レッドベリルは、その名の通り赤色のベリルです。
種類の多いベリル種の中で価値も希少性も高い、謂わば女王のようなイメージのある宝石です。
以前鑑別機関の方がその色を「スカッとした赤」と表現していましたが、確かに他のレッド系の宝石と比べてキリッとした印象があるような気がします。
今回はそんなレッドベリルについてご紹介したいと思います!
目次
赤いエメラルド=レッドベリル?!
画像:左-エメラルド 右-レッドベリル
最初に私がレッドベリルを見かけたのは、ある宝石店のファミリーセールでした。
当時は今ほどは宝石の知識がなく、小さなレッドベリルを使ったペンダントトップを見せられながら、「赤いエメラルド」という説明を不思議な気持ちで聞いていました。
後できちんと調べてみて分かったのですが、実際レッドベリルはただの「エメラルドの色違い」と片付けてしまうのは勿体無いくらい、エメラルドと比較しても遥かに希少な宝石だったんです。
過去に「レッドエメラルド」という名前で売り出されたこともあるようですが、知名度はそこまで高いとはいえません。
しかし高級なジュエリーになっているものも時々見かけるので、宝飾店などでも取り扱われることがあるのでしょう。
つまりレッドベリルは宝石としての資質を十分以上に兼ね備えたレアストーンなのです。
レッドベリルの特徴
レッドベリルの美しいレッドの発色には、マンガンが起因しているといわれています。
モルガナイトも同じマンガンを含むベリルですが、主に色で区別されるようですね。
大きな結晶が極めて少なく、ほとんどが0.1~0.3ct程度で、0.5ctを超えるものさえ極わずか。
かなり小さな原石でも高値で売られているのをよく見かけます。
鉱物としての基本情報
英名 | Red Beryl(レッドベリル) |
和名 | 緑柱石 |
鉱物名 | ベリル |
分類 | 珪酸塩鉱物 |
結晶系 | 六方晶系 |
化学組成 | Be3Al2Si6O18 |
モース硬度 | 7.5 – 8 |
比重 | 2.63 – 2.92 |
屈折率 | 1.56 – 1.57 |
光沢 | ガラス光沢 |
レッドベリルの産地
産地が限定されていることもレッドベリルがレアストーンと呼ばれる要因のひとつかもしれません。
レッドベリルはアメリカのユタ州とその周辺でしか産出されないといわれています。
しかも既に掘りつくされたという噂もあり、流通量は減っていく一方なのかもしれません。
そんな希少価値の高さから、ベリルの中では最も価値高く扱われることが多いです。
トラピッチェレッドベリル
6つの方向に放射状に伸びた模様が特徴のトラピッチェ。
トラピッチェ模様が形成される宝石で最も有名なのはトラピッチェエメラルドですが、稀にトラピッチェレッドベリルも採掘されることがあるそうです。
トラピッチェとは、スペイン語で歯車を意味し、さとうきびを搾るために回転させる歯車に似ていることからそう名付けられたといわれています。
トラピッチェ模様が見られる宝石は他にもルビーやサファイア、アメジストなどいくつかあります。
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レッドベリルの仲間
ベリルにはグリーンやレッド以外にもいろいろな色が存在しており、色の違いで名前が変わります。
- カラーレス・・・ゴーシェナイト
- ブルー・・・アクアマリン
- ピンク・・・モルガナイト
- レッド・・・レッドベリル
- イエロー・・・イエローベリル
- 濃いグリーン・・・エメラルド
- 薄いグリーン・・・グリーンベリル
このほか、黄緑色のヘリオドール、黃褐色のゴールデンベリルがあります。
ベリルについてはこちらの記事でより詳しく紹介しています。
また、発見当初ベリルの仲間だと思われていたピンク色のペツォッタイトという宝石もあります。
後に一部の成分が異なることが判明し別の鉱物として扱われるようになりましたが、ベリルの親戚のような位置づけで考えられることも多く、ラズベリルと呼ばれることもあります。
レッドベリルに施される処理とノンオイルレッドベリル
