独特のネオンブルーと希少性から、コレクター熱を上昇させ続けているパライバトルマリン。
産出するのは主にブラジルとアフリカです。
パライバトルマリンは産地別に特徴が異なり、価格相場にも違いが出ます。
今回は、パライバトルマリンをコレクションしたい方必見!
パライバトルマリンの基礎知識から、産地別の特徴や価値の違い、気になる販売価格まで、パライバトルマリンを買う前に知っておいて欲しい情報をアレコレお伝えしていきます!
目次
パライバトルマリンとは
まずは簡単にパライバトルマリンについてご説明しますね!
パライバトルマリンはトルマリンの変種の一つです。
蛍光がかったブルー~グリーンの色合いが特徴的でトルマリンの中では最も価値も人気も高いとされています。
カラーバリエーション豊富なトルマリンですが、色の違いは主に含まれる微量元素の違いだといわれています。
パライバトルマリンは、以前はマンガンの含有も発色要因と考えられており、パライバトルマリンと呼べる条件の一つとされていました。
それが近年になって、マンガンはパライバトルマリンの色味に起因していないのでは?という仮説が論文で提唱されたといいます。
そのため現在のパライバトルマリンの定義は
●色味:ブルー~グリーンのネオンカラー
●成分:銅(Cu)が含有されていること
この2つの条件を満たしたものに変わっているそうです。
それでは、トルマリンについても簡単にご説明しましょう。
トルマリンの特徴
カラーバリエーションが豊富なことで有名なトルマリンには、ない色はないといわれる程多くの色合いのものが存在します。
先ほどもお伝えしたとおり、主に含まれる微量元素の違いにより色が変わると考えられています。
パライバトルマリンのほか、濃いピンク~レッドのルベライト、濃いブルー~ブルーグリーンのインディゴライト、鮮やかなイエローカラーのカナリートルマリン、カラーレスのアクロアイト、一石の中に2色を呈したバイカラートルマリンなども人気がありますね。
ピンクやグリーンのものやスイカのような見た目のウォーターメロンも可愛いです☆
実はトルマリンは一つの鉱物を指す名前ではなく、成分が異なる幾つかの種類から成るいわゆるグループ名のようなもの。
細かく分けると、なんと30種類以上もあるそうです。
種類によって異なる部分もありますが、結晶の両端に電極をもち、熱を加えると静電気を発生するという特徴は共通しています。
それ故、和名を電気石というのですね。
鉱物としての基本情報も表にまとめてみましたので見てみましょう。
鉱物としての基本情報(トルマリン)
英名 | tourmaline |
和名 | 電気石 |
分類 | 珪酸塩鉱物 |
結晶系 | 六方晶系(三方晶系) |
モース硬度 | 7 – 7.5 |
比重 | 3.03 – 3.31 ※種類により大きく変動 |
屈折率 | 1.61 – 1.64 ※種類により変動 |
※化学組成は種類によって異なるため省略しています。
表面に傷がつきやすいかどうかをはかる尺度であるモース硬度が7から7.5と高い方ですので、ジュエリーとしても楽しめる宝石です。
先ほど、トルマリンはグループ名のようなものとお伝えしましたが、一般的に宝石として出回っているものはエルバイトと呼ばれる種類のものが多いといわれています。
そして次に多いのがリディコータイトだそうです。
ただ、トルマリンの少々複雑なところは、色によって種類が分けられるため、エルバイト種のパライバトルマリンもあれば、リディコータイト種のパライバトルマリンも存在するというところ。
突き詰めていくととっても奥が深い世界なのです。
パライバトルマリンの歴史
パライバトルマリンは、1987年にブラジルのパライバ州バターリャで最初に発見されたといわれています。
まだ比較的歴史の浅い宝石なのですね。
1990年に行われたツーソンミネラルショー(アメリカ)で登場すると一気に話題をさらい、開催期間中に価格が何倍にも跳ね上がったという話は今でも語り草になっている程だそうです。
その後1990年後半~91年初め頃に、パライバ州の隣のリオグランデ・ド・ノルテ州でも同様の色と成分をもつトルマリンが発見され話題になります。
当初はブラジルからしか産出されなかったパライバトルマリンですが、2001年にはアフリカのナイジェリアで、2005年には同じくアフリカのモザンビークでも発見されました。
名前の意味
最初の発見地であるブラジルのパライバ州にちなんでパライバトルマリンと名付けられたといわれています。
当初はブラジルから産出されるものだけをパライバトルマリンと呼んでいたようですが、現在では前述したような条件を満たしていることが分かれば、パライバトルマリンと呼ぶことができます。
なお、パライバトルマリンは産地特定ができる宝石です。
そして産地によって価値が変わる場合もあります。詳しくは次の項目でお話しましょう。
パライバトルマリンの産地別の特徴

