コレクター垂涎のレアストーン、アウイナイトをご存知でしょうか。
グレーやグリーン、ピンクなどもありますが、最も人気が高く有名なのはブルー。
コバルトブルーやネオンブルーに輝くアウイナイトがもつ、その独特の色合いは何ともたまらない魅力があるように感じます。
鉱物名はアウィン。その名前の由来にも秘密があるのですよ。
鉱物としての基本情報から原石の形、価値基準、お手入れ方法まで、アウイナイトの世界にご案内しましょう。
目次
アウイナイトとは
ネオンブルーやコバルトブルーの強烈な輝きがあるアウイナイトは、例えどんなに小さな結晶であっても、一度見たら忘れることのできない存在感があります。
小さくとも力強い、そんな印象をもった宝石ではないでしょうか。
そんなアウイナイトについて詳しく見ていきましょう。
鉱物としての基本情報
英名 | Haüyne、Hauynite(アウィン、アウイナイト) |
和名 | 藍方石、藍宝石(らんほうせき) |
鉱物名 | アウィン |
分類 | 珪酸塩鉱物 |
結晶系 | 等軸晶系 |
化学組成 | (Na,Ca)4-8Al6Si6(O,S)24(SO4,Cl)1-2 |
モース硬度 | 5.5 – 6 |
比重 | 2.44 – 2.50 |
屈折率 | 1.49 – 1.51 |
光沢 | ガラス光沢~油脂光沢 |
特徴
アウイナイトの鉱物名はアウィンで、和名は藍方石または藍宝石とされています。
個人的には藍宝石のほうが、アウイナイトの美しさにマッチしているように感じますが、いかがでしょうか。
小粒の状態で産出されることがとても多く、0.1ct 程度のアウイナイトもよく見られます。
2ct以上のものは、かなり珍しいのだそうですよ。
モース硬度は5.5 – 6と、あまり丈夫ではないことも分かりました。
アウイナイトをジュエリーに加工して身につけたいところですが、割れやすいために細工がとても困難なのだそう。
取り扱いにはかなりの注意が必要でしょう。
産地
アウイナイトの産地はユーラシア大陸や北アメリカ大陸などに点在していますが、一番有名なのはドイツのアイフェル地方でしょう。
火山で有名なアイフェル地方には、アウイナイトの美しい結晶が採れる鉱床があるのだとか。
ただ現在は商業的な採掘はされていない、といわれているらしいですね。
ドイツでは「アイフェルのサファイア」という愛称もあるそうです。
目の覚めるようなネオンブルーの輝きは、サファイアを凌ぐほど美しいといわれ、コレクターの間で愛されているのもとてもよく分かる気がします。
名前の意味
アウイナイトという名前は、フランスの鉱物学者ルネ・ジュスト・アウイ(René Just Haüy)に由来して名付けられたといわれています。
司祭でもあったアウイは結晶学の創始者の一人で、1784年に「結晶とは小さな構造単位で成り立っていて、その形が結晶の外形を決定している」ということを示しました。
結晶学の父とも呼ばれたアウイの偉業を称え、アウィンという鉱物名がつけられたということですね。
鉱物アウィンの宝石名がアウイナイトで、それは「アウイの宝石」という意味なのだそうですよ。
パリのエッフェル塔には72名の科学者の名前が刻まれているのですが、ルネ・ジュスト・アウイもその1人。
鉱物の名前になったり、エッフェル塔に名前を刻まれたり、ルネ・ジュスト・アウイは本当に偉大な方だったのですね。
ちなみに、和名の藍方石(藍宝石)は方ソーダ石グループの一種であるところから名付けられたといわれています。
アウイナイトに施される処理について
アウイナイトは、通常的に処理をされているものは少ないといわれていますが、一部含浸処理が施されているものもあります。
アウイナイトに施される処理は、透明剤の含浸処理が多く、これはエメラルドやレッドベリルなどに通常的に行われているものと同じです。
これらの共通点はインクルージョンが多く脆いというところで、耐久性をあげるために透明剤の含浸が行われると考えられています。
こういった目的で施される透明剤含浸処理については、処理の有無で価値が著しく下がることはないといわれています。
独自の美しさを引き出すために何らかの処理がされている宝石は多く、処理によっては価値に影響を与えない場合もあります。
処理が施されている場合は、鑑別書に明記されますので、気になる場合は鑑別書が付属しているものを購入されるのが良いと思います。
アウイナイトの原石の形
アウイナイトは長石よりも珪酸の量が少ない「準長石」に分類されており、日本のような地質条件下では産出しないといわれています。
おもに珪酸の乏しい火成岩や変成岩の中から現れるのだとか。
ドイツのアイフェル地方には火山の溶岩が分布しており、軽石質の母岩の中で小さな粒々のアウイナイトが生成されるといいます。
母岩はとても脆くてアウイナイトの粒がすぐに外れてしまうため、風化した土壌の上にブルーの小さな粒が点々と散らばっているのだそうですよ。
アウイナイトの青い粒々が地面に落ちているなんて、夢の様な素敵な光景ですよね~!
