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ジンカイトはどんな宝石?合成ジンカイトの誕生にまつわるユニークな逸話とは?

ジンカイト ルース

ジンカイト(またはジンサイト)という鉱物をご存じでしょうか。

亜鉛(Zinc)を主要成分とする鉱物で、アメリカのフランクリン鉱山とスターリングヒル鉱山から産出されるものが有名です。

合成ジンカイトもあり、そちらの方が流通量が多く知名度も高いのですが、人工的に作られるようになったきっかけはなかなかユニークです。

今回は、そんなジンカイトについて鉱物としての情報特徴合成ジンカイトの歴史価値などについて、色々お伝えしていきましょう。

ジンカイト(ジンサイト)とは?

ジンカイト ルース2

亜鉛の酸化鉱物であるジンカイト(ジンサイト)は、産地が限られ、産出量も少ない宝石です。

原石は透明~半透明で、オレンジやレッドのものが多いといわれます。

天然のジンカイトは希少ですが、合成のジンカイトは比較的多く流通しているようです。

しかし合成といっても、一般的な合成宝石とは生成のされ方が異なるものもあり、面白い歴史と特徴をもっています。

まずは基本情報から見ていきましょう!

鉱物としての基本情報

英名 Zincite
和名 紅亜鉛鉱(こうあえんこう)
分類 酸化鉱物
結晶系 六方晶系
化学組成 ZnO
モース硬度 4
比重 5.7
屈折率 2.01-2.03
光沢 樹脂光沢

特徴

モース硬度が4と低く色鮮やか透明度の高いものも多くない印象のジンカイト。

希少性が高いこともあり、ルースやジュエリーとして市場で見かけることは少ない宝石です。

ジンカイトは蛍光すると思われていることがあるようですが、実際はジンカイト自体は殆ど蛍光を示さないのだそうです。

かつてジンカイトの主な産地として有名だったアメリカニュージャージー州フランクリン鉱山スターリングヒル鉱山ではジンカイトと共に鮮やかな蛍光色を示す鉱物が多く産出され、それらが一つの標本として出回ることも多かったそうです。

その結果、他の鉱物の蛍光を見てジンカイトも蛍光するという誤解が生じてしまったのではないかといわれています。

ただ、合成ジンカイトの方は黄色や緑色の蛍光色を示すそうですよ。

 色

オレンジイエローイエローグリーンレッドディープレッドなどが見つかっています。

実は本来ジンカイトはカラーレスなのだそうですが、微量元素としてマンガンが入ることにより赤く発色するといわれています。

マンガンが多いほど赤みが強く濃くなるそうです。

 産地

ジンカイトの産地は世界的に見て多い方ではありません

かつて、一大産地だったアメリカニュージャージー州の2つの鉱山が閉山してしまい、現在最も重要な産地といわれるのは、ナミビアのツメブ鉱山です。

このほか、スウェーデンのヴェルムランドとノルトマルクでも産出されます。

原石の形

亜鉛の酸化鉱物であるジンカイトは、亜鉛鉱床での副成分鉱物として産出されます。

フランクリナイト(フランクリン鉄鉱)やカルサイト(方解石)を伴なっていることが多く、殆どが塊状や粒状で発見されるといわれています。

稀に明瞭な形をした結晶で見つかることもあり、それらの形状は片側がフラットで、反対側が錐(きり)状になった六角錐の形をしているのだそうです。

また、ジンカイトの結晶は亜鉛鉱床の化学的変質や変成作用による、二次的な割れ目の中にのみ生成すると考えられているそうです。

かつて、一大産地として有名だったのは前述したとおり、アメリカニュージャージー州のフランクリン鉱山とスターリングヒル鉱山です。

ここは、フランクリンの大理石地帯と呼ばれ、火山岩のマグマが石灰岩の層に何度も入り込み特殊な変成作用が起きたために生成した珍しい鉱物が発掘されることでも有名でした。

他の鉱山に見られないようなものも含め、250種以上の蛍光鉱物が産出されており、マニア注目の鉱山でもあったようですね。

しかし、残念ながら現在は、経済的な理由により閉山されてしまったそうです・・。

 名前の意味

ジンカイトは英語で「Zincite」と綴ります。

亜鉛を含む酸化鉱物のため、英語で亜鉛の意味をもつ「Zinc」から名付けられたのですね。

和名は紅亜鉛鉱。こちらは赤色の亜鉛鉱物という意味です。

ちなみに、亜鉛鉱物で宝石としても有名なものに閃亜鉛鉱(スファレライト)があります。
ダイヤモンドより高い分散率をもつことから美しいファイアが魅力の宝石です。

合成ジンカイトについて

合成ジンカイト ルース

市場では透明な結晶や蛍光性を示すジンカイトも多く出回っているといいます。

天然ジンカイトとして販売されていることもあると聞きますが、実際は殆どが合成石なのだそうです。

実はこの合成ジンカイト、先にも少し触れましたが、なかなかユニークな生成のされ方と逸話をもちます

ということで、合成ジンカイトの詳しいお話に入っていきましょう!

