
ブラックオパールは石の地色である背景色が濃いブルー、グレー、ブラックなどをしたオパールを指します。
和名では「黒蛋白石(くろたんぱくせき)」と呼ばれています。
ブラックオパールの産地
ブラックオパールの産地として有名なのは、オーストラリアのサウスウェールズ州にあるライトニングリッジです。
この他、オーストラリアのクイーンズランドやサウスオーストラリアでも産出されています。
ブラックオパールが選ばれる3つの理由とは?
1. 希少性
ブラックオパールはオーストラリアで産しますが、ほとんどがライトニングリッジで採取されるといいます。
産地が限られており、産出量が少ないことから、希少性が高い宝石の一つに数えられています。
2. 遊色効果
遊色効果(プレイオブカラー)とは宝石がもつ特徴のひとつで、虹のような色彩が見られる現象のことをいいます。
この遊色効果をもつ宝石の代表がオパールです。
遊色効果は単に出るか否かだけでなく、遊色の形状や鮮やかさなどによって評価が変わります。
赤い斑が最も高く評価され、次いでオレンジ、イエロー、グリーン、ブルー、パープルの順で評価されます。
この他、色の大きさや集まり方、パターン(模様)なども価値に影響します。
細かくチラチラとした遊色よりも大きくてはっきりとした遊色であるほど高く評価されています。
3. 神秘的な色合い
ブラックオパールの地色は濃いブルー、グレー、ブラックをしており、表面にブルー、グリーン、イエロー、レッドなどの色彩豊かな遊色が見られます。
ダークな背景に浮かび上がる遊色効果はとても神秘的な印象があるため、コレクターにも大変人気です。
ブラックオパールの偽物と見分け方
価値が高く人気の宝石には偽物の存在がついてまわります。
調べてみたところ、現在市場にはブラックオパールの様々な偽物が出回っているようです。
天然オパールを処理したものから合成石、ダブレットなど、中には見分けが困難なものも流通しています。
いずれも消費者が誤解を受けないようきちんと事実を表記して販売されていれば問題はありません。
事実を隠したり、わざと分かりにくく表記して実価値より高額に販売されていることが問題であり、注意が必要です。
それでは、ルーペなどで確認できる、天然石と偽物の見分け方を簡単にご紹介していきましょう。
加熱処理されたオパール
エチオピア産や砂岩鉱床で採れた地色の薄いホワイトオパールなどを加熱して、ブラックオパールの様に色を濃くしたものです。
特に最近、エチオピア産を加熱したものが多く流通しているようです。
エチオピアでは、カーボンを深く浸透させ色を改変させる、古典的なスモーク加熱処理(煙加熱処理)を行っていたそうです。
しかし最近は砂糖と硫酸を用いた加熱処理も行われているそうです。
この処理ではオパールを砂糖溶液に浸してから硫酸に漬け、その後ゆっくりと加熱することで色を濃くします。
さらに、キャノーラ油を使う新しい加熱処理法も報告されています。
鍋にオパールが浸せるほどの油を入れ、4時間ほど弱火で煮込みます。色が黒くなったら火を止め、油の中で冷ますという料理のような方法です。
見分け方
加熱処理されたオパールは、ルーペで見ると地色にムラがあることが分かります。
また、加熱処理による焦げが石の端などに見られることがあります。
極端に透明度が高かったり、ブラックオパール特有のポッチが見られない場合も、加熱処理の疑いがあります。
しかし、これらは見慣れていないと判別が難しい場合があります。
もし不安であれば、鑑別機関に相談してみましょう。
ダブレットオパールとトリプレットオパール
複数の異素材を張り合わせたものです。
2枚の張り合わせをダブレットオパール、3枚の張り合わせをトリプレットオパールと呼びます。
ダブレットオパール
ダブレットオパールは、上半分に天然ブラックオパール、下半分にプラスティックといったように、2枚の薄片を張り合わせたものです。
ブラックオパールと別素材の場合もあれば、ガラスとプラスチックなどオパールとは関係のない異素材同士を張り合わせたものもあります。
