10月の誕生石の一つとしても知られるオパールは、種類が多くバラエティに富んだ宝石です。
かつて私はオパールと言えばホワイトオパールかブラックオパール位だと思っていました。
ところが、オパールについて調べるほどに、その奥深さや種類の多さを知り、心底驚いたものです。
なんと、日本でも採れるそうですよ!
一体何処で採れるのか気になりますよね。
全ての宝石の色をもつともいわれ、古くから一線を画す存在だったオパールの産地別特徴や価値、原石の形などについてお話しましょう。
目次
オパールとは?
オパールは、和名を蛋白石(たんぱくせき)といいます。
卵白ような乳白色のものが多いことからそう名付けられたと伝わります。
オパールは内部に水分を含んでいます。
水分の割合は、通常は5~10%、最大で20%といわれています。
それからオパールの最大の魅力は、何といっても虹色に輝く遊色効果でしょう。
しかし、全てのオパールに遊色効果がある訳ではありません。ピンクオパールやハイアライトオパールのように遊色効果を示さない種類もあります。
遊色効果を示すものはプレシャスオパール、示さないものはコモンオパールと大きく二つに分類されています。
オパールの主な産地
画像:オーストラリア クーバー・ペディ
オパールは、19世紀末まではスロバキアが主な産地だったと伝わります。
現在、オパールの産地としてよく知られているのは、産出量が最も多いオーストラリアでしょう。
また、メキシコ、エチオピア、ブラジルなども、オパールの重要な産出国です。
他にもアメリカ、ペルー、ホンジュラス、チェコ、トルコ、インドネシア、マダガスカル、タンザニアでも産出され、そして前述の通り日本でも見つかっています。
産地別特徴
実に様々な種類があるオパール。
全部オパールなの?と驚くくらいバラエティに富んでいます。
そしてオパールは、産地によって種類が異なることが多いそうですよ。
先ほども触れた通り、オパールの産出国は世界中に散らばっている印象があります。
それぞれの国で採れるオパールにはどんな特徴があるのか、気になりますよね。
オパールの主な産出国であるオーストラリア、メキシコ、エチオピアに的を絞り、それぞれの国で採れる特徴的なオパールについて見てみましょう。
オーストラリア
オーストラリアのオパールは、荒涼とした大地に降る雨が地下に染み込み、長い長い年月をかけて生成されたものです。
オーストラリアでオパールが最初に発見されたのは1870年、中央部のニューサウスウェールズだったといわれています。
それ以来オーストラリアは良質なオパールの産出国として有名になり、オパールが国石にも選ばれています。
世界のオパールの9割はオーストラリア産である、といわれる程。
オーストラリアでは、ホワイトオパール、ブラックオパール、ボルダーオパールなどが産出されています。
オーストラリアに数あるオパール産地の中から、代表的な3カ所をご紹介しましょう。
ライトニング・リッジ
「世界のブラックオパールの中心地」とも呼ばれているのが、ニューサウスウェールズ州のライトニング・リッジという小さな町です。
ここはめったに雨が降らない荒涼な土地ですが、最高品質のブラックオパールが産出されることで知られています。
ライトニング・リッジのブラックオパールが初めて世に出たのは1903年のこと。
それまでは、誰もブラックオパールの価値の高さを認識していなかったのだそうですよ。
ライトニング・リッジでは、粘土岩や粘土質砂岩層、泥が堆積したシルト岩、白亜紀初期の地層などでオパールが育まれています。
砂岩と粘土岩が接する地層の、境界近くで生成することが多いのだそうです。
地下都市クーパー・ペディ
南オーストラリア州に位置するクーパー・ぺディでは美しいホワイトオパールなどが産出されます。
「オパールの都」とも呼ばれているこの地には、オパールの坑道を利用して作られた、巨大な地下都市が拡がっているのです。
地上の気温は季節によって0℃から50℃近くまでと激しく過酷ですが、地下は気温24℃前後で安定しており、快適に暮らせるのだそう。
地下都市には住居はもちろん、教会やホテル、博物館、公共施設なども作られています。
クーパー・ペディのオパール産出量はすでにピークを過ぎたという話もあるようですが、それでも一説によれば、現在でも全世界のオパールの6~7割を占めるともいわれているそうです。
クイーンズランド
クイーンズランドには 、世界でここだけでしか採れないといわれるボルダーオパールの産地があります。
ボルダーオパールとは、鉄鉱石の隙間などに帯状に生成されたオパールのこと。
母岩と一緒に切り出されて研磨されたボルダーオパールは、遊色効果を示すオパール部分と母岩とのコントラストが際立っており、とても個性的な魅力を放っています。
母岩の出現の仕方は様々で、表面で模様を作ったり、裏側でオパールを支えていたりしています。
ボルダーオパールには様々な流通名があり、母岩とオパールが織りなすデザインの不思議で多様な美しさを物語っています
メキシコ
メキシコのオパールはアンデス文明と深いつながりがあり、装身具などに用いられてきた歴史があります。
この国では、ファイアオパールやウォーターオパール、カンテラオパールなどが産出されています。
メキシコオパールの主要な産地はハリスコ州で、上質なものの多くはそこで採れるといわれています。
ケレタロ州は、イエローやオレンジ、レッドなどのファイアオパールが採れることで知られています。
火山岩の一種である流紋岩の中で形成されているメキシコのファイアオパールは、地色が美しく透明度の高いものや、遊色効果のあるものも産出しています。
ウォーターオパールは水のように透明なうえ遊色効果も見られ、幻想的な美しさを誇っています。
カンテラオパールは母岩と一緒に磨かれていて、卵の殻から七色に輝くオパールが顔を覗かせているような外観で、個性的な魅力に溢れています。
エチオピア
エチオピアで採れるオパールは実に多彩で、メキシコのファイアオパールにそっくりなものも見つかっています。
シュワ州では地色の濃いブラックオパールをはじめ、透明度が高くて水晶のようなクリスタルオパール、そしてオレンジオパールやホワイトオパールなどが産出されています。
ウォロ州では、ホワイト、イエロー、黄褐色、レッド、オレンジ、チョコレート色など、カラフルな地色のオパールも産出し、遊色効果を呈するものもあるといいます。
エチオピアのオパール鉱山は近年発見されましたが、今や世界のオパール市場にはエチオピア産が大量に流通しています。
エチオピア産オパールは粒子の積層構造に空間が多く、水分を多く吸収したり、逆に水分を放出して乾燥しやすいなどの特徴があります。
日本でもオパールは採れる?
