喪の宝石として知られるジェットですが、実は日本では1990年頃まではほとんど知られていなかったといわれています。
同じブラックの宝石であるオブシディアンなどとは違い重量はなく、軽くさりげなく身につけられる宝石です。
その独特の生成の仕方や歴史などを始めとした、ジェットという宝石のアレコレについて、今回は解き明かしていきたいと思います!
宝石ジェットとは?
実はジェットは鉱物ではなく、琥珀や真珠と同じ有機物から成る宝石です。
簡単にいうと、木の化石のようなもので、琥珀やペトリファイドウッド(珪化木)と近いかもしれません。
どんな宝石なのか、もう少し詳しく説明していきましょう!まずは基本情報から。
基本情報
英名 | Jet |
和名 | 黒玉 (こくぎょく) |
成分 | C (不純物を含有する炭素) |
結晶系 | 非晶質 (有機質) |
モース硬度 | 2.5 – 4.0 |
比重 | 1.30 – 1.35 |
屈折率 | 1.66 |
特徴
ジェットは樹木が化石化して固まったことからできた亜炭の一種です。
炭素の含有率が高く、層状の組織をもつことが特徴で、時々金属光沢のある粒子を含むものもあるそうです。
研磨されると光沢をもち、中世では鏡のような使われ方もされていたとか。
樹木の化石なので、冒頭で触れたように軽いという訳です。
またジェットはウールなどで擦ると静電気を発するといわれています。
色
ブラック、ダークブラウンなど。
産地
イギリス、中国、アメリカ、フランス、ロシア、スペイン、ドイツ、ポーランド、トルコなど。
最も有名なのは、イギリスのウィットビーで、品質の良いものが多いとされます。
ウィットビー産のような強度をもつものを「ハードジェット」、同じ品質にない、強度の低いものを「ソフトジェット」と、呼び分けられているそうです。
名前の意味
古代フランス語のjaiet (ジャイエト) から由来しています。
ジェットはどうやってできるのか?
ジェットは海に浮かぶ漂流木などが水を含んで沈み、海成層中に閉じ込められてできたものが多いといわれています。
つまり、海底などの水の底に蓄積していき、長い年月をかけて炭化・化石化していったものだと考えられています。
同じ樹木の化石といわれているペトリファイドウッド(珪化木)との違いは、ペトリファイドウッドが石英分で石化したのに対し、ジェットは炭素分で石化した、ということ。
炭素分で石化したというと、それでは石炭と同じでは?と思われるかもしれませんが、石炭とジェットとの違いは炭化した後に木の組織を残しているかどうか。
すなわち樹木の化石と呼べるかどうかということだそうです。
ジェットの原石の形
ジェットは樹脂ではなく木の幹そのものが化石化したものです。
なので多くは板状や塊状で見つかります。
そして鉱物のように地下奥深くを掘り進め採掘する訳ではなく、海辺に打ち上げられたものを採取するといった形で集められます。
宝石ジェットの歴史
ジェットは、紀元前1万年頃の石器時代にはすでに魔除けの宝石として愛されていたといわれています。
そのジェットが最も注目を浴びたのは、1837年から1901年頃のヴィクトリア朝の時代。
イギリスのヴィクトリア女王は、夫であるアルバート王子が亡くなった際、40年もの間喪に服す意味でジェットを身につけていたといいます。そしてこのことがきっかけでイギリスでジェットが大流行したといわれています。
現在でもイギリスの喪の席では、ジェットの装飾品を身につける人が多いとか。
しかし今では喪の宝石「モーニング・ジュエリー」としてだけでなく、普段使いのアクセサリーとしても使われるようになりました。
ジェットにまつわる言い伝え
ヴィクトリア女王によって喪に使う宝石として定着したジェットですが、古来からジェット=喪の宝石だった訳ではありません。
元々樹木であったジェットは燃やすと黒煙を上げることから、古来の人々は魔を撃退できると信じ、魔除けの石として用いていたといわれています。
また擦ると静電気を発生し、紙を引き寄せることから不思議な力があるとして「黒い琥珀」 と呼ばれお守りとして大事にされていたこともあるそうです。
お手入れ方法
皮脂や化粧品などの油分が付いたままになっていると光沢が衰えてしまいますので、使用後は柔らかい布などでふき取るようにしてください。
また、ジェットのモース硬度は2.5 – 4.5と非常に柔らかく傷つきやすいです。
硬いものに当たったり落としたりすると傷が付いたり欠けてしまうこともありますので、注意が必要です。
最後に
古代の樹木が海底に蓄積して化石化した宝石、ジェット。
長らく琥珀と同じく樹脂が固まったものだと思われていたようですが、20世紀初頭に顕微鏡で年輪が確認され、木の幹の化石であると解明されたといわれています。
「人類最古の宝石」と称されるこの漆黒の宝石は、クールな装いにも似合うのでユニセックスに愛されています。
もし機会があればぜひ手に取って見て下さいね。
カラッツ編集部 監修