夜空に輝く一番星とも例えられるスターサファイア。
輝く6条のスターを見ると、こんなに美しくて不思議な現象を作り出す自然のパワーに驚き、それを見つけ出した人間の知恵と技術に心を打たれます。
スターサファイアのように、光学効果のある宝石は、照明の光に反応するので夜に開催されるパーティーに適したジュエリーともいわれているようですが、太陽光によって輝く昼間のスターも美しくて素敵なものです。
照明の光でも太陽光でも、光源さえあれば美しく反応するのがスターサファイアの素晴らしさ。
でも偽物もあるといわれると、少し不安を感じてしまいますよね。
見分け方はあるのでしょうか。
それでは早速、魅惑的な宝石、スターサファイアについてお話しましょう。
目次
スターサファイアとは?
スターサファイアはサファイアの一種です。
丸くカボッションカットが施された表面に光が当たるとスターのような光の筋が浮かび上がる宝石です。
3本の光が石の中央で交差して6条スターになっているものが一般的なのですが、この3本の光はそれぞれ「信頼」「希望」「運命」を表すという言い伝えもあるそうですよ。
また、稀に12条の光を放つスターサファイアもあります。
私は昔それをスリランカの宝石店で勧められ、実際に見たことがあるのですが、通常の6条スターとは印象が異なり、とても不思議な感じがしたことを覚えています。
個人的には6条スターの方が好みなのですが、12条スターも独特の魅力があると思いますので、興味がある方は探して、6条のものと比べてみるのも楽しいと思いますよ♪
色
レッド以外のあらゆる色が揃っているといわれるサファイア。スターサファイアも同様に、様々な色があります。
私はスリランカで、あらゆる色のスターサファイアを見てきましたよ。
ブルーもグレーもピンクもパープルも、透明度や色相が様々で、光の現れ方も多様でした。
発色が良く透明度があり、なおかつ光がしっかり浮き出るものは、かなり高価だったのを覚えています。
イエロー、グリーン、オレンジなどのスターサファイアもありましたが、私が見たものはどれもミルキーというかスモーキーというか、不透明で発色も良くありませんでした。
また、ブラックの地にゴールドのスターが現れるブラックスターサファイアもあります。
実はブラックスターサファイアは、他のスターサファイアと内包物が異なるのだそうです。
私が居た頃のスリランカではブラックスターサファイアはあまり人気がなかったらしく、宝石店の隅っこに追いやられていましたが、シックな色がお好みの方にはとても良いと思います。
スターサファイアにおいても最も人気と価値が高いのはやはりブルーです。
グレーやバイオレット、ピンクなどもとても綺麗なのですが、深いブルーのスターサファイアが放つ輝きはとても神秘的な美しさがあるように感じます。
私が見た限りでは、地色がグレーで透明度の無いものにはスターがはっきりと出やすく、ブルーが濃くなるほど、そして透明度が高くなるほど、スターは出にくくなるものが多かった印象です。
ですので、ロイヤルブルーのサファイア品質でありながら、石の表面いっぱいにスターが現れるスターサファイアは、とても希少で高価なのですよ。
産地
スターサファイアは、その約90%がスリランカから産出されるといわれています。
世界で有名なスターサファイアについては後述しますが、その多くもスリランカ産なのですよ!
さすが、宝石の国として知られているスリランカですよね!
あとは、ミャンマーやマダガスカルでも美しいスターサファイアが産出されているようです。
今後も、新たな産出国が発見されるかもしれませんね、楽しみです♪
ブラックスターサファイアの主な産地は、タイやオーストラリアです。
他にもギニア、シオラレオネ、リベリア、スリランカ、インド、ミャンマー、タンザニアなどからも産出されるといわれています。
スターサファイアの原石
スターサファイアの原石は、サファイアと全く同じです。
サファイアは先ほども述べた通りコランダムという鉱物。
コランダムは火成岩に含まれていて、沖積層という最も新しい地層から見つかることが殆どなのだそうです。
結晶の中ほどが膨らんでいる形状で見つかることが多く、断面は貝殻状で平たんではありません。
サファイアの原石の中からスターサファイアを見つけ出すには、スライスにした原石に水を一滴たらすという方法が使われているそうです。
その上からペンライトなどの光を当てると、水がドームの役割を果たしスターが現れるのだとか。
この方法は、カットする前にスターの位置を確認する時にも用いられているそうですよ。
スターのヒミツと特徴
スターサファイアの特徴はなんといっても光が当たることによって浮かび上がる6条のスター。
その光学効果は「アステリズム(スター効果)」といいます。
実は、スター効果が現れる宝石には反射光線(エピアステリズム)によるものと、透過光線(ダイアステリズム)によるものの2種類あると考えられているそうです。舌を噛みそうですが・・・
反射光線(エピアステリズム)の宝石は正面から、透過光線(ダイアステリズム)の宝石は裏側から光を当てると、スターがよりハッキリと浮かび上がるのだとか。
ちなみに、スターサファイアは反射光線によってスターが現れる宝石だそうです。だから、上から光を当てるのですね!
