1月の誕生石として知られているガーネット。
ガーネットというと、私は少し黒っぽいレッドのシックな宝石を思い浮かべます。
きっかけは昔蚤の市で見かけたアンティークジュエリーたち。
それらにあしらわれたガーネットはどれもそんなダークレッドな色をしており、その印象が強かったせいかずっとガーネットはレッドの宝石と思ってしまっていたのです。
しかし実際、ガーネットは多彩な宝石で、レッド以外にもグリーン、イエロー、ピンク、オレンジなど多くの色合いを呈します。
それもそのはず、実はガーネットは一つの鉱物を指す名前ではなく、いわばグループ名。多くの種類が存在するのです。
そして今回はその中の一つ、グロッシュラーガーネットについてご紹介したいと思います。
特徴、色、種類、価値、お手入れ方法など色々調べましたので、ぜひ読んでみて下さい。
目次
グロッシュラーガーネットとは?
冒頭でも触れたとおり、ガーネットはいわばグループ名で、色も種類も豊富な宝石です。
レッドやオレンジ系の色合いが多いアルミニウムガーネットとグリーンや褐色系の色合いが多いカルシウムガーネットの大きく2つに分けられ、その中で更に3種類ずつに分けられた計6種類が宝石として扱われることの多い種類です。
今回のテーマである、グロッシュラーガーネットはカルシウムガーネットに属します。
同じカルシウムガーネットとしては、アンドラダイト、ウバロバイトがあります。
では、グロッシュラーガーネットについて、鉱物としての基本情報から順番に見ていきましょう。
鉱物としての基本情報
鉱物名(英名) | Grossular |
鉱物名(和名) | 灰ばんざくろ石 |
分類 | 珪酸塩/ネソ珪酸塩 |
結晶系 | 等軸晶系 |
化学組成 | Ca3Al2(SiO4)3 |
モース硬度 | 7 – 7.5 |
比重 | 3.61 |
屈折率 | 1.740 |
光沢 | ガラス |
特徴
グロッシュラーガーネットは、多くが不透明~半透明だといわれていますが、中には透明度が高く美しい色合いをもつ宝石品質のものもあります。
前述したとおり、カルシウムガーネットに属し、多くの色合いを呈します。
色によって名前が変わるものもあり、最も知名度が高いのは恐らく、エメラルドに似たグリーンの色合いをもつツァボライト。ティファニー社によって名付けられたといわれています。
他にもオレンジのヘソナイトやミントカラーのミントガーネットなども人気が高いですね。
産地
グロッシュラーガーネットの主な産地は、スリランカ、タンザニア、カナダ、メキシコ、ロシア、ケニアなどです。
その他、アメリカ、南アフリカ、パキスタン、アフガニスタン、イタリア、スイスなどからも産出されるといいます。
産出の範囲は広いそうですが、宝石品質のものは少ないようです。
色によっても産地が異なり、例えば、グリーンのツァボライトは主にタンザニアとケニアから産出されるといわれています。
また、グロッシュラーガーネットは、隕石の中から見つかる場合もあるそうですよ。
原石の形
カルシウムとアルミニウムの珪酸塩鉱物であるグロッシュラーガーネット。
カルシウムに富む広域変成岩や接触交代鉱床の中に生成するといわれています。
前述したように、隕石の中に含まれていることもあるそうです。
他の惑星でも生成する宝石と思うと少しロマンを感じてしまいますね!
