ジャンボ!(こんにちは)
人類発祥の地とも言われているタンザニアは、宝石旅を楽しむことができる国の一つです。
タンザニアの宝石といえばタンザナイトが真っ先に浮かぶ方も多いと思いますが、実は何と、50種類以上もの宝石が採れるといわれているのですよ!
なぜタンザニアの大地に様々な種類の宝石が眠っているかというと、モザンビークベルトの影響が大きいからです。
タンザニアで採れる宝石って何?モザンビークベルトとは?気になってきたでしょうか。
では、タンザニアで1年暮らした私の経験をもとに、タンザニア宝石旅のおススメポイントをご案内しましょう。
※筆者がタンザニアで暮らした頃の経験を元に書いている箇所もございます。現在の状況と異なる部分もあるかもしれませんが、予めご了承下さい。
目次
タンザニアってどんな国?
タンザニアは南半球の国で、アフリカ大陸の東海岸に位置しています。
面積は日本の約2.5倍。人口は日本の約半分の5800万人です。
正式名称はタンザニア連合共和国。首都はドドマですが、実質的には経済の中心地ダルエスサラームに首都機能があります。
タンザニアといえばアフリカ大陸の最高峰キリマンジャロ、セレンゲティやンゴロンゴロなどのサファリ、独特の酸味が美味しいコーヒーなどがとても有名ですね。
この国には、カラフルな衣装と装飾品を身に着けたマサイ族をはじめ、約130の民族が暮らしているといわれています。
タンザニアの国旗は4色。ブラックは国民、グリーンは大地、ブルーは海、そしてゴールドは鉱物資源を象徴しています。
タンザニアの場所
アフリカ大陸の東側にあるタンザニアは、インド洋に面しており、ケニア、モザンビーク、コンゴ、ウガンダ、マラウィなどに囲まれています。
国際空港は、キリマンジャロ空港とダルエスサラームのジュリウス・ニエレレ空港、ザンジバル空港など。
日本からの直行便はないので、ヨーロッパや中東を経由することになるでしょう。
観光客の多くはキリマンジャロ空港に降り立ち、サファリやキリマンジャロ登山を楽しみます。
タンザナイトが採れることで有名なメレラニ鉱山があるアルーシャは、キリマンジャロ空港の利用が便利です。
タンザニアの歴史
タンザニアには、人類発祥の地とも言われるオルドヴァイ渓谷があります。
そこではアウストラロピテクスの完全な頭骨をはじめ数多くの化石人骨や石器が見つかっており、人類の進化を知るための重要な場所となっています。
タンザニアの海には今でもシーラカンスが泳いでおり、日本からの研究者も来ていましたよ。
タンザニアには太古から変わらない自然環境が多く残っているのです。
紀元前10世紀ごろバントゥー系民族が移住。7世紀になるとアラブ人やペルシャ人が渡来し、イスラムとアフリカの土着文化が混じり合って独特のスワヒリ文化が築かれました。
その後、ポルトガル、オマーン、イギリス、ドイツ、ベルギーなどの植民地となり、1961年に独立しました。
また、タンザニアには奴隷貿易や象牙貿易の拠点として利用されたという悲しい歴史もあります。
タンザニアで採れる宝石の種類
画像:タンザナイト
タンザニアでは、冒頭でも触れた通り、50種類以上の宝石が採れるといわれています。
主な宝石は、タンザナイトやツァボライトを始めとした各種ガーネットの他、ルビー、サファイアなど。
それから、トルマリン、エメラルド、アクアマリン、アレキサンドライト、アメジスト、スキャポライト、スピネル、ジルコンなども産出されます。
世界最古の一つともいわれているダイヤモンド鉱山も操業しており、量は多くありませんがピンクダイヤモンドやホワイトダイヤモンドが採掘されています。
なぜこんなに数々の宝石が眠っているかというと、前述の通りタンザニアにはモザンビークベルトが走っているからです。
まずは、モザンビークベルトについてお話ししましょう。
モザンビークベルトとは
モザンビークベルト(モザンビーク造山帯)とは、地球の高温高圧エネルギーによって作られた、宝石が生成されやすい広域変成岩帯のことです。
今から何億年も昔、地球上にはゴンドワナ超大陸がありました。そして、地殻とマントルとの間の活発な構造変化が起きた結果、モザンビークベルトが形成されたと考えられています。
ゴンドワナ超大陸はその後ゆっくりと分散し、大陸の移動と共にモザンビークベルトも分裂していきました。
現在モザンビークベルトは、モザンビーク、タンザニア、ケニア、エチオピア、スーダン、マダガスカル、インド南部、スリランカ、南極大陸などに残っています。
