モンタナサファイア(モンタナ産サファイア)と呼ばれるサファイアをご存じでしょうか。
アメリカで産出され、かつてティファニーの宝石学者であったクンツ博士がその品質の素晴らしさを称賛したことでも有名です。
こちらでは、そんなモンタナサファイアの歴史や色の種類、価値、現地の採掘ツアーなどについてご紹介していきます。
モンタナサファイアを配したティファニーのジュエリーもご紹介しています♪
目次
モンタナサファイアとは?
モンタナサファイア(モンタナ産サファイア)とはアメリカのモンタナ州で産出されるサファイアのことです。
一次鉱床であるヨーゴと、二次鉱床のミズーリ、ドライコットンクリーク、ロッククリークの4つがモンタナにある代表的な鉱床です。
特にヨーゴ渓谷で採れるサファイアは高品質のものが多いことから人気・価値ともに高く扱われます。
色と特徴
画像:左がヨーゴ産
ヨーゴ渓谷産サファイアはブルー~パープルのものが多く、通常加熱処理が施されないといわれています。
他の産地のサファイアに見られるようなカラーゾーニングがなく、石全体に色が均一に広がっていることも特徴です。
ロッククリーク鉱山など他の鉱山では、イエロー、グリーン、ピンクなどのファンシーカラーサファイアが多く産出されています。
ロッククリーク鉱山で産出されるファンシーカラーサファイアは透明感が高く色が薄いのが特徴で、大きさも様々です。
高品質の原石は全体の約1割ほどで、ほとんどが加熱処理を施して色を調整しているといいます。
モンタナで採れるルビー
ロッククリーク鉱山では、ごくわずかですがルビーも産出されています。
この場所ではガーネットも産出しており、かつてはルビーはガーネットと混同されて一緒に処分されていたようです。
現在は採掘後に鑑別を行いルビーとガーネットを区別しているそうですが、産出量は400㎏中わずか6g程度と極めて少量とのこと。
GIAの鑑別結果によると、モンタナ産ルビーはモンタナ産サファイアの特徴であるヘイローに囲まれたガラス質の融解インクルージョンなどを含むことが判明したそうです。
産地別特徴
ヨーゴ渓谷
一次鉱床で、ランブロファイアの岩脈に産出されます。
ヨーゴ鉱山は現在閉山していますが、新しい所有者が採掘再開に向けて調査をしているという話もあるようです。
ミズーリ川(二次鉱床)
地質学でインプリケーションと呼ばれる、石が規則的に積み重なった状態の場所です。
ロッククリーク(二次鉱床)
土石流由来で、ミズーリとは対照的に石がバラバラに並んでいます。
ロッククリーク鉱山では現在も採掘が盛んに行われており、多種類のファンシーカラーサファイアが産出されています。
ドライコットンウッド・クリーク(二次鉱床)
この場所では、火山岩が風化した原石が見つかっています。
ヨーゴ産サファイアについて
ヨーゴ渓谷で産出されるサファイアで、高品質のものはスリランカ産に似た美しく鮮やかなブルーをしており、光沢が強いことが特徴です。
前述したように、ブルー~パープルのものが多く、通常加熱処理が施されないといわれています。
発見当初にヨーゴ産サファイアを鑑定した宝石学者のジョージ・F・クンツは「アメリカで採掘された宝石で最も素晴らしいものだ。」と称賛したと言い伝えられています。
ヨーゴ産サファイアの中にはコーンフラワーのような美しい青色をしてるものもありますが、ほとんどが0.8ct未満の小粒の状態で産出されるといわれています。
現在鉱山が閉山していることから、幻の宝石といわれることもあります。
モンタナサファイアの歴史
1800年代後半から金の採掘が盛んになったアメリカ・モンタナ州には、一獲千金を夢見て多くの人々が訪れていました。
1865年、モンタナ州都ヘレナのミズーリ川で最初に発見されたといわれています。
金を採掘するためにこの地を訪れた探鉱者によって発見されたそうですが、最初その石がサファイアであると気が付かず、知らずに捨てられていたのだそうです。なんと勿体ない・・