スターの正体
スターサファイアにおけるアステリズム(スター効果)は、針状ルチルの内包物によって起きる現象だと考えられています。
石の内部構造に針状ルチルが3方向を向いて配列されていて、その針状ルチルに光が反射することによって6条の光が出るのだそうですよ。
針状ルチル内包物はシルクインクルージョンとも呼ばれているのですが、シルクインクルージョンは加熱処理で消えてしまうことが多いそうです。
そのためシルクインクルージョンが確認できるものは、鑑別の際非加熱サファイアの証として重要な判断基準の一つになるといいます。
なお、ブラックスターサファイアのアステリズム(スター効果)は、ルチル内包物によるものではなく、針状ヘマタイト内包物によるものだと考えられているそうです。
スターサファイアの世界も奥が深いようです~。
スターを出現させるために
サファイアの表面にスターを出現させるためには、内包物の方向を見極めて、スターの中心が石の中央に出現するように計算して、正確にカットするという技術が必要です。
中にはこんなダブルのスターが見えるものもあります。
まさに職人技ですね!
ただ、地色があまりに美しいブルーだったりすると、スターサファイアとしてカットせず、高品質のサファイアとしてカットされることも多いそうです。
スターサファイアとしてではなく、サファイアとして売る方が価値高く扱われ易いからでしょうか。
スターサファイアの偽物と見分け方
画像:合成サファイア
スターサファイアにも偽物が出回っているのをご存知でしょうか。
合成石は一概に偽物と言いにくい部分もありますが、合成石なのに天然スターサファイアとして売られている場合もあるので注意が必要でしょう。
スターサファイアは光が当たった時だけにスターが現れますが、悪質なものだと、光が当たらなくてもスターが出ている場合もあります。
それから、とても綺麗にスターが出ているのに相場よりも安いという場合も、合成スターサファイアを疑った方が良いかもしれません。
また、天然石ではありますが、不透明なブルーやピンクの宝石ではっきりとアステリズム(スター効果)が現れる、スターサファイアによく似たものもあります。
私はそういう宝石をスリランカで数多く目にしました。それらはインド産の宝石とのことで、名前は忘れてしまったのですが、とても安く販売されていたのを覚えています。
もしこれを、スターサファイアやスタールビーと偽って高値で売られることがあったら間違える人もいるのでは、と心配になった思い出があります。
いつもお伝えすることですが、合成石や模造石自体が悪い訳ではありません。事実を明記し誤解の生じない形で販売されていれば問題ないのです。
しかし残念ながら、事実を隠して販売している悪徳業者も少なくないのが現状。
そんな時スターサファイアの見分け方を知っておくと、便利ですね。
スターサファイアの見分け方
それでは、スターサファイアの見分け方にはどのようなものがあるのか、ご紹介していきましょう。
その1:スターの動き方を見る!
