色彩豊かなトルマリンの中で、希少性が高いといわれているブルートルマリン。
様々なトーンのブルーがありますが、藍色に輝くものはインディコライトトルマリン(インディゴライトトルマリン)と呼ばれ人気があります。
インクブルーのサファイアなどとも似ていて、なんだか上品な雰囲気を感じますね。
トルマリンは10月の誕生石としても知られていますが、藍色もあったとは!トルマリンの色の多さを実感しました。
それでは、インディコライトトルマリンについて、特徴、名前の意味、原石の形、価値基準などについてお話しましょう。
目次
インディコライト(インディゴライト)トルマリンとは
インディコライトトルマリン(インディゴライトトルマリン)は、その名のとおり、トルマリンの一種です。
実はトルマリンは一つの鉱物を指す名前ではなく、グループ名のようなものです。
細かく分けると33種類程あるそうですが、宝石として扱われる代表的なものは、エルバイト、リディコータイト、ドラバイト、ウバイト、ショールの5種類です。
その中で、宝石として扱われるものが最も多い種類がエルバイト、次がリディコータイトで、インディコライトトルマリンも多くはエルバイト種といわれています。
鉱物としての基本情報 (エルバイトトルマリン)
英名 | Elbaite(エルバイト)、 Tourmaline(トルマリン) |
和名 | リシア電気石、 電気石(でんきせき) |
鉱物名 | トルマリン |
分類 | 珪酸塩鉱物 |
結晶系 | 六方晶系/三方晶系 |
化学組成 | Na(Li,Al)3Al6(BO3)3Si6O18(OH,F)4 |
モース硬度 | 7 – 7.5 |
比重 | 3.03 – 3.31 |
屈折率 | 1.62 – 1.64 |
光沢 | ガラス状 |
特徴
インディコライトトルマリン(インディゴライトトルマリン)の特徴として挙げられるのは、まずは色でしょう。
一般的に濃いブルー~ブルーグリーンのトルマリンをインディコライトと呼びます。
見る方向によって異なる色合いに見える強い多色性をもちます。
トルマリンは全般的に多色性が強いといわれていますが、特にインディコライトトルマリンは分かりやすいものが多いのだそうですよ。
結晶の縦方向から見るとほぼブラックにしか見えないものもあり、見る角度によってブルーになったりブラックになったりするため、研磨する時に悩むという話を聞いたことがありますよ。
モース硬度が7 – 7.5と比較的高めで、日常的なジュエリーとしても楽しめます。
色
インディコライトトルマリンの色は、前述したように、主に濃いブルー~ブルーグリーンです。
グリーンが少し入ったものは日本の藍染などでよく見る藍色に似ていますし、紺色に近い深いブルーもあり、上品で落ち着いた風情を感じます。
純粋なエルバイトはカラーレスなのだそうですが、生成途中で微量元素が入ることで様々な色を呈すると考えられています。
インディコライトトルマリンの独特なブルーは鉄によるものだといわれています。
鉄の含有量や他の成分とのバランスによって濃淡が生じます。
ただ、インディコライトトルマリンの色基準は、鑑別機関によって若干見解が異なる部分も多く、グリーン味が強いものはインディコライトと認めない、という機関もあるそうですよ。
産地
インディコライトトルマリンは、世界に点在しているトルマリンの産地で産出されています。
特に有名なのは、ブラジルのミナス・ジェライス州です。
他に、スリランカ、ロシア、マダガスカル、ナイジェリア、アフガニスタン、アメリカ、モザンビーク、ナミビアなど。
原石の形
インディコライトトルマリンの原石は、一般的なトルマリン原石と同じです。
結晶系は三方晶系で、原石は柱状。柱の側面には特徴的な縦の条線が走っています。
結晶の端は平らだったり、角度の低い錘面だったり。
原石の状態から、インディコライト特有の深いブルーを呈しているものが多いようです。
カラーゾーニングやブルーからグリーンへの移り変わりが見られる結晶もあって、原石のままでも十分な美しさを放っています。
名前の意味
インディコライトトルマリン(インディゴライトトルマリン)という名前は、ラテン語で「Indicum」と呼ばれる、青い染料がとれる植物が由来です。
「Indicum」は、世界中で使われているインディゴのことです。日本で藍染に使われる植物にもインディゴ成分が入っているそうですよ。
このことからか、「インディゴライト」と呼ばれることも多いのですが、正しくはインディコライトと、コに濁点はつきません。
トルマリンの和名は「電気石」。熱や摩擦を加えることで静電気を発するという性質が名前の由来です。
インディコライトトルマリンの和名は「藍電気石」。そのままですね。
多彩な宝石トルマリン
トルマリンは実に多彩。100種類以上の色があるといわれています。
同じ色でも、彩度や明度が違っていて、グラデーションを作ることも可能だそう。
トルマリンは、色によって特別な宝石名がつくことがあります。いくつか紹介しましょう。
色 | 宝石名 |
ネオンカラーのブルー~グリーン(※) | パライバトルマリン |
濃いピンク~レッド | ルベライト |
濃いブルー~藍色 | インディコライトトルマリン |
鮮やかなイエロー | カナリートルマリン |
2色 | バイカラートルマリン |
カラーレス | アクロアイト |
※パライバトルマリンは色合いだけでなく、成分に銅が含まれることも定義に含まれます。
1989年にパライバトルマリンが発見される以前は、トルマリンの中で最も価値が高いのはインディコライトでした。
現在、トルマリンの価値はパライバトルマリンが一番高く、その次にインディコライト、そしてルベライトと続きます。
インディコライト(インディゴライト)に施される処理
インディコライトトルマリン(インディゴライトトルマリン)は、一般的に加熱処理が行われる宝石です。
650 – 700℃で加熱することで、グリーンの色調が取り除かれたり、明度が上がるのだそうですよ。
インディコライトトルマリンは、加熱処理を施してあっても価値が下がることはありません。
加熱処理の多くは、宝石の良さを引き出すもの。
自然が長い年月をかけて宝石に及ぼす作用を短時間で人工的に処理することです。他の多くの宝石に対しても行われています。
インディコライト(インディゴライト)の価値基準と市場価格
藍色の宝石インディコライトトルマリン(インディゴライトトルマリン)を手に入れたい!
そんな時、どのような基準で選べばよいのか相場はどのくらいなのか知っておくと、見るポイントが分かって良いですよね。
ここでは、インディコライトトルマリンの価値基準と市場価格、買える場所などについて解説します。
価値基準
インディコライトトルマリンの価値基準として最も重要なものは色です。
濃淡がありますが、ブルー味が強く、濃く鮮やかなほど価値が上がります。
特に純粋なブルーや紺色は1ct以下で見つかることが多いため、希少価値がつきます。
インディコライトトルマリンは本来インクルージョンが多い宝石ということもあり、透明度が高いものは珍しく、価値が高くなる傾向にあります。
また、カッティングが美しく、多色性が明確なことも重要です。
市場価格
次にインディコライトトルマリンのルースの市場価格を見てみましょう。
品質によって価格が変わり、サイズやクォリティによっては一万円以下で探すことも可能です。
全般的に数万円以上の価格がつくことが多いようですね。
藍色が鮮やかで透明度の高い、トップクォリティのインディコライトトルマリンは数十万円以上、更にサイズが大きくなると百万円以上になることもあります。
ジュエリーとなると、ルースの値段に地金や脇石の価格とブランド価値などがプラスされます。
どこで買える?
インディコライトトルマリンは、レアストーンを多く取り扱っているオンラインショップで見かけることが多いようです。
商品画像やカラット数などを見て、比較検討することも可能でしょう。
信頼できるショップかどうか、よく見極めて購入するようにしてくださいね。
各地で開催されるミネラルショーに行けば、実際に手に取って選ぶこともできると思います。
インディコライト(インディゴライト)のお手入れ方法
インディコライトトルマリン(インディゴライトトルマリン)は、モース硬度が7 – 7.5で、日常使いのジュエリーにも適していますが、強くぶつけたり硬い床に落としたりするとキズがついたり、最悪の場合、割れる可能性もあります。取り扱いには気をつけて下さいね。
また、熱に弱い性質もありますので、直火に近づけないなどの注意も必要です。
普段のお手入れは、着用した後に柔らかい布などで優しく拭く程度で充分ですが、汚れが気になる場合は、中性洗剤や石鹸を溶かしたぬるま湯の中で優しく洗うと綺麗になります。
洗った後、洗剤をしっかりゆすぎ、柔らかい布で水気をきちんと拭くことも大切です。
超音波洗浄機やスチームクリーナーの使用は避けましょう。
保管する際も、他の宝石やジュエリーと一緒にしておくと、何かの拍子にぶつかって、お互いに傷つけ合う恐れがありますので、仕切りのある箱や小袋などに分けて個別にしておくとより安心です。
最後に
インディコライトトルマリン(インディゴライトトルマリン)は、独特の藍色が美しい宝石です。
藍染のブルーをジャパンブルーと呼ぶ声もあるように、インディコライトに和のテイストを感じる方も多いのではないでしょうか。
それにしても、トルマリンの色の多さにはいつも驚かされます。
ネオンブルーのパライバトルマリンも素敵ですが、落ち着いた青色のインディコライトトルマリンも魅力的。
いろんな色のトルマリンを集めたくなってしまいますね!
カラッツ編集部 監修
<この記事の主な参考書籍・参考サイト>
◆『価値がわかる宝石図鑑』
著者:諏訪恭一/発行:ナツメ社
◆『起源がわかる宝石大全』
著者:諏訪恭一、門馬綱一、西本昌司、宮脇律郎/発行:ナツメ社
◆『ネイチャーガイド・シリーズ 宝石』
著者:ロナルド・ルイス・ボネウィッツ 訳:伊藤伸子/発行:科学同人
◆『美しさと価値がわかる 見て楽しい宝石の本』
監修:松本浩/発行:宝島社 ほか