本来アウイナイトの結晶は八面体や十二面体なのだそうですが、不定形の粒状で産出されることが多いそうです。
小さくて丸みを帯びた青い粒や、双晶の形もよく見られるのだとか。
鉱物アウィンとしての完全な結晶体は、とても珍しいのだそうですよ。
結晶は曇りやキズも多く、その中から無傷のものを探し出すのはとても大変です。
しかも完全なへき開があって割れやすく、カットするのにも高い技術が必要とのこと。
だから、アウイナイトは貴重なレアストーンなのですね。
アウイナイトは身近なあの宝石の仲間!?
アウイナイトは、ある有名な宝石と深いかかわりがあることをご存知でしょうか。
その宝石とは・・・神秘的なブルーが特徴のラピスラズリです。
同じコバルトブルーの宝石なのですが、アウイナイトは透明でラピスラズリは不透明という違いがあって、少し意外な気もしますよね。
ラピスラズリは複数の鉱物が混ざり合ってできている宝石で、そのひとつがアウイナイトなのです。
アウイナイトの蛍光性
アウイナイトの中には、ブラックライトを当てた時に蛍光するものがあります。
同じアウイナイトなのに、蛍光するものとしないものがあるなんて、とてもミステリアスですよね。
上の画像にあるアウイナイトは、ブラックライトで蛍光するものとしないものが混ざっているルースのセットです。
ブラックライトでどの程度の変化があるのでしょうか・・・拡大した次の2つの画像をご覧ください!
いかがでしょうか!?
透明でブルーのアウイナイトが、オレンジの蛍光色にはっきりと変化していますよね!
同じ宝石なの?と疑ってしまいますが、間違いなく同じ宝石なんですよ。
アウイナイトには2つの顔があるといっても過言ではありませんね。
希少なアウイナイトの中でも、蛍光するアウイナイトはさらにレアストーンなのではないでしょうか。
いつか蛍光するアウイナイトに巡り合って、ブラックライトを当てて変化を楽しみたいなぁ、というのが私の願いです。実現したいですねぇ。
アウイナイトの偽物
アウイナイトには偽物はあるの?気になる方も多いと思います。
現状では、アウイナイトの偽物が大きく出回っている様子はあまりないようです。
しかし、業者さんなどがロットで購入する際、中にガラスやアフガナイトなどが混ざっていることが稀にあり、気が付かずに売ってしまうこともあり得るのだとか。
アウイナイトは内包物が多い宝石なので、内包物のないガラスとは比較的見分けやすいと思われます。注意深く見ることが必要でしょう。
クォリティの高いアウイナイトはとても高価です。
信頼のおける鑑別機関の鑑別書が付いていたり、オプションで付けられるお店で購入した方が安心かもしれませんね。
アウイナイトの価値基準と市場価格
アウイナイトを買う前に知っておきたいことは何でしょうか。
何も知らずに買うよりはアウイナイトの事をよく知ってからのほうが、選ぶ楽しみも大きくなる事でしょう。
アウイナイトの価値基準や市場価格などについてまとめてみましたので、ぜひ参考にしてみて下さい。
価値基準
アウイナイトの価値は、まずはその美しいネオンブルーの発色にあるでしょう。
ブルーは薄いものよりも濃いものが良いという傾向にあります。
そして透明度の高いもの、キズや内包物が少ないもの程価値が上がります。
前述の通り、アウイナイトは小粒の状態で産出されるため、カラットの大きいものはとてもレアです。
従って、カラットが大きくなる程、価値も上がります。
また、美しいカットが施されたものも高く評価されます。
つまり、美しく濃いネオンブルーの発色で、内包物やキズが少なくて透明度が高く、カラットの大きいアウイナイトは非常に高い価値を付けられるのです。
市場価格
では、アウイナイトの市場価格はどのような感じでしょうか。
何度も触れた通り、アウイナイトはカラットの大きいものが採れにくい宝石です。
従って、0.1ct 以下のとても小さなルースだとしても、色や状態などのクォリティが良ければ数万円以上になることがあります。
1ct以上のルースになれば、クォリティによっては百万円以上の価値がつくことも!
