石の表面にスター効果のような6条の線を見せる、不思議なトラピッチェエメラルド。通常のスター効果のようにルチルの内包物を原因とせず、生成過程で美しい模様が作られていきます。
トラピッチェエメラルドはいつ、どこで発見されたのでしょうか?不思議な模様はどうしてできるのでしょうか?産地は?種類は?
こちらでは、神秘的な宝石トラピッチェエメラルドの歴史から模様ができる秘密まで、詳しくご説明していきます。
トラピッチェエメラルドの歴史と希少性
19世紀のヨーロッパ
ロンドンのヴィクトリア&アルバート博物館には、アンティークのトラピッチェエメラルドの指輪が展示されています。
この指輪は1800年~1850年の間に制作されたもの。つまりこの頃にはすでにトラピッチェエメラルドが発見されていたということが証明されています。
また1879年には世界で最初にトラピッチェエメラルドについての文章が発表されています。
フランスの鉱物学者エミール・ベルトランが、フランスの鉱物誌にトラピッチェエメラルドについての短文を投稿したものです。
コロンビアで発見される
しかし実際にトラピッチェエメラルドが発見されたことが初めて世界中に知られ、有名になったのはコロンビアです。1963年~1970年の間にムゾー鉱山で発見されたといわれています。
後にブラジルやマダガスカルでも同様のエメラルドが発見されますが、やはり最初に発見されたコロンビア産のトラピッチェが有名です。
ただ、トラピッチェエメラルドは、コロンビアで産出されるエメラルド全体の中でもごく僅かしか存在しない大変希少な宝石。なかなかお目にかかることの出来ない貴重な宝石の一つと言えます。
トラピッチェエメラルドの産地
現在トラピッチェエメラルドの主要な産地は、最初に発見されたコロンビアの東コルディア山脈にある、ぺナ・ブランカ地域、ムゾー鉱山、コスケス鉱山や、チボー鉱山などです。
1994年にはブラジルのゴイアス州でトラピッチェと同じ種類のエメラルドが発見されました。
さらに1998年にはマダガスカルのエメラルド鉱山で、質は良くありませんがこちらも同じような模様が見られるエメラルドが発見されています。
トラピッチェエメラルドの見た目の特徴
トラピッチェエメラルドには、3種類の模様があります。
- 中心に六角形がある表面にスター効果のような細い6条の線を見せる。(亀の甲羅型)
- 中心に六角形がなく、6条の線のみが見える。(*型)
- エメラルドが花びらのように成長する。(花形)
発見地であるコロンビアで、この不思議なエメラルドの模様は、サトウキビを搾る機械の歯車の形と似ているといわれ、スペイン語で「歯車」という意味の「トラピッチェ」と呼ばれたことが名前の由来だといわれています。
トラピッチェエメラルドの模様のでき方
中心に六角形を残した表面に、スター効果に似た細い6条の線を見せるトラピッチェの生成過程は次のような感じだと言われています。トラピッチェ・エメラルドは、結晶が成長する際に不純物が混ざり、そのまま結晶と一緒に縦方向に伸びたものだと考えられています。
稀に六角形がなく6条の線のみが見える場合も(*型)あります。
- 六角柱状のエメラルド結晶が作られる。
- アルバイト(曹長石)とベリル(緑柱石)の成分を含んだ熱水がエメラルドを取り巻き、結晶を作る。
- このとき、アルバイトとベリルの結晶はエメラルド結晶の六つの角に沿って成長する。
- アルバイトとベリルを含んだ熱水がなくなるとともに、エメラルドが再度成長を始め、トラピッチェの形が出来上がる。
六角形の線に沿って成長する花のような形のトラピッチェの模様のでき方については、未だ謎のままだそうです。
まとめ
結晶に不純物が混ざり、共に成長することで完成するという不思議なトラピッチェエメラルド。
1995年には、ビルマでルビーとサファイアからもトラピチェ模様の結晶が発見されています。
希少なトラピッチェエメラルドですが、透明度が高く美しいものは非常にレアなことから、コレクターの間でも大変人気が高まっているようです。
カラッツ編集部 監修