赤い宝石の中で恐らく最も知名度が高いルビー。
ルビーには様々な産地があり、産地によって色や特徴が少しずつ異なります。
産地鑑別ができ、産地によって価値に違いが生じるルビー。
そこで今回は代表的な産地の一つである、タイ産ルビーについて、特徴、歴史、価値基準などをご紹介したいと思います!
ルビーの産地
タイ産ルビーについて詳しくお話をする前に、まずは全体のお話として、ルビーの代表的な産地をご紹介したいと思います!
恐らく最も有名な産地はミャンマーのモゴックではないかと思います。
ミャンマーモゴック産ルビーというと高品質なものが多いことでも有名で、最も価値高く評されるピジョンブラッドルビーもモゴック産が多いといわれています。
かつては、モゴックで産出された最高品質のルビーのことをピジョンブラッドと呼んでいたようですが、現在では産地に関わらず色が合えばピジョンブラッドと呼ばれます。
モゴック産のルビーが激減した時に注目を浴びたのが、タイ産のルビー。
1970年から80年代に出回ったルビーの殆どはタイ産ではないかと言われるほど、豊富に出回っていたといいます。
そしてベトナム産ルビー。
1990年頃に登場したルビーなのですが、国の規制による産出量の限界や、ルビーの合成石が出回った時期と重なったため、未だに偽物や粗悪なルビーとしてのイメージが振り払えていない印象があります。
ミャンマーモンスー産ルビーは1993年を境に市場に出回りました。
モゴック産のルビーに劣らない品質のものも多く、現在モゴック産の次に価値高く扱われるといいます。
2008年あたりからはモザンビーク産のルビーが出回り始めます。
ややオレンジっぽいレッドで未処理でも美しい原石が産出するのが特徴です。
タイ産ルビーの特徴
タイ産ルビーには鉄分が多く含まれているといいます。
コランダムはクロムを含むと蛍光するといわれますが、鉄分が蛍光性を抑制するためクロムが含まれていても鉄分も多いと蛍光が弱くなるといわれています。
そのためタイ産ルビーは蛍光が弱いものが多いといいます。
また、タイ産ルビーにはミャンマーやスリランカ産に見られるルチルのシルクインクルージョンは見られないそうです。
タイ産のルビーの特徴として、黒い六角形インクルージョンと共に一面に広がる波紋のような模様を見せる液膜インクルージョン(液体インクルージョン)がみられるといいます。
これらのインクルージョンの有り無しは、タイ産ルビーを識別する手掛かりにもなります。
また、タイ産ルビーは繰返し双晶の形で産出することも多く、日よけのブラインドのような平行な双晶線が見えるブラインド状双晶面が確認出来るものも多いそうです。
このブラインド状双晶面はタイ産ルビーに限った特徴ではないものの、タイ産ルビーに多く見られることから識別する手掛かりの一つになるといわれています。
同じルビーなのに産地が変わるだけで特徴に違いがあり、いくつかの特徴をヒントに識別しているとはとても興味深いですね・・・!