アウイナイトは青色宝石の代表サファイアより高価格になることもあるレアストーンなのですね。
どこで買える?
アウイナイトを取り扱っているお店は、実店舗でもオンラインショップでも時々見かけるようになりました。
ミネラルショーなどのイベントでも取り扱っているお店を見かけます。
ルースだけでなく、ジュエリーに加工されたものも流通しているようですね。
購入者の口コミを見たり、色々なお店を覗いて見比べてみるのも良いと思います。
標本市などで母岩からこぼれ落ちたアウイナイトの原石を、別の母岩に接着して作り上げたものが多く出回っているとも聞きます。
アウイナイトの特性上母岩付きで無修正の標本は大変珍しいのだとか。
本物の標本を買いたいなぁ、と思いますが、入手は難しいのかもしれませんね。
アウイナイトのお手入れ方法
アウイナイトはモース硬度も低めで劈開性をもつことから脆くキズが付きやすい宝石です。
強い衝撃により、割れたり表面が傷つく恐れが高いため、ぶつけたり擦ったりしないよう注意が必要です。
他の宝石とは分けて個別に保管することも美しさをキープするために大切です。
日常的なお手入れは、使用後柔らかい布で拭くだけで十分ですが、気になる汚れがある時は石鹸や中性洗剤を溶かしたぬるま湯の中で優しく洗ってあげるとキレイになりますよ。
多少のアルコールは問題ないと思いますが、念のため過度につかないよう気をつけた方が良いでしょう。
超音波洗浄機の使用はNGです。
最後に
アウイナイトの魅力的な世界はいかがでしたか?
「サファイアよりも美しくて高価」といわれることもあるアウイナイト。
どんなに小さいものでも強く輝き、存在感があります。
最近はジュエリーにセットされたアウイナイトも流通しているので、ネオンブルーの輝きを身に着けることができるようになりましたね。
でも、硬度が低くて割れやすいという特徴を忘れずに、注意深く優しく取り扱いましょう。
アウイナイトの中にはブラックライトで蛍光するものもあり、色の変化には本当に驚きました。
私もアウイナイトが欲しくなってしまいました。
宝石との出会いは常に一期一会。ステキなアウイナイトとご縁がありますように!
カラッツ編集部 監修
<この記事の主な参考書籍・参考サイト>
◆『価値がわかる宝石図鑑』
著者:諏訪恭一/発行:ナツメ社
◆『ネイチャーガイド・シリーズ 宝石』
著者:ロナルド・ルイス・ボネウィッツ 訳:伊藤伸子/発行:科学同人
◆『楽しい鉱物図鑑』
著者:堀秀道/発行:草思社
◆『岩石と宝石の大図鑑』
監修:ジェフリー・E・ポスト博士/著者:ロナルド・ルイス・ボネウィッツ 訳:青木正博/発行:誠文堂新光社 ほか