タンザニアでは国土の東半分の殆どにモザンビークベルトが分布しており、1992年の調査で18カ所確認された宝石産地のうち16カ所がモザンビークベルト上に存在していました。
タンザニアをはじめモザンビークベルトがある国々は、様々な種類の宝石が採れるポテンシャルを秘めているのです。
では次に、タンザニアで採れる代表的な宝石について見てみましょう。
タンザナイト
タンザナイトは12月の誕生石としても知られている、とても人気の高い宝石の一つです。
ブルーからバイオレットの地色で、見る角度によって色が変わって見える多色性がとても魅力的で、エキゾチックな雰囲気を感じる方も多いと聞きます。
タンザナイトは、現在のところメレラニとレラテマの2か所で採れるといわれています。両方とも隣り合った地域で、モザンビークベルトの上にあります。
ダルエスサラームのショッピングモールに入っている宝石店で、グリーンがかったタンザナイトや、グリーンとブルーのバイカラータンザナイトが手頃な価格で販売されていたのを見たことがありますよ。
メレラニ鉱山やレラテマ鉱山の近くにある都市アルーシャでは、さらに様々な品質のタンザナイトを見ることができるでしょう。
他の国の宝石店でもタンザナイトの取り扱いはありますが、あらゆる品質のタンザナイトを大量に見ることができるのは、やはり産出国であるタンザニアならではでしょう。
タンザニアでは、予算に応じたグレードのタンザナイトを探すことが可能なのです。
ツァボライト
画像はイメージです。産地は不明です。
ツァボライトはガーネットの一種で、中にはエメラルドそっくりの色と輝きをもつものもあります。
その鮮やかなグリーンは内側から発光しているかのような強烈さがあり、見るものを惹きつける魅力に溢れています。
ツァボライトの歴史が始まったのは1967年のこと。スコットランド人の地質学者キャンベル・ブリッジス博士が、タンザニア北東部で見つけたことが始まりといいます。
しかしながら、タンザニアでは採掘権が得られず、地続きにあるケニアで調査を続け、ツァボ国立公園で再発見。ケニア側から採掘権を得た後、本格的な採掘を始めたと伝わります。
正式名称はグリーン・グロッシュラーガーネットですが、ティファニー社がツァボ国立公園にちなんでツァボライトというコマーシャルネームを付け販売したことから、ツァボライトの方が一般的に知られています。
現在では、モザンビークベルト上にある、タンザニア、ケニア、マダガスカルなどで産出されています。
タンザニアでツァボライトが採れる地域は、現在のところタンザナイトと同じメレラニとレラテマの2か所だといわれています。
ミントガーネット
画像はイメージです。産地は不明です。
ミントガーネットは、前述のツァボライトと同じ、グロッシュラーガーネットの一種です。
ツァボライトよりは淡いグリーンで、ミントの葉っぱのような色合いがとても爽やかな感じを受ける宝石です。
タンザナイトと同じメレラニ鉱山で1998年に発見されたといわれる比較的新しい宝石で、メレラニ・ミントガーネットとも呼ばれています。
ミントガーネットには、ブラックライトを当てると鮮やかなオレンジ色に変化する「UVタイプ」が存在しています。
私は実際にUVタイプのミントガーネットをダルエスサラームの宝石店で見たのですが、その劇的な色の変化に感動してしまいました。
どれも大粒で透明度が高く、照りが良くてキラキラしたペパーミントグリーンのルースが、ブラックライトを当てたとたん、蛍光塗料のようなオレンジ色に変わったのです。
それまでミントガーネットの存在を知らなかった私は、タンザニア産宝石の奥深さを実感しましたよ。
ルビー
画像はイメージです。産地は不明です。
タンザニアは、アフリカで初めてルビーが発見された国とされています。
当初は品質の低いルビーしか採れず、工芸品などに用いるしかなかったそうですが、現在ではかなり高品質のルビーが採れることもあるようです。
タンザニア国内にはモザンビークベルト上にルビーの採れる地域が12カ所ほどあって、様々な品質のルビーの採掘が行われています。
グリーンのゾイサイトが赤いルビーをとりまいているルビーインゾイサイトもタンザニアで採れますよ。
不透明な宝石ですが、色のコントラストがハッキリしていてとても個性的な雰囲気があります。
2008年には素晴らしい品質で大粒のルビーが発見されました。
それは合成品と疑われるほど、透明度が高く鮮やかな色のルビーだったそうです。
モロゴロで見たルビー