タイ産ルビーの色
タイ産のルビーといえば黒っぽいダークレッドが特徴です。
ビーフブラッドと表されることもありますね。
加熱処理を施すと黒味が減り、鮮やかなレッドになるものも多いといわれています。
ブラウニッシュレッドから、赤みのあるパープルまで幅広い色味があるのも特徴。
少しオレンジがかったレッドはタイ産のルビーの中でも最高の色味といわれ、モゴック産の色味に近いものもあるとか。
レッドパープルは殆どのタイ産ルビーがこれに当たるほど典型的な色です。
小さくカットしても美しい色が引き出せるのもタイ産ルビーの特徴だったりします。
タイ産ルビーの歴史
タイ産ルビーは、1960年頃から本格的に市場に出回りだし、1970年から1980年代のルビーをあしらったジュエリーは殆どタイ産ルビーではないかと言われるほどに主流になりました。
それまでルビーといえばモゴック産のルビーで、黒っぽいダークレッドが特徴のタイ産ルビーはさほど注目されていませんでした。
タイ産のルビーがシェアを高め始めたのは、モゴック産のルビーの供給が滞ったタイミングです。
1960年後半頃ミャンマーの国政が悪化し、宝石鉱山が国有化。結果モゴック産ルビーの産出が激減したのです。
また同時期に加熱処理で黒っぽさを取り除き鮮やかなレッドを際立たせる技術が向上したことで、タイ産ルビーに注目が集まりました。
その後バンコクでジュエリー生産が増えたことでタイ産ルビーの需要もさらに高まり、小粒の石も価格が上昇。
10年間で0.1~0.2ctのクオリティの高いタイ産ルビーは10倍にも値上がり、ダイヤモンドに近づきつつあるとまでいわれていたそうです。
しかしその後モンスー産を筆頭に東アフリカやベトナムなどからも産出され始め、1980年後半には高品質のタイ産ルビーの産出は減っていったそうです。
現在出回っているのは、当時採掘された還流品が多いのだそうです。
こうしてルビーの歴史を紐とくと、世代交代が激しい宝石といった印象をもちますね・・・!
タイ産ルビーの価値基準と市場価格
タイ産のルビーの魅力は分かったけれど、いざ手に入れたい場合はルビーのどんな部分を基準に見ればいい?どこに行けば購入できる?など疑問が沸いてきますよね。
こちらでは、タイ産ルビーを購入する際に見ていただきたい価値の基準やポイント、そして購入場所などをご紹介します。
価値基準
ルビーは全体的にカラットの大きいものが採りづらいことから、2ct以上のものから価格が大きく跳ね上がるそうです。
その他には、他の色石と同じように色が鮮やかなもの、透明度が高いもの、カットが美しいもの程価値が高くなる傾向にあります。
またタイ産ルビーの場合、色合いを見ることもおすすめします。
レッド、レッドパープル、レディッシュパープルと区別され、青みが強くなるほど評価が低くなる傾向にあります。
白熱灯の下と蛍光灯の下だと色味が違って見えるそうで、少し暗くして確認するのが良いのだそうです。
大粒のものや赤みの強いものが欲しいとなると、そこそこの予算を用意した方がよさそうですね。
市場価格
タイ産ルビーはクオリティによって産地を特定せずに販売されているものも多いのですが、クオリティの高いものとなると、数十万~数百万円するものもあるそうです。
更に2ctアップでクオリティが高くなると数百万~数千万円するものもあるといいます。
やはり三大貴石の一つであるルビーですから、全体的に高額な印象ですね。
どこで買える?
ルビーの取り扱いは一般的に多いので、実店舗でもオンラインショップでも見かけることの多い宝石なのですが、前述したとおり、タイ産ルビーは産地を特定せず販売されることも多いようです。
比較的高額となると産地も明確になるものの、お手頃な価格で産地が明確なものを探すのは難しいかもしれません。
クオリティが高く高額なタイ産ルビーをお求めの場合は、信頼のおける鑑別機関の鑑別書が付いたものかオプションで取れるお店から購入することをオススメします。
最後に
黒っぽく落ち着いたレッドが魅力のタイ産ルビー。
1970年~1980年代に作られたジュエリーなどに多く用いられているといいますので、タイ産ルビーに拘る方はその時代のジュエリーを探してみるのも良いかもしれませんね。
鮮やかなレッドのルビーもルビーらしくて好きですが、少しシックなイメージのタイ産ルビーのレッドは個人的にとても好みです。
この機会にタイ産ルビーの魅力が伝われば嬉しいです♪
カラッツ編集部 監修
<この記事の主な参考書籍・参考サイト>
◆『品質がわかるジュエリーの見方』
著者:諏訪恭一/発行:ナツメ社
◆『決定版 宝石』
著者:諏訪恭一/発行:世界文化社
◆『インクルージョンによる宝石の鑑別』
著者:近山晶/発行:全国宝石学協会 ほか