ネオンカラーが美しいパライバトルマリン。
宝石好きのあなたなら、きっと一つは持っていたいと思う、魅惑的な宝石のひとつですよね。
実はそういう私もその虜になっているファンのひとりです!
パライバトルマリンは、ブラジルで発見されて以来、世界中の宝石ファンを魅了し続けてきました。
パライバトルマリンの人気がこれほども高く、価値が高騰している理由は何なのでしょうか。
こちらでは、パライバトルマリンの特徴、種類、歴史、人気の理由、施される処理、価値基準と市場価格などをお伝えしていきたいと思います。
目次
パライバトルマリンとは
パライバトルマリンは、名前からも想像できるとおり、トルマリンの変種の一つです。
蛍光がかったブルー~グリーンの色合いが特徴的でトルマリンの中では最も価値も人気も高いとされています。
カラーバリエーション豊富なトルマリンですが、色の違いは主に、含まれる微量元素の違いだといわれています。
パライバトルマリンは、以前はマンガンの含有も発色要因の一つと考えられており、パライバトルマリンと呼べる条件の中に入っていました。
それが近年になって、マンガンを含まずともネオンカラーを発色するものが発見されたことを受け、定義が見直されました。
現在のパライバトルマリンの定義は
●色味:ブルー~グリーンのネオンカラー
●成分:銅(Cu)が含有されていること
この2つの条件を満たしたものに変わっているそうです。
鉱物としての基本情報(トルマリン)
英名 | tourmaline |
和名 | 電気石 |
分類 | 珪酸塩鉱物 |
結晶系 | 六方晶系(三方晶系) |
モース硬度 | 7 – 7.5 |
比重 | 3.03 – 3.31 ※種類により大きく変動 |
屈折率 | 1.61 – 1.64 ※種類により変動 |
※化学組成は種類によって異なるため省略しています。
実はトルマリンは、グループ名のようなもので宝石として扱われるものは、エルバイト、リディコータイト、ドラバイト、ウバイト、ショールの主に5種類といわれています。
その中で最も多いのがエルバイト種、次がリディコータイト種とされます。
トルマリンの場合、色によって種類が分けられるため、エルバイト種のパライバトルマリンもあれば、リディコータイト種のパライバトルマリンも存在します。
成分を見れば、エルバイト種かリディコータイト種か確認できるようですが、鑑別書には記載されない場合が多いです。
突き詰めていくととっても奥が深いトルマリンについて、詳しく知りたい方はこちらの記事も参考に。
パライバトルマリンの色
パライバトルマリンの色は、主にネオン感のある、ブルー~グリーンです。
中には、比較的ネオン感の少ない濃いブルーの色合いのものも存在します。
初期のブラジル・パライバ州バターリャから産出された、通称エイトリータとも呼ばれるものなのですが、現在は殆ど採れず、市場で見かけることは極めて少ないといわれています。
パライバトルマリンの中で最も価値高く扱われる色合いで、中には、ロイヤルブルーサファイアのような色合いのものもあったそうですよ。
パライバトルマリンの産地
後で詳しくご紹介しますが、パライバトルマリンは1987年、ブラジルのパライバ州バターリャで初めて見つかったといわれています。
その後、同じくブラジルのリオグランデ・ド・ノルテ州で見つかったほか、ナイジェリア、モザンビークでも発見されました。
現在、ナイジェリアでは殆ど産出されないといわれ、市場で見かけるものはブラジル産とモザンビーク産が多いように思います。
なお、パライバトルマリンは産地特定ができる宝石で、産地によって特徴や価値が異なります。
▼パライバトルマリンの産地と産地別特徴、価値の違いなどについては、下記記事をご覧ください。
名前の意味
最初の発見地であるブラジルのパライバ州にちなんでパライバトルマリンと名付けられたといわれています。
当初はブラジルから産出されるものだけをパライバトルマリンと呼んでいたようですが、現在では前述したような条件を満たしていることが分かれば、パライバトルマリンと呼ぶことができます。
パライバトルマリンは何月の誕生石?
パライバトルマリンは、トルマリンの一種なので、10月の誕生石です。
10月の誕生石には、トルマリンの他に、オパールもあります。
トルマリンもオパールも種類が豊富なため、10月生まれの方は選択肢が多く羨ましいですね!