私はスリランカで、本物と偽物が並べられている宝石博物館に行ったことがあります。
スリランカには宝石博物館がいくつかあります。中には宝石博物館と看板に書いてあるけど実はただの宝石屋さんだった、という事もありますが・・。
その内のひとつに、様々な宝石の真贋についての展示がある、小さい博物館がありました。
スターサファイアやキャッツアイなどの真贋を見分ける方法についての展示室では、光が点滅したり、光源が動いたりして、本物と偽物の違いが分かるようになっていましたよ。
天然のスターサファイアは、光源の動きに合わせてスターも動きます。
例えば、光源を固定したまま石を右に倒せばスターの中心も右に、左に倒せば左に移動します。
逆に石の方を固定して、光源を右に動かすとスターは左に、上に動かせば、下に動きます。
まるでスターが光から逃げていくような感じですね。
一方、展示されていた偽物は、スターの中心が全く動かなかったり、光源と同じ方向に動くなど、天然のスターサファイアとは違う動きを見せていました。
私がその博物館に行ったのは20年以上前なので、今は技術が発達して見分けが付きにくいスターサファイアが作られているかもしれませんが・・・そんなものができていないことを願います。
その2:裏面を見る!
それからスターサファイアは、裏面を見ることで天然なのか合成なのかを見分けることができるそうです。
天然の場合は、表面はカボッションカットで丸くなっていますが、裏面は未処理でデコボコしています。
ところが、合成されたスターサファイアの裏面は、平らの状態になっていることが多いのです。
この特徴はキャッツアイも同じです。
また、合成のスターサファイアの光は妙にハッキリしていて、線の太さが均一という印象を受けました。
ただ、天然石にも光がハッキリ出るものは多くあるので、スターサファイアを沢山見てスターの出方をインプットできれば、ある程度は見分けることができるようになるかもしれませんね。
その3:触った時の感触
それから、触った時に冷たいと感じるのが天然石で、ガラスやプラスティック製のものは冷たさを感じにくい、というのも聞いたことがあります。
この方法も、いくつもの天然石を触ることで身につく感覚なのでしょう。
慣れない内はやはり、信頼のおけるお店で入手することをオススメします。
有名なスターサファイア
Photo by : tristan tan / Shutterstock.com
世界には、有名なスターサファイアがいくつかあります。
563.4カラットもあるスター・オブ・インディア。
ブラックスター・オブ・クイーンズランドはなんと733カラット!
巨大ですね・・!しっかりスターも出ていて、その存在感は相当なものでしょう。手のひらに載せて、重さを確かめてみたいですね~。
それから、アールデコ調の台座についている60カラットのアールデコスターもあります。スリランカ産なのだそうですよ。
他にも、博物館に収蔵されている有名なスターサファイアがあります。
その中から特に有名な2つ、スター・オブ・アジアとスター・オブ・ボンベイをご紹介しましょう。
スター・オブ・アジア
出典元:https://geogallery.si.edu/
330カラットの大きさがあり、美しいサファイアブルーに6条の光がまっすぐに走る、品質も大きさも申し分ない見事なスターサファイア。それがスター・オブ・アジアです。
スター・オブ・アジアはミャンマー産(旧:ビルマ)だといわれています。
そこからインドに渡り、西インドのジョードプルという街のマハラジャが所有していたとされています。
ジョードプルは別名ブルーシティといわれているのをご存知でしょうか。街の建物がどれもブルーに塗られているんですよ。
高台にあるメヘランガール城塞から眺めるブルーの街並みは、本当に別世界のようです。
そこには有名な宮殿がいくつか残っていて、超豪華ホテルになっているものもあります。もしかしたらその宮殿のどこかにスター・オブ・アジアがあったのかも・・と想像すると、とてもワクワクしてしまいます。
現在は、アメリカのスミソニアン博物館が所蔵しています。
一生に一度は見たい宝石のひとつですよね!