レッドベリルはエメラルドと同じでインクルージョンを多く含む宝石です。そのため、通常的に透明材の含浸処理が行われます。
一般的に行われるため、それによって価値が著しく下がることはありません。
但し、中には未処理でも美しいものもあり、それらはエメラルド同様、ノンオイルレッドベリルとして非常に稀少価値高く扱われます。
GIA鑑別書を例とすると、一般的なレッドベリルの場合は「TREATMENT: Clarity Enhanced 」と記載されますが、ノンオイルレッドベリルは上記の欄がありません。
レッドベリルの歴史
レッドベリルは、1904年にアメリカのユタ州トーマス山脈で発見されたといわれています。
ユタ州中西部に位置するワーワー山地には、宝石品質のレッドベリルの最大鉱床があるのだそうです。
実はレッドベリルは最初、ビクスバイト(Bixbite)という名前を付けられていたそうです。
ただ、ほぼ同名のビクスビアイト(Bixbyite)という別の鉱物が既に存在していて紛らわしいということで、後にレッドベリルと呼ばれるようになったといわれています。
しかしながら現在でも、鑑別機関によっては「別名「ビクスバイト」と呼ばれています」という形で鑑別書に記載されることもあります。
ほかには、レッドエメラルド、スカーレットエメラルドと呼ばれることもありますが、それ程一般的ではないように思います。
レッドベリルの価値基準と市場価格
先ほどもお話したように、ベリルの中で最も価値高く扱われるレッドベリル。
小さなルースでも高額に流通していることもあります。
大きくなるほど希少価値も上がるものの、どちらかというと、大きさより鮮やかで透明感のあるものの方が評価されることが多い気がします。
購入するときにはインクルージョンが少なく、鮮やかなレッドのものを選ぶといいでしょう。
中には、ピンク寄りのレッドベリルもありますが、やはりレッドが濃い方が価値も高いです。
ただ、色がよくても宿命ともいえるインクルージョンによって、どんよりと濁った印象のレッドベリルも多く存在します。
「とにかくレッドベリルを手に入れたい!」という場合でない限りは、小さくても明るい石を選んだ方が後悔しないと思います。
いずれにせよ、レッドベリルほどの高額な宝石の場合は、信頼のおける鑑別機関の鑑別書付のものやオプションで取れるお店などで購入した方が安心かもしれません。
市場価格
先にもお伝えしたとおり、「宝石品質」のレッドベリルは大きな結晶で産出されることが少ないといわれています。
そのため、良質なレッドベリルは0.1ct前後でも数万円程度が相場ではないかと思います。
多くは0.1~0.3ct程度で、0.5ctを超えると一気に価格が上がります。
更に、高品質で1ctを超えるものとなると、流通量が非常に限られるため、ルース(裸石)で数百万円、ジュエリーだと1千万円を超えるものも見かけます。
どこで買える?
希少なレッドベリルですが全く売っていない訳ではありません。
ミネラルショー、宝飾展示会などのイベントやオンラインショップなどで販売されていることもありますので、気になる方は色々探してみると良いと思います。
レッドベリルのお手入れ方法
モース硬度は7.5 – 8と高めでありながら、エメラルドと同じくインクルージョンが多いため脆さがある宝石です。
指輪として身につける時は特にぶつけたりしないよう注意して下さい。
日常的なお手入れは、身につけた後、柔らかい布で皮脂や汗などを拭いてからしまうと美しさを持続しやすいです。
汚れが目立つ場合は、石鹸や中性洗剤を溶かしたぬるま湯の中で柔らかいブラシを使って洗って下さい。
また、熱にも弱いため、高温になりやすいところに放置したり近づけないようご注意下さい。
保管する際は、小袋や仕切りのある箱などで小分けした状態が安心です。
最後に
キリっと美しい、気高い女王のような宝石レッドベリル。
その鮮やかなレッドには見る者全てを魅了する力強ささえ感じるような気がします。
見かけたらぜひその美しさを堪能して下さいね。
カラッツ編集部 監修