マリーアントワネットやヒトラーも!歴史上有名な「メモリアルリング」って何?

メモリアルリング

マリーアントワネットやヒトラーも!歴史上有名な「メモリアルリング」って何?

マリーアントワネット
出典:『指輪の文化史』浜本隆志
河出書房新社 より

ヨーロッパでは、約束事は言葉だけではなくモノによってその証拠とする習慣が昔からありました。

結婚指輪もいわば、「婚礼儀礼の証拠品」とするメモリアルリング。中世ヨーロッパの大学では博士の学位を取得すると記念に指輪を貰えることもあったとか。

今でも優秀な大学の卒業生がカレッジリングとして指輪をはめる習慣があります。これも「メモリアルリング」ですよね。

そもそも外国人はメモリアルリングが大好き。皇帝や国王の戴冠式、同盟記念、褒章に記念指輪(メモリアルリング)を贈呈する事例はたくさんあります。

それを考えると、日本では結婚、婚約指輪以外であんまりメモリアルな指輪の話題はありませんね。ダイヤモンドに目が眩んだ、貫一、お宮の話ぐらい?

今回は、歴史上有名な「メモリアルリング」のお話を紹介します。

白髪を指輪に遺したマリー・アントワネット

マリーアントワネットの指輪
出典:『指輪の文化史』浜本隆志
河出書房新社 より

思い出にナニカを残したい、その気持ちはわかります。でも自分の髪の毛を残すのはいかがなものか。

私は昔、イギリスのアンティークショップで値切り倒してロケットペンダントを買い、何気にそこに貼られていた写真を剥がしたら三つ編みに編み込まれた遺髪が出てきてのけぞった経験があります。

しかし遺髪を遺す、という習慣は、メモリアルリングではよくあること。

かのマリーアントワネットも自分の遺髪を指輪に入れて友人、家族に贈っています。

1789年、フランス革命によってブルボン王朝は崩壊。

パンもお菓子も食べられない民衆によって処刑されたマリー・アントワネットは、革命派を欺き、フランス脱出を試みます。

その際に臣下に指示した手紙や文書の他に、イギリスの友人に贈った指輪が現在も遺されています。

そこには白くなった白髪が封じられ、「心痛のあまり白くなりました」という窮状を訴える文が添えられていたとか。

出典:『指輪の文化史』浜本隆志
河出書房新社 より

また、マリーアントワネットは姪であるマリー・アメリーにも金とエナメルでできたバラの柄が描かれた指輪を遺しています。

指輪の側面のバラの柄のカバーを開くと、マリー・アントワネットの遺髪が収められており、指輪には「私を忘れないで」という文字が。

逃亡寸前にこの指輪を作らされた職人は、果たして指輪の代金を貰えたのでしょうか。宝石屋としては、ソコがとても気になりますね。。。

マリー・アントワネットは宝石好きで有名でしたが、他にも自分の娘マリーテレーズと息子のルイ・ジョセフの写真に大きなルビーとパールをあしらった豪華なメモリアルリングも制作しています。

ヒトラーが愛したドクロのリング

出典:『指輪の文化史』浜本隆志
河出書房新社 より

なぜ指輪にドクロのデザインが?
高円寺駅周辺にたむろしているミュージシャン。
このドクロのリングの装着率、結構多いです。。

トゲトゲがついた洋服を愛用している人に多いこの骸骨マーク。
「メメント・モリ」(死を想え)という意味だそうですが、実はこの歴史を作ったのは、チョビヒゲがトレードマークのあの人、アドルフ・ヒトラー。

ナチスのハーケンクロイツも有名ですが、ナチスの親衛隊は、このドクロをシンボル化した「名誉指輪」を制定して組織の結束を図ろうとしたそうです。

この指輪を考案したのは、ヒトラーの側近だったヒムラー

名前を聞いただけでヒトラーをこよなく愛したことがわかりますが、彼は1934年からこのメモリアルリングを制作し、隊員歴の古い順に身につけさせたそうです。

その数、ざっと5000個。もちろん受賞の際にはヒトラー総統への忠誠を誓わされたそうです。指輪のデザインは4種類。

栄誉の対象者の功績によってルーン文字を図案化し、ドクロマークの隣に「勝利」「霞」「鉤十字」「ダブル」という名称のデザインが施されていたとか。

このメモリアルリング、隊員が戦死したり死亡するとヒムラーに返還する決まりになっていたそうです。

この指輪はナチス親衛隊の証。
つけていれば怒りまくったユダヤ人に命を狙われたでしょう。隊員の決死の心意気を試すためのメモリアルリングだったようです。

最後に

vintage paper
その他にもメモリアルリングで有名なのはフリーメイソン

今でも活躍しているというこの秘密結社は、コンパスと定規をシンボルにしたデザインの指輪が有名です。

そういえば、昔観たニコラス・ケイジの映画、「ナショナル・トレジャー」の中で、最後に刑事がチラリと見せたのがこのフリー・メイソンの指輪でした。

トレジャーハンターだったニコラス・ケイジが、やっと見つけたお宝を即座に国に寄贈することを決意したのは、この指輪を見たから。お互い同志と理解したからでしょうね。面白い映画だったなぁ。

私も欲しい、メモリアル・リング。大好きな猫のデザインで作ってみようかしら。

*参考文献*
『指輪の文化史』浜本隆志 河出書房新社

カラッツ編集部 監修