スター・オブ・ボンベイ
出典元:https://geogallery.si.edu/
スター・オブ・ボンベイは182カラット。これも現在は、スミソニアン博物館が所蔵しています。
ボンベイはインド第二の都市で、現在はムンバイとよばれています。インド版ハリウッドの「ボリウッド」があることでも有名で、数多くの映画が撮影されているのですよ。
「女王様のネックレス」と呼ばれる夕涼みにちょうど良い海岸線や、威風堂々としたインド門などもあって、ボンベイはとても素敵でおしゃれな港町なのです。
そんなボンベイで見つかったスターサファイアなのかな、と思っていたら、スリランカ産とのことでした。
少し紫がかったブルーは、確かにスリランカ産サファイアによく見られる色ですね。
なぜ「スター・オブ・スリランカ」とか「スター・オブ・セイロン」にならなかったのでしょう・・。
スター・オブ・ボンベイは、無声映画時代に活躍した大スターの婚約指輪だったものだそうですよ。
こんな素敵な婚約指輪を贈られるなんて、愛されていたんですねぇ~。
スターサファイアの選び方
スターサファイアの価値基準
スターサファイアも他の宝石と同じように、様々なグレードがあります。
価値の高いスターサファイアとはどのようなものでしょうか。
スターサファイアで価値が高いのは、石の色とスターの状態が良いものだといわれています。
ピンクやパープルのスターサファイアも美しいですが、やはりブルースターサファイアが一番人気が高いようです。
サファイアとしても高品質の、ロイヤルブルーに発色するものはめったにありません。
透明度のあるロイヤルブルーで、スターの中心が石の頂点にあること、スターが途切れずにまっすぐ端から端まで伸びていること、などが高品質なスターサファイアの条件だそうです。
しかし、全てが満たされるパーフェクトなスターサファイアは、かなり希少です。
私もスリランカで購入したブルーとグレーと濃いピンクのスターサファイアを持っていますよ。
ブルーのものは見事なロイヤルブルーで透明度も高いのですが、それゆえにスターが弱く、残念ながら端まで光が伸びておらずに、中央部分に現れるのみなのです。
でも、それが私の手に届く精一杯のブルースターサファイアでした。なのでとても愛着をもっています!
スターサファイアの市場価格
スターサファイアは色やクォリティによって価格はピンからキリまであると言って良いでしょう。
数千円で販売されているものも見たことがありますし、そこそこクォリティが高いもので数万円~数十万円、トップクォリティのブルースターサファイアになると、数千万円以上してもおかしくないようです。
スターサファイアはどこで買える?
スターサファイアは比較的人気も知名度も高いため、ルースを主に扱っているお店などでは見かけることが多い宝石です。
但し、ジュエリーの取り扱いは少ないように思います。
ルースであれば、オンラインショップでも扱っているお店は多いように思いますし、ミネラルショーなどでもよく見かけます。
よく探せば、自分好みのスターサファイアのルースに出会えるチャンスもあるかもしれません。
そこからオリジナルジュエリーを作るのもきっと素敵ですね☆
但し、先にお伝えしたとおり、偽物のスターサファイアが出回ることもあります。
オンラインショップなどで購入する場合は、商品画像を細かくチェックしたり、信頼して良いお店かどうか、購入者の口コミを読んだりして事前にきちんと確認してから購入することをオススメします。
また高価なスターサファイアの場合、信頼のおける鑑別機関の鑑別書が付いているものかオプションで付けられるものの方がより安心かと思います。
スターサファイアのお手入れ方法
スターサファイアは、先程お伝えしたように、モース硬度が9。ダイヤモンドに次ぐ硬さがあり、日常使いのジュエリーにも適しています。
靭性が優れていて、衝撃に強いことも特徴です。
しかしだからといって万能というわけではないので、バンバンぶつければ傷がつきます(笑)
なるべくぶつけないよう優しく取り扱ってあげて下さいね。
熱によって色が薄くなってしまうこともあるそうで、ジュエリー加工する職人さんたちはスターサファイアに熱がかからないよう注意を払っているそうですよ。
日常の中にある熱程度では問題ないかもしれませんが、念のため必要以上に火に近づけたりはしない方が良いかもしれませんね。
超音波洗浄などは通常は利用できますが、もし充填などの処理がしてある場合には不向きですので、注意が必要です。
ぬるめの石鹸水で優しく洗浄し、柔らかい布でふき取ることをおすすめします。
最後に
魅惑のスターサファイアの世界はいかがでしたでしょうか。
光を当てるとスターが浮き上がるなんて、自然が作り出す芸術にはいつも驚かされます。
世界的に有名なスターサファイアもご紹介しました。いつか実際に見に行きたいですよね!
中には合成や模造のスターサファイアもあります。きちんと明記されたものを納得して購入するのなら良いですが、そうでない場合もあるということですので、注意が必要です。
いくつか見分け方をご紹介しましたが、やはり信頼のおけるお店で手に入れるのが一番だと思います。
太陽光の下で、照明の光で、スターサファイアの変化を眺めて楽しみましょう!
カラッツ編集部 監修