モンタナサファイアに対する最初の公的な記述は1873年に「American Journal of Science(アメリカン・ジャーナル・オブ・サイエンス)」誌に発表されたJ・ローレンス・スミス博士のものであるといわれています。
その後ヨーゴ渓谷で発見された青い石がニューヨークのティファニー本社に送られ、それを鑑定した宝石学者ジョージ・F・クンツはそれらがサファイアであるとし、絶賛したということです。
しかし、当時アメリカでは宝石をカットする設備が整っておらず、サファイアの原石を米国内の市場で流通させることは不可能でした。
そんな中、1890年代にイギリスの宝石商がミズーリ川付近の調査に訪れ、同国の鉱山会社がこの土地一帯を買取りました。
1930年までには、この場所で採掘したほとんどのサファイアはヨーロッパに輸出されたといいます。
第二次世界大戦中など宝石品質以外の原石はコンパスや飛行機、時計など主に工業用に使用され、モンタナ産サファイアの需要が高まった時期もありましたが、合成サファイアの台頭などにより需要は低下。
モンタナサファイアは採掘コストに見合った利益が取れないこともあり、幾つかの企業が参入しては撤退するということが繰り返され、2012年ヨーゴ渓谷の鉱山が閉鎖されました。
現在も採掘が盛んに行われているのは、モンタナ州のロッククリーク鉱山です。
2011年にポテンテイト・マイニング(Potentate Mining)社がモンタナ州の街フィリップスバーグ近郊のサファイア鉱床を買取り、ロッククリーク・サファイアの大々的な採掘作業を始めました。
その後ポテンテイト・マイニング社はユーレカ渓谷と南部のサファイア渓谷で採掘を行い、2017年までに約30㎏のサファイア原石を採集したと報告されています。
ちなみに、この場所では金も産出されるそうです。
モンタナサファイアに施される処理と鑑別のポイント
ヨーゴ産以外のモンタナサファイアには一般的に加熱処理が施されるといわれています。
ヨーゴ産は産出された時から色合いが美しいものが多いからか、通常加熱処理は施されないそうです。
モンタナサファイアを加熱する際には、るつぼに入れて一斉に処理することが多いのだそうです。
加熱処理にはファンシー焼成とブルー焼成の2段階があります。
ファンシーバーン(ファンシー焼成)
酸素と一緒に加熱する方法です。
酸化アルミニウムのるつぼにサファイアを入れ、不純物のない酸素を炉内に送り込んで加熱します。
ブルーバーン(ブルー焼成)
逆に酸素を抜いて加熱する方法で、ファンシー焼成後、まだ色を向上させる必要がある場合に用います。
この処理では、二酸化炭素と水素を炉内に送り込んで加熱します。
ブルー焼成後は青~緑色になることが多いそうですが、2回行っても青色にならないものもあるそうです。
鑑別のポイント
モンタナ産サファイアには、はっきりした六角形やルチルなどの特徴的なインクルージョンが見られます。
二次鉱床から産出されるものは、大抵がニードルインクルージョンを含んでいます。また、ネガティブクリスタルや円盤状のインクルージョンもあります。
一次鉱床であるヨーゴ産においては、他の産地のサファイアに見られる針状のルチルインクルージョンを含むことが滅多になく、他の鉱物の微細な小片を囲むストレスヘイローが見られることが特徴だといわれています。
GIAではこういったデータのカタログを作成しており、それをもとに鑑定しています。
モンタナサファイアの価値と市場価格
二次鉱床で産出されるモンタナサファイアはそれ程珍しい存在ではないといいますが、ミャンマー産などに比べると総数は多くないと考えられています。
一方ヨーゴ産は高品質の原石が多く、モンタナサファイアの中で最も高い価値が付けられています。
さらに、鉱山が閉山し流通量が激減していることから、希少価値も上がり全体的に価格が上昇傾向にあります。
また、バイカラーサファイアでは、特に黄色と青の2色を見せるモンタナ産の価値が高いそうですよ。