日本でも遊色効果のあるオパールが採れるのだそうですよ。
その生成は二つのタイプに分かれ、一つは、堆積岩のチャート(無水珪酸が主成分の緻密な岩石)と一緒に生成するもの。
オパールがとても薄く生成されるため、宝石品質の結晶は採れにくいといいます。
もう一つは、火成岩の中の空洞を充填するように生成するタイプで、こちらは稀に宝石品質のオパールが採れることもあるそうです。
後者のタイプは、福島県宝坂、石川県赤瀬、愛知県棚山などが産地として知られています。
特に石川県赤瀬では、大々的にではないものの、オパールの採掘が行われていた時期もあり、ホワイトオパールや淡いブルーのオパールなどが産出されたということです。
オパールの産地別価値の違い
オパールの様々な産地について見てきましたが、採れる場所によって価値の違いはあるのでしょうか。
結論からいいますと、オパールは産地特定ができない宝石ですので、産地による価値の違いはないと言えるでしょう。
オパールの価値は、あくまでも品質によるものです。
虹色に輝く遊色効果のあるもの、遊色の色相にレッドやオレンジが入っているもの、遊色のパターンが美しいものなど、オパールの価値は総合的に判断されます。
オパールの原石の形と産出状態
多様性のあるオパールですが、原石はどのような形なのでしょうか。
また、どのように産出しているのか、その状況についても気になります。
ここでは、オパールの原石と産出状況について掘り下げて見てみましょう。
オパールの原石の形
オパールの原石の形は様々です。
オパールは、岩の割れ目や空洞に珪酸溶液が染み込んで生成されることから、目に見えない微細で球状の珪酸(SiO2)が集まっている、という特殊な構造をもっています。
平たく言うと、ピンポン玉が積み重なっているような構造なのだそうですよ。
オパールの多くは、火山岩や堆積岩の中で団塊状や層状、鍾乳状、脈状、皮革状で生成されています。
球状のノジュールの中でオパールが育つこともあります。
オパールの原石は同じ色や形を探すのは困難、などともいわれているほど、多様性に富んでいるのです。
オパールの産出状態
シリカを含む循環水が比較的低い温度で地下の岩や泥などの隙間に沈殿してできたオパール。
地層の中に眠っている動植物の組織の中に染み込んで、オパール化した化石が誕生することもあるといいます。
恐竜の化石がオパール化したものもあるそうですよ。
純粋なオパールは基本的にカラーレスですが、他の多くの宝石と同様に、微量の金属が混じることで発色します。
1cmのオパールができるのに500万年ほど掛かるともいわれていますが、その多くは遊色効果を示さないコモンオパールなのだそうです。
遊色効果を示す美しいオパールは希少なのです。
最後に
オパールの産地別特徴や価値、原石の形などについてお話しましたが、いかがでしたか。
オパールの奥深さや多様性に触れ、益々ファンになったという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
日本でも美しいオパールが採れることを知り、私は何だか嬉しい気持ちになりました!
オパールの産地は世界に散らばっています。
色も原石の形も効果も実に様々なオパールは、産地ごとに特徴が違うということも分かりましたね。
私は今回オパールの産地について色々調べたことで、オーストラリアのクーパー・ペディに行き、地下都市に住みながらオパールを掘ってみたいな、という夢を持つことができましたよ。
万華鏡のように色とりどりの光が躍るオパールを、自分の手で掘り当ててみたいものですね!
カラッツ編集部 監修
<この記事の主な参考書籍・参考サイト>
◆『起源がわかる宝石大全』
著者:諏訪恭一、門馬綱一、西本昌司、宮脇律郎/発行:ナツメ社
◆『アヒマディ博士の宝石学』
著者:阿衣アヒマディ/発行:アーク出版 ほか
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◆https://www.gia.edu/