錫石キャシテライト|錫鉱石としての役割と宝石としての魅力

キャシテライト

キャシテライトという鉱物をご存知でしょうか。

和名を錫石といい、錫が取れる主要な鉱石としても知られています。

一般的にはブラックダークブラウンのものが多い印象ですが、稀に赤褐色黃褐色のものも産出されると聞きます。

宝石品質のものが少ないことから、ファセットカットを施されたルースを市場で見かけることは少ないかもしれません。

今回はそんなキャシテライトについて、基本情報から鉱石としての役割まで、様々な角度からお話したいと思います。

キャシテライト(錫石)とは?

キャシテライト
古代ギリシャでは占星術師が用いていたといわれているキャシテライト。

錫鉱石としての歴史も古く、青銅器時代から使われていたと言い伝えられています。

鉱物としての基本情報

英名 Cassiterite(キャシテライト)
和名 錫石(すずいし)
分類 酸化鉱物
結晶系 正方晶系
化学組成 SnO2
モース硬度 6.0 – 7.0
比重 6.80 – 7.13
屈折率 1.99 – 2.10

特徴

錫の酸化鉱物であるキャシテライト。

宝石品質のものが採れることは少ないといわれています。

稀に透明度の高いレッド味の強いライトブラウンのものが産出され、それらはコレクター用にファセットカットに研磨されて、市場に出回ることもあるようです。

ダイヤモンドよりも高い分散率(0.071)をもつことから、カットによっては強いファイアを放ちます※ダイヤモンドは0.044

また、キャシテライトは角度を変えると違う色に見える多色性をもちます。

ファセットカットに仕上げたキャシテライトは、スフェーンジルコンブラウンダイヤモンドなどと一見見分けがつきにくいそうですが、この多色性高い比重から判別できるといいます。

ブラックブラウンダークブラウングレーレッドカラーレスなど

一般的に不透明なブラックダークブラウンの結晶体で産出されることが多いといわれていますが、実は純粋なキャシテライトはカラーレスなのだそうです。

それが微量の鉄が含まれることによって、多くはブラックや褐色など暗い色合いを呈すると考えられています。

産地

イギリス、イタリア、ポルトガル、フランス、ブラジル、ミャンマー、チェコ共和国、スペイン、ナミビア、オーストラリア、ボリビア、カナダ、イギリス、アメリカ、中国など

かつては日本でも産出されており、兵庫県大分県岐阜県などが有名です。

宝石品質のキャシテライトは、イタリアポルトガルフランスブラジルミャンマーチェコ共和国から産出されることが多いそうです。

キャシテライト(錫石)の原石の形

キャシテライト 原石

多くは塊状や粒状、砂状で産出されるといいますが、時に柱状や高さのない錘状の結晶で発見されることもあります。

双晶を成すこともあるそうですよ。

花崗岩を伴う高温の熱水鉱脈カルコパイライトトパーズ輝水鉛鉱トルマリンなどと一緒に生成されます。

耐久性に優れ比重が高いキャシテライトは、母岩が風化・侵食されるなか河川堆積物中に残留濃集します。

岩から産出されることもありますが、多くはこのような漂砂鉱床から見つかるといわれています。

また、木目模様のある木錫(もくしゃく)として産することもあります。

キャシテライト(錫石)の名前の意味

キャシテライト

錫を含むことから、ギリシャ語を意味するkassiteros(カシテロス)に由来し名付けられたといわれています。

ティンストーン(Tin stone)やティン・オア(Tin ore)、ミラー・ティン(Mirror Tin)などと呼ばれることもあります。

Tinは英語で錫を意味するのですが、欧米などで食品保存用に使用されるブリキ缶鉄を錫でメッキしているところからTin canまたはTinと呼ばれるそうです。

和名は錫石(すずいし)。こちらもそのままですね☆

ちなみに、繊維状結晶がぶどう状に集合する錫石のことは木錫鉱(もくしゃくこう)と呼ぶのだそうですよ。

錫鉱石としてのキャシテライト

実は錫鉱石の種類は少なく、キャシテライトがほぼ唯一と言って良いそうです。

そのためキャシテライトは重要な錫鉱石としても扱われています。

錫鉱石として採られるキャシテライトは、マレーシアタイインドネシアから産出されることが多いそうです。

キャシテライトから採られる錫は、古くは青銅器時代から地中海周辺で取引されていたと記録され、銅と並び青銅の重要な成分と考えられていました。

錫は鉄に比べて錆びにくい性質と無毒であることから、先に紹介したように、鉄にメッキし、ブリキ缶として食品の保存容器に用いられたり、広く活用されています。

一方で、有機スズ化合物は、駆除剤として使用されることもあります。

最近では、手で形が変えられる純度100%の錫で作られた食器が話題になりましたね。

最後に

キャシテライト

錫鉱石として広く利用されているキャシテライト。

宝石品質のものが産出されることが少ないため、鉱物標本として目にすることの方が多いかもしれませんが、稀に宝石ルースとしてファセットカットされたものが出回ることもあるようです。

落ち着いた色合いが魅力的な宝石ですよ。

出会えた時にはずっしりと重いその宝石を手にとって楽しんでみてくださいね♪

カラッツ編集部 監修

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毎日200個以上の宝石に触れる仕事に就いています。タンザナイト、ベニトアイト、パパラチアサファイアなど多色性のある宝石が好み。宝石のことをあまり知らない方にも、分かりやすい記事作りを心掛けます。