画像:中央-イエローベリル 左下-ヘリオドール 右下-ゴールデンベリル
ヘリオドール、イエローベリル、ゴールデンベリルという3つの宝石をご存じでしょうか。
いずれもイエロー系の色味をもち、エメラルドやアクアマリンと同じベリルという鉱物に属します。
この3つの違いとは何なのでしょうか?そして見分け方はあるのでしょうか?
今回はそんなヘリオドール、イエローベリル、ゴールデンベリルの3つについて、語らせて頂きたいと思います。
目次
鉱物ベリルとは?
3つの宝石について語り始める前に、まずは鉱物ベリルについて、簡単にお話させていただきますね。
鉱物ベリルは、ベリリウムとアルミニウムを含む珪酸塩鉱物です。
ベリルには多くの色があり、色によってそ名前が異なります。
有名なのは緑色のエメラルドや水色のアクアマリンだと思いますが、他にも赤色のレッドベリルやピンク色のモルガナイトなどがあります。
そして今回ご紹介する、ヘリオドール、イエローベリル、ゴールデンベリルですね。
鉱物としての基本情報(ベリル)
次にベリル全体での、鉱物としての基本情報を見ていきましょう。
英名 | Beryl |
和名 | 緑柱石 |
分類 | 珪酸塩鉱物 |
結晶系 | 六方晶系 |
化学組成 | Be3Al2Si6O18 |
モース硬度 | 7.5~8 |
比重 | 2.63~2.92 |
屈折率 | 1.57~1.58 |
光沢 | ガラス光沢 |
名前の由来
ベリルは、1798年にフランスの科学者であった、ルイ・ニクラス・ボークランがある石の中からベリリウム元素を発見したことがきっかけで、その名がつけられたといわれています。
この時、既に宝石としての知名度の高かったエメラルドやアクアマリンからも同じ元素が発見され、同じ鉱物種であることが分かりました。
しかし既に名が通っていたエメラルドとアクアマリンは改名しないこととなり、それ以外のベリル族の鉱物のみ〇〇〇ベリルと前に色名をつけて呼ぶようになったそうです。
ヘリオドール、イエローベリル、ゴールデンベリルについて
それでは、今回のテーマである、イエロー系のベリル、ヘリオドール、イエローベリル、ゴールデンベリルの話に移っていきますね。
この3つの宝石、実はかつては全てヘリオドールと呼ばれていたそうです。
しかし前述したように、ベリリウム元素を含む鉱物の存在が明らかになり、それらを〇〇〇ベリルと呼ぶこととなりました。
そのため、黄色はイエローベリル、オレンジ味のある黄色~黄金色はゴールデンベリル、それ以外の黄緑色のものだけ今まで通りヘリオドールと呼び分けられるようになったといわれています。
エメラルドやレッドベリルはインクルージョンが多いことで有名ですが、イエロー系のベリルはいずれも比較的インクルージョンが少なく、透明度が高いものが多いような気がします。
産地
ロシア、マダガスカル、ナイジェリア、ナミビア、ウクライナ、ブラジル、アメリカなど。
最高品質のものはロシアのウラル山脈から多く産出されるといわれています。
しかしながら、イエロー系ベリルはいずれも産地特定ができない宝石です。
原石の形
ベリルの原石は、断面が六角形をしていて、柱状に長く伸びた六角柱の形が基本で、岩石の基質(母岩)の上に成長することが多いといわれています。
主に花崗岩ペグマタイトの中から産出されます。
発見されるヘリオドールの原石の形は基本の六角柱のほか、六角柱の表面が腐食し凹凸のあるものやたくさんの結晶面が組み合わさった形で発見されるものなどもあるそうです。
ベリルの成長する鉱床は、温度などさまざまな影響により腐食が起こることも多いと考えられています。
鉱床に鉱化ガスが入り込んだり、熱水などの影響により原石の表面が腐食してしまうのだとか。
腐食により溶けた面は、カッティングが施されたかのように光沢が美しい、溶解結晶もあるそうです。
名前の意味
イエローベリルとゴールデンベリルの意味・由来についてはお話しました。
では、ヘリオドールにはどういった意味が込められているのでしょうか。
ヘリオドールは「太陽からの贈り物」という意味があるそうです。
ギリシャ語で太陽を意味する「ヘリオス」と、贈り物を意味する「ドロン」を組み合わせてできた言葉だといわれています。
ギリシャと言えば、ギリシャ神話の「太陽神ヘリオス」が有名ですよね。
美しい黄色~黄金色の輝きをもったヘリオドールは、「太陽神の名を与えられた石」だったのかもしれませんね。
ヘリオドール、イエローベリル、ゴールデンベリルとの違いとは?