タンザニア南東部のモロゴロに行った時のことです。赤土で埃っぽい通りを散策していたら、ルビーを販売している小さな店を見つけました。
イスラム教の帽子をかぶった店主が、引き出しの中から沢山のルビーを見せてくれました。
それは、カンボジアで見たルビーにそっくりな、ピンクがかった赤色のルビーでした。
表面の照りは良くとてもキラキラしていましたが、シルクインクルージョンが多くて透明度が低く、テーブルが大きくて浅いカットのルースでした。
高い品質のルビーは外国に流れていくので店にはない、と店主は言っていました。
モロゴロ周辺には宝石産地が4カ所あり、ルビー鉱床が無数にあるといわれています。
この一帯では、1970年代からルビーの採掘が行われていたそうですよ。
ダイヤモンド
画像はイメージです。産地は不明です。
タンザニアでダイヤモンドが採掘されるようになったのは、1925年あたりからなのだとか。
当時は高品質のホワイトダイヤモンドやバブルガムと呼ばれるピンクダイヤモンドが産出され、ヨーロッパでも大きな話題を呼んだそうです。
良質なものは既に掘りつくされたともいわれていますが、現在でもシニャンガ県ムワンザではウィリアムソンダイヤモンド鉱山(別名ムワドゥイ鉱山)が稼働しています。
以前は国有化されていましたが、現在では英国企業であるペトラ・ダイヤモンズ社によって採掘されており、2020年には298,130ctのダイヤモンドが生産されたそうですよ。
ウィリアムソンダイヤモンド鉱山はモザンビークベルトからは外れた位置にありますが、世界最古のダイヤモンド鉱山の一つとして知られている重要な場所でもあるのです。
タンザニア産の有名な宝石
タンザニアで採れた数々の宝石の中には、博物館に収蔵されたり有名になったりしたものも少なくありません。
スミソニアン博物館に収蔵されている122.70ctのタンザナイトは大きさも質も最高級です。
また、映画「タイタニック」でブルーダイヤモンドのネックレスとして撮影用に使われたのはタンザナイトだったといわれていますね。
2020年には、9.27㎏の世界最大のタンザナイトが採掘されました。
このようにタンザニア産宝石には有名なものがいくつかありますが、最も知られているのはエリザベス女王に贈られたピンクダイヤモンドだと思います。
それは、現存する最高のピンクダイヤモンドといわれているとか。詳しく見てみましょう。
エリザベス女王に贈られたピンクダイヤモンド
先ほど述べたウィリアムソンダイヤモンド鉱山は、カナダ人の地質学者ウィリアムソン博士が1940年に設立したものといわれています。
その鉱山に生えていたバオバブの木の根元で、現地の子どもが大きなピンクダイヤモンドの原石をみつけた、という逸話が残っています。
ウィリアムソン博士は54ctあったといわれる、そのピンクダイヤモンド原石を、1947年に行われたエリザベス女王の結婚を記念して献上しました。
原石を見つけたタンザニアの子どもは後にエリザベス女王に謁見することができた、という話もありますよ。
その見事なピンクダイヤモンド原石はカットされ、23.6ctの「ウィリアムソン ダイヤモンド ブローチ(Williamson Diamond Brooch)」に生まれ変わりました。
それは、ロンドンのカルティエが一輪の花をデザインした、総ダイヤモンドのブローチです。
今もエリザベス女王の胸元を飾るウィリアムソンダイヤモンドブローチ
ウィリアムソンダイヤモンドブローチは、中央にラウンドブリリアントカットを施されたタンザニア産ピンクダイヤモンドが置かれています。
そのまわりを様々なカットが施された高級ダイヤモンドが取り巻いていて、まばゆいばかりの輝きを放っています。
花びらだけでなく、茎や葉っぱもダイヤモンドで作られています。
このウィリアムソンダイヤモンドブローチは、今でもエリザベス女王の胸元を飾っているのですよ。
チャールズ皇太子とダイアナ元妃の結婚式や、オバマ元大統領夫妻の謁見などの重要な場面で見たことがあります。
今後も、そんな姿をニュースなどで見る機会があるかもしれません。
その時は、中央のピンクダイヤモンドはタンザニアで採れたものだということを思い出して下さいね。
タンザニアの宝石旅でオススメしたい場所
画像:アルーシャ Photo by : Sergey-73
タンザニアで宝石旅をするときに、ぜひおすすめしたい場所があります。
それはアルーシャとザンジバル。
