突然ですが、あなたは「ゴーシェナイト(ゴシェナイト)」と聞いて何を最初に思い浮かべますか?
宝石?それとも人気漫画のキャラクター?
人気漫画「宝石の国」の主要キャラクターの一人として登場し、知名度が上がったゴーシェナイト。透明度の高いカラーレスの宝石です。
誰もがよく知る緑色をした、あの有名宝石とも深い関係にありますよ。
今回は、そんなゴーシェナイトの特徴や産地、石言葉、価値について、アレコレお話していきます!
目次
ゴーシェナイト(ゴシェナイト)とは
カラーレスが印象的なゴーシェナイト。ゴシェナイトやゴッシェナイト、ゴシュナイトなどと呼ばれることもありますね。
鉱物としてはどんな特徴を持つのか、まずは、基本情報から見ていきましょう。
鉱物としての基本情報
英名 | Goshenite(ゴーシェナイト、ゴシェナイト) |
和名 | 緑柱石(りょくちゅうせき) ※ベリル |
鉱物名 | ベリル |
分類 | 珪酸塩鉱物 |
結晶系 | 六方晶系 |
化学組成 | Be3Al2Si6O18 |
モース硬度 | 7.5 – 8.0 |
比重 | 2.60 – 2.90 |
屈折率 | 1.57 – 1.60 |
光沢 | ガラス光沢 |
ゴーシェナイト(ゴシェナイト)の特徴
鉱物としては、ベリルに属するゴーシェナイト(ゴシェナイト)。
ベリルは、ベリリウムを主成分とするケイ酸塩鉱物で、含まれる微量元素の違いなどで、青、緑、黄色、ピンクなど様々な色を呈し、色によって異なる名前で呼ばれます。
宝石にお詳しい方なら、ベリルと聞いただけで、他にどんな宝石があるか思い浮かべられるかもしれませんね!
モース硬度は7.5 – 8.0と比較的高いため、ジュエリーとしても十分楽しめます。
比較的大きな原石が産出されることも特徴の一つで、特殊カットが施されることもあります。
多数のファセット面をもつカットが施されたゴーシェナイトは、キラキラと美しい輝きを放ちます。
かつて、透明度の高いゴーシェナイトが眼鏡のレンズとして使われていたという記録も残ります。
ドイツ語で眼鏡という意味の「Brille」は「Beryl」から派生して付けられたという話もあるそうですよ!
色
ゴーシェナイト(ゴシェナイト)の色はカラーレス、つまり無色です。
鉱物ベリルは主に、微量元素を含むことにより発色するといわれています。
例えば、鉄が入れば青色や明るい緑色、クロムとバナジウムが含まれれば深く鮮やかな緑色、マンガンが入るとピンクや赤色になります。
その他加熱や放射線照射などにより色が変化することもあります。
何かしらの微量元素が含まれ、うっすらでも色が付くことが多いため、完全にカラーレスのゴーシェナイトは産出量が少ないのだそうです。
産地
ゴーシェナイト(ゴシェナイト)の産地は、アメリカ、マダガスカル、ブラジル、ロシア、カナダ、ナミビア、パキスタンなどです。
比較的多くの場所で産出されるようですね。
原石の形
六方晶系のベリルは、主に柱状結晶の形で成長します。
ゴーシェナイトは、主に花崗岩ペグマタイトの中に生成するといわれています。
カラーレスのゴーシェナイトの原石は、どことなく、氷河に浮かぶ氷の結晶のような印象を覚え、カットされたルースなどとはまた異なる魅力が感じられますね!
名前の意味
ゴーシェナイト(ゴシェナイト)の名前は、最初に発見されたアメリカのマサチューセッツ州ゴッシェンの地名に由来するといわれています。
「ホワイトベリル」と呼ばれることもあるそうですよ。
▽カラッツSTOREのゴーシェナイト▽ |
ゴーシェナイトの仲間
先程もお伝えしたように、ゴーシェナイトが属する鉱物ベリルは、様々な色を呈し、色によって異なる名前で呼ばれます。
例えば、青色のベリルをアクアマリン、緑色をエメラルド、ピンク色をモルガナイトのような感じですね。
そう、ゴーシェナイトは、深く鮮やかな緑色が美しいエメラルドや海のような青い色合いで人気のアクアマリンと同じ鉱物なのですね!