▶10月の誕生日石についてはこちらから
パライバトルマリンの種類
パライバトルマリンには、見た目が少し異なる種類も存在しますので、ご紹介しますね。
バイカラーパライバトルマリン
色の宝庫と呼ばれる程カラーバリエーションが豊富なトルマリン。
一石の中に2色入った「バイカラートルマリン」、複数色入った「パーティーカラードトルマリン(パーティーカラートルマリン)」も人気があります。
そして、パライバカラーが入った「バイカラーパライバトルマリン」「パーティーカラードパライバトルマリン」もあります。
中には赤みがかったパープルとのバイカラーもあるのですが、赤みがかったパープルのトルマリンを加熱するとパライバカラーになるものも多いといわれ、そのようなバイカラーは非加熱の可能性が高いのだそうです。
画像:非加熱バイカラーパライバトルマリン
そう聞くと少し、ロマンさえ感じませんか?
パライバトルマリンキャッツアイ
もう一つ、変わり種のパライバトルマリンといえば、パライバトルマリンキャッツアイもあります。
繊維状の内包物が含まれ、カボションカットを施されたものに光を当てると、猫の目のような一筋の光が現れるというキャッツアイストーン。
多くの宝石に見られますが、パライバカラーの中に一筋の光が浮かぶ姿はまるで夜の海に差し込む月の光のようにも見えて本当に神秘的ですよね。
パライバトルマリンの歴史
パライバトルマリンは、1987年にブラジルのパライバ州バターリャで最初に発見されたといわれています。
まだ比較的歴史の浅い宝石なのですね。
1990年に行われたツーソンミネラルショー(アメリカ)で登場すると一気に話題をさらい、開催期間中に価格が何倍にも跳ね上がったという話は今でも語り草になっている程だそうです。
その後1990年後半~91年初め頃に、パライバ州の隣のリオグランデ・ド・ノルテ州でも同様の色と成分をもつトルマリンが発見され話題になります。
当初はブラジルからしか産出されなかったパライバトルマリンですが、2001年にはアフリカのナイジェリアで、2005年には同じくアフリカのモザンビークでも発見されました。
パライバトルマリンが人気の理由とは?
パライバトルマリンの人気が高い理由は、なんといっても独特で美しい蛍光色といえるでしょう。
銅を含有することから、キュプリアン・エルバイト(銅リチア電気石)とも呼ばれています。
そして、産出量はダイヤモンドよりも少ないという超レアな存在。
産地には銅が含まれていることが必須なので、ブラジルとナイジェリアとモザンビークに限られているのもコレクター心をくすぐるようです。
また、パライバトルマリンを採掘するのは困難を極める作業なのだそうで、すべてはハンマーなどを使用した手作業で行われています。
以前は、ダイナマイトも使用されていたそうですが、結晶を破損する恐れがあるので現在は控えられているようです。
また、ブラジルでは60mという深さのトンネルを掘り、採掘を行いますが、パライバトルマリンの結晶は鉛筆の芯ほどに細い脈の中で見つかることが多いのだそう。
発見しにくい宝石であるからこそ、レア度が増し、価格も高騰しているといえるでしょう。
パライバトルマリンの鑑別
パライバトルマリンの鑑別において重要視されるのは成分分析です。
前述したように、パライバトルマリンと認められるには成分に銅(Cu)が含有されていることを証明する必要があります。
そのため、鑑別書とは別に成分分析報告書というものが存在します。
しかし、成分分析をするためには特殊な機械が必要になるため、全ての鑑別機関で行えるわけではありません。
もしお手持ちのパライバトルマリンを鑑別したい場合は、鑑別機関に行く前に問い合わせてみた方が良いかもしれません。
そして鑑別書が付いているからと言って必ずしも成分分析報告書も付いているとは限りません。
GIAなど成分分析報告書を付けない方針の鑑別機関もあります。
必ずしも付けられるとは言い切れませんが、購入したいパライバトルマリンに成分分析報告書が付いておらず気になる方は、お店に一度相談してみても良いかもしれません。
ちなみに、パライバトルマリンは正式な宝石名とは認められておらず、鑑別書には宝石名の欄ではなく備考欄に、別名パライバトルマリンと呼ばれていますと書かれる場合も多いようです。
成分分析報告書にはパライバトルマリンと記載がされます。
パライバトルマリンに施される処理について
パライバトルマリンの鑑別書を見ると、「通常加熱が行われています。」と書かれている場合が多いです。
これは「一般的に加熱処理が行われることが多いが、自然熱で加熱されたり非加熱のものも中にはあり、それらを明確に判別することが困難」という意味だそうです。