画像:左-ヘリオドール、中央-イエローベリル、右-ゴールデンベリル
前述したとおり、ヘリオドール、イエローベリル、ゴールデンベリルの違いは色です。
ですので、見分け方も色で見るしかありません。
簡単に表にまとめてみましたのでご覧ください。
ヘリオドール | イエローベリル | ゴールデンベリル |
黄緑色 | 黄色 | オレンジ色味のある黄色、黄金色 |
黄色や黄緑色の発色要因は鉄の影響によるものだといわれており、結晶構造中の鉄の位置によって発色も微妙に変わると考えられているそうです。
ただ、この3つ宝石の色の違いにはきちんとした線引きがないそうで、主観によるものが大きくなることから、鑑別機関によって見解が異なることも多いそうです。
また、鑑別機関によってはヘリオドールは出さないところもあるようです。
ヘリオドール、イエローベリル、ゴールデンベリルにもキャッツアイはある?
繊維状の内包物が含まれる宝石にカボションカットを施すと猫の目のように真ん中に一筋の光が現れるものがあります。
この光学現象のことをキャッツアイ効果またはシャトヤンシーと呼びます。
ベリルにもキャッツアイ効果をもつものが多くあり、イエロー系ベリルも例外ではありません。
画像はイエローベリルキャッツアイですが、ヘリオドールやゴールデンベリルのキャッツアイ石も存在します。
ヘリオドール、イエローベリル、ゴールデンベリルを買う前に知っておきたいこと
画像:左-ヘリオドール、中央-イエローベリル、右-ゴールデンベリル
ヘリオドール、イエローベリル、ゴールデンベリルのイエロー系ベリルを買いたいと思った時に見るべきポイントとは何かについても少しお話しましょう。
価値基準
ヘリオドール、イエローベリル、ゴールデンベリルとも価値が上がる最も重要なポイントは色です。
色が濃く鮮やかなもの程価値高く扱われます。
他には透明度(インクルージョンの有無やキズ欠けなど)、カット、大きさなどの総合評価で価値が決まります。
前述した通り、イエロー系ベリルはどれもインクルージョンなどが少なく透明度の高いものが多いといわれています。
大きい結晶でも取れますので、透明度が高く比較的大きいものも手に入りやすいかもしれません。
市場価格
ヘリオドール、イエローベリル、ゴールデンベリルとも比較的お手頃な価格から販売されている印象です。
数千円~見られ、カラット数が大きい、色の濃いものでも数万円位で手に入るものが多いようです。
何処で買える?
ルースであれば、ルースの取り扱いの多いお店でよく見かけますので比較的見つけやすいと思います。
ジュエリーになると数はグッと減りますが、ない訳ではなさそうですので探してみると良いかもしれません。
ヘリオドール、イエローベリル、ゴールデンベリルのお手入れ方法
使用後は柔らかい布などでふき取ってから保管すると美しさを保ちやすいです。
汚れが目立つ場合は、中性洗剤を溶かしたぬるま湯でブラシなどを使って洗ってあげるとキレイになりますよ。
イエロー系ベリルは特に退色しやすい特性をもつとはいわれていませんが、宝石は全般的に直射日光は避け、仕切りのある箱や小袋などに小分けした状態で保管した方が安心です。
イエロー系ベリルも例外ではありませんので、輝きを保つために少しだけ気を使ってあげて下さいね。
最後に
画像:左-ヘリオドール、中央-イエローベリル、右-ゴールデンベリル
アメリカ、ワシントンD.C.のスミソニアン博物館には、世界最大、2054カラットもの無傷のヘリオドールが収蔵されているといいます。
大粒で透明度の高いものほど価値があるといわれるヘリオドール。
大きい上に傷がないとは奇跡のような確率かもしれませんね。
太陽のようにキラキラと明るく輝くイエロー系のベリルにもぜひ注目してみてくださいね♪
カラッツ編集部 監修