他にも、レッドベリル(赤)、グリーンベリル(明るい緑)、ヘリオドール(黄緑)、ゴールデンベリルなどがあります。
ベリルの中で最も価値が高いとされるのは、赤色のレッドベリル、その次が緑色のエメラルドだといわれています。
▽カラッツSTOREのベリル▽ |
ゴーシェナイトとアクアマリン、モルガナイトの違い
画像:左-ゴーシェナイト 中-アクアマリン 右-モルガナイト
前述したように、アクアマリンもモルガナイトもゴーシェナイトと同じベリルに属する鉱物の一つです。
3つの違いは色で、カラーレスをゴーシェナイト、青色をアクアマリン、ピンク色をモルガナイトと呼びますが、中には一見色の判別がつきにくいものもあると聞きます。
無色ならゴーシェナイト、ほのかでも青色やピンク色を感じられたらアクアマリンやモルガナイトになるそうです。
つまり少しでも色味が感じられるものは、その色の宝石名になるというわけですね。
画像:左-ゴーシェナイト 中-アクアマリン 右-モルガナイト
▽カラッツSTOREのアクアマリン▽ |
▽カラッツSTOREのモルガナイト▽ |
ゴーシェナイトと見た目が似ている宝石
画像:上段 左-ゴーシェナイト 中-ロッククリスタル 右-ホワイトトパーズ
下段 左-ホワイトサファイア 中-ダイヤモンド 右-アクロアイト
カラーレスのゴーシェナイトと見た目が似ている宝石には、どんなものがあるでしょうか。
有名宝石の中では、ロッククリスタル、ホワイトトパーズ、ホワイトサファイア、アクロアイトなどと見た目が似ています。
輝き方が似ているということで、ダイヤモンドの代用品として利用されたこともあったそうですよ。
それぞれについて簡単にご紹介しましょう。
ロッククリスタル、ホワイトトパーズ
画像:左-ロッククリスタル 右-ホワイトトパーズ
ロッククリスタルはカラーレスのクォーツ(水晶)、ホワイトトパーズはカラーレスのトパーズのことを指します。
どちらもゴーシェナイトと似たような色合い、輝きを放ちます。
混ざり合ってしまうと、素人目にはちょっと見分けられない、ということもあります。
実際、事故的に混ざり合ってしまうこともあるそうです。下の画像をご覧ください。
こちらは、ゴーシェナイトとして買付た宝石ルースの中にロッククリスタルとホワイトトパーズが混ざっていた時の写真です。
ロッククリスタルとホワイトトパーズが一つずつ混ざっているのですが、どれとどれか分かりますか?
正解は手前の右2つがロッククリスタルとホワイトトパーズだそうです。本当によく似ていますよね。
見た目だけでは判別がつきにくいので、気になる場合は鑑別機関にきちんと出して見てもらいましょう。
▽カラッツSTOREのロッククリスタル▽ |
▽カラッツSTOREのホワイトトパーズ▽ |
ホワイトサファイア
ホワイトサファイアはカラーレスのサファイアのことです。
サファイアと言えば、青色のものが最も知られていますが、実は様々な色を呈します。
コランダムと呼ばれる鉱物に属し、赤いコランダムをルビー、赤色以外のコランダムをサファイアと呼びます。ベリルと少し関係性が似ていますね。
サファイアは主に色名とともに、例えば黄色ならイエローサファイア、緑色ならグリーンサファイアと呼ばれます。そして、色のない、カラーレスのサファイアがホワイトサファイアです。
サファイアはモース硬度9で、屈折率もゴーシェナイトよりも高い(サファイア:1.76 – 1.78、ゴーシェナイト:1.57 – 1.61)ため、サファイアの方が少し輝きが強いかもしれませんね。
▽カラッツSTOREのホワイトサファイア▽ |
ダイヤモンド
先程もご紹介しましたが、ゴーシェナイトはかつてカラーレスのダイヤモンドの代用品として利用された時代もあったといわれています。
今のように合成石や人造石がなかった頃は、輝きを放つカラーレスの宝石をダイヤモンド代わりに使うことが多かったのかもしれませんね。