そのためパライバトルマリンは加熱処理が行われていることで価値が著しく下がることはないといわれています。
但し、鑑別機関によっては加熱の痕跡を見分けられ、痕跡が見当たらない場合、その旨が鑑別書に書かれることもあります。
そういった鑑別書が付いているものは、非加熱パライバトルマリンとして価値高く取引される場合もあるということです。
パライバトルマリンの偽物について
画像:左-アパタイト 右-パライバブルートパーズ
人気も価値も高い宝石には、残念ながら、偽物を高く売ろうとする悪徳業者も存在しやすいという悲しい事実がついて回ります。
最も有名なのは恐らく、アパタイト。
アパタイトも天然宝石のため、偽物として紹介するのは心苦しい限りですが、実際パライバカラーのアパタイトがパライバトルマリンとして販売されていることも少なくないと聞きます。
アパタイトもとても魅力的でコレクター人気の高い宝石ではありますが、パライバトルマリンに比べるとまだ知名度も価値も高い方ではありません。
そのためアパタイトとして売るよりパライバトルマリンと偽って売った方が儲けられる、という悪知恵が働くのかもしれません。。。
また、最近ではコーティング処理でパライバカラーに変えられたホワイトトパーズがパライバトルマリンとして流通することもあるそうです。
パライバトルマリンとしてではなく、アパタイトやコーティング処理を施したパライバカラーのトパーズとして販売されていれば何の問題もないのですが・・なぜ人を騙して儲けようとする人が居るのか、、悲しい限りです。
▼パライバトルマリンの偽物宝石については下記記事にて詳しくご紹介しています。
パライバトルマリンの価値基準と市場価格
パライバトルマリンの価値基準と市場価格、何処で買えるのかについても簡単にご紹介しましょう。
価値基準
パライバトルマリンの価値を左右する、最も重要なものは色です。
パライバトルマリンの色は前述した通り、ネオン感のあるブルー~グリーンですが、ブルー味が強く色鮮やかな程、価値が上がります。
更に、パライバトルマリンはキズやインクルージョン(内包物)が全般的に多い宝石ですので、キズやインクルージョンが少なく透明度の高いものも評価が高いです。
大粒のものが採れにくいことから、大きさも価値に影響します。
そして、パライバトルマリンの場合、産地も重要で、ブラジル産はより価値高く扱われます。
ナイジェリア産とモザンビーク産については、産地による価値の違いは今のところないといわれています。
まとめると、ブルー味が強く色鮮やかで、透明度が高く、サイズが大きい、ブラジル産のパライバトルマリンに最も高い価値が付けられる、ということですね。
ただ、最近は、グリーン系のパライバトルマリンもコレクターを中心に人気が高まっており、需要の増加とともに価格も上昇傾向にあるそうです。
市場価格
それでは実際パライバトルマリンはどれ位の価格で売られているのでしょうか。
大体の市場価格についてもご紹介しましょう。
モザンビーク産やナイジェリア産で、クォリティによっては一万円以下で探すことも可能です。
ブラジル産であっても、小粒で色が薄いもの、グリーン味が強いものは数万円から探せると思います。
小さくても色鮮やかでブルー味の強いブラジル産パライバトルマリンは、十万円以上するものが多く、更に、1ct以上あるトップクォリティのブラジル産パライバトルマリンとなると、数千万円以上するものも珍しくありません。
バイカラーパライバトルマリンやパライバトルマリンキャッツアイは希少性の高さから、通常のパライバトルマリンよりも少しお高めになることが多いようです。
何処で買える?
超人気石のパライバトルマリンですから、カラーストーンの取り扱いのあるお店であれば、取り扱っているお店は多い印象です。
オンラインショップなどでもよく見かけますので、ルースでもジュエリーでも探せば色々見つけられると思います。
モース硬度が比較的高くジュエリーとしても楽しめますので、ジュエリーになっているものを探すのも良いですし、自分好みの一石をルースで買ってジュエリーに仕立てるのも素敵だと思います☆
ただし、前述したとおり、高品質なものや特にブラジル産などは高額のものも多いです。
偽物も多く出回っている宝石ですので、高額なもの程、信頼のおける鑑別機関の鑑別書が付いているものやオプションで付けられるものを購入することをオススメします。
最後に
独特のネオンカラーでファンを魅了し続けているパライバトルマリン。
産地と産出量が限られており、採掘がとても困難なことが、希少性と人気を高めている理由だったのですね。
いつか予算と好みに合った、自分だけの特別な子に会える日を楽しみにしたいと思います♪
カラッツ編集部 監修