ベリルと聞いてもピンとこない方は多いかもしれませんが、エメラルドやアクアマリンはいかがでしょうか。
実はエメラルドやアクアマリンは鉱物としては同じ種類に属し、他にもピンクやレッドなど色んな色があります。
色によって異なる名前で呼ばれるベリル。
古くから愛されてきた鉱物で、透明度も高く美しいことから宝石としても重宝されてきた歴史があります。
今回はエメラルドやアクアマリンだけではない、「鉱物ベリル」の魅力についてお話ししたいと思います。
ベリルについて

和名を緑柱石(りょくちゅうせき)というベリルの由来は、緑色の石という意味をもつギリシャ語の「ベリロス(Beryllos)」から由来したといわれています。
冒頭でも触れたように、ベリルは色によって宝石名が変わり、主な色は8色あります。
緑色のベリルはエメラルド、ブルーはアクアマリン、黄色はイエローベリル、黄緑色はヘリオドール、黄金色はゴールデンベリル、ピンクはモルガナイト、赤色はレッドベリル、そして無色透明はゴーシェナイトとそれぞれ呼ばれています。
稀にレッドベリルを「レッドエメラルド」と呼ぶのを耳にしますが、これはコマーシャルネームといわれるもので、商用目的でつけられた名前。正式な宝石名ではありません。
ベリルの価値

突然ですが、同じグレードの場合、ベリルの中で最も高値で取引される宝石は、何だと思いますか?
やっぱりエメラルドじゃないか?と思われるかもしれませんが、正解はレッドべリルです。
その理由は希少性で、産地の少なさから見ても明らかです。上質な物であれば、同じカラットのダイヤモンド以上の金額で取引されることもあるのだとか。
その次にエメラルドが高値を付けられます。
ベリルは色鮮やかで透明度が高く、インクルージョン(内包物)が少ないものほど価値があり、輝きを増して見せるファセットカットに研磨されます。
また、猫の目のような光の筋が浮かぶキャッツアイ効果(シャトヤンシー)の見られる物もあります。
この効果がみられる物はカボションカットに研磨されることが多いです。
ベリルの主な産出地

ベリルの産出地は、宝石によって変わります。
エメラルドはコロンビアやブラジル、ジンバブエ、ザンビアですが、アクアマリンはブラジルやナイジェリア、モザンビークやマダガスカルといった具合です。
下記に宝石種別の産地をまとめましたのでご参考ください。
エメラルド | ザンビア、ブラジル、ジンバブエ、マダガスカル、パキスタン、インド アフガニスタンなど |
アクアマリン | ブラジル、ナイジェリア、モザンビーク、マダガスカルなど |
イエローベリル | アメリカ、インド、ロシア、パキスタン、ブラジル、アフガニスタン ナミビア、カナダ、ナイジェリア、モザンビーク、マダガスカル、ザンビアなど |
モルガナイト | アメリカ、モザンビーク、マダガスカル、ナミビア、ブラジル、アフガニスタン |
レッドベリル | アメリカ ユタ州とその周辺 |
さまざまな色のベリル

では、色別にそれぞれの魅力をご紹介していきましょう!
イエロー系のベリル

現在では色味の違いで3つに呼び分けられるイエロー系のベリル(イエローベリル、ヘリオドール、ゴールデンベリル)ですが、かつては黄色~黄金色のものは全て「ヘリオドール」と呼ばれていたようです。
ヘリオドールの名前の由来は、太陽を意味するギリシャ語の「ヘリオス(Helios)」から来ています。
現在では、黄緑色のものをヘリオドール、オレンジ味のある黄色~黄金色をゴールデンベリル、そして黄色のものをイエローベリルと呼ぶようになっています。
色味の違いによって、鑑別でも分けて出されることが多いようです。
優しいピンクカラーが愛らしいモルガナイト

モルガナイトは淡いピンクが美しいピンクベリルのこと。
1911年にマダガスカルで発見された比較的新しい石で、アメリカの宝石収集家として知られるジョン・モルガンに由来し、モルガナイトと名付けられました。
淡いピンクが特徴ですが、濃いピンクや逆に殆ど無色に近いものもあります。
希少性から高価なものも多いレッドベリル

アメリカのユタ州とその周辺でしか産出されないといわれる、レッドベリル。
前述した通り、9色あるベリルの中で最も希少であり、高値がつきやすい種類といわれています。
初めレッドベリルは、発見者の鉱物学者メイナード・ビクスビーの名前にちなんで「ビクスバイト(Bixbite)」と命名されました。1904年のことです。
しかし、その頃既に同じような名前の別の鉱物(Bixbyite)があり、混乱を避けるため、その後“美しい赤いベリルで「レッドベリル」”と名付けられたといわれています。
稀に「レッドエメラルド」として販売されていることがあるそうですが、正式な宝石名ではなく有名な宝石名を付けることで販売しやすくするための、コマーシャルネームといわれるものです。
レッドベリルは希少性、価格ともにエメラルドよりも上の宝石でレアストーンとしてもコレクターから高い支持を得ています。
最後に

9色のさまざまな魅力を見せてくれるベリル。
透明度が高く、それぞれの色の美しさから、長年宝石として支持されてきたことも納得できる鉱物です。
ジュエリーとしても十分に楽しめる宝石です。
色によっては比較的手に入れやすいものもありますので、気分で色を変えながらデイリーに身につけるのも楽しいかもしれませんね。
カラッツ編集部 監修