新緑が瑞々しく、風薫る爽やかな5月。
長期連休に始まり、比較的過ごしやすい日々も多いため、気分が浮き立つ季節ではないかと思います。
そんな5月の誕生石は、エメラルドと翡翠(ヒスイ)です。
どちらも樹木や草花の芽吹きを思わせるグリーンが印象的で、5月生まれの皆さまにピッタリの宝石ではないでしょうか。
聞くところによると、「エメラルドと翡翠は同じ宝石ではないの?」という疑問をお持ちの方もいるとか。
確かに色合いや雰囲気が似ているものもありますよね。
そこで今回は、5月の誕生石であるエメラルドと翡翠について掘り下げ、それぞれの特徴や、何故間違われやすいのかなどについて解説したいと思います。
目次
5月の誕生石はエメラルドと翡翠
5月の誕生石はエメラルドだけ、そう思っている方が意外と多いと聞きました。
「エメラルド以外に、翡翠もあったの!?」という声も聞こえてきそうですね。
実は誕生石は国によって違いがあります。そして「5月の誕生石はエメラルドだけ」と定めている国も多いです。
しかし日本の場合は、翡翠も5月の誕生石に選ばれています。よって、日本で誕生石について語られる際は、「5月はエメラルドと翡翠の2つ」ということになるのです。
さて、エメラルドと翡翠は鉱物学的には全く違う宝石なのですが、色や品質によっては似ているものもあります。
一体どのような点で間違われやすいのか、を語る前に、まずはそれぞれの基本情報から見ていきましょう。
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5月の誕生石 エメラルド
世界四大宝石の一つでもあり、古くから時の権力者に愛されてきたエメラルド。
グリーン宝石の代表格ともいえる、知名度の高さを誇っていますね。
その深く鮮やかなグリーンは「エメラルドグリーン」と呼ばれています。
色彩の名称になるほど、エメラルドの色は他に例えようのない、特別なものであることが窺えます。
特徴
エメラルドはベリルという鉱物です。和名は「緑柱石」。
ベリルはとても多彩な宝石で、色によって宝石名が変わります。例えば、ブルーはアクアマリン、ピンクはモルガナイト、カラーレスはゴーシェナイトなど。
そしてエメラルドは、鮮やかなグリーンを呈するべリルに与えられる宝石名です。
エメラルドのグリーンは、生成過程で含まれる微量のクロムやバナジウム、鉄などの元素の影響と考えられています。これら元素の有無やバランスなどで色味が変わってくるそう。
クロムが入らず、薄いグリーンを呈するものはグリーンベリルと呼ばれます。
エメラルドは、産地によって色味に違いがあるといいます。例えば、コロンビア産は暖かみがあって純粋なグリーンに近く、ザンビア産は青みがかったクールな色調が多いそうです。
また、エメラルドは内部にひび割れやインクルージョンが入りやすいという特徴があり、脆い性質をもちます。
歴史・言い伝え
エメラルドは、とても歴史の古い宝石です。
古代エジプトのクレオパトラが、エメラルドをとても愛していたことは有名な話ですよね。
エメラルド鉱山に自分の名前をつけて、クレオパトラ鉱山と呼ばせていた、という逸話も残っています。
クレオパトラはエメラルドをジュエリーとして身に着けるだけでなく、粉にしてアイシャドウとして使っていたとか。グリーンに煌めく目元には、美しさとパワーが感じられたことでしょう。
南米のインカ帝国でもエメラルドは特別な存在で、宗教的な意味もあったのだとか。
古代ローマの学者プリニウスが「博物誌」の中で、エメラルドについて「この緑以上に緑色のものはない」「目の疲れを和らげる」と記述しているそうです。視力回復のパワーがあると信じられていたようですね。
世界最古のエメラルドは、南アフリカで発見された29.7憶年前に生成されたものだそう。地球の太古の時代からエメラルドは存在していたのですね。
エメラルドに施される処理
現在流通しているエメラルドの殆どは、透明剤の含浸処理が施されているといわれています。