アルーシャはサファリ観光の拠点であるとともに、先にお伝えしたとおり、タンザナイトが採れることで知られるメレラニ鉱山があります。
そしてインド洋に浮かぶ島ザンジバルは、観光客が多いことから価値の高い宝石が集められています。
それぞれのオススメポイントをご紹介しましょう。
アルーシャ
アルーシャはタンザニア北東部の都市で、キリマンジャロ登山やサファリ観光の玄関口としても知られています。
メレラニ鉱山以外にも宝石が採れる鉱山が幾つもあるため、世界中から宝石業者が集まってきます。
タンザニアの首都機能があるダルエスサラームにもいくつか宝石店はありますが、「最高級品質のタンザナイトを見せて」というと「アルーシャに行くべきだ」とよくいわれたものです。
アルーシャにThe Tanzanite Experienceというタンザナイトの博物館があって、坑道の様子を体験したり、タンザナイトに関する映画を観て学ぶことができるので、時間があれば立ち寄ることをオススメします。
入場無料で、キリマンジャロコーヒーやクッキーのサービスもありますよ。ショップも併設されているので、タンザナイトを購入することもできます。たぶんショップの方がメインです(笑)。
アルーシャの街中では、宝石を買いに来たと知られると宝石の売人から取り囲まれることもあるので、注意してくださいね。何件か回って品質と値段を頭に入れた上で購入することをオススメします。
様々なグレードのタンザナイトや色々な宝石が集まる場所なので、選択肢が広く、宝石好きな方はきっと楽しむことができると思いますよ。
ザンジバル
Photo by : Kehinde Temitope Odutayo
ザンジバルはアラブとヨーロッパとアフリカが融合しているような異国情緒豊かな街並みが特徴の島で、タンザニア本土とは違う雰囲気があります。
世界中から観光客が訪れるリゾート島でもあり、奴隷市場など負の遺産も抱えています。
伝説のロックバンド「クイーン」のフレディ・マーキュリーが幼少期を過ごした場所としても知られています。
今では土産物店となっているフレディの生家を見学したり、大人になってからよく立ち寄ったといわれているレストランでは、フレディや他のロックスターたちが実際に座った椅子で飲食することもできますよ。
ザンジバルの観光名所の一つ、迷路のようなストーンタウンに宝石店がありました。
そこでは、ダルエスサラームでは見たことがないような、素晴らしい品質のタンザナイトが売られていましたよ。
観光客が多いので需要があり、品質の高い宝石がザンジバルにも集まるのだそう。
ザンジバルでビーチリゾートを楽しむついでに、宝石を探すのも楽しいと思います。値段交渉を忘れないでくださいね!
タンザニアで買って欲しい宝石土産
タンザニアで宝石のお土産を買うならば、オススメしたいのはやはりタンザナイトです。
特にアルーシャでは、とても安価なものから最高級品質まで様々なグレードのタンザナイトを見ることができるでしょう。
予算や目的に応じた品質のタンザナイトを選ぶ事ができると思います。
バイカラーのタンザナイトや原石も買うことができますよ。
また、ツァボライトやミントガーネット、カラーチェンジガーネットなど、色々な種類のガーネットがあり、どれもかなり綺麗だった印象があります。
種類の異なるガーネットを揃えることもできるでしょう。
最後に
いかがでしたでしょうか。
宝石の国タンザニアは、宝石旅にとても適しているロマンあふれる国だということがお分かり頂けたでしょうか。
タンザニアで採れる宝石の種類の多さや、品質の高さに驚かれた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
改めて感じたのが、数々の宝石を生みだすモザンビークベルトの素晴らしさ。
今後も新しい宝石の鉱脈が、モザンビークベルト上で発見されることを期待してしまいますね。
それから、映画タイタニックでケイト・ウィンスレットの胸元を飾ったブルーダイヤのネックレスが、実はタンザナイトだったということにも驚きました。
エリザベス女王が愛用しているタンザニア産ピンクダイヤモンドブローチの存在は、タンザニアに眠る宝石の底力を表わしているよう。
宝石を通して、遠いアフリカのタンザニアを身近に感じていただけたら幸いです。
アサンテ サーナ!(どうもありがとう)
カラッツ編集部 監修
※筆者がタンザニアで暮らした頃の経験を元に書いている箇所もございます。現在の状況と異なる部分もあるかもしれませんが、予めご了承下さい。