ブルーに輝く宝石といえば、サファイア!
古くから世界中で愛されてきたその宝石を思い浮かべる方はきっと多いのではないでしょうか。
サファイアは、カシミール、スリランカ、マダガスカル、ミャンマー、モンタナなど、有名な産地がいくつもあり、それぞれ特徴があります。
面白い歴史や言い伝えなどもあって、とにかく話題が尽きません!
偽物もあるそうで、かなり気になってしまいます。
サファイアには、ブルー以外にも多くの色合いが存在しますが、ココでは一般的に「サファイア」と呼ばれる、ブルーのサファイアを中心にお話していきたいと思います。
青い海の様に広くて深い、ブルーサファイアのアレコレをご紹介しましょう!
目次
サファイアとは?
サファイアは、コランダムという鉱物です。
サファイアといえば、ブルーの宝石と思われがちですが、実はとてもカラーバリエーションが多く、レッド以外の全ての色があるのではないかといわれています。
何故レッドはないかと言いますと、赤いコランダムはルビーと呼ばれるからです。
そう、ルビーとサファイアは実は同じ鉱物の色違いの宝石なのですね。
コランダムには他にも様々な色があるのですが、レッド以外は全てサファイアと呼ばれます。
色相環がができそうなほどカラフルなのですが、一般的にサファイアと呼ばれるものはブルーで、それ以外はサファイアの前に色名をつけて、例えばピンクサファイアやイエローサファイアなどと呼ばれます。
ブルーと言っても色幅があって、グリーンがかったブルーからパープルがかったブルーまでの色相が、ブルーサファイアとされているのです。
サファイアとはどんな宝石なのかを知るために、まずは鉱物について調べてみましょう。
鉱物としての基本情報
英名 | Sapphire(サファイア) |
和名 | 青玉(せいぎょく) |
鉱物名 | コランダム |
分類 | 酸化鉱物 |
結晶系 | 六方晶系(三方晶系) |
化学組成 | Al2O3 |
モース硬度 | 9 |
比重 | 3.99 – 4.1 |
屈折率 | 1.76 – 1.77 |
光沢 | ガラス光沢 |
サファイアのモース硬度は9。ダイヤモンドに次ぐ硬さです。
表に記していませんが、劈開がないため、靭性に優れていることから日常的なジュエリーとしても楽しめます。
サファイアは、ガラス光沢をもちキラキラ輝く、比較的丈夫な宝石だということですね。
サファイアの産地とそれぞれの特徴
サファイアの産地は、冒頭で紹介した有名な地域に加えて、オーストラリアやカンボジアのパイリン、ブラジル、タンザニアなど、世界各地に点在しています。
高品質のサファイアが採れる地域には共通点があるのをご存知でしょうか。
それは、地球が今の形になるよりはるか昔に存在していた、ゴンドワナ大陸に秘密があります。
ゴンドワナ大陸は、およそ6億年前にパノティア大陸から分離して形成されたと考えられています。
その後何億年もかけてゴンドワナ大陸が分裂して移動し、アフリカ大陸、マダガスカル、インドやスリランカ、オーストラリア、南アメリカ、南極などが形成されたといわれています。
ゴンドワナ大陸が形成された時に大陸の衝突があり、モザンビークベルトと呼ばれる高温高圧変成帯が作られ、サファイア鉱床ができたと考えられています。
モザンビークベルトの部分は、現在の東アフリカ、マダガスカル、スリランカ、南インドなどに分裂したといわれ、その後いずれからも良質のサファイアが産出されています。
また、インド大陸がゴンドワナ大陸から分離した後にユーラシア大陸と衝突し、ヒマラヤ山脈が形成され、その時の衝撃により、カシミールやミャンマーにサファイアの鉱床が生成されたといわれています。
大陸同士の衝突や分離などによって宝石が作られるなんて、とても神秘的ですね。
サファイアの産地に住む人々は、自国で採れるサファイアに誇りをもっています。
イギリスのチャールズ皇太子がダイアナ元妃にサファイアの婚約指輪を贈った時、そのサファイアはどこで採れたものなのか、大きな話題になりましたね。
スリランカの人々は「あれはスリランカ産だ!」と胸を張っていて、ブラジルの人々が「あれはブラジル産だ」と言っていたことに腹を立てていましたよ。
お話は尽きませんが・・・サファイアの産地ごとの特徴を見てみましょう。
カシミール産
インドの北に位置するカシミールでサファイアが見つかったのは1881年頃のことだといわれています。
大理石の中にベルベットのように滑らかな色合いをしたブルーサファイアが発見されたのだそうです。
カシミール産サファイアの特徴は、コーンフラワー(矢車菊)の花の色にも例えられる、内側から発光しているかのようなブルーの美しさでしょう。
もうひとつの特徴は希少性。
美しい結晶は1882年から1887年の6年間で採掘され尽くしてしまったといわれ、今では幻の宝石とさえいわれています。