トリプレットオパール
トリプレットは、3枚の薄片を張り合わせたものです。
真ん中にオパールの薄片を置き、その上下にプラスチックなどの別素材を重ねてサンドイッチ状態にしています。
ブラックオパールのトリプレットの場合は、上の画像のように、上部が透明で、下部にはブラックやダークな地色の素材を使う場合が多いようです。
上部の透明素材には、クォーツなどが使われる場合もあるとのことです。
見分け方
●石の裏側
天然のブラックオパールは裏部分に加工をしていないため隠す必要もなく、ジュエリーの場合は地金などでふさいでいないことが多いと聞きます。
もし地金が被せてあるようなデザインなら、ショップに確認するのも良いでしょう。
●石の側面
石の側面から見て、薄片を張り合わせた境目がないかを確認します。
境目が直線で、あまりにもはっきりしているものは張り合わせと疑って良いでしょう。
合成オパール
合成オパールとは人工的に作られたオパールですが、天然オパールと同じ化学組成、内部構造、物理的性質、外観をもっています。
現在は多くの合成オパールが製造されています。
合成、人工、クリエイテッドとはっきり表記して販売していれば購買側も理解して選ぶことが出来ます。
しかし、中には天然と偽って流通していることもあるので注意が必要です。
こちらでは、主要な合成オパール製造社をご紹介します。
ギルソン
1974年にスイスのピエール・ギルソンによって発明された、世界初の合成オパールです。
天然オパールの化学的・物理的特性を模倣したもので、見た目が本物そっくりです。
京セラ
世界で唯一、クリエイテッド・オパールと呼ばれる合成石を生産しています。
天然オパールと化学的・物理的・光学的な特質がほとんど同じですが、天然石がもつ不純物がないため、高い透明感をもちます。
オーロラオパール
ドイツのPinfire – Gems & Colloids社が製造する、新しいタイプの合成オパールです。
表面に流れるような色彩を見せるのが特徴で、ルースではなく塊で販売しています。
オーロラオパールでは合成オパールに特徴的な柱状模様が見られません。そのため、カットする際の方向を確認する必要が無いのです。
見分け方
画像:合成オパールの柱状構造
一般的に合成オパールと天然オパールとを見分けるには、次の3つの方法があります。
1.石を上から見て斑がモザイク状であること。
2.石の後ろから見て魚のうろこに似た模様があること。
3.横から見て柱状構造があることなどです。
ギルソン
ギルソン社製ブラックオパールは、天然のように蛍光性を示さないといいます。
色の斑がトカゲの皮膚に似たリザード・スキンと呼ばれるモザイク状で現れており、斑の境目も不自然です。
京セラ
色の模様が規則的で、横から見ると柱状構造が確認できます。さらに、柱状構造の端に魚のうろこ状の模様を見せることがあります。
オーロラオパール
方向性のない渦巻のような色の模様を描き、真珠状の光沢をもっています。
しかし、天然石でもこのような見た目のものがあります。
オーロラオパールは、合成石に特徴的な柱状構造も見せません。そのため、見分けが比較的困難だといわれています。
ブラックオパールに施される処理
前述したとおり、ブラックオパールの殆どは、オーストラリアで産出されています。
オーストラリア産は一般的に人工処理が施されることはほとんどないといわれています。
天然のブラックオパールは色の濃さや遊色の個性も様々ですが、人工処理を施さないことにより、原石の魅力をそのまま楽しむことが出来るのです。
遊色効果のパターンについて
オパールの遊色効果は、色の形状や大きさにより見た目が異なります。この模様をパターンといい、それぞれ評価と価値も違ってきます。
代表的なパターンについて、こちらでご紹介していきます。
ハーレクイン
遊色パターンの中で、最も希少性が高いと評価される模様です。
ハーレクインは、長方形やひし形の様々な色をした斑が接触した状態で繰り返し現れるのが特徴的です。
ハーレクインとは、中世イタリアの喜劇役者のことです。