 歴史

合成ジンカイトの生成のきっかけは諸説あります。

ただいずれもポーランドで、亜鉛工場煙突内で昇華鉱物として生成したとか、煙突火災が起こった際に偶発的に作られた、とか、亜鉛鉱山で鉱物が燃えた際にできた、などといわれています。

いずれにせよ、初めは偶然できた副産物だったように考えられますが、大量生産が可能なため分類としては人工鉱物になるようです。現在では人工的にも作られています。

現在合成ジンカイトの生成には「Gasphase Process(気相成長法)」や、ロシアでの「Hydrothermal Process(水熱法)」が用いられているとのことです。

それぞれの詳しい方法と特徴についても少しご紹介しましょう。

 生成方法

Gasphase Process(気相成長法)

最初に固体を昇華させて、基板の上に結晶を生成させる昇華法です。

まず、高温の容器の下部に原料となる固体を、上部に種結晶と基板を置き、原料部分だけ高温になるよう調整します。

原料が蒸発して蒸気が発生し、容器の上部にある種結晶又は基板へと運ばれて、そこで結晶を生成します。

Hydrothermal Process(水熱法)

高温高圧による水の性質を利用して、合成結晶を生成する方法です。

まず、オートクレーブという高温高圧の容器出発物質を入れて密封し、加熱して結晶を成長させます。

高温高圧下の水は、有機物を溶解する性質を帯び、イオン分子が拡散しやすくなるという特質を利用した生成方法です。

 合成ジンカイトの色

前述したとおり、ジンカイトは本来カラーレスの鉱物です。

天然ジンカイトはマンガンが混入することが多いことからオレンジ~レッドを発色するものが多いですが、合成ジンカイトにはカラーレスのものも多く見られます。

強い光沢と透明感があり、鮮やかなオレンジやイエロー、ディープレッドやグリーンをしているのが特徴的です。

ジンカイトの価値基準と買える場所

合成ジンカイト

画像は合成ジンカイト

ジンカイトは主要産地であったニュージャージー州の鉱山が閉山し産出量が減ったこともあり、希少価値が高まっているといいます。

カットされること自体珍しいため、ファセットカットを施したルースが出回ることも少ないといえるでしょう。

入手することが困難なため、天然のジンカイトはクォリティによっては多少高値が付くこともあるようです。

一方、合成ジンカイトはお手頃な価格のものもあるようですので、こちらの方が比較的手に入れやすいかもしれません。

ただだからと言って、常に何処でも売っているという程ではないと思いますので、興味のある方はオンラインショップミネラルショーなどを中心に少し探してみると良いと思います。

最後に

知れば知るほど面白い、ジンカイト。

ポーランドの亜鉛工場で偶然生成したという合成ジンカイトも個人的にはとても興味深く面白い話だと思いました。

ジンカイトは、高い屈折率(2.01-2.03)と分散率(0.127)をもつため、カットによっては強いファイアを放つといいます。

天然は難しいかも知れませんが、合成ジンカイトであれば強いファイアを放つ透明度の美しいルースに出会えるチャンスもあるかもしれません。

機会があれば私もぜひ見てみたいと思います。

但し、合成ジンカイトが天然として販売されていることもあると聞きますので、注意して下さいね。

カラッツ編集部 監修

<この記事の主な参考書籍・参考サイト>
『ネイチャーガイド・シリーズ 岩石と鉱物』
 著者:ロナルド・ルイス・ボネウィッツ 訳:伊藤伸子/発行:科学同人
『楽しい鉱物図鑑』
 著者:堀秀道/発行:草思社
『パワーストーン百科全書』
 著者:八川シズエ/発行:中央アート出版社
『美しい鉱物と宝石の事典』
 著者:キンバリー・テイト 訳:松田和也/発行:創元社
◆『岩石と宝石の大図鑑』
 監修:ジェフリー・E・ポスト博士/著者:ロナルド・ルイス・ボネウィッツ 訳:青木正博/発行:誠文堂新光社 ほか

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