▶カシミール産サファイアについて詳細はコチラの記事で
スリランカ産
2000年以上前からサファイアが採掘され続けているといわれるスリランカ。
一時は枯渇しつつあると言われたものの、新しい鉱脈が見つかり息を吹き返しました。
スリランカ産のサファイアはパープルがかったブルーが多いともいわれていますが、コーンフラワーブルーに近いものやロイヤルブルーも産出されています。
他にも暗めのインクブルー、明るいブルーなど、様々な色合いのブルーサファイアが採れることでも知られています。
▶スリランカ産サファイアについての詳細はコチラの記事で
マダガスカル産
アフリカ大陸の東側の海に浮かぶ大きな島がマダガスカルです。
マダガスカルでは古くからサファイアが採掘されていましたが、国際市場に出るようになったのは新たな鉱脈が見つかった1990年代に入ってからといわれています。
スリランカやミャンマー、カシミール産とよく似た、高い品質のサファイアが産出されることで話題となりました。
とても明度が高くキラキラとした輝きのサファイアが印象的です。
▶マダガスカル産サファイアについての詳細はコチラの記事で
ミャンマー産
ミャンマーのサファイアは、深くて美しいロイヤルブルーが特徴的です。
ロイヤルブルーのサファイアは、イギリス王室御用達だったそうですよ。
ミャンマーのモゴックは高品質のルビーが採れることで有名で、そこではロイヤルブルーに輝く大粒で高品質のサファイアも産出されています。
ミャンマー産のサファイアは、旧称であるビルマ産とも呼ばれていて、その鮮やかなブルーが世界の人々を魅了しているのです。
▶ミャンマー産サファイアについての詳細はコチラの記事で
アメリカモンタナ州ヨーゴ産
アメリカのモンタナ州でも、透明度が高く美しいサファイアが採れるのをご存知でしょうか。
ヨーゴ渓谷で青い原石が発見され、ティファニーの宝石学者だったJ.F.クンツ博士がそれをサファイアであると証明したのだそうです。
モンタナ産サファイアの中で最も価値高く扱われるのがヨーゴ渓谷で採れたもの。
ヨーゴ産サファイアは原石が平らな板状で、色が均一、シルクインクルージョンが殆どないなどの特徴があります。
小粒の状態で産出されることも特徴で、1ct以上になることは非常に稀だといいます。
▶ヨーゴ産サファイアについての詳細はコチラの記事で
サファイアの原石の形
モンタナ州のサファイア原石は平らな板状と先程ご説明しましたが、一般的にサファイアの原石は錘状で、中央が膨らんだ樽のような形をしているものが多いといいます。
柱状の単結晶や、双晶であることも多くあります。
サファイアは、ケイ酸分が乏しくアルミナが多い広域変成岩、中~高温の酸性熱水による変質帯などで生成されるといわれています。
このうち宝石品質のサファイアは二次性堆積層である漂砂鉱床の中から採掘されることが多いそう。
サファイアは科学的にとても安定していて、土中や水中でも腐食されにいのですが、母岩から外れて川を流れていくうちに摩耗されていくのだそうです。
サファイアの意味
個人的な印象かもしれませんが、サファイアという言葉には、何だか神秘的な響きがあるように感じます。
どのような意味があるのでしょうか。
また、サファイアの石言葉や誕生石についても調べてみました。
名前の意味
サファイアという名前の語源はギリシャ語の「サッピールス(Supphirus)」で、青色という意味なのだそうです。
しかし昔は、ラピスラズリのことをサファイアと呼んでいたのではないかという説もあるそうですよ。
ローマ時代、サファイアは「ヒアキントゥス(Hyacinthus)」と呼ばれ、スリランカやインドから運ばれてきていたそうです。
1783年になってようやく、サファイアとルビーが同じ石であることが判明し、1798年にはその鉱物をコランダムと呼ぶようになりました。
コランダムの宝石を学名化するために、赤い石を「ルベウス➾ルビー」、青い石を「サッピールス➾サファイア」と分けたのだそうです。
その後、コランダムには赤と青以外にも数多くの色があることが分かり、赤以外の色を全てサファイアに分類することになったようです。
何故ベリルなどのようにコランダムに色名を付ける形にはしなかったのか、少し不思議ではありますね。
石言葉とその意味
宝石にはそれぞれ、石言葉があります。
まるで花言葉のようで、ロマンティックですよね~。
サファイアの石言葉は「誠実」「慈愛」「徳望」です。
誠実とは、真面目で嘘や偽りがなく、真心をもって人に接することです。
慈愛とは、慈しみかわいがること、深い愛情。
徳望とは、徳が高く人々から尊敬され信頼されること。
古くから聖職者が身に着けていたともいわれるサファイアにピッタリの言葉かもしれませんね!
