バラ色の宝石という名をもつ、ロードナイト。
その美しい名前から連想されるとおり、落ち着いたピンク~レッドの色合いをもつ宝石です。
また、ロードナイトは濃淡のあるピンク色の地色に、所々黒い模様が入っているのも大きな特徴の一つです。
不透明なものが大半ですが、稀に透明度の高い宝石品質のものが採掘されることもあります。
ということで今回は、バラ色が美しいロードナイトの特徴や産地、名前の意味、価値基準、お手入れ方法など色々な角度からご紹介していきたいと思います。
目次
ロードナイトとは?
マンガンの珪酸塩鉱物であるロードナイト。
ピンク~レッドの色合いが薔薇を連想させる美しい宝石です。
流通量が多く、パワーストーンとして販売されているのもよく見かけますね。
鉱物としての基本情報
英名 | Rhodonite(ロードナイト) |
和名 | 薔薇輝石(ばらきせき) |
鉱物名 | ロードナイト |
分類 | 珪酸塩鉱物 |
結晶系 | 三斜晶系 |
化学組成 | (Mn、Ca)5(Si5O15) |
モース硬度 | 5.5 -6.5 |
比重 | 3.4 – 3.7 |
屈折率 | 1.71 – 1.73 |
光沢 | ガラス光沢 |
特徴
多くのロードナイトは、不透明でピンクからレッドの地色に樹枝や葉脈のような黒い模様が入っています。
この黒い模様の正体は二酸化マンガンだといいます。
カボションカットやビーズに加工されたり、彫刻が施されるものもあります。
モース硬度は5.5から6.5と高い方ではない上に劈開性をもつため取り扱いには注意が必要です。
不透明のものが多いですが、稀に透明度の高い宝石品質のものが産出されます。
しかし脆い性質上、ジュエリー加工がされることは少なく、多くはコレクター用にファセットカットが施されるのみといわれています。
名前の意味
ロードナイトという名前は、ギリシャ語でバラを意味するrhodon(ロードン)から名付けられたといわれています。
和名は「薔薇輝石」と呼ばれます。
これは、昔ロードナイトがスポジュメンやジェダイトなどと同じ輝石グループの鉱物の一つとして考えられていたことから名付けられたといわれていますが、その後、実は輝石ではなく準輝石グループに属する鉱物と判明します。
しかしながら、一度浸透した名前を変更することは難しくそのまま変えられずに現在に至っているそうです。
産地
オーストラリア、アメリカ、カナダ、マダガスカル、メキシコ、ロシア、スウェーデン、南アフリカ、ブラジル、タンザニアなど広範囲に渡り産出されます。
日本でもかつては多く産出されたそうですが、現在ではあまり採掘されなくなったといわれています。
ロードナイトに施される処理
ロードナイトには今のところ、通常的に施される処理はないとされています。
しかし、透明度の高い宝石品質のロードナイトの中には含浸処理などが施されたものもあるかもしれませんので、心配な方は鑑別書付のものを購入すると安心かもしれません。
ロードナイトの色
ロードナイトの色はローズピンク~レッドで、含有したマンガンに起因しています。
マンガンの含有量が高いと黒い樹枝状のインクルージョンが見られます。
ピンク一色のものより、この黒い模様が入っているものの方を好む方も多いようです。
前述したとおり、多くは不透明のものが多いとされてますが、稀に透明度の高い宝石品質のものが産出されることもあります。
これらは、インペリアルロードナイト(またはインペリアルレッドロードナイト)と呼ばれ珍重されますが、脆いことから主にコレクター向けにカットを施され流通することが多いそうです。
ロードナイトの原石の形
マンガンに富む変成岩やスカルン、大理石、不純物を含む石灰岩中などに生成されるといわれています。
丸みを帯びた結晶形で発見されることもありますが、多くは緻密な塊状や粒状などで産出されるといいます。
塊状で産出されるものは比較的丈夫なことからビーズ状やカボションカットを施されたり、彫刻素材として用いられることも多いそうです。
先にご紹介したとおり、ロードナイトの多くは二酸化マンガンによる黒色の模様をもちます。
様々なマンガン鉱床で生成されることから比較的広い範囲で産出され流通量も多いとされます。
ロードクロサイト(菱マンガン鉱)の変成によって生成されることもあるといいます。
二方向に完全な劈開があり、劈開面は真珠光沢をもち、断口は貝殻状から不平坦状を示すといわれています。
