コロンビア産エメラルドの特徴は?産地別の特徴

コロンビア産エメラルド

歴史的に最高品質のエメラルドが産出されてきた南米コロンビア。世界でも有数のエメラルドの産地です。

こちらでは、古くからインドやスペインの王侯貴族の宝飾品として加工され、ジュエリー史に残る多くの作品を残してきた、コロンビア産エメラルドについてお伝えしていきます。なおエメラルドは産地鑑別のできる石です

コロンビア産エメラルドの特徴

コロンビア産エメラルド ルース

画像:コロンビア産ノンオイルエメラルド

コロンビアで産出されるエメラルドの原石は、世界中で最も純粋で美しいといわれています。普通は火成岩を母岩として結晶が生成しますが、コロンビア産の原石は堆積岩中で生成されることが、美しさの理由だと考えられています。

アンデス山脈の地殻変動によって、気体や液体状態になったベリリウム、クロム、パナジウムの成分が堆積岩の割れ目に付き、結晶化してエメラルドが生成されます。

堆積岩中にある生理食塩水の成分が、結晶内にある鉄分などの不純物を洗い流すので、エメラルド特有の曇った内包物が少なくなり、美しいコロンビア産エメラルドが出来上がるのです。

原石は六方柱形をしており、エメラルドの代表的な「エメラルドカット」に研磨されます。色が美しく高品質で産出量も豊富なのが特徴的です。

生成要因が同じであっても、結晶の色や透明度は鉱山によって異なります。さらに同じ鉱山の原石でも、色や透明度に多少の違いが現れます。

コロンビアのエメラルドの鉱山

コロンビア鉱山の歴史

古代、エメラルドはエジプトでのみ産出されていました。

1520年代にコロンビアがスペイン人に支配され、この土地で本格的にエメラルドの採掘が始まります。コロンビアでは原住民が紀元前500年頃には採掘を始めていましたが、侵略したスペイン人たちによって鉱山が開かれ、後に「コロンビア産エメラルド」の世界市場を一気に広めたのです。

高品質な原石が大量に採掘されるコロンビアのエメラルドは、インドやトルコ、ペルシャなどの王侯貴族などに愛されます。17世紀から18世紀前半までスペインがコロンビアを支配していたため、スペインやポルトガルでもコロンビア産エメラルドを使った歴史的なジュエリーが多数制作されました。

1819年にはコロンビアが独立し、鉱山はコロンビア政府や個人企業が経営する様になります。

19~20世紀の間には政治や社会的背景の影響があり、国内の鉱山は何度も一時的閉鎖に追い込まれています。

コロンビアには、以下の有名な3大鉱山が存在します。

ムゾー鉱山

鉱山はアンデスの東部山脈内の西部に位置し、世界で最も有名なエメラルド原石などを産出してきました。国内の企業がコロンビア政府から長期借地しています。

コスケス鉱山

産出量が多く、コロンビア産の75%はコスケスから供給されています。ムゾー鉱山から10㎞程北の場所にあり、こちらも国内企業が政府から長期借地をしています。

チボール鉱山

有名なエメラルドも産出されています。鉱山はチボール地方の町の近くにあり、個人によって経営されています。

有名なコロンビア産エメラルド

フッカー・エメラルド・ブローチ
Hooker Emerald Brooch(フッカー・エメラルド・ブローチ)
出典元:https://geogallery.si.edu/10002707/hooker-emerald

デューク・オブ・デボンシャー

ムゾー鉱山で発見された、1383.93カラットの原石。1831年に英国のデボンシャー公爵に贈られたのが名前の由来です。

パトリシア・エメラルド

1920年に発見された630カラットの原石。鉱山所有者の娘の名が由来です。現在はニューヨークの米国自然博物館所蔵。

クラウン・オブ・アンデス

合計1521カラットのエメラルドが配された王冠。インカ皇帝アタワルパが所有したエメラルドも配されています。

ガチャラ・エメラルド

ガチャラ地区にあるベガ・デ・サンファン鉱山で1967年に発見された858カラットの原石。ハリー・ウィンストン社が所有し、1969年にスミソニアン博物館に寄贈しました。

フッカー・エメラルド・ブローチ(写真)

75.47カラットのコロンビア産エメラルドが配された、ティファニー社製のブローチ。原石は16~17世紀に発見されましたが、鉱山は不明です。現在はスミソニアン博物館所蔵。

フラ・エメラルド

1999年にムゾー鉱山で発見された、11,000カラット(2.2㎏)の原石。現在世界第2位の大きさです。ちなみに、第1位はブラジル産のバイーア・エメラルドです。

テナ・エメラルド

1999年にムゾー鉱山で発見された、2,000カラットの原石です。

トラピッチェエメラルド

トラピッチェエメラルド ルース

画像:コロンビア・ムゾー産ノンオイルトラピッチェエメラルド

トラピッチェエメラルドは1924年代にムゾー鉱山で発見されたといわれています。

原石は6個の結晶がカーボンによる6つの線で区切られており、これを輪切りにカットすると6本の黒い線が現れて星のように見えるものです。

スペイン語でサトウキビを絞る【トラピッチェ】という機械の歯車に見た目が似ていることから、こう名付けらました。

トラピッチェはムゾー産特有でしたが、後にブラジルでも発見されています。

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トラピッチェエメラルド

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最後に

コロンビア産エメラルド
コロンビアは高品質の原石が産出されるため、世界中から宝石バイヤーが集まる場所です。

市場が拡大するとともに国内では盗難品の密輸などが増加しているのも事実。

1964年から50年以上続いた内戦では、ブラックマーケットを通して販売されるエメラルドが、紛争における組織の大きな資金源の一部となっていたそうです。

少し考えさせられますね。

カラッツ編集部 監修