彼らが着ていたカラフルな衣装の模様に似ていることから、こう呼ばれるようになったといわれています。
リボン
様々な色が帯状に繋がり、石の上で平行に並んだものです。
お互いに全く異なる色が並んでいたり、石全体で対照的に並んでいるものほど輝きが増し、評価も高くなります。
フラッシュ
石を特定の角度から見た時、広い範囲に明るい閃光を見せます。
石を手にもって動かすとパッと光るような鮮やかな色合いが放たれ、とても印象的です。
ローリングフラッシュ
オパールを特定の方向に向けることで、色が転がっているように見えるパターンです。
鮮明な閃光がコロコロと動くことから、ローリングフラッシュと呼ばれています。
シャトヤンシーに似た一筋の線を見せるものはキャッツアイとも呼ばれ、大変高く評価されます。
この他にも、いくつかのパターンが存在します。
▶オパールの遊色パターンについてはこちらの記事も参考に
ブラックオパールの価値基準と市場価格
ブラックオパールを買う前に価値基準を知っておくことで、より賢い選択をすることが可能になります。
色、透明度、カット、遊色効果などブラックオパールを評価する際の基準について、簡単にご説明していきます。
価値基準
色
ブラックオパールの地色は、黒く濃いほど評価が高くなります。
透明度
不透明なものが高評価となります。
このほか、ひび割れやピット、キズなどの欠点がないかを評価します。
カット
原石の色、遊色効果、遊色パターンなどが美しく表現されるカットであるかを確認します。
カボションがドーム型で平らすぎず高すぎず、バランスの整った丸みであること。
そして、どの角度から見ても美しい色が確認できることなどが高評価の条件です。
遊色効果
遊色の鮮やかさ、色の広がり方、地色に対する比率、パターンの種類などで評価します。
色が鮮やかで大きな斑が集まったものは、点状で石全体に散らばったものよりも人気があります。
ただし、石に遊色効果が見られない部分があると、その分評価に影響してしまいます。
パターンによっても評価が分かれますが、特に希少なハーレクインには高い価値が付いています。
市場価格
ブラックオパールは、カラットやクオリティによって価格も様々で、数千円から入手することも可能です。
カラットが大きくて美しい遊色効果を見せるものになると、数千万円の価値が付く場合もあります。
さらにハーレクインと評価されたものは、クオリティによって数億円の価値になることもあるようです。
どこで買える?
ブラックオパールはルース、ジュエリーともに取り扱っているお店は比較的多いという印象があります。
実在店舗からオンラインショップまで、多くの宝石やジュエリー専門店などで入手することが可能です。
ただし、前述したように偽物が出回っていることも確かです。
購入する前には、購入者の評価や口コミなどを確認して、信頼できるショップを選ばれることをオススメします。
ブラックオパールのお手入れ方法
オパールは全般的にお手入れや保管で気をつけた方が良い点が色々ある宝石です。
ブラックオパールも例外ではありません。
オパールは多孔質という性質をもち、目に見えない微細な穴が表面に沢山空いています。
そのため、水分を吸い込みやすいといわれていますので、ジュエリーとして身に着ける場合は特に、化粧水や香水などがかからないよう、身支度を全て終えてからに着けたほうが良いでしょう。
また、熱や乾燥に弱いため、保管する際は直射日光の当たる場所や乾燥しやすい場所は避けて下さい。
ドライヤーや暖房器具の熱が直接当たらないようにも気をつけた方が安心です。
衝撃にも弱いため、強くぶつけたり硬い床に落としたりしないよう注意してあげて下さいね。
最後に
濃い地色をしたブラックオパールは遊色効果が美しく映えることもあり、コレクターにも人気が高いオパールのひとつです。
まるで宇宙に虹が浮かんだような幻想的な雰囲気は、ずっと見つめていたくなるほど魅力的ですよね。
素敵なブラックオパールと出会うことに繋がれば幸いです。
カラッツ編集部 監修