誕生石
サファイアは、9月の誕生石です。
9月の澄んだ青空にピッタリではないでしょうか。
多くの色合いをもち、個性を表しやすいサファイアが誕生石だなんて、9月に生まれた方々を羨ましいと思います!
それからブルーサファイアは結婚23周年記念の宝石にも選ばれているそうですよ。
ブルー以外のサファイアの色
色相環のグラデーションができるほど、実に様々な色があるサファイア。
ブルー以外のサファイアは、ファンシーカラーサファイアと呼ばれています。
私のイメージでは、36色、もっといえば72色の色鉛筆から、レッドとブルーだけを抜き取ったものがファンシーカラーサファイアの色、という感じです。
クロム、ニッケル、チタン、鉄などの微量元素のバランスによって色が変わると考えられています。
例えば、イエローはニッケルが、グリーンは、ニッケル、チタン、鉄が、カラーチェンジはバナジウムとクロムが影響しているそうです。
また、クロムが含まれるとレッドやピンクを発色し、クロムが多くなる程赤みが強くなります。
ちなみに、ブルーの発色は、結晶内に含まれている鉄やチタンの影響といわれています。
微量元素が色を左右するとは面白いですね!
▶ファンシーカラーサファイアについての詳細はコチラの記事を参考に
見た目や効果が異なる種類
サファイアには様々な色があるだけでなく、見た目が異なるものや光学効果をもつものも存在しています。
有名なところだと、スターサファイアやカラーチェンジサファイアですね。
スターサファイアは、ドーム状のカボションカットが施されたものに上から光を当てると、6条の光の筋が浮かび上がる不思議な見た目をもつ宝石。
光源を動かすとスターも動き、思わずライトで遊びたくなる楽しさがあります。
カラーチェンジサファイアは、光源の違いで色合いが変わって見える、変色効果(カラーチェンジ効果)をもつサファイアです。
アレキサンドライトに代表される光学効果であることから、色変わりが近いものはアレキタイプなどと呼ばれることもありますね。
また、最近だとトラピッチェサファイアなども人気があります。
エメラルドに見られるものが最も知られ、サトウキビを搾る道具の歯車に見た目が似ていることから名付けられたといわれています。
こちらも6本の線が見られるのですが、スターとは異なり、光の筋ではなく結晶の中に6本の線が入ったり、花のように6つの結晶が繋がって見えるものなどがあります。
▼スターサファイアやトラピッチェ宝石について詳細を知りたい方はコチラの記事を参考に
サファイアの歴史・伝説・言い伝え
何となく気品を感じるブルーサファイアは、古い時代から、王族や聖職者のローブや王冠などに飾られていたといいます。
古代ペルシャでは、大地はサファイアでできており、それが太陽光に反射して空が青くなっていると考えられていたそうですよ。
サファイアの大地だなんて素敵な考えですよね~。
それから古代ギリシャでは、サファイアは眼病を癒したり、囚人を解き放つ力もあると言われていたとか。
また、中世の錬金術師たちは、サファイアには毒素に対する解毒剤の役割があったり、精神にも作用するとも考えていました。
東洋では、サファイアを「邪悪な目」に対する強力なお守りと位置付けられていたそうですよ。
古今東西、サファイアには不思議な力があるといわれてきたのですね。
サファイアに施される処理について
サファイアは一般的に加熱処理が施されるといわれています。
加熱処理は昔から施されており、価値が著しく下がるというものではありません。
サファイアに施される処理には他にもあり、多いのはベリリウム拡散処理やガラス含浸処理などです。
これらの処理が施されたサファイアは著しく価値を下げてしまいます。
上の画像は、サファイアのルース115粒を調べたところ、拡散処理されたものが3粒見つかった時のものです。
意図的でなくても混ざってしまうことがあるそうなので、少し怖いですね。
処理を施されること自体は悪いことではありませんが、処理の有無を隠して天然未処理のサファイアとして高額で販売しているようなケースもあるので、注意が必要です。
サファイアの偽物
サファイアにも偽物はあるのでしょうか。
