宝石が皆さまのお手元に届くとき、カットされ、ルースやジュエリーに留められた状態のことが多いのではないかと思います。
もちろん中には原石のまま楽しみたいという方も居るとは思いますが、カットされた宝石が光の中でキラキラするのを眺めたり、身につけたりすることも宝石を楽しむ醍醐味ではないでしょうか。
宝石好きな方であれば、カットされた宝石を多く目にしたことがあるとは思いますが、実際どんな種類があるのか?また何種類くらいあるのか?ご存じでしょうか。
そこで今回は、宝石のカットの種類やそれぞれの特徴など、宝石のカットにまつわる色々を・・わかりやすくご紹介していきたいと思います!
目次
宝石のカットについて
原石には原石の美しさや面白さがあり、それはそれで興味深いのですが、その宝石のもつ本質、つまり、透明感や色味、煌めきや輝き、時には光学効果などの特性を引き出し、目に見える形で残すために「カット」は重要な役割を担います。
カットによって美しさが引き出されると、宝石としての価値が上がり、価格も原石の何倍にも跳ね上がるからです。
そう、カットはその宝石の価値を最大限に上げるために必要不可欠な要素なのですね。
またカットする際に原石の重量をできるだけ損なわないという事も重要なポイントとなります。
地球上で生まれた稀少な宝石ですから、なるべく無駄にせずその美しさを楽しみたいですものね。
そのためカット職人たちは、宝石の種類、原石の形、硬度、透明度、キズの位置などあらゆる点を考慮して、最も適したカットを選び研磨するのです。
宝石のカットの種類
では、宝石のカットにはどんな種類があるのか、早速ご紹介していきましょう!
宝石のカットは大きく分けると、
- ファセットカット
- カボションカット
- ビーズ
- タンブリング
- スフィア(球)
- プレート(平板)
- ラフカット の7つがベースとなっています。
不定型も含めると、宝石には数10万パターンを超えるカットが存在しているといわれています。
実に多いですね!
その中でジュエリーなどに使われることが恐らく最も多いのが、ファセットカットと呼ばれる種類です。
ということで、まずはファセットカットについて少し勉強してみましょう。
ファセットカットとは?
上の画像でも分かるように、宝石を覆うたくさんの面がキラキラと光を反射していますね・・
ファセットカットとは、これらの「面」で覆われた多面体カットのことです。
1つ1つの面を、「ファセット」と呼びます。
15世紀~16世紀頃、ダイヤモンドの輝きを引き出すためにフランスやオランダで生み出されたといわれています。
一般的に、透明感のある宝石に多く使われるカットです。不透明の宝石で見かけることは殆んどないのではないでしょうか。
ファセットの最適な角度と配置は、宝石の「屈折率」によって異なるといわれ、研磨職人によって選ばれ、カットされます。
このカットの良し悪しで宝石の輝き、美しさ、価格が大きく変わります。
ファセットカットは、ブリリアントカット、ステップカット、ミックスドカットとその他のカットの大きく四つの種類に分けられます。
それぞれについて少し細かく説明しますね。
ブリリアントカット
ブリリアントカットは、テーブル、キューレットと、三角とひし形を組み合わせたファセット面からできていて、宝石の内側から光や輝きを放つためのカットともいわれていますね。
代表的なものはラウンドブリリアントカットやプリンセスカットですが、ペアシェイプ、クッション、ハートシェイプやオーバルのブリリアントカットも多く、人気があります。
カラーストーン(色石)がもつ色もブリリアントカットによって強めることができるのだとか。
ステップカット
長方形のファセット面が、外周に平行に階段の様に並んだカットの種類です。
エメラルドカット、バゲットカット、スクエアカット、テーパーカットなどが代表的です。
ミックスドカット
ブリリアントカットとステップカットを組み合わせたものがミックスドカットです。
クラウン(宝石の上の部分)と、パビリオン(宝石の下の部分)のどちらがブリリアントカット、ステップカットでもミックスドカットになります。
つまり、クラウン側がステップカット、パビリオン側がブリリアントカットだったり、その逆もあり、ということですね。
その他のカット
その他のカットとして有名なものは、オクタゴナルカット、ローズカット、ブリオレットカットなどです。
複数のカットを組み合わせたり、特殊カット、ファンタジーカットと呼ばれるものもありますね。
代表的なファセットカットの種類について
では、ファセットカットで代表的な種類を幾つか挙げて、もう少し詳しくご紹介していきましょう。
ラウンドカット
ラウンドとは「円」という意味です。
真正面から見て円形をしています。
一番代表的なのは、ダイヤモンドで一般的に使われている、「ラウンドブリリアントカット」です。
ラウンドブリリアントカットには通常58面のファセットがあります。
原石がまるみを帯びた宝石によく使われるといわれているカットの種類です。
ペアシェイプカット
ペアー(洋梨)の様な形をしたカットです。
涙や雫(しずく)にも見えますね。
一般的に良いペアシェイプカットの形は、真円が膨らんだ部分の外郭にピッタリ入るものとされています。
カットは見た目が肝心ですもんね。
しかし自分の好きな形や何となくしっくりくる感じは人それぞれ違うのではないかと思います。
周りにとらわれず、見ていて落ち着くような自分好みの形を見つけるのも良い気がします。
オーバルカット
楕円形の形をしたカットです。
原石の形によっては、ラウンドカットよりも無駄が生じにくいといわれます。
クッションカット
画像の様に「クッション」の形をしたカットの種類です。
長方形または四角形の角が丸まっているのがクッションカットです。
ダイヤモンドのブリリアントカットが確立されてから2世紀位は、オールドマインカットと呼ばれる現代のクッションカットに似たカットが主流だったといわれています。
ブリリアントカットの原型といわれるカットです。
ハートシェイプカット
ハート形をした、ロマンティックで愛らしいカットです。
比較的新しいカットで、アメリカ合衆国で生まれたといわれています。
アメリカやアジアで特に人気のある種類だそうです。
長細かったり幅広いものではなく、正方形に収まる形が理想的なシェイプだといわれています。
ダイヤモンドの場合、マクルと呼ばれる平たい原石からハートシェイプカットやトライアングルカット(三角形)にされることが多いようです。
エメラルドカット
南米コロンビアで採掘される「エメラルド」に施されたことからこの名前がついたといわれています。
ヨーロッパにエメラルドが渡った時に生み出されたカットなんだそうです。
エメラルドの結晶形に沿ってカットできるため無駄を最低限におさえることができ、エメラルドには適しているカットですが、正面のファセットの面積が広いことから宝石の欠点を隠すことが難しいともいわれます。
しかしダイヤモンドの場合、クオリティが高くカラットの大きな石ほど、その素材の良さを際立たせるためにエメラルドカットが用いられるのだとか。
宝石のカットの世界もなかなか奥深いですね。
スクエアカット
正方形のカットです。
知的でシャープな美しさの感じられる種類ですが、角が欠けてしまいやすいという欠点があります。
特に「ダイヤモンド」など劈開性がある宝石は一定方向からの衝撃に弱いため、衝撃の角度や度合いによって角が欠けてしまうことも珍しくないと思います。
購入の前にも注意して観察してみた方が良いかもしれませんね。
ローズカット
三角の形のファセットが特徴的な、薔薇のつぼみをイメージさせる、愛らしく、クラシカルなカットです。
ドーム状のクラウンのみからなる形状で、底が平らです。
16世紀にダイヤモンドの光の美しさを引き出そうと考案されたカットで、ブリリアントカットの前身ともいえる種類です。
ローズカットダイヤモンドのアンティークジュエリーは、コレクターも多く、根強い人気があると聞きます。
現在ではトパーズやガーネットなど、ダイヤモンド以外の宝石にも多く使われていますね。
ブリオレットカット
ドロップ形で、無数のファセットがキラキラと煌めく、美しくエレガントな雰囲気をもつカットの種類です。
ファセット面は三角形またはひし形をしています。
ローズカットと同様、古くからあるカットです。
ダイヤモンドの場合は透明度が高く、長く膨らみのある原石がブリオレットカットに適した原石といわれています。
近年の技術の発展によって、ブリオレットカット上部の細くなっている部分に小さな穴を開ける事が可能となったため、そこへワイヤーなどを通してネックレスやイヤリングなどのジュエリーに使われることもありますね。
オールドヨーロピアンカット
ラウンドブリリアントカットの元となったといわれている、ダイヤモンドのカットです。
アンティークのダイヤモンドに多く見られます。
ラウンドブリリアントカットでは底の尖っている部分(キュレット)が、オールドヨーロピアンカットではファセット面になっていることが大きな違いです。
そのため、真正面から見ると、穴が抜けている様に見えます。
ラウンドブリリアントカットよりもテーブルが小さく、クラウンが高く、ガードルが厚いのが特徴です。
さまざまな方向から見たときの輝き・煌めきが非常にダイナミックに現れるカットではないかと思います。
カボションカット
ファセットカットの次にジュエリーに施されることが多いのはカボションカットではないでしょうか。カボッションといわれることもありますね。
カボションカットは半透明~不透明な宝石に使われることが多いカットの種類です。
ドーム状のカットでドームの高さはさまざまです。
底は平らな場合と、ダブルカボションと呼ばれる、底もゆるやかなドーム状である場合があります。
カボションカットは主に、6条の線が現れるスター効果、猫の目のような一筋の線が現れるキャッツアイ効果、ムーンストーンに代表されるシラー効果のような、光学効果を強く引き出すために使われることが多いです。
スターやキャッツアイは、宝石の中心に現れるようにカットされます。
こういった光学効果をもつ宝石にはドームを高く、デンドリックティッククォーツのように模様や色を見せたい時にはドームを低くカットされることが多いように思います。
カボションカットはジュエリーに留められる際、覆輪(フクリン)留め(宝石の周りを金属でぐるっと囲う留め方)にされるケースが多いです。
ビーズ
ビーズは、小さな宝石に穴が開けられ、連になって売られていることの多いカットです。
球状から面のあるカットまでさまざまな形状があります。
ルビーやサファイアなどの高価な宝石がビーズカットにされることもあります。
大きな宝飾展では、ダイヤモンド原石のビーズ連など、面白いものも見られます。
ビーズにカットされている宝石は、ファセットカットされているものと比べると、低めのクオリティである場合が多い気がします。
パワーストーンのブレスレットやネックレスなどでもよく見かけますよね。
タンブリング
宝石の原石をドラムにいれ、研磨剤と一緒に回転(タンブル)させる事で角をとり、表面をなめらかに仕上げたカットです。
川で水の流れによって角のとれた石の様に自然に見え、元々の形がイメージしやすいカットです。
比較的安価な宝石に用いられる事が多い気がします。
博物館などのお土産コーナーで、タイガーアイ、アメジスト、ローズクォーツ、ヘマタイトなどのタンブリングをご覧になった事のある方もいらっしゃるのではないでしょうか?
筆者は子供の頃、温泉旅館のお土産屋で、「なんで宝石なのに、こんなに安いの??本物なの??」と驚きながら手に取って眺めていた記憶があります。
(こういった宝石は、ニセモノをつくるまでもなく安価なのでたいていの場合は「本物」です!)
番外編:宝石の彫刻
宝石に図柄を彫り込むインタリオや逆に図柄を浮き彫りにするカメオ、宝石自体をカットする彫刻などの種類があります。
モチーフは、人物や動物、風景、神話の1シーンといったものが多いです。
彫刻には、めのう(アゲート)やシェル(貝)、珊瑚やジェイドなどといった宝石がよく使われています。
宝石の彫刻には高い技術と芸術性が必要とされますが、現代では超音波機によって複雑な彫刻が施される事も可能になったといいます。
しかしやはり、手作業で彫られたものとは大きく価値が異なりますよね。
熟練した職人の渾身を込めた彫刻には「生命」さえ感じるような気がします。
機械にマネのできるような事ではないですよね。
最後に・・
宝石のカットと種類についてお話しました。
細かく追っていくと、興味深い事がたくさん分かりましたね。
人の好みもさまざまですから、お気に入りのカットもさまざまに違う事でしょう。
ちなみに筆者のお気に入りは、ローズカットとラウンドカットです。
みなさまもお気に入りの宝石、お気に入りのカットを是非見つけてみてくださいね!
カラッツ編集部 監修