結晶の形は一般的に斜方十二面体や偏菱二十四面体が多く、粒状や塊状、礫状などで発見されることもあるといいます。
ほとんどが不透明~半透明ですが、宝石品質の透明度の高いものが産出されることもあります。
蛇紋岩体に産する塊状でグリーンのグロッシュラーガーネット(ハイドログロッシュラーガーネット)がサウスアフリカン・ジェードやトランスバールジェードという名前で出回ることがあります。
翡翠とは関係ありませんので注意して下さいね。
透輝石(ダイオプサイド)や斜灰簾石(クリノゾイサイト)と共出されることも多いそうです。
名前の意味
グロッシュラーという名前は、シベリアのビリュイ川で見つかった淡緑色のガーネットがグーズベリー(西洋すぐり)の実の色に似ていたことから、ラテン語の「グロッシュラリア(grossularia)」を語源として名付けられたといわれています。
グロッシュラーガーネットの色と種類
前述したように、グロッシュラーガーネットはカラーバリエーション豊富で、ホワイト、クリーム、ピンク、オレンジ、レッド、ブラック、イエロー、カラーレスなど多くの色を呈します。
微量元素が含まれることにより、発色すると考えられ、
●オレンジ~褐色 → Mn(マンガン)とFe(鉄)
●グリーン →Cr(クロム)とV(バナジウム)
●イエローグリーン →Fe(鉄)
とそれぞれいわれています。
色によって異なる名前で呼ばれるものもあり、オレンジ~褐色のものはヘソナイト、グリーンはツァボライト、カラーレスはリューコガーネットなどと呼び分けられています。
この他に淡く爽やかなグリーンの色合いをもつものはミントガーネットと呼ばれることもあります。
代表的な幾つかについてもう少し詳しくご紹介していましょう。
ツァボライト(グリーングロッシュラーガーネット)
まずは、エメラルドに似たグリーンの色合いが美しいツァボライトからいきますね!
ツァボライトが初めて発見されたのはタンザニアだったそうです。
スコットランドの地質学者によって発見されたそうですが、タンザニア政府から採掘許可が下りなかったことから、地続きであったケニアで調査を続け、ケニアで再発見。
ケニア政府から採掘許可を得て本格的な採掘が開始されたといいます。
その後、アメリカのティファニー社に紹介され、当時の社長であったヘンリー・プラット氏にツァボライトと名付けられ販売されたことで世に広く知られるようになったといわれています。
その美しいグリーンの発色は、先に伝えたようにクロムとバナジウムによるものと考えられており、これはエメラルドの発色要因と同じそう。
それ故、色合いが似ているのかもしれませんね!
ヘソナイトガーネット
グロッシュラーガーネットの中で、イエロー、オレンジ、赤褐色のものをヘソナイトガーネットと呼びます。
シナモンのように褐色がかった色合いから、シナモンストーンと呼ばれることもあったようです。
ヘソナイトガーネットは糖蜜状組織(トリークル)と呼ばれる内包物が含まれるという特徴があります。
これは、スタビー結晶インクルージョンともいわれ、水の中にシロップや蜂蜜を流し込んだ時に出来る、モヤモヤっとした不均一な組織のことを指します。
ヘソナイトガーネットは、同じオレンジ系のスペサルティンガーネットに比べダークなオレンジの色合いをもつものが多いことと糖蜜状組織を含むことなどからも見分けられるといいます。
リューコガーネット
多くの色合いを呈するグロッシュラーガーネットの中で、カラーレスのものをリューコガーネットと呼びます。
「リューコ」という名は、ギリシャ語で白いを意味する「Leukos(リューコス)」に由来して名付けられたといわれています。
タンザニア、ミャンマー、マリ共和国などから産出されます。
グロッシュラーガーネットの多くは微量元素を含み発色することから、カラーレスのリューコガーネットは希少性が高いとされます。
リューコガーネットの中にはブラックライトを当てると蛍光するものもあります。
ミントガーネット
淡くて爽やかなミントグリーンを発色するグロッシュラーガーネットをミントガーネットと呼びます。
1990年代後半、タンザニアのメレラニ鉱山で発見されたのが始まりで「メレラニミントガーネット」と呼ばれることもあるそうです。
蛍光性をもつものもあり、紫外線を当てると蛍光ピンクやオレンジ色に光ります。
爽やかなグリーンの色合いがソーダ水の色にも似て、美味しそうですね!