現在は海を隔てて切り離された南米とアフリカ大陸ですが、太古の時代にはひとつの大陸として繋がっていました。
パライバトルマリンの原石はとても古い地層で発見されていることから、何千万年も前に地中で生成したものだと考えられています。
人類が誕生するよりも遥か昔の時代に、大きな地殻変動によって離れ離れになってしまった南米とアフリカ。
そんな中で生き残ったパライバトルマリン達は、遠く離れたブラジルとナイジェリアやモザンビークの地中奥深くで、高熱と高圧にさらされながら、長い間ずっと生き続けてきたのです。
なんだか、七夕ストーリーの地中バージョンみたいで、とてもロマンのあるお話・・・なんてうっとりしてしまいそうですが、これがれっきとした実話なのだから本当にオドロキです!!
そんな健気に生き続けてきたパライバトルマリンたちは、ブラジルとアフリカという異なる環境下で、それぞれどのような特徴をもつようになったのでしょうか。
ブラジル産パライバトルマリン
前述したように、ブラジルのパライバ州バターリャは、パライバトルマリンが世界で最初に発見された場所です。
それ故、この土地に敬意を表して『パライバトルマリン』という名前が付けられましたが、人気に一気に火が付いたことから鉱山が枯渇し、希少価値がどんどん上昇していきました。
パライバ産のパライバトルマリンの特徴をまとめると
- 多量の銅を含有することから、独特のネオンブルーを発する
- 色が比較的濃い
- インクルージョンが多い
- 宝石品質で大粒のものが産出されにくいため、0.3ct程度でも発色が良く透明度が高いものは少ない
特に特徴的な独特のネオンブルーは銅を多く含むパライバ産のみがもつと考えられており、1カラット以上の宝石品質のものは非常にレア。
その上入手が困難なことから最も高い価値が付けられています。
ブラジルのもう一つの産地である、リオグランデ・ド・ノルテ州のパライバトルマリンは、色が薄くパライバ産ほどの品質ではないものも多いそうです。
アフリカ産パライバトルマリン

前述したとおり、アフリカで初めてパライバトルマリンが発見されたのはナイジェリアで、2001年のことだったといわれています。
一般的に薄い色合いをしたものが多く、アクアブルーやミントグリーンといった爽やかな色合いが特徴的です。
さらに2005年にはモザンビークでもパライバトルマリンが発見されました。
アフリカ産のパライバトルマリンは銅の含有量がブラジル産に比べて少ないことから、色は比較的薄くなりますが、サイズが大きく透明感も高いのが特徴的です。
色の種類も豊富で、ミントグリーン、アクアブルー、深紫、青、青緑、赤紫色などが見られます。
高品質で色が濃いものが産出されることもあるそうです。
しかしナイジェリアの鉱山は既に枯渇しており、閉山されたといわれています。
パライバトルマリンの品質の見分け方

パライバトルマリンの品質は、カラー、クラリティ(インクルージョン)、照り(輝き)、産地が重要点となります。
品質に関する評価基準は主に以下の4つです。
●色・・・独特のネオンブルー。
●クラリティ・・・インクルージョンなどの見られない、高い透明感。
●照り(輝き)・・・ギラギラとした輝きと特有のテリ。
●産地・・・ブラジルパライバ州。
この中で色による価値の違いについて、もう少し詳しく見ていきましょう。
色による価値の違い
パライバトルマリンといえば、鮮やかなネオンブルーが最も有名かと思いますが、実際はネオンブルー~ネオングリーンまで色幅があります。
パライバトルマリンの場合、産地だけではなく色によっても価格差が出るといいます。
そして人気も価値も高いのは、やはりブルー味の強いもの。
ざっと価値の差を比較すると下記の画像のような感じになります。①が一番高く、④が一番安くなるイメージです。
パライバトルマリンの鑑別
パライバトルマリンの鑑別において重要視されるのは成分分析です。
前述したように、パライバトルマリンと認められるには成分に銅(Cu)が含有されていることを証明する必要があるからです。
そのため、鑑別書とは別に成分分析報告書というものが存在します。