ダイヤモンドは、分散が高い(0.044)ため、光を当てるとファイア(分散光)が見られるのに対し、ゴーシェナイト(0.014)にはあまり見られないという違いがあります。
▽カラッツSTOREのダイヤモンド▽ |
アクロアイト
アクロアイトはカラーレスのトルマリンを指します。
トルマリンもカラーバリエーションが豊富なことで有名な宝石ですね。
ない色はないのでは、と言われる程、様々な色を呈するトルマリンの中にあって、カラーレスのものがアクロアイトです。
トルマリンもベリルと同じで何かしらの色が付くことが多いため、完全にカラーレスのアクロアイトは、トルマリンの中では産出量が少ないといわれています。
▽カラッツSTOREのアクロアイト▽ |
◆◆◆
そのほか、レアストーンでは、ダンビュライト、フェナカイト、ペタライトなどとも見た目が似ていますね。
▽カラッツSTOREのカラーレスの宝石▽ |
ゴーシェナイトの価値と市場価格
ゴーシェナイトを買いたいと思った時、価格相場は大体どのくらいなのでしょうか。
また価値で選ぶ場合、どこをポイントとして見れば良いのでしょうか。
簡単にご紹介しましょう。
価値基準
カラーレスのゴーシェナイトの場合、透明度の高さが最も重要です。
色が入っておらず、インクルージョン(内包物)が少ない、透明度の高いものほど、価値が上がります。
その他、カットが美しいもの、カラットが大きいものも評価が上がります。
特殊カットが施されることも多いため、著名な研磨職人がカットしたものや複雑なカットが施されたものも高い価値を付けられますね。
価格相場(市場価格)
ゴーシェナイトは、ベリルの中では産出量は少ない方ですが、レッドベリルやエメラルドほど価値が高い印象はありません。
クオリティや大きさによっては一万円以下でも探すことができます。
特殊カットが施されたり、サイズが大きいもの、著名な研磨職人がカットしたものとなると、数万円以上するものも多いです。
どこで買える?
ゴーシェナイトを取り扱うお店は一般的には多くないように思いますが、レアストーンの扱いの多いお店であれば、見つけることができるでしょう。
通販サイトやミネラルショーなどでも見つけることができます。
ゴーシェナイトのお手入れ方法
ジュエリーとして身につけた後は、柔らかい布で拭いてからしまうと美しさを保ちやすいです。
特に素肌にそのまま付けた場合は、汗や皮脂汚れなども付きやすいため丁寧に拭いてあげてくださいね。
汚れが目立つ場合は、中性洗剤を溶かしたぬるま湯の中で柔らかいブラシを使って洗ったり、アルコールティッシュなどで拭くと綺麗になります。
アルコールティッシュなどで拭いた場合、ジュエリーのツメなどにティッシュが引っかかってしまうことがありますので、ご注意ください。
最後に
美しいきらめきを放つ宝石、ゴーシェナイト。比較的大きめのルースが流通しているので、ペンダントに加工しても素敵ですね♪
かつてダイヤモンドの代用品だったと聞き、「ダイヤモンドには手が届かなくても、ゴーシェナイトなら・・・」と一瞬考えてしまった筆者。。
しかし実際は、ダイヤモンドとは異なる魅力をもつ宝石です。この機会にゴーシェナイトに興味をもっていただけたら嬉しいです。
カラッツ編集部 監修
<この記事の主な参考書籍・参考サイト>
◆『有名石から超希少石まで美しい写真でよくわかる 宝石図鑑』
著者:KARATZ 監修:小山慶一郎/発行:日本文芸社
◆『起源がわかる宝石大全』
著者:諏訪恭一、門馬綱一、西本昌司、宮脇律郎/発行:ナツメ社
◆『決定版 宝石』
著者:諏訪恭一/発行:世界文化社
◆『ジェムストーン百科全書』
著者:八川シズエ/発行:中央アート出版社
◆『ネイチャーガイド・シリーズ 岩石と鉱物』
著者:ロナルド・ルイス・ボネウィッツ 訳:伊藤伸子/発行:科学同人 ほか