グロッシュラーガーネットの固溶体
画像はマリガーネット
ガーネットは複数の種類が混ざり合って別の種類を作ることが多くあります。
それを専門用語で固溶体と呼ぶのですが、多くはアルミニウムガーネット同士、カルシウムガーネット同士で混ざり合います。
最も有名なのは恐らく、アルマンディンガーネットとパイロープガーネットの固溶体であるロードライトガーネットではないかと思います。
グロッシュラーガーネットも同じカルシウムガーネットのアンドラダイトと適度な温度と圧力で混ざり合って固溶体を作ることが多いといわれています
グロッシュラーとアンドラダイトを構成しているアルミニウムと鉄はイオンの大きさが近いため、お互いが元素を交換し、容易に混ざり合うと考えられています。
この2つがウバロバイトと固溶することは少ないそうです。
では、そのグロッシュラーガーネットの固溶体の中で代表的なマリガーネットについても紹介していきたいと思います。
マリガーネット
グロッシュラーとアンドラダイトが混ざり合ったマリガーネットは、グリーンやイエロー、赤茶色などを呈することが多いガーネットです。
成分比率は個体によって異なり、グロッシュラーの成分が多いとクロムの影響でグリーンが強くなり、アンドラダイトの成分が多いと鉄が増えることで赤茶色に発色すると考えられています。
マリガーネットは、1990年代に発見された比較的新しい宝石で、マリ共和国周辺で産出されることから、その名が付いたといわれています。
グロッシュラーガーネットの中で最も価値が高い種類とは?
グロッシュラーガーネットの中で最も価値が高いのはグリーンのツァボライトです。
発見されてから五十年程と比較的新しい宝石ですが、色合いの美しさと希少性の高さから人気も高く、ガーネットの中でもデマントイドガーネットに次いで価値高く扱われるといわれています。
色が鮮やかで濃いもの程評価が上がり、他には透明度の高さ、カットの美しさ、カラット数などで価値が決められます。
グロッシュラーガーネットのお手入れ方法
グロッシュラーガーネットはモース硬度7-7.5と高めで、かつ靭性も優れていることから、日常的なジュエリーとしても十分楽しめる宝石です。
とは言え、強い衝撃を与えれば傷がついたり欠けたりする恐れはありますので、ぶつけたり硬い床に落としたりしないよう注意して下さい。
日常的なお手入れは使用後柔らかい布で軽く汚れを拭き取る程度で充分です。
目立つ汚れがある時は、石鹸や中性洗剤を薄めたぬるま湯の中で柔らかいブラシを使い洗ったり、アルコールティッシュなどでサッと拭いてあげるとキレイになります。
超音波洗浄機やスチーム洗浄機は使用しないで下さい。
高温になりやすい場所や直射日光が当たる場所に放置することも避けた方が安心です。
個別の箱や袋などに入れて他の宝石と分けて保管するとぶつかり合って傷つく恐れも減ると思います。
最後に
いかがでしたでしょうか。
ガーネットと一口にいってもさまざまな色や種類があり、改めてガーネットの奥深さに驚きました。
グロッシュラーガーネットは、ツァボライトをはじめミントガーネットやリューコガーネットなど多くの色合いが存在するため色々集めても楽しそうですね!
グロッシュラーガーネットの魅力が少しでも伝われば嬉しく思います♪
カラッツ編集部 監修
<この記事の主な参考書籍・参考サイト>
◆『アヒマディ博士の宝石学』
著者:阿衣アヒマディ/発行:アーク出版発行
◆『ネイチャーガイド・シリーズ 宝石』
著者:ロナルド・ルイス・ボネウィッツ 訳:伊藤伸子/発行:科学同人
◆『楽しい鉱物図鑑』
著者:堀秀道/発行:草思社
◆『ジェムストーン百科全書』
著者:八川シズエ/発行:中央アート出版社
◆『岩石と宝石の大図鑑』
監修:ジェフリー・E・ポスト博士/著者:ロナルド・ルイス・ボネウィッツ 訳:青木正博/発行:誠文堂新光社 ほか