前述したように、エメラルドはインクルージョンや傷が多く脆いため、透明のオイルや樹脂を流し込んで耐久性を上げる必要があるのです。
含浸処理はエメラルドが本来持っている美しさを引き出すもので、昔から認められている方法です。通常的に行われているため、処理の有無によって価値が著しく下がることはありません。
ただ、中には含浸処理を行わなくても色合いが美しく透明度が高いものもあります。それらはノンオイルエメラルドとして価値高く扱われます。
ただ、透明度が高く鮮やかなグリーンの合成エメラルドもあり、それらを天然エメラルドと偽って販売している業者もあるため注意が必要です。
口コミ評価が高いなど、信頼のおけるお店で購入することをオススメします。
価値
エメラルドの価値は、主に色、透明度、大きさなどで判断されます。
まず、鮮やかなグリーンであること。そしてインクルージョンや傷が少なければ少ないほど良いとされています。
そしてカッティングが美しく、照りの良いこと。同じ品質のエメラルドでしたらカラットの大きい方に価値があります。
エメラルドは、産地による違いも多少あり、最高品質のものが多いとされるコロンビア産のものは、他の産地に比べ高い値段で取引されるケースも多いそうです。
また、含浸処理が施されていないノンオイルエメラルドはとても高く評価されます。
0.3ctほどの小粒であっても100万円を超えたり、5ct以上になると数千万円以上の価値が付くものもあります。
石言葉
エメラルドの石言葉は「幸運」「夫婦愛」「幸福」です。
どれも良い言葉ばかりですね!
永遠の愛を誓うものとして、婚約指輪や結婚指輪に選ぶのも素敵かもしれませんね!
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5月の誕生石 翡翠(ヒスイ)
翡翠(ヒスイ)は日本の国石に指定されている宝石です。
縄文・弥生時代に作られた翡翠の勾玉が歴史の教科書に載っていたり、日本で産出されることなども知られ、日本人にとって馴染み深い宝石といえるのではないでしょうか。
古くから祭祀に使われることも多く、神秘的なイメージもありますね。
「翡翠」という言葉は中国から伝わったといわれています。鳥のカワセミが由来で、その美しい羽根の色を思わせる鉱物、ということなのだそうですよ。
それでは翡翠について見てみましょう。
特徴
翡翠(ヒスイ)は英語でジェダイトと呼ばれています。
翡翠とよく似た宝石にネフライトがあり、同じ鉱物だと思われていた時代もあったようですが、現在では全く別のものであることが明らかになっています。
ジェダイト(翡翠)を硬玉、ネフライトを軟玉と呼ぶこともあります。
グリーンの印象が深い翡翠ですが、実は多彩。ホワイト、ブラック、ブルー、イエロー、パープル、レッド、オレンジ、カラーレスなどもあるのですよ。
一番人気も価値も高いのは、馴染み深いグリーン。
翡翠のモース硬度は6.5~7ですが、靭性が高く、耐久性に優れた宝石です。
多くの宝石は単結晶ですが、翡翠はヒスイ輝石の結晶が集合してできた多結晶体で、それゆえ靭性が高いということです。
また、翡翠の透明度は、結晶体のサイズと密接な関係にあり、結晶体のサイズが小さいほど透明度が高くなることが研究によって明らかになっているそうです。
歴史・言い伝え
最高品質のものが多く採れることで知られるミャンマー産翡翠は17世紀後半~18世紀頃に発見され、中国に渡ったといわれています。
翡翠の見事な彫刻の数々が、台湾の故宮博物院などに収蔵されていますね。
南米では紀元前1200年頃のオルメカ文明、マヤ文明、アステカ文明などで、装飾品や武器などに加工されたものが見つかっています。
日本における翡翠文化は世界最古といわれることもあり、縄文時代から奈良時代までの遺跡などから多く見つかっています。
その後、突如として姿を消し、再び日本の歴史に登場したのは1938年頃のこと。新潟県糸魚川市で再発見され話題となりました。