先ほど述べたベリリウム拡散処理やガラス含浸処理が施されたもの以外にも、合成サファイア、合成スピネル、ガラスなどが、天然サファイアと偽られているケースがあるそうです。
何度も言いますが、そうと分かって安価で手に入れる分には全く問題ありません。
海外では、拡散処理がされたサファイアが1カラット200円ほどで販売されていることもあるそうです。手軽に色々なサファイアを楽しむ分には問題ありませんよね。
しかしそれが天然サファイアとして高値で売られていたら、どうでしょうか。
非加熱天然で色の美しいサファイアには希少価値があり、とても高値になります。
鑑別書には、サファイアにどのような処理がされているのかが明記してありますので、購入する場合は確認することをオススメします。
サファイアの価値基準と市場価格
どのような色相で、どのような状態のサファイアに高い価値が付けられるのでしょうか。
幾ら位で流通しているのか、価格も気になるところです。
サファイアの価値基準や市場価格について見てみましょう。
価値基準
サファイアは産地特定が可能な宝石といわれており、産地によって価値に違いがあります。
ブルーサファイアで最も価値が高いのは、カシミール産のコーンフラワーブルーでしょう。
ベルベットの様に滑らかな色で、内側から発光しているかのような輝きがあります。
次に価値が高いのはミャンマー産のロイヤルブルーといわれています。
その後に、スリランカ産、マダガスカル産、モンタナ産、パイリン産などが続きます。
サファイアは他の色石と同様に、色が鮮やかなもの、大きいもの、透明度が高いもの、カットが美しいものほど価値が高くなる傾向があります。
市場価格
サファイアには様々な品質があり、価格も様々です。
クオリティが低くて小さいものであれば、数千円から手に入れることができるでしょう。
産地によっても価値が違うのは先ほども触れた通りで、値段に違いが生じています。
例えば1ct以上の最高品質のブルーサファイアですと、スリランカ産は数十万円~数百万円、ミャンマー産だと数百万~数千万円位で、カシミール産サファイアになると数億円でもおかしくないなど、市場価格には幅があるようです。
サファイアのお手入れ方法
サファイアは硬くて比較的丈夫な宝石のため、日常使いのジュエリーにも適しています。
しかし、サファイアよりも硬いダイヤモンドにぶつけると傷がつくこともあるので、保管の際などは注意して下さい。
コランダムは熱や光、一般的な化学薬品に対しても耐久性があるといわれますが、ホウ酸粉末に触れると表面が腐食してしまうそうです。
また、フラクチャー充填やキャビティ充填、染色などの処理が施されたサファイアは酸に弱く、レモン汁でも損傷することがあるそうです。
サファイアは通常、超音波洗浄機やスチームクリーナーを使うことができますが、何らかの処理がされているものは破損する可能性があるそうです。
予め確認の上使用することをオススメします。
より安全な方法は、他の宝石と同様に、ぬる目の石鹸水の中でブラシなどを使って洗い、柔らかい布で拭くことです。
最後に
世界四大宝石の一つとしても有名なサファイア。
個人的には、サファイアはブルー宝石の王様のような存在にも感じます。
多くの人が憧れてしまう宝石の一つではないでしょうか。
その美しいブルーの輝きは、古くから特別な力があると考えられていました。
また、サファイアは産地ごとに特徴が異なり、価格も違うことも分かりました。
色々なサファイアを集めて、色や輝きを比べて楽しみたいものですね!
カラッツ編集部 監修
<この記事の主な参考書籍・参考サイト>
◆『価値がわかる宝石図鑑』
著者:諏訪恭一/発行:ナツメ社
◆『決定版 宝石』
著者:諏訪恭一/発行:世界文化社
◆『アヒマディ博士の宝石学』
著者:阿衣アヒマディ/発行:アーク出版発行
◆『宝石ガイドブック』
発行:中央宝石研究所
◆『岩石と宝石の大図鑑』
監修:ジェフリー・E・ポスト博士/著者:ロナルド・ルイス・ボネウィッツ 訳:青木正博/発行:誠文堂新光社 ほか
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◆https://www.gia.edu/
◆https://www.cgl.co.jp/