https://twitter.com/keiichiro_oyama/status/1038423113711538176?s=20
市場価格
モンタナサファイアの市場価格は、色やクォリティ、サイズによっては一万円以下でも探すことができます。
しかし、最も価値が高いとされるヨーゴ産となるとカットが施されていない原石の状態でも数万円以上、トップクォリティの1ctアップのものとなると、百万円以上するものもあります。
観光地としてのモンタナ
ミズーリ
ミズーリ川のエルドラド・バー鉱床( Eldorado Bar mine)では、有料でサファイアを採掘したり砂利をふるってサファイアを探すことができるそうです。
砂利をふるうコースは、袋の重量別に価格が異なります。
袋にはサファイアの他にガーネットの原石も入っています。
原石を採掘するコースもありますが、こちらは事前予約が必要とのこと。
採取した原石をファセットカットやジュエリーに加工するサービスも行っています。
周辺ではウォータースポーツや温泉、ギャラリーなども充実しており、観光も楽しめます。
詳しくは以下の公式ウェブサイトでご確認ください。
https://www.helenamt.com/
https://blaze-n-gems.myshopify.com/
ロッククリーク
ロッククリークにあるジェム・マウンテン・サファイア鉱山(Gem Mountain Sapphire Mine)でも用意された砂利をふるいにかけてサファイアを探すアクティビティに有料で参加できます。
インストラクターの指導のもと、砂利の中から見つけたサファイアはその場で鑑別され、加熱処理の必要性やファセットカットに向いているかが判断されます。
加熱処理が必要な原石は先程ご説明した、第1ステップのファンシー焼成を行い、見つけた人の好みに合わせて第2ステップのブルー焼成へと進みます。
さらに、原石をファセットカットやジュエリーに加工してもらうことも可能です。
ショップではロゴ入りアイテムなども販売しており、キャンプも可能です。家族で訪れる人たちも多い人気の観光地であり、事前予約が必要です。
詳しくは以下の公式ウェブサイトでご確認ください。
https://gemmountainmt.com/
モンタナサファイアを使ったティファニージュエリー
モンタナで青い石が発見された当初、この石をサファイアであると鑑定して、その素晴らしさを称賛したのはティファニーの宝石学者ジョージ・F・クンツでした。
現在も、ティファニーではモンタナサファイアを配した素晴らしいジュエリーを販売しています。こちらに、代表的な2点をご紹介します。
ティファニー エンチャント™ ハート キー ペンダント
出典元: https://www.tiffany.co.jp/ |
上部のハート部分の真ん中にラウンドカットのモンタナサファイアと合計0.03ctのダイヤモンドを配したキーペンダントです。
地金はスターリングシルバー。チェーンは別売です。
洗練されたデザインの中でブルーのモンタナサファイアがさり気なく輝いている姿が素敵ですね。
ティファニー1837™ リング
出典元: https://www.tiffany.co.jp/ |
ティファニーの定番アイテム1837リングに、モンタナサファイアを配したデザインです。
スターリングシルバーにティファニーの創業年とロゴが刻まれ、ラウンドカットのモンタナサファイアが2石配されています。サファイアは合計0.05カラットです。
最後に
アメリカ・モンタナ州で産出する、モンタナサファイアのお話をご紹介しました。
最高品質であるヨーゴ産は幻と言われるほど希少価値も上昇しているといいますので出会えるチャンスは少ないかもしれませんが、その他の鉱山で採れるモンタナサファイアならャンスはありそうです。
モンタナまでサファイア採集の旅に行くのも楽しいかもしれませんね!
カラッツ編集部 監修