それまで翡翠の勾玉は海外からの渡来品と考えられていましたが、糸魚川で翡翠が発見されたことで、日本産であることが判明したのです。
日本で採れる翡翠は5億2000万年前に生成されたものと考えられ、これもまた世界最古です。ちなみに2番目に古いのは北極圏ウラルの翡翠で、約4億400万年前なのだそうです。
翡翠に施される処理
翡翠に施される処理は様々で、主にワックスコーティング、脱色、樹脂の含浸処理、染色、加熱処理などがあります。
このうち、最も一般的に施されているものは、表面に艶を出すワックスコーティングなのだそう。
翡翠の茶色い部分などを酸で脱色して白くする処理もよく行われますが、脆くなってしまうため、それを補うべく樹脂による含浸処理が行われるといいます。
染色処理された翡翠は色が不安定で、日の当たる場所に長時間置くと退色してしまうのだとか。
加熱処理は、レッドやブラウンの翡翠に対して行われることがあるそうです。
価値
鮮やかなグリーンで透明度の高い翡翠は琅玕(ろうかん)と呼ばれ、数百万円や一千万円の価値がつくことがあるといいます。
ラベンダー色も人気で、特にミャンマー産の鮮やかなラベンダー翡翠が好まれているそうですよ。
翡翠は施される処理によって「A貨、B貨、C貨」の3つのランクに分けられています。
A貨(Aジェード) | 天然の色、無処理、またはワックスコーティングされたもの |
B貨(Bジェード) | 酸で漂白し、樹脂で含浸処理したもの |
C貨(Cジェード) | 酸で漂白し、樹脂で含浸処理し、染色処理がされたもの |
価値が高いのはA貨で、B貨やC貨は価値が下がります。
石言葉
翡翠の石言葉は「健康」と「繁栄」です。
実はカラフルな翡翠ですが、代表的な色はグリーンですよね。
グリーンは目にも心にも優しい癒しの色といわれています。
また翡翠には医療用に使われたという歴史もあります。人を健康にする作用があると考えられていたのかも知れませんね。
また、古代から権力者の装飾や祭祀に使われた翡翠には、人々や国の繁栄を願う祈りが込められていると言えるでしょう。
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エメラルドと翡翠(ヒスイ)が間違えられやすい理由
エメラルドと翡翠についてお話してきましたが、両者の違いについて、お分かり頂けたでしょうか。
まずは、鉱物として全く別の物となり、主だった共通点はありません。
にも関わらず、同じようなグリーンの色味ということもあってか、エメラルドと翡翠が混同されてしまうことがあるようです。
実は、低品質のエメラルドと高品質の翡翠がそっくりな場合があるのだとか。
翡翠は透明度の低いものが多く、エメラルドもインクルージョンや傷が多い宝石です。
透明度の低いエメラルドにカボションカットを施すと、翡翠の最高品質である琅玕(ろうかん)とそっくりになることがあるそうです。
ジュエリーショップなどでエメラルドと翡翠が混同されることは少ないと思いますが、低品質のエメラルドを最高品質の翡翠と偽って販売するような悪質な詐欺には気を付けましょう。
最後に
5月の誕生石、エメラルドと翡翠についてお話しましたが、いかがでしたでしょうか。
カボションカットのエメラルドが翡翠と似ていることを、改めて知ることができましたね。
「5月の誕生石はエメラルドのみ」とする国が多いなか、日本では翡翠も5月の誕生石に選定されています。
翡翠には様々な色があるので選ぶ楽しさもありますね。
エメラルドはダイヤモンド、ルビー、サファイアとともに四大宝石の一つに数えられており、品質の高いものであれば代々受け継いでいけるような価値ある宝石でもあります。
いずれも和装にも洋装にもマッチするため、活躍の場も多そうです。
5月の誕生石、エメラルドと翡翠の魅力が多くの皆様に伝わりますように!
カラッツ編集部 監修