宝石には限りないほど多くの色が存在します。
見る方向によって色が異なって見える多色性や、光源によって色が変化する変色性、遊色効果やシラー効果などの光学効果まで合わせると、その種類はとても豊富です。
宝石が異なる色を見せるのには、どのような秘密が隠されているのでしょうか。
宝石の色の不思議についてさっそく紐解いてみましょう。
目次
どうしていろいろな色ができるの?
宝石には様々な色の種類があります。
ブルー、グリーン、イエロー、オレンジ、レッド、パープル、ピンク、ブラック、ホワイト、カラーレス、代表的なものだけでも色々ありますよね。
単色のものだけではなく、中には一石の中に複数色呈しているものもあれば、見る角度によって色が変化する多色性、光源によって色が変化する変色性をもつものもあります。
透明度の違いも含めると実に様々な色を楽しむことができるのも宝石の魅力の一つといえるでしょう。
しかし鉱物の発色要因は実は一つではありません。
様々な要因によって様々色が生まれます。
そして、同じ色であっても鉱物によって発色要因などが異なる場合もあるのです。
細かくは後ほど詳しくお話いたしますが、主な発色要因としては化学組成、結晶構造の欠陥、内包物などがあると考えられています。
鉱物の色には2種類ある!?
幾つかの発色要因より様々な色を呈する宝石ですが、色の付き方も実は一つではないといいます。
大きく分けて2種類あり、一つはラピスラズリ、アズライト、マラカイトに代表される、鉱物そのものに色が付いているもの。
昔顔料や絵の具などとして使われていたようなもので、自色タイプと呼ばれます。
その宝石の主成分に発色元素が含まれることから発色すると考えられ、大抵一定していることから、色が鉱物を特定する重要な手掛かりとなります。
そしてもう一つは光の吸収などによって人間の目に色が違って見えるもので、他色タイプと呼ばれます。
私たちが日常で見ている物の色は白色光中にある虹色のスペクトル(波長)を吸収して放ったものです。
鉱物の色も同じで、吸収したスペクトルの中から、吸収されなかった色だけを私たちが見ているのです。
つまり、宝石が赤く見えるのは結晶が光を通した時に赤以外の波長を吸収し、吸収されなかった赤色だけを反射するからです。
例えばフローライト(蛍石)は一つの鉱物でありながら色のバリエーションが大変豊富です。しかし鉱物自体に色が付いている訳ではなく、光の吸収によってそう見えるということなのだそうです。
発色要因による違いとは?
では、発色要因別にもう少し詳しくご説明していきましょう。
少し専門的な内容になるため難しい部分もありますが、頑張って説明していきますのでぜひついてきて下さいね!
1.化学組成と関係する場合
結晶の化学組成中に含まれる発色元素の影響で発色するものです。自色・他色のどちらのタイプにもあります。
例えばマンガンの炭酸塩であるロードクロサイトはマンガンを由来とするピンク~レッドを呈し、ブルーサファイアは鉄とチタンの影響でブルーを発色します。
同じ発色元素をもちながら自色と他色が異なる理由は、自色は、先に説明したように、その宝石の主成分、つまりその宝石の組成に必須な成分の中に発色元素が含まれるのに対し、他色は含まれる微量元素がその宝石の組成には必須ではないという違いがあります。
ペリドットとコランダムを例にもう少し詳しくお話しましょう。
ペリドットのグリーンは基本的な構成元素の中にある鉄とマンガンが発色元素であることから自色タイプとなり、削った時の粉も同じ色をしています。
コランダムの場合、基本的な構成元素の中に発色元素を含まないため、自色はカラーレスのホワイトサファイアのみとなります。
そこに発色元素であるクロムを含むとレッドを発色しルビーに、鉄とチタンを含むとブルーサファイアになります。ルビーとサファイアは他色タイプですので、削って出た粉の色は外観と同じではありません。
また、同じ元素が含まれていても色が異なる場合もあります。
例えばアズライトのブルーとマラカイトのグリーンは、いずれも主成分である銅による発色と考えられています。
ルビーのレッドとエメラルドのグリーンもどちらも発色元素であるクロムの影響といわれていますよね。
ではなぜ、色が異なるか、というと
元素が同じでも鉱物によって結晶構造が異なるため、違った色を放つことがあるのだそうです。
2.結晶構造の格子欠陥を要因とする場合
結晶構造に点状の格子欠陥が生じることによって、通常は無色である結晶に光を吸収する帯ができ、異なる色を見せるものです。
