赤と青。緑とピンク……。2つのカラーが1つの石の中に閉じ込められた神秘の鉱物。バイカラーの宝石は、自然が産んだ偶然の産物です。
なぜ2つの色が発生するのか?それは、その宝石に含まれる元素と、宝石が生成するときのタイミングによって起こると言われています。しかしその詳細は未だよくわかっていません。
まさにバイカラーの宝石は、奇跡から生まれた鉱物です。
今回はそんなバイカラーの宝石の魅力についてご紹介します。
バイカラーサファイア

バイカラーになる宝石の中で、最も輝きが美しい宝石といえば「バイカラーサファイア」でしょう。
サファイアが二つの色になる原因は「カリウム」のせいだと言われていますが詳細ははっきりしていません。
宝石の美しさを決める「基準」で大切なのが、「色」と「輝き」。その輝きで大切なのが、硬度と屈折率です。
サファイアの硬度はダイヤモンドに次ぐ硬度9。キラキラと輝きを表す屈折率も1.76~1.77と宝石の中でも高い数値を持っています。
サファイアの代表的な色は透明な青色ですが、取り込まれる不純物元素によって様々な色が生まれます。
鉱物としてのコランダムは本来無色透明です。そこにクロムが混じることで赤い色が生まれ、ルビーになります。青いサファイアはチタンと鉄が含有することで生まれます。
バイカラーサファイアは1つの鉱物の中に、2つ以上の元素が混じることで生まれます。傷がなく透明度の高いバイカラーサファイアはとても希少。そして値段も高価です。
バイカラートルマリン

バイカラーの宝石の中で、最もよく見かける宝石が、「バイカラートルマリン」でしょう。もともとトルマリンは結晶の構造の中にさまざまな成分が入るため、色の種類も豊富です。
赤色のトルマリンは「ルベライト」、緑色は「バーデライト」という宝石名がついています。
バイカラートルマリンは1つの結晶にピンクとグリーン、ピンクとブルーといった2色の組み合わせが多く見られます。
美しい色の組み合わせが楽しめるようにステップカットに研磨されることが多いようです。
バイカラートルマリンの中で、特に「ウォーターメロン」と呼ばれるトルマリンは個性的です。トルマリンの柱状の結晶を輪切りにすると、中心が赤く、外側が緑色。まるでスイカのような模様が特徴です。
また、色が結晶の途中から変わっているトルマリンは、「パーティ・カラード・トルマリン」と呼ばれています。これは結晶が成長するときに途中で周りの環境が変わったことが原因です。
トルマリンの様々な色は、結晶が成長する際に、鉄、マンガン、チタニウム、クロムなどの元素が時間差で取り込まれることで生まれます。
この内包物の状態からシャトヤンシー効果が出ることがあります。その場合はバイカラーのトルマリンキャッツアイとなり、美しさと希少性によって人気があります。
アメトリン

バイカラーの宝石は、1つの鉱物が生成する途中に元素が混ざって2つの色が発生することが多いのですが、アメトリンの場合は生成するときの高熱の温度の差で色が変化して出来上がります。
アメトリンはアメジストとシトリンの2つの鉱物が混ざってできた鉱物。もともとアメジストが長時間高温で生成されるとシトリンという宝石に変化します。
このシトリンに生まれ変わる途中で変化が中断されるとバイカラーの色を持つアメトリンという結晶になるのだとか。鉱物的には水晶の仲間です。
ひとつの石の中にアメジストの紫色とシトリンの黄色というバイカラーは、ボリビアのアナイ鉱山でしか採れないと言われています。
最後に

いかがですか。奇跡の産物、バイカラーの宝石たち。
バイカラーサファイア、バイカラートルマリン、アメトリンを紹介しましたが、バイカラータンザナイトも有名です。
タンザナイトはグリーンのカラーが一般的ですが、微量のバナジウムやクロムが混じることで青や紫というカラーが生まれることもあります。
はっきりと2色に分かれるのではなく、青い色の中に溶け込むように他の色が混ざるのが特徴です。
なお「どこまでがバイカラーか?」は鑑定士によって意見が分かれやすいのですが、カラッツSTOREでは通常、色や濃淡が2つ以上に分かれているものを「バイカラー」と呼んでいます。
鉱物マニアの中でも特に人気が高いバイカラーの宝石たち。見るだけでも価値があります。
もし機会があれば、ぜひ探してみてくださいね。
カラッツ編集部 監修