しかし、成分分析をするためには特殊な機械が必要になるため、全ての鑑別機関で行えるわけではありません。
もしお手持ちのパライバトルマリンを鑑別したい場合は、鑑別機関に行く前に問い合わせてみた方が良いかもしれません。
そして鑑別書が付いているからと言って必ずしも成分分析報告書も付いているとは限りません。
GIAなど成分分析報告書を付けない方針の鑑別機関もあります。
必ずしも付けられるとは言い切れませんが、購入したいパライバトルマリンに成分分析報告書が付いておらず気になる方は、お店に一度相談してみても良いかもしれません。
ちなみに、パライバトルマリンは正式な宝石名とは認められておらず、鑑別書には宝石名の欄ではなく備考欄に、別名パライバトルマリンと呼ばれていますと書かれる場合も多いようです。
成分分析報告書にはパライバトルマリンと記載がされます。
パライバトルマリンに施される処理について
パライバトルマリンの鑑別書を見ると、「通常加熱が行われています。」と書かれている場合が多いです。
これは「一般的に加熱処理が行われることが多いが、自然熱で加熱されたり非加熱のものも中にはあり、それらを明確に判別することが困難」という意味だそうです。
そのためパライバトルマリンは加熱処理が行われていることで価値が著しく下がることはないといわれています。
但し、鑑別機関によっては加熱の痕跡を見分けられ、痕跡が見当たらない場合、その旨が鑑別書に書かれることもあります。
そういった鑑別書が付いているものは、非加熱パライバトルマリンとして価値高く取引される場合もあるということです。
パライバトルマリンの偽物について

画像:左-アパタイト 右-パライバブルートパーズ
超人気石と言っても過言ではないであろう、パライバトルマリン。
人気も価値も高い宝石ですから、残念ながら、偽物を高く売ろうとする悪徳業者も存在しています。
最も有名なのは恐らく、アパタイト。
アパタイトも天然宝石のため、偽物として紹介するのは心苦しい限りですが、実際パライバカラーのアパタイトがパライバトルマリンとして販売されていることも少なくないと聞きます。
アパタイトもとても魅力的でコレクターも多い宝石ではありますが、パライバトルマリンに比べるとまだ知名度も価値も高い方ではありません。
そのためアパタイトとして売るよりパライバトルマリンと偽って売った方が儲けられる、という悪知恵が働くのかもしれません。。。
また、最近ではコーティング処理でパライバカラーに変えられたホワイトトパーズがパライバトルマリンとして流通することもあるそうです。
パライバトルマリンとしてではなく、アパタイトやコーティング処理を施したパライバカラーのトパーズとして販売されていれば何の問題もないのですが・・なぜ人を騙して儲けようとする人が居るのか、、悲しい限りです。
それぞれの特徴などを紹介した記事もありますので、良かったらそちらも読んでみてくださいね。
パライバトルマリンを買うなら?

では、いざパライバトルマリンが買いたい!となった場合、一般的な販売価格と何処で買えるか気になりますよね?
パライバトルマリンは色や産地、カラット、さらには品質によって販売価格が異なります。
価格を基準にするのか、産地や色を基準にするのか。
「初心者だから価格の安さで」
「絶対にブラジル産!」
「小さくてもネオンカラーが強いものを」などなど
まずはあなたが絶対に譲れない!という基準を第一に、購入を考えるようにして下さいね。
ただ、世界中で人気があり需要も高まり続けているといわれるパライバトルマリン。ここ5年の間でも価格が高騰しているといいます。
特にブラジル産は5年前に比べて2倍以上になっているのだとか。
益々遠い存在になっていくイメージですね。。
世界的にパライバトルマリンへの需要が高まっており、ここ5年でも価格が高騰しています。特にブラジル産が顕著で、1ctの場合、5年前→80万円、今→200万円と2倍以上になっているイメージ。中国や欧米の宝石商も強気で買い付けており国内への流通量が減っています。日本にもパライバを流通させないと… pic.twitter.com/2mLaTBSZcG
— KARATZ代表|小山慶一郎(旧RECARAT) (@keiichiro_oyama) August 21, 2020
では、大体の目安ではありますが、販売価格から順番に見ていきましょう。
一般的な小売価格は?