ピンクダイヤモンドやブルーダイヤモンドが有名ですね。
3.内包物が関係する場合
微小の内包物(インクルージョン)によって、色が見えるものです。
例えばローズクォーツなどがこれにあたります。
条痕色について
条痕色(Streak Color)とは、鉱物を粉末にしたときの色です。
条痕板と呼ばれる素焼きの白い板の上で鉱物を引っかき、板の上に残った色を確認します。条痕板がない場合は鉱物を削ったり砕くなどして粉末にし、白い紙などの上で色を確認するそうです。
しかしモース硬度7以上の鉱物をテストすると、ほとんどが白色を示すため、条痕検査は実用的ではないとされているそうです。
また他色タイプの鉱物は外観の色と一致しない場合が多く、一般的に白色を示すといわれています。
その他の特性
先にもお話したとおり、宝石の中には、見る角度や光源によって色が変化して見えたり、光学効果をもつものもあります。
それらの特徴についても少し説明しましょう。
変色性
光源によって色が変わる効果をもつもので、結晶内の成分のバランスによって生じると考えられています。
例えばアレキサンドライトはクロムを緑と赤の中間的なバランスで含有しています。
自然光の下では黄色を吸収するため青緑色に見えますが、照明によってクロムの吸収する色が変わり赤紫色に見えるようになるそうです。
多色性
見る角度を変えると色が異なって見える多色性ですが、鉱物によって強さは異なるものの実は多くの宝石がもっている特徴の一つだと考えられています。
強い多色性をもつことで有名なのは、タンザナイトやアンダリュサイトなどですね。
ダイヤモンド、スピネル、ガーネットなどの等軸晶系やオパールなどの非結晶体のものは、光学的等方性をもつ単屈折の鉱物であり、多色性を見せません。
逆に上記以外の結晶系は光学的異方体、複屈性の鉱物であり、それぞれの面によって光線を吸収する速さが異なるため、結晶軸の方向によって異なる色に見える多色性を示すというのです。
ただし、先にもお伝えしたとおり、その強さは鉱物によって異なり、多色性が明確に分かるものとそうでないものがあります。また、同じ鉱物でも色によって多色性が見えないものもあるといいます。
光学効果
結晶がもつ物理的効果を起因とします。
例えばオパールは微細な球状シリカが規則正しく並んでいるため、吸収した光を回折して遊色効果を見せるといいます。
またムーンストーンの結晶では、2種類のフェルスパー(長石)が短い周期で交差して積み重なっているため、この境界面で吸収した光が回折を起こし、シラー効果が現れると考えられています。
宝石のもつ透明度について
宝石の透明度は光を通過させる程度に大きく関わります。
透明感が高いほど光をしっかりと通しますが、インクルージョンなどが多い場合は、色の美しさに影響が出る場合があります。
宝石に見る主な色合い
宝石の色は限りなく豊富です。
同じ鉱物でも含有する不純物などによって異なる色を見せたり、変色性や多色性、また一つの石の中に複数色を呈するものまで本当にさまざまです。
ここで代表的な色の種類と宝石を簡単に見てみましょう。
レッド | ルビー、アルマンディンガーネット、パイロープガーネット |
ブルー | サファイア(ブルーサファイア)、アウイナイト、カイヤナイト |
グリーン | エメラルド、翡翠、ペリドット |
パープル | アメジスト、スキャポライト |
イエロー | シトリン、トパーズ(イエロートパーズ)、クリソベリルキャッツアイ |
ピンク | クンツァイト、インカローズ、モルガナイト |
オレンジ | スぺサルティンガーネット、クリノヒューマイト、スファレライト |
ホワイト (カラーレス) |
カルサイト、ホワイトトパーズ |
また、変色性、多色性、色の変化が楽しめる光学効果をもつ宝石の代表は下記のとおりです。
●変色性 :アレキサンドライト、カラーチェンジサファイア、カラーチェンジガーネット
●多色性 :タンザナイト、アンダリュサイト、アイオライト
●光学効果:オパール(遊色)、ムーンストーン(シラー)
最後に
宝石の色の付き方や発色要因は一つではないことが分かりました。
多色性や変色性も、結晶系や結晶内の成分のバランスによって生まれるのですね。
宝石の美しい色や不思議な色の効果がもつヒミツ、それはすべて結晶が生成する際に育まれたものだったのですね。
色の不思議を知った今、宝石を見る目がまたちょっとだけ変わる気がします★
カラッツ編集部 監修