ロードナイトとロードクロサイト、インカローズの違い
ロードナイトとロードクロサイトの違い
画像:左-ロードナイト 右-ロードクロサイト
ロードナイトとロードクロサイトは前述したとおり、いずれもマンガン鉱床で生成されるマンガン鉱石です。
色や見た目が似ているものも多いですが、鉱物としては全くの別物。
珪酸塩鉱物であるロードナイトと炭酸塩鉱物であるロードクロサイトは化学組成も大きく異なり、鉱物としての共通点は少ないといえます。
また、しばしば「サイトに黒なし、ナイトに黒あり」と評されるように、ロードナイトの大きな特徴であるマンガンの黒い樹枝模様がロードクロサイトにはありません。
ロードナイトとインカローズの違い
画像:左-ロードナイト 右-インカローズ
同じく不透明のピンク地に白い模様が入ったインカローズもロードナイトと見た目が似ています。
ロードナイトとインカローズは関係があるのでしょうか。
実はインカローズはロードクロサイトと同じ鉱物です。
ロードクロサイトの中で白い縞模様のあるものをインカローズと呼びます。
パワーストーンとしても人気があるため、インカローズの方が知名度が高いかもしれませんが、宝石としては透明度の高いロードクロサイトの方が価値高く扱われます。
ということで、インカローズとロードナイトもマンガンを含む以外の共通点は少ないといえます。
ロードナイトの偽物について
今のところ、ロードナイトの偽物が大きく出回っている様子はありません。
しかし、業者がロットなどで多数仕入れた場合、幾つか別の石やガラスが混ざっていることは起こりえます。
知らずに販売されていることもあるかもしれませんので、高額なものを購入する場合は特に信頼のおける鑑別機関の鑑別書が付属していたり、オプションで付けられるものの方が安心かもしれません。
ロードナイトの価値基準と市場価格
価値基準
ロードナイトは、レッドが強く鮮明なものほど高価に取引されます。
特に透明感の高いものはインペリアルロードナイト(インペリアルレッドロードナイト)と呼ばれ、希少性、価値ともに大変高く扱われます。
また、一般的にインクルージョンが多いことから少ないもの程良いとされ、その他、カットの美しさ、大きさなども評価されます。
ただ、ロードナイトの場合、1ct以上の比較的大きいものも多く流通しているように思います。
不透明なロードナイトの中では黒い模様がないものの方が評価が上がるといわれています。
市場価格
ロードナイトの市場価格は、不透明のものであれば数千円から手に入れることは可能です。
透明度の高い宝石品質のものでも、クォリティによっては一万円以下でも十分探せます。
レッドが濃く、インクルージョンが少ないトップクォリティのものとなると、十万円以上するものもあります。
どこで買える?
不透明なものはパワーストーン専門店などでブレスレットに加工されたものが販売されているのをよく見かけます。
透明度の高いインペリアルロードナイト(インペリアルレッドロードナイト)もルースの取り扱いの多いお店であれば、目にすることは多い印象です。
ジュエリーとなると脆い性質上からかやはり少ないように思います。
ロードナイトのお手入れ方法
ロードナイトはマンガンを多く含むことから、紫外線に弱いとされています。
直射日光が当たる場所に長時間放置しておくと黒く変色してしまう恐れがありますので注意して下さいね。
汗や水分が付いたときには、柔らかい布やセーム革などできちんと拭き取ることも大切です。
多少のアルコールは問題ないとされますが、過度にはつかないようし、付いてしまった場合は布などで拭き取った方が安心です。
汚れが目立つ場合は、中性洗剤や石鹸を溶かしたぬるま湯で洗っても問題ありませんが、超音波洗浄機は使用しないで下さい。
洗った後にきちんと水気を拭き取ることも忘れないで下さいね。
最後に
バラ色の宝石、ロードナイト。
優しいピンク~レッドの色合いは見ているだけで幸せな気持ちにしてくれそうな気がします。
ロードナイトは透明度の高いものから黒い樹枝状の模様が入った不透明なものまで様々です。
特に黒い模様は自然に形成されたものですので、一つ一つ入り方が違い、とても個性が表れやすい部分ではないかと思います。
自分好みの模様の入った一石を探してみるのも楽しいかもしれませんね!
カラッツ編集部 監修