大型スーパーの中にある量販店など、一般的な宝飾店では、モザンビーク産が0.5カラットで5万円ほど。
それがブラジル産になると、同じ0.5カラットでも15万円ほどが相場となります。
1万円以下で買いたい場合

モザンビーク産なら、カラット数や品質によっては、1万円以下で入手できるものもあるでしょう。
1カラット以上は欲しい!

1粒で1カラットのパライバトルマリンが欲しい場合は、一般的な宝飾店でもモザンビーク産で10万円以上、ブラジル産では40万円近くになります。
さらに高品質のものになると、モザンビーク産で100万円以上、ブラジル産で300万円以上はすると思っても良いでしょう。
思い切って5カラットの高品質を!

さらにさらに、5カラットの大粒で高品質のものとなると、モザンビーク産で1500万円、ブラジル産はなんと5000万円以上の値がつくものもあるそうです。
その上、前述したようなカラー、クラリティ、テリ、産地のすべてが完璧な場合は、世界に数個しかないレベル(!)だと言われています。
世界最高品質といわれるパライバトルマリンとは
先ほど、現在評価の高い色合いのパライバトルマリンはブルー味の強いネオンカラーのもの、とお伝えしました。
しかし世界最高品質と言われるものは実はネオン感のないまるでロイヤルブルーサファイアのような深いブルーの色合いをもつものだったりするそうです。
ただ稀少過ぎて殆ど市場には出回らず、出てきた時は売り主の言った値段で売れる程の存在なのだとか。。
ちなみに、上の画像のパライバトルマリンはお値段なんと約2億円だそうです。
【クイズ】ドイツの宝石商から見せてもらった約2億円する秘蔵の宝石、正体分かりますか?とても有名な宝石です☺️ pic.twitter.com/hVzXBMtCf5
— KARATZ代表|小山慶一郎(旧RECARAT) (@keiichiro_oyama) September 21, 2019
変わり種?バイカラーパライバトルマリンが欲しい!
色の宝庫と呼ばれる程カラーバリエーションが豊富なトルマリン。
一石の中に2色入った「バイカラートルマリン」、複数色入った「パーティーカラードトルマリン(パーティーカラートルマリン)」も人気があります。
そして、パライバカラーが入った「バイカラーパライバトルマリン」「パーティーカラードパライバトルマリン」もあります。
こちらは大体0.1ct前後で8万円~15万円くらいと、通常のパライバトルマリンよりも少しお高めになることが多いようですね。
パライバトルマリンキャッツアイ
もう一つ、変わり種のパライバトルマリンといえば、パライバトルマリンキャッツアイもあります。
繊維状の内包物が含まれ、カボションカットを施されたものに光を当てると、猫の目のような一筋の光が現れるというキャッツアイストーン。
多くの宝石に見られますが、パライバカラーの中に一筋の光が浮かぶ姿はまるで夜の海に差し込む月の光のようにも見えて本当に神秘的ですよね。
こちらも稀少なため、クオリティにも依りますが、通常のパライバトルマリンより高価になることが多いようです。
何処で買える?
超人気石のパライバトルマリンですから、カラーストーンの取り扱いのあるお店であれば、取り扱っているお店は多い印象です。
ネットショップなどでもよく見かけますので、ルースでもジュエリーでも探せば色々見つけられると思います。
モース硬度が比較的高くジュエリーとしても楽しめますので、ジュエリーになっているものを探すのも良いですし、自分好みの一石をルースで買ってジュエリーに仕立てるのも素敵だと思います☆
ただし、前述したとおり、高品質なものや特にブラジル産などは高額のものも多いです。
偽物も多く出回っている宝石ですので、高額なもの程、信頼のおける鑑別機関の鑑別書が付いているものやオプションで付けられるものを購入することをオススメします。
最後に

世界的に見て人気が高まり続けているパライバトルマリン。
特にレアなブラジル産は、今後更なる価格上昇も予想されているようです。
思い切って高品質のものを買うか、まずは手が出せる価格のものから始めるか、色々迷うところかもしれません。
しかし、いつか手に入れたい、憧れの宝石パライバトルマリン。
あなたにとって特別な一つに出会